北米大陸奪還後の地球連邦地上軍の仕事は、残党狩りをしつつ、腹をすかせた市民たちに食料と農作物の種・苗を陸路・空路・海路をフル活用して輸送することだった。
残党の襲撃はそこまで差し迫った問題ではなかったのだが、護衛もなしに輸送機を飛ばしてんじゃねえぞという意見が空軍から出ており、モビルスーツの空中砲台運用テストも兼ねて、輸送機一部隊につき一機のモビルスーツ搭載が認められた。搭載されるモビルスーツは、ジムの頭部センサーを改良しM粒子散布下での索敵能力を強化。武装はビーム・スプレーガンではなく、ビームライフルよりもさらに収束率を上げて精度を上げたスナイパータイプ。これで上空から敵を一方的に排除しようという戦術研究の一環であった。
地上のモビルスーツに対して、上空からの攻撃が有効であることは、空軍の活躍によりしっかりと証明されている。大量の敵に対しては、大量の爆弾による絨毯爆撃が有効、少数の敵に対しては高精度なピンポイントのビーム攻撃が効果的。それなら高級戦闘機よりも……安くはないがモビルスーツと、運動性は悪いが安価で燃費もいい輸送機とのセットでやれば、地上に降りてからも護衛ができて支援用戦闘機の分の燃料の節約になる。貴重な対地攻撃もできるパイロットを、占領地統治のために置いておくのは勿体ないということで、こういう決定がなされた。
護衛の戦果はそれほどなかったが、輸送部隊はほとんどが無傷で仕事を果たした。それは当然、補給の途絶えた残党がいつまでも戦えるはずもないからで。何度か戦えば弾も切れ、戦わなくとも生きていれば生活のための物資が切れる。その時期は抱えている戦力が多ければ多いほど早く訪れる。物資が切れたら空を飛ぶ輸送機など狙わず近くの町に収奪へ走る。そのほうが楽だし実入りもある。すると隠れていた存在が露見。住民からの通報をもとに航空偵察機が情報を集め、その情報をもとに残党狩りの部隊が航空支援を受けながら・突入・掃討する。というのが半月ほど続いた……補給も指揮もなしに残党過激派が戦いを続けられる期間は、それが限界だった。各地の連絡は途切れ、仲間との連携も取れず、分断ののちに制圧された。残りはあきらめて市井に身を隠すばかりであった。
攻略作戦開始から一か月で、市民たちの協力もあり奪還作戦は完全に終了した。
そしてジャブロー。司令部は一息つく暇もなかった。北米を奪還したからと言って、それで戦争が終わるわけではない。大きな作戦のうちの一つが終わったに過ぎない。ヨーロッパではオデッサ作戦が進行中で、それが終われば宇宙攻略戦が待っている。
地上は前哨戦で、本番は宇宙。連邦・ジオンどちらにとってもそうだ。連邦のゴールはジオン公国本拠地であるサイド3まで殴り込み、二度と連邦と他コロニーに対して暴力を働けないように叩き潰すこと。
その時まで決して気は抜けない……が、まずは足場固め。地球からジオンをたたき出すこと、いや重力の井戸の底ですりつぶすことが大事だと、ゴップ大将自らジャブローを出て、ゴップ大将専用航空母艦と護衛艦隊を連れオデッサへ向かった。
この航空母艦ラ・グランパはメガフロート級の巨大母艦で、大型爆撃機以外の航空機なら大抵が離発着できるし、同時に搭載できる物資・機体の数もそこらの輸送艦・輸送機とは比べ物にならない。小規模だが工場や研究所まで入っている。
航空母艦には当然艦載機が付き物であり、搭載機数は不明。だが、いくつか実験機も含まれている。
「どうだね。新武装の出来は」
「これは技術士官殿……120mmレールガンですね。仮想敵をビームの効かない大型の重装甲目標とするなら、大変有効でしょう。そうでなくとも有効ですが、ビームが効くのならビームでいいのでは、とは思いますね。旧い技術ですから研究しておいて損はないと思いますが。
まあ、ビーム兵器は現状ジオンにとって最大の脅威ですので、いつか必ず対抗手段を用意してくるはずですし、対抗手段への対抗手段……イタチゴッコですが、これはもう歴史ですから仕方ないですね」
「MS以外の戦力の増強にも繋がるだろうか。できれば地上の戦力を増強したい、というのは上層部の意見だ」
「戦車にエネルギーCAPを取り付けて主砲を換装すればザクキラーになり得ます。ただ改修費用もかかりますし、もうすぐ地上戦は終結しそうですから、出番はないかと思いますが。飛行機は反動に耐えられるレベルの頑丈さが必要になりますので、機体を選びますね。候補としてコア・ブースターならあるいは? セイバーフィッシュだと厳しいかも。専門外なので確かなことは言えませんが……それでだめならベース機の新規開発が必要になるかもしれません。重力下ならともかく、今後の主戦場は宇宙です。宇宙では航空機もMSも同じフィールドで戦うことになりますから、わざわざ新しい機体を開発するよりも頑丈で多様な運用のできるMSでいいのでは、となりそうな気もします。もしかすると未来の戦場はMS以外の兵器は母艦以外に消えてしまうかもしれませんね。航空機の性格をしたMS、戦車の性格をしたMSとか」
