夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜 作:桜桃
四人の自己紹介が無事終わると、弥幸が直ぐに本題へと入った。
「自己紹介が終わったところで本題に入らせていただきます。先程、貴方は水泉家の名前を口にしておりました。会ったことあるということでよろしいですか?」
「はい。私達、水泉家の長男である魅涼様にお話を何度も聞いているのです。ですが、何度聞いても信じられず、本の中の話なのではと思ってしまっています」
そう話し出したのは、母親である久美江だった。
「本の中みたいとは?」
「はい。『
その説明を耳にし、弥幸は目を閉じ考えを巡らせた。
説明が簡単すぎるため現実味がない。だから久美江は『本の中みたい』と言ったのだろう。
「そして、それから何回も来るのでさすがに迷惑でした。その事を言うと来なくなりましたが……。一体何がしたかったのでしょうか」
「あ、あの。魅涼さんの言っていることは本当で。大きな化け物が人を襲っているんです!! 見たことありませんか?」
「見た事と言われましても……」
久美江は怪しむような目を星桜に向け始めてしまう。その目は人を疑っているような目で、星桜は身を縮こませてしまった。
「────いくつかご質問してもよろしいですか?」
弥幸は会話が切れたところを見計らって、紅美歌を見ながらそう訊ねた。
視線を送られている紅美歌は、戸惑いながらも小さく頷く。
「一つ目、貴方には友達はいますか?」
「いますけど……」
「普段は遊んでいますか?」
「仕事が忙しいからそれどころじゃないです。今日は休みですが、仕事の日がほとんどで遊ぶ時間なんてないです」
なぜいきなりそのような質問をしたのか。星桜は失礼じゃないか、ハラハラしながら隣で二人の会話を聞いていた。
「二つ目、貴方の趣味はなんですか?」
「趣味と言える程じゃないですが、本は暇な時間によく読んでます」
「どのような本を?」
「主にミステリー……とか。謎を解くのが面白くてよく読んでます」
「なるほど。それでは三つ目。この港は好きですか?」
弥幸の三つ目の質問に紅美歌は、なぜか顔を明るくした。
先程までただ答えるだけだったものが、いきなり声を弾ませ意気揚々と話し出す。
「好きですよ。この港には沢山の文化があるんです。例えば、提灯。なぜ提灯がこの港に沢山あるのか。提灯はお祭りやお盆、七夕に使われることが多い。そして、お盆で使われる提灯のことは盆提灯というんです。では、なぜ提灯を使うか。その理由は、御先祖様は迎え火という灯りを目印に家へと戻ってくるのですが、盆提灯はその代わりなんです。迎え火として盆提灯は飾られる。ということは、この港に沢山の提灯がある理由の一人として私はこう考えました。沢山の人がこの提灯を目印として集まってくる。そうすることにより、異国の文化を採り入れまた新たな進化を遂げる。この港は止まることを知らない。新しいものへの向上心が提灯を象徴とし点っているんです!!」
先程まで必要最低限にしか答えなかった紅美歌だったが、なぜか今の質問だけは事細かに説明した。提灯については、自身の考えまでも口にし目を輝かしている。
その様子を星桜は驚きの表情で聞き、弥幸はなんの反応も見せない。
久美江はまたかと言うように頭を抱え、ため息をついてしまっていた。
「紅美歌、そんなことを語られても困るでしょ? やめなさい」
「で、でも──」
「本当にごめんなさい。この子、好きなことになると周りが見えなくなってしまいこのように相手のことを考えずにペラペラと余計なことを話してしまうのです。つまらなかったでしょう?」
「い、いえそんなことありませんよ」
星桜は首を振り久美江の言葉をやんわりと否定していたが、弥幸は久美江の言葉より先程から黙ってしまった紅美歌の方に目を向けていた。
紅美歌は顔を俯かせ、歯ぎしりしている。その様子を弥幸はジィっと見ており、星桜はその事に疑問を感じたらしく弥幸の名前を呼ぶ。だが、その事になんの反応も見せなかった彼は、紅美歌に最後の質問をぶつけた。
「ラスト、君の将来の夢は?」
「──え、そ、それって何か関係あるの」
「余計なことは話さない主義なので」
弥幸の突拍子もない質問に、紅美歌は少し戸惑っている。そして、なぜか弥幸の質問に答えたのは母親の久美江であった。
「この子はもちろん私達の跡取りですから、染色を継ぐのですよ」
その事に、紅美歌は何も言わず小さく頷いた。
「そうですか。分かりました、ありがとうございます。今日はこれで失礼します」
弥幸が言うと、立ち上がりそのまま玄関に向かってしまった。星桜も慌てて立ち上がり「し、失礼しました!!」と腰を折り、慌てて玄関へと向かう。
「え。ま、待って。送ってくわ!!」
久美江は玄関に向かう二人を送るため、急いで立ち上がりリビングを出た。
取り残された紅美歌は俯き、手が白くなるぐらい強く握り歯を食いしばる。
「私、本当は──」
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