ドイツ生まれの天才少女   作:佐月檀

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 前話とは雰囲気が打って変わってるから注意。


第二話 夢と第一目標

 あまりにも痛々しすぎる中二病特有の構え――片手で片目を覆い隠し、名乗りを上げた。

 そのウマ娘の名はデインドリーム。一瞬で迷子から中二病にクラスチェンジできる、稀有なウマ娘だ。

 流石のブエナビスタもこれには絶句せざるを得ない。

 だが当のデインドリームは、ドヤ顔で中二病特有のポーズを取ったままである。

 空気は完全に凍てついてしまった。周囲を通過していくウマ娘たちもこの空気を感じ取ったのか、気まずそうに通っていく。

 

「……フッ、決まったな」

 

 そんななかでもブレないのがデインドリーム。空気が凍てついていることにすら気づいていない。

 ブエナビスタは苦笑を浮かべる。いや、浮かべるしかなかった。

 こんな場面になってしまえば、誰であろうとだいたいはこうなるであろう。仕方ないのだ。

 

「……え、えっと、デインドリームちゃんか! アッハハハ! 素敵な名前だね! よろしくねー!」

 

 しかしそれでも、会話を諦めないのがこのブエナビスタだ。今回ばかりは、ブエナビスタの優しさに救われる形となっている。

 ここでブエナビスタは閃く。

 デインドリームは自身を揺るがすほどの強者が好きだ、と言い放った。ならば、いまから仕掛ける話にも食らいつかないはずがない。

 

「ねえねえ、デインドリームちゃん。あなたの目標ってある?」

「当然っ! 我はそれを果たさんがために、ここに入学した!」

「ほーうほーう? 詳しくお聞かせ願える?」

「よいぞっ! ならばよーーーく頭に刻め!」

 

 すう、とデインドリームは深呼吸する。目を瞑る――開く。

 彼女の口から発せられたのは、ブエナビスタですらも一瞬耳を疑うものだった。

 

 

「我――いや、わたしの目標は、凱旋門賞制覇よ!」

 

 あまりにも明確な目標。だが、それは果てしない修羅道を進むことになる。

 ブエナビスタの表情が強張る。纏っている雰囲気は、いまばかりは相手の息を詰まらせるようなものだった。

 それだけ、ブエナビスタも真剣に向き合わなければならない目標――夢であった。

 

「……一応聞くけど、本気だよね?」

「ええ、本気よ。()()()()()()()()()()()()()よ」

 

 ブエナビスタは内心では安心していた。見た限りではあるものの、どうやら、デインドリームというウマ娘には強固な意思が備わっているようだ。

 

「というか、アタシのこと、知ってたなんてね」

 

 迷子で気を抜いた、とブエナビスタは反省する。

 デインドリームはドイツ――欧州出身のウマ娘だ。そんなウマ娘が日本のGⅠウマ娘を知っているとは、ある意味、予想外の出来事であった。

 

「日本のトレセン学園に入学するのだから、当然よ。強者は警戒しておくに限るわ」

「……それもそうだね」

「……さて、これでわたしの夢を示せたか?」

「ええ、悔しいほどにね」

「……その言葉は予想外よ。まあいい。わたしの夢を少しでもわかってくれたのなら」

 

 先ほどの迷子状態、その後の中二病とは、あまりにも雰囲気が一変しすぎている。

 ブエナビスタはデインドリームに対する警戒度を上げつつ、一息つく。

 デインドリームもその行動を察したのか、発している雰囲気を緩める。

 

「足を止めさせてごめんね? それじゃあ、いこっか」

 

 その言葉と共に、彼女たちは入学式の会場まで歩み始める。

 

「あっ、そうそう」

 

 思い出したように、ブエナビスタはある規則を告げる。

 

「――トレーナー、必ず見つけてね。レースでアナタと競うこと、楽しみにしてるんだから」

「ククッ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 互いに不敵な笑みを浮かべたまま歩く。

 少女たちの競走。それはいつか、訪れる決着となった。




 中二病×不敵=デインドリーム。ここテストに出ます(※出ません!)。
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