「MSに何もかもやらせるわけか。しかしMSは高価だぞ? そんなことになるだろうか」
「兵器の歴史はそんなものです。今量産中のジムはコストと性能を両立させた理想的な量産機ですし、破格といっていいほど安価です。話がそれてきましたね……レールガンに戻しましょうか。技術は応用できます。口径を大きくすれば艦砲に利用できます。逆に小さくして既存の火薬発射式の対空機銃を置き換えれば被弾時の爆発もなくなり、破損を感知して電力供給を止めれば火災も起きません」
「それだけ聞けばメリットしかないようだが。その方式が採用されていない理由もあるんだろう」
「レールガンは通常火砲に比べて高価ですから。メンテナンスも複雑ですし。既存の対空機銃と置き換えるほどの理由はありませんね」
「……では航空機の主砲としては?」
「ミサイルではダメなのでしょうか。出てくるかどうかもわからないビームの効かない敵のために、急いで開発を進めるほど価値があるかというと……ビームか実弾か、どちらかに統一したほうが兵站面では負担が軽くていいとは思います」
「実際に載せてみて、使ってみて。ダメならダメでいいんじゃないか。そのための実験機だ」
「実験機もタダではないのですが」
「しかし得られるデータには投資分以上の価値がある。安全面に十分配慮して、試験を行ってくれ」
「了解しました」
……という会話が行われ、セイバーフィッシュ、コア・ブースター、そしてRGM-9A(ジム先行生産型)の三種類の機体に装備され、オデッサへの航路途中、飛行甲板上で海に向けて発射試験が行われた。
航空機は主翼に懸架・胴体に懸架・既存武装と入れ替え。3つのパターンで装備され、ジムは通常兵装と同じように手に持って。それぞれ使用後の機体負荷を調査。結果、ジムとコア・ブースターの武装入れ替えのみ使用可能と判断され、ひとまずジムの武装が一種類増えることとなった。コア・ブースターの場合は追加でもう一段階試験がある。戦闘機動中に使用しても問題ないかの確認のため、一度空に上げられた。接合部で折れたという重大事故があったため慎重になっているのだ。
テストパイロットに選ばれたのは船酔いで甲板から海にゲロを吐き出していたシグ伍長。ネーレイド軍曹の無茶苦茶な戦闘機動に耐えきれず、補助パイロットを降り出世の道からも降りた撃墜王の元相棒。相棒だったのだが、撃墜王に比べ能力はあまりパッとせず、モビルスーツへの適性も低い。もともと無理やり載せられていたという感じであった。しかし車両の運転能力と、宇宙用モビルポッド、ボールへの高い適性が認められ、現在兵科転換訓練期間中……のところを捕まった。
「えぇー……小官は航空科での経験があるというだけで、専門ではないのですが」
空飛ぶジェットコースターに散々振り回されてもう飛びたくないという思いと、飛べば船酔いから逃げられるという思いに挟まれて、げっそりした顔をしていた。
「適正があることは知ってんだよ。飛べ(意訳)」
「はい……」
軍隊とは階級社会である。上官の命令には絶対服従を基礎教育の時点で刷り込まれているため、抵抗する意思はあっても命令が明確な犯罪行為や倫理に反する行いでない限り、強く押し切られれば従う他ない。
この後護衛艦隊に射出させたデコイバルーンを、急旋回しながらのレールガン射出で破壊するという過酷なテストが実施された。結果は良好で、ビーム砲を使用したときとほとんど機体負荷は変わらないという結論が出た。
以降、少数ではあるがレールガンを装備したコアブースター飛行隊が戦場の空を飛ぶこととなる。
フレーバー程度のシグ伍長のステータス(ダイス)
出身 北米
家庭 22
ステータス
指揮 30
魅力 6
射撃 64
耐久 31
反応 72
格闘 9
NTレベル 8
MS適性 31 MA適性89 車両適性85 飛行機適性63 艦船適性6
ステータスはフレーバー程度なので深く気にしないでください。ストーリーに影響するかも気にしないで。
次回あたり欧州上陸予定。来週くらいに書けるといいなあ。
デスストやったりエルデンリングやったりして遊び呆けて、気づけば早二ヶ月近く更新が途切れていたのですね。
楽しみにしていただいていた方には申し訳ありませんが、反省はしておりません。