あまりにも痛々しすぎる中二病特有の構え――片手で片目を覆い隠し、名乗りを上げた。
そのウマ娘の名はデインドリーム。一瞬で迷子から中二病にクラスチェンジできる、稀有なウマ娘だ。
流石のブエナビスタもこれには絶句せざるを得ない。
だが当のデインドリームは、ドヤ顔で中二病特有のポーズを取ったままである。
空気は完全に凍てついてしまった。周囲を通過していくウマ娘たちもこの空気を感じ取ったのか、気まずそうに通っていく。
「……フッ、決まったな」
そんななかでもブレないのがデインドリーム。空気が凍てついていることにすら気づいていない。
ブエナビスタは苦笑を浮かべる。いや、浮かべるしかなかった。
こんな場面になってしまえば、誰であろうとだいたいはこうなるであろう。仕方ないのだ。
「……え、えっと、デインドリームちゃんか! アッハハハ! 素敵な名前だね! よろしくねー!」
しかしそれでも、会話を諦めないのがこのブエナビスタだ。今回ばかりは、ブエナビスタの優しさに救われる形となっている。
ここでブエナビスタは閃く。
デインドリームは自身を揺るがすほどの強者が好きだ、と言い放った。ならば、いまから仕掛ける話にも食らいつかないはずがない。
「ねえねえ、デインドリームちゃん。あなたの目標ってある?」
「当然っ! 我はそれを果たさんがために、ここに入学した!」
「ほーうほーう? 詳しくお聞かせ願える?」
「よいぞっ! ならばよーーーく頭に刻め!」
すう、とデインドリームは深呼吸する。目を瞑る――開く。
彼女の口から発せられたのは、ブエナビスタですらも一瞬耳を疑うものだった。
「我――いや、わたしの目標は、凱旋門賞制覇よ!」
あまりにも明確な目標。だが、それは果てしない修羅道を進むことになる。
ブエナビスタの表情が強張る。纏っている雰囲気は、いまばかりは相手の息を詰まらせるようなものだった。
それだけ、ブエナビスタも真剣に向き合わなければならない目標――夢であった。
「……一応聞くけど、本気だよね?」
「ええ、本気よ。
ブエナビスタは内心では安心していた。見た限りではあるものの、どうやら、デインドリームというウマ娘には強固な意思が備わっているようだ。
「というか、アタシのこと、知ってたなんてね」
迷子で気を抜いた、とブエナビスタは反省する。
デインドリームはドイツ――欧州出身のウマ娘だ。そんなウマ娘が日本のGⅠウマ娘を知っているとは、ある意味、予想外の出来事であった。
「日本のトレセン学園に入学するのだから、当然よ。強者は警戒しておくに限るわ」
「……それもそうだね」
「……さて、これでわたしの夢を示せたか?」
「ええ、悔しいほどにね」
「……その言葉は予想外よ。まあいい。わたしの夢を少しでもわかってくれたのなら」
先ほどの迷子状態、その後の中二病とは、あまりにも雰囲気が一変しすぎている。
ブエナビスタはデインドリームに対する警戒度を上げつつ、一息つく。
デインドリームもその行動を察したのか、発している雰囲気を緩める。
「足を止めさせてごめんね? それじゃあ、いこっか」
その言葉と共に、彼女たちは入学式の会場まで歩み始める。
「あっ、そうそう」
思い出したように、ブエナビスタはある規則を告げる。
「――トレーナー、必ず見つけてね。レースでアナタと競うこと、楽しみにしてるんだから」
「ククッ、
互いに不敵な笑みを浮かべたまま歩く。
少女たちの競走。それはいつか、訪れる決着となった。
中二病×不敵=デインドリーム。ここテストに出ます(※出ません!)。