夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「助けてください」

 星桜は祈りながら弥幸の戦闘を見守っていると、今までとは比にならないほど精神力が吸われ戸惑いの色を見せた。

 

「こんな一気に精神力を吸い取られるなんて……。赤鬼君は大丈夫なの……?」

 

 碧輝同様、星桜からも多くの精神力が吸い取られている。

 今までは少しずつ送る感じだったため、感じたことの無い感覚に彼女は心配そうに彼を見る。

 精神の核を持っているため、直ぐに眠くなってしまうことはない。だが、それでもすごい勢いで吸い取られていく感覚には少しの不安を見せていた。

 

 女性は上空で戦っている弥幸を見上げ、羨ましそうに目を細めている。

 

「私にも、あんな人が──」

 

 そう呟く女性の声には、後悔や悲しみなどが含まれていることを感じ、星桜は後ろをチラッと見る。

 

「……赤鬼君は強いです。戦闘ではどうしても私がお荷物になってしまいます。ですが、普段はめんどくさがり屋で、言葉足らず。人の都合なんて無視するんですよ」

 

 星桜が言うと、女性は見上げていた視線を下ろし彼女に向ける。

 

「だから、私も困ってしまうんですよ。なぜか赤鬼君から離れたいとは思わないので。まぁ、助けられた恩があるので離れることは私自身、許せないんですけどね」

 

 困ったように笑う星桜の顔を見て、女性は目を大きく開き涙を浮かべた。

 黒く、恨みや恐怖などの感情しか感じられなかった瞳には、今の言葉で光が灯り澄んだような瞳になる。

 

「助けられた、恩」

 

 女性は呟くとそのまま顔を俯かせ、何かを思い出したかのように口元には薄く笑みが浮かぶ。

 

 

 ────大丈夫ですか。仕方がありませんので、私が貴方を助けます。ですが、見習いなので期待はしないでくださいね

 

 ────必ず、護ってやる。お前は、そこで座って待ってろ

 

 

 優しく暖かい声が女性の頭の中に再生される。その言葉は誰から発せられていたのか。

 女性は先程までの沈んだ表情ではなく、期待が込められた瞳浮かべ星桜の肩を強く握った。

 

「私も、恩があるかも……」

 

 か細い声は星桜の耳にしっかりと届き、満面な笑みを女性に向けた。

 

「なら、頑張って助けましょう!!!」

「────はい」

 

 涙を流しながら頷く女性は、頬を伝う前に涙を拭い覚悟の炎を目に宿し妖傀を見上げた。

 上空では弥幸が飛び回っており、妖傀を鎮めようとしている。

 

「お願いします。赤鬼君を助けてください」

 

 そう呟き、星桜は手を握りながら祈っている。すると、なぜか彼女の手が、強く輝き始めた。

 

 ☆

 

 上空から弥幸は、妖傀を見下ろしていた。

 炎狐と炎狼が炎を吹き動きを封じようと動くが、大きさが規格外なため今までみたいな戦い方では浄化することが出来ない。

 

 見下ろしながらどうするべきかを考えていると、妖傀がいきなり顔を見上げた。

 弥幸は窪んでいるはずの妖傀と目が合った気がし、一瞬肩を震わせた。

 

 妖傀は弥幸を見つけ、右腕に生えている2本の腕を振り上げ始める。

 大きい分スピードがないため、速さを売りにしている弥幸にとっては避けるなど造作もない。上空を自由に飛び回り、妖傀の手から逃れている。

 

『わだじは、ぎざまをぉぉぉおおお!!』

 

 負の感情全てを込めたような悲痛の声に、弥幸は片耳だけ塞ぎ苦しげに顔を歪ませる。

 

「早く何とかしないと──」

 

 焦りながら見下ろしていると、左右から勢いよく水が飛んできた。

 視界の端に映った水を反射で交わしたが、何が起きたのかわからず大きく目を見開き見下ろす。

 碧輝も弥幸と同じく驚き、上を見上げていた。

 

 いつの間にか妖傀の周りには、沢山の水が浮かび上がっていた。その水の玉はそれぞれに意思があるように動いており、避けるのが難しそう。

 

 今まで男性型は、パワーでゴリ押しが主な攻撃パターンだった。だから、先は読みやすく攻撃も避けやすい。

 攻撃の隙をつきカウンターをしかけ、弱らせるのが一番効率的で簡単なやり方だった。

 

 だが、今回の妖傀はそれだけでは無い。

 水を操り、弥幸を墜落させようとしている。

 

 水は魅涼の神力。もしかすると、魅涼の神力が受け継がれているのかもしれない。そうだとすると、今まで戦ってきた妖傀と比べられないほどの強さを持っていることになる。

 

 水を警戒している弥幸だったが、なぜか直接当てようとはしていない。

 水の玉は弥幸の少し上を狙って放たれている。

 

「狙いは我ではなく、炎鷹か。くそっ。炎鷹、無理はせず避けることに集中しろ!!!」

 

 弥幸の言葉を受け止め、炎鷹は指示に従い妖傀には近付かず上空を飛び回りながら避け続けた。

 少しでも動きを封じることが出来れば弥幸が怒涛の攻撃ができ、そこから浄化に持ち込むことが出来る。

 

 ────少しの隙さえあれば

 

 弥幸が目線を四方八方に巡らせなにか出来ないか。何かないかと思考を巡らせていると、宙に浮かぶ水の数が徐々に増えていった。

 

 十、十五、二十、二十五…………まだまだ増えていく。

 

 水を蒸発させようと、炎狐は炎を水に思いっきり吹きかけた。それにより、水は『パーーン』という。まるで、風船でも割れたのかと思う程の大きな破裂音を出し水飛沫を飛ばした。

 

 それを全て避けきることなど不可能。炎狐に水飛沫が当たってしまった。すると、なぜか水が当たった皮膚が溶け始め、炎狐は鳴いてしまう。

 それに気付いた弥幸は、慌てて一度炎狐を御札に戻した。

 

 今の弥幸では再度炎狐を出すとなると、時間を空けなければならない。

 地上に残されたのは炎狼のみ。だが、炎狼は弥幸が従えている式神の中でもっとも攻撃的で、一番強い。

 その証として、一回の咆哮で周りに浮いている水を一気に爆発させている。

 

 上空から弥幸は魅涼との会話を思い出しながら、牽制する動きをしている。

 右手の人差し指と中指を立て、口元に持っていく。すると、彼の周りに複数の炎の(つるぎ)が作り出された。

 それを全て操作し、妖傀へと送り込む。

 

 動きを制限する動きをしつつ、少しでも削ろうと頬や腕などに切込みを入れる。

 

 弥幸自身は、剣を操作しつつも右手を刀に添える。

 

「少しでも覗ければ──」

 

 浄化するため、弥幸は魅涼の恨みの根源を見つけようとしていた。だが、それに気を取られてしまっており、自身に向けられていた水の玉に気づくことが出来なかった。




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いします(*´∇`*)
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