雄英二日目。
「不死黒君、少しいいかな?」
俺は飯田に呼び出された。
「で、こんな人気のないところまで来て何のようかな?」
「すまなかった!!」
凄い勢いで飯田がまさかの土下座してきた。・・・なんで?
「おい!なんで土下座してんだよ!」
「僕は君が親から虐待された事を知らずに好き勝手に尊敬しろだと、心無いことを言ってしまった!」
なるほど。飯田が頭を下げる理由は昨日のことか。真面目だなー。
「気にすんなって。事情を知らなければ言っても仕方無いよ」
「しかし」
「しかしも何もない」
未だにあーだこーだ言う飯田を立たせる。そんな申し訳なさそうな顔をしないで欲しい。
「悪いと思ってるならさ、これから友達になってよ」
「! 本当に良いのか?」
「ああ」
「すまない。そしてこれから頼む! 不死黒君」
「こっちこそよろしく飯田」
二人はしっかりと握手をする。
「不死黒君、1つ質問して良いかな?」
「どうぞ」
「なんで君は虐待のことを児童相談所とかに言わなかったんだ?」
「アイツはヒーロー公安委員会の人間だ。周りからは人格者に思われてる。そしてガキの言葉なんて大人には信用されない。それに大抵の奴らは無個性なんてどうでも良いんだよ。
実際、学校は無個性差別を放置してたし、ヒーロー達は手を伸ばしても誰も助けてくれなかった」
「な!そんな、酷すぎる!」
「それに聞いて貰えるとしても言わないよ」
「なんでだい?」
「あんな親でもユエの保護者だ。アイツらが潰れたらユエの人生が大変になるし、ユエの個性の治癒は殆どの者が喉から手が出るほど欲しがるからな」
「つまり、不死黒君はユエ君の為にも虐待を我慢していたと?」
「そう」
「・・・君は優しい兄だな」
「妹弟の為ならば兄姉は何だって出来るもんだよ。
それに、俺はユエが胸張って自慢できる
『天哉が憧れるっつーことは俺、すげえヒーローなのかもな』
「!」
一騎が見せた笑顔