夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「見つけた」

 空には刀を両手で持ち、背中には赤くゆらゆらと燃えている炎の翼を生やした弥幸が凛々しい姿で飛んでいる。

 自身の身長よりも大きな翼を羽ばたかせ、喚いている妖傀を見下ろす。彼はそんな中、一枚の御札を取り出した。

 

「炎狐、頼む。また力を貸してくれ」

 

 口元に持っていき、祈るように口にした。そして、彼は御札を真下へと投げる。

 御札は炎に焼かれ、そこから現れたのは子狐姿の炎狐。注がれている精神力が足りないらしく、炎狼と同じ大きさにすることは出来なかった。

 

 炎狐は鳴き声をあげながら空中を駆け回り、星桜の元へと向かう。そして、護るように彼女の目の前で停止した。

 

「炎狐、私達は大丈夫だから赤鬼君の援護をして」

 

 星桜が頭を撫でてあげながらそうお願いするが、炎狐はその場から動こうとはしない。じぃっと妖傀を見上げている。

 

「炎狐お願い。赤鬼君のお手伝いを──」

 

 星桜が再度炎狐にお願いしようとしたが、碧輝がそれを止め炎狐と同じように弥幸を見上げる。

 

「無駄だ。式神は術者の指示に従う。赤鬼がお前を護れと命令したのなら、その指示を覆すことは術者しかできん」

「っ、そうなんですね。でも、私達を守るため、赤鬼君が集中できなかったら──」

「それは問題ないだろう」

 

 見上げながらそう口にしている碧輝に対し、星桜は不思議に思い釣られるように彼の目線の先を見る。すると、そこには目を見張る光景が映し出された。そのため、星桜は思わず口元に笑みを浮かべ、安心したように眉を下げる。

 

「赤鬼君。やっぱり、自由に駆け回ってこそ赤鬼君だよね」

 

 星桜が口にするように。上空では弥幸が縦横無尽に飛びまわり、水の玉も綺麗に避け、刀で妖傀を弱らせていた。

 燃やし落とした三本の腕を再生させないため、翼を羽ばたかせ妖傀の周りを飛びまわりながら切り傷を作っていく。

 頬や肩。腕や腰など。

 男性型は皮膚などが硬いため、そう簡単に斬ることなどできない。だが、弥幸の戦闘はそれを感じさせない。

 

 力が足りなければ、両手で刀を振るえばいい。それでも足りなければ、神力を使い刀へ炎を渦巻くように巻き焼き切ればいい。そのように考え、弥幸は今の戦闘スタイルを身につけた。

 初心を忘れず、事前準備整え弥幸はいつも戦闘へと赴いている。

 

 今も、炎を渦巻くように刃へと纏わせ焼きながら斬っている。

 次から次へと傷を作り、回復の時間を与えない。

 1つ1つは小さな傷だけれど、それが積み重なれば弱っていく。

 

 妖傀は泣き叫んでいるような苦しげな声を漏らしながら、弥幸に噛み付こうと口を開いた。だが、そんなのに捕まる訳もなく。

 弥幸は刀を握り直し、口の上にある妖傀の両目を横一線に切り裂いた。

 そのまま妖傀の後ろへと周り、右肩から左の腰にかけて袈裟斬(けさぎ)り。

 

 最後の抵抗というように妖傀が大きな声で苦しげに泣き叫ぶが、何かしたくとも腕は全てない。視界も失ってしまい、もうどうすることも出来ない状態だ。

 

「これで、()()()()()()()()

 

 弥幸が口にすると、そのまま回復しないうちに妖傀の左胸あたりまで近づいて行く。

 そして、いつものように右手を前方へとのばし中へと入れた。

 

 ここからは、浄化の時間だ。

 

 ☆

 

 黒い箱の中のような空間。

 音も何も聞こえない。周りに手を伸ばしても意味は無く、歩いているのかも分からない。

 そんな空間の中、弥幸はいつものように冷静を保ちながら周りを見回している。

 

 いつもなら淡い光が徐々に見えてくるのだが、何故か今回は真っ暗なままで何も見えてこない。

 

「もっと奥底に居るのか」

 

 呟き、弥幸は表情一つ変えず、足を踏み出す。

 足音すらしない空間で、前に進んでいるのかも分からない状況。そんな中でも、弥幸は迷わず前に進んでいく。

 

「……これ以上、進むのは難しいか。それにしてもおかしいな。もうそろそろ見えてきてもいいと思うんだけど」

 

 疑問の声を上げ、弥幸は一度立ち止まり周りを見る。だが、見たところで何も無い空間なため、彼の探している人物を見つけることが出来ない。

 

「…………これ以上奥に進んだことないんだけど。まさか、この奥に居るの?」

 

 弥幸は一粒の汗を流し、前方に目を向ける。

 今彼が立っている空間も暗いが、その先にあるのはまたひと味違う闇の空間。

 

 闇が渦巻き、弥幸を取り込もうと手を伸ばしているようにも感じる。

 まるでブラックホールのような空間が広がり、このまま奥に行ってしまって良いものか分からない。

 もし行ってしまえば、もう二度と戻っては来れない──そのように感じさせる。そのため、弥幸はすぐに入らず、顎に手を当て考える素振りを見せた。

 

 雰囲気が異なり、今より濃い闇が広がっている。

 弥幸はその空間に手を伸ばし、恐る恐る近付いてみた。

 固唾を飲み、手を渦巻く闇の中へと入れると水の中に入ったような波紋が広がる。彼自身も何かが手に触れた感覚があったらしく、咄嗟に手を引っ込めた。

 

 この先に何が待っているのか。どのような空間が広がっているのか。

 弥幸は怪しむように目の前の渦を見上げ、その場に立ちつくした。

 

「…………行くしか、無いか」

 

 弥幸は決心したらしく、深呼吸をしたあと足を一歩、目の前に広がる闇の空間に踏み出した。

 右手を前に出し、最初は先程と同じく指先を入れる。すると、波紋が広がった。次に腕、肩、右足と。少しずつ中へと入っていく。そうすると波紋がどんどん大きくなっていった。

 

 顔を中へと入れ、弥幸は完全に渦の中へと入った。

 中は本当に水の中にいるように体が軽く、冷たい。

 水圧なのか、締め付けられている感覚もある。

 弥幸が息をする度、気泡が上へと昇る。だが、何故か息はできる。そのため、彼はそのまま前へと進んで行った。

 

「魅涼が水使いだからこんな空間なんだろうな。わかんないけど」

 

 そのままゆっくりと前に進むと、やっと淡い光が見えてきた。だが、気泡が光から襲ってきており視界を悪くする。

 両手で気泡を受けながら、弥幸はそのまま前へと進んでいく。

 大量の気泡の先、大きな体を縮こませ、震えながらしゃがんでいる魅涼の姿をやっと確認することが出来た。そのことに、弥幸は酷く安堵し息を吐く。

 

「やっと、見つけた」

 




ここまで読んでいただきありがとうございます
次回も読んでいただけると嬉しいです

出来れば評価などよろしくお願いいたします(*´∇`*)
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