夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「嘘でしょ」

「え、浄化ですよ? 貴方達のような方々には分かるのでは?」

「残念ながら存じ上げません。今まで我々は三回斬り、負の感情を取り除くことで妖傀を倒していました。三回も戦わなくていいのなら願ったり叶ったりなのですが、浄化の原理やどのようにやるのか。詳細を教えていただいてもよろしいですか? その方がこちらとしても動きやすいので」

 

 魅涼が自身の胸に手を当て、そう弥幸に説明を要求する。だが、彼は説明しようとせず口を閉じたままだ。

 星桜が説明したくとも、詳しくは分からないため伝えたくても伝えられない。

 

「答えたくないものなのでしょうか?」

「なんで知らないの。この力は赤鬼家では代々受け継がれてきた話だよ。出来た奴は指で数えるくらいしかいなかったみたいだけど……。知識くらいはあるでしょ?」

「残念ながら。私達にはその話は伝わっていません。どういうことでしょうか……」

 

 魅涼は顎に手を当て考え込む。

 

「もしかしたら、赤鬼君家にしか伝わってない秘術なのかもしれないよ!!! それならかっこいいね赤鬼君!!」

 

 星桜は深く考えずに、目を輝かせ弥幸を見る。その視線を受けている彼は、険しい表情を浮かべていた。

 その事に疑問を感じた星桜は再度弥幸の名前を呼ぶが、考え込んでしまっているためなんの反応もない。

 

「………兄貴」

「しっ。ダメですよ碧輝」

 

 二人はなぜかそのような会話しており、弥幸は目線だけを二人に向けた。だが、すぐに逸らしてしまう。

 星桜はよく分からないため、魅涼達と弥幸を交互に見ており首を傾げるばかりだった。

 

「…………早い話。浄化をすれば次の戦闘で終わるということだろ」

「浄化について詳しくわかりませんが、そうかもしれませんね。我々への負担が減るということでよろしいですか?」

「僕の負担は増えるけどね」

「それなら我々が必ずサポート致します」

 

 魅涼は浄化の話を聞き、今回は弥幸が浄化することで決まった。

 

「あの、今回妖傀を放ってしまっている人はどのような方なのかお分かりなのですか? それと、恨まれている人物など──」

 

 星桜がおずおずと手を挙げ、そう質問すると魅涼が優しく答えてくれた。

 

「はい。妖傀を放ってしまっている人物の資料をお持ちしますね。その方がわかりやすいかと思いますので」

 

 魅涼は「碧輝」と弟の名前を呼び、彼はその場から立ち上がり部屋から出て行く。

 それから数分後、戻ってきた彼の手には一冊のファイルが握られていた。

 

「ありがとうございます碧輝」

「………」

 

 魅涼はファイルを受け取り、ペラペラとめくり始め目的のページを探す。

 

「見つけました。こちらの方です」

 

 弥幸に開いたファイルを渡し、星桜も隣から覗き込む。

 

篠屋紅美歌(ささやくみか)(18)。染色家で、親の仕事を手伝っている。

 家の染色は有名で代々受け継がれており、一人娘である紅美歌が跡取りになっている】

 

「見たところ、そんなに不自然なところは無い気がしますが……」

「確かにそうなんですよね。まぁ、詳しく調べようとしたわけではありませんので、これしか情報がないだけというのもありますが……」

 

 魅涼が困ったような笑みを浮かべそう答える。

 

「十中八九それが原因だね。情報がこれだけじゃ意味なんてない。もっと詳しく調べないと浄化なんて不可能だよ」

 

 弥幸が資料を見ながら口にする。それを魅涼は「でしたら」と、今回妖傀を放っている女性、紅美歌の住所など弥幸に教えた。

 

「自分で知りたい情報を集めた方がよろしいかと」

 

 ☆

 

「赤鬼君。ここって来たことあるの?」

「ないよ。だから地図を貰ったんでしょ。案内してくれれば早いのに、なんでこんな見知らぬ土地に君と二人で彷徨い歩かないといけないんだろうね。これじゃ効率が悪すぎる。報酬は弾んでもらわないと」

 

 今星桜達は水泉家を出て、水光の港を地図を片手に歩いていた。

 

 水光の港は日本離れした港。

 建物のほとんどが瓦の屋根で、ほとんどが二階以上ある。

 壁画は赤で統一されており、装飾は金色。様々な花の形を型とっていた。

 道の上を様々な鳥が羽ばたいており、瓦屋根からは赤い提灯が建物の間を飾っている。夜になったら電灯の代わりになる仕様になっていた。

 

 他にもお店が沢山建ち並んでおり、食べ物や服屋などがある。

 他にもなぜかお祭りで売っているようなお面や、すごく高そうな骨董品まで置いてあった。

 

 星桜は、少し口元をムズムズさせながら弥幸の後ろを付いて歩いている。

 弥幸は周りに一切目をくれず、一つの場所に向かっていた。

 

「ね、ねぇ赤鬼君」

「目的の物が早く終わったらいいよ」

「本当!? わぁい!! それじゃ早く終わらせて観光しよ!!」

「なら、この目的の場所教えて」

「────ん?」

 

 星桜が喜び彼に飛び付くと、なぜか地図を渡された。

 

「え、でも。さっきから赤鬼君進んでるじゃん。今どこら辺なの?」

「わかんない」

「へ? でも、地図見てたんじゃ……」

「地図見ても分からない。今ここどこを歩いてるの僕達」

 

 周りを見回している弥幸は、本当に今どこにいるのか分からないらしい。

 星桜は顔を青くして地図を見る。だが、土地勘のない星桜が地図を見ても、今どこにいるのかすら分からない。

 

「────えぇ……」

 

 星桜は弥幸を見て、弥幸も星桜と目を合わせ「あとは任せた」と全てを投げ出してしまった。

 

「…………嘘でしょ」




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです!

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