夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「任せましたよ」

 お店を出た二人は、一度水泉家に戻ることになった。だが、来た道を戻ろうにも、人に聞きながらだったため不可能。そのため、地図を星桜が見ながら屋敷へと戻った。

 

 ☆

 

 屋敷に戻ると魅涼が出迎えてくれて、そこからご飯にお風呂と。

 旅館を満喫した気分で星桜は、満足気に笑いながらタオルを片手に髪を拭いていた。

 

 皆が寝静まる時間まで自由に行動していて良いということになり、弥幸は早速部屋の隅で横になり寝始めてしまう。

 星桜は彼の隣で寝ようとしたのだが、普段こんな時間に寝ないため目を閉じていても落ち着かない様子。

 

「……寝れるわけないか。というか、赤鬼君は体痛くならないのかな」

 

 今弥幸は畳の上で腕を枕にし寝ている。

 体などが痛くならないのか心配しているらしく、何かないか周りを見回していた。

 

「……。いや、どこででも寝れる赤鬼君だもん、体の心配はいらないか。でも、体が冷えて風邪引いちゃうかもだし、掛け布団とか借りてこようかな」

 

 星桜は手持ち無沙汰というのもあり、その場から立ち上がり部屋の外に出た。

 左右に続く廊下はずっと奥の方まで続いており、どちらに行けばいいのか分からない。

 

「広すぎ……」

 

 溜息をつき、彼女はとりあえず廊下に出て襖を閉める。左右を見て、とりあえず右に進み始めた。

 

 星桜は、廊下の壁に飾られている景色画を一枚一枚楽しみながら歩いていた。すると、曲がり角から女性の声が聞こえ始める。

 

 星桜はその声を耳にし、掛け布団などを貰おうとしたらしく声をかけようとした。だが、話している内容が気になってしまったらしくその場に立ち止まる。

 

「ねぇ、閉じ込められている子にお食事をお持ちしたのだけれど、やはり食べられないらしいわ」

「当たり前よ。あんな酷い傷。それに、体も衰弱しきっているし。もう少しの命かしらね……」

「魅涼様と碧輝様に目をつけられたら終わりよ。あの子ももう数日……」

 

 星桜は話の途中で出てきた名前を耳にし、目を見張る。

 

「それに、衰弱しきっているだけならまだしも。左胸にある複数の穴。あれは何なのかしら」

「さぁ。まるで、何かに沢山刺されてしまっているような痕だったじゃない。可哀想に」

 

 その言葉を最後に、女性達は奥の方に行ってしまった。取り残された星桜は強ばった体から力を抜き、顔を乗り出し息を吐く。

 

「うそ。え、それじゃ。魅涼さんと碧輝さんって──」

 

 星桜がそう呟くと、背後に男性の影が現れた。それに気付かなかった彼女は、そのまま口元に布を被せられてしまう。

 その布には睡眠薬が染み込まており、抗うことが出来ず目を閉じ倒れ込んでしまった。

 

「あとは任せましたよ」

「分かったよ兄貴」

 

 そんな会話が誰もいない廊下に響き、人影は姿を消した。

 倒れ込んでしまった、星桜と共に。

 

 ☆

 

「────っ。体、痛い……」

 

 弥幸はゆっくりと体を起こし、寝ぼけ眼で周りを見る。すると、星桜の姿がないことに気付き眉をひそめた。

 

「どこに行ったんだろう」

 

 少し伸びして立ち上がり、襖に手を伸ばしゆっくりと開けた。

 

「おや?」

「……なんでそこにいるの?」

 

 襖を開けると、そこには魅涼が薄い笑みを浮かべながら弥幸を見下ろしていた。

 

「たった今戻ってきたのですよ。あともう少しでお時間です。ご準備を」

「そう」

 

 魅涼は言うと、部屋には入らず廊下を進んでしまった。

 残された弥幸は廊下に出て襖を閉める。そして、魅涼とは反対側に歩き出す。

 

 人とすれ違おうと、弥幸は挨拶も何もせず前だけを見て進む。

 

 何かを探すように周りを見回しながら歩いている。

 

「…………あいつ……」

 

 弥幸はスマホで時間を確認すると、画面には23:58と表示されている。

 もう、ほとんどの人は寝ている時間になっていた。

 

 彼は星桜を探すのは諦め、妖傀の退治に向かおうとした。

 着替えるため、先程まで寝ていた部屋へと戻り始める。

 その際、スマホを操作しながら戻っていたため人とぶつかりそうになり、少しだけ頭を下げ謝罪する。

 その直後にスマホをズボンの中に入れた。その画面には【送信しました】という文字が手紙のマークと共に映し出されていた。

 

 ☆

 

 弥幸は準備を整え屋敷から出た。そこには、服装は今までと同じで、腰に刀を差した魅涼と黒い手袋を付けている碧輝が待っていた。

 

「お待ちしておりましたよ赤鬼さん」

「約束の時間ピッタリだと思うけど?」

「そうですね。では、行きましょうか」

 

 魅涼が言うと碧輝と共に歩き出した。弥幸も置いていかれないように後ろを付いて歩く。

 

 歩を進めながら魅涼は優しい微笑みを向け、弥幸に色んな話をするがどれも聞いているのか分からない適当な相槌で返している。

 碧輝が殴りかかろうとするのを魅涼が涼しい顔で止める。

 普通に歩いているはずなのだが、なぜかいつでも喧嘩が始まりそうな雰囲気の三人だった。




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

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