夜を灯し駆け回る狐面の男〜内に秘める妖傀を想いの炎で焼き尽くす〜   作:桜桃 

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「嫌な予感」

 夜。今日は雨が降りそうな雲行きで、月が暗雲で隠れてしまっていた。

 そんな中、三人は住宅地の道路を走っている。だが、一人だけは家の屋根を走っていた。

 

「ちょ、赤鬼君!! 足が早い!」

「待ちなさいよ赤鬼!! 昨日も私達を置いていってさ!!」

「普通に名前を呼ばないでよ。今は偽名を使って」

「え、ちょ、なんて言ったのかわかんない! 赤鬼くーん!!!!」

 

 下を走っている二人を見下ろし、ため息をつく。

 

「はぁ、(とも)って、こんなにめんどくさいんだ……。これ以上、作るのやめよう」

「あかっ──えっと。ナナシ、もう少し遅くてもいいんじゃねぇの?」

「なんでぼっ──我が合わせないといけないの?」

「素が出てるぞナナシ……」

「うるさい」

 

 普通に名前を呼ばれてしまっているため、弥幸も素の自分を出してしまっていた。それに、翔月が弥幸と同じスピードで走りながら呆れている。そんな会話など聞こえていなく、後ろを走っている彼女達は、汗を流しながら必死に二人にしがみついていた。

 

 その時、弥幸が何かに気づいたのか。呆れていた顔を引き締め、走る速度を上げた。それにより、唯一付いて行っていた翔月さえも遅れをとる。

 

「なっ、おい!!」

「急がないとまずい。君達は後ででいいから。炎狐!」

 

 札を懐から取り出し、炎の子狐(炎狐)を出す。そして、翔月の横へと移動させた。

 

「これは?」

「炎狐が妖傀の元へ案内してくれる。あとの二人は任せたよ」

 

 そう口にすると、今度こそ弥幸は右足に力を込め膝を折る。そして、雷神の如き速さで走り去った。

 目で追うことすら出来ず、翔月はその場に立ち止まり目を見張る。

 

「あ、あいつ……。やっぱり、人間じゃねぇ……」

 

 そう呟き、顔を引き攣らせ後ろを振り向く。そこには、肩で息をして汗を流している二人の姿がある。

 

「…………まぁ、あいつなら一人でも大丈夫か」

 

 翔月は二人に歩み寄り、速度を合わせ小走りで目的の場所へと向かった。

 

 ※※

 

 弥幸は、屋根の上を足音一つ鳴らさずに走っていた。腕は脱力させ動かしていない。

 息も切れず、淡々と走り続けている。目線だけは真っ直ぐ、前だけを見ていた。

 狐面の隙間から見える真紅の瞳は、なぜか不安げに揺れており、緊張でなのか喉を鳴らす。

 

「…………なんか、嫌な予感」

 

 呟くと、やっと前方に人影が見えてきた。だが、その人影は昨日の女性では無い。

 

 身長はそこまで高くない、フリルの着いたドレスを身にまとっている女性。もう一人は、着物を身にまとい、両手には鎖のような物を持っていた。

 

 それを目にした弥幸は、焦ったように屋根から地面へと降りる。そして、一歩を大きくし目では追えない速度で人影二人に近づいていった。

 

「ま、待てっ!!!!」

 

 弥幸の言葉など聞こえておらず、前方に伸ばした右手も意味は無い。

 

 二人の人影の奥。昨日、弥幸が斬った妖傀が鎖により動きを封じ込められていた。

 彼が叫んだ直後、鎖から繋がる鎌が不自然に宙を舞い、妖傀の首を跳ねた。

 それだけでは飽き足らず、鎖を解き腕、腰、両足と。男性が鎖を手にし、鎌を操りどんどん斬っていく。その隣では、小さな女性が手に持っている扇のような形をしたものを上下や左右に腕ごと振っていた。

 

 それに合わせるように鎌も動き、どんどん斬っていく。

 もう、何等分になったかも分からない妖傀は、地面へとボタボタと落ち、動かなくなる。

 幸い、妖傀には血液などがないため、血飛沫が舞ったり、地面が赤く染ることは無い。周りに、黒いモヤが立ち上り視界を悪くするのみ。

 

 地面へと落ちた妖傀の肉の塊から、光が現れ宙を舞い二人の人影へと向かう。

 それを、女性は右手で握り潰した。次にその手を開いた時には、黒い石が握られている。

 

 それを一目見て、女性は地面へと落とし。何を思ったのか、踏み潰そうと右足を上げた──……




ここまで読んで頂けて嬉しいです
次回も読んでいただけると嬉しいです

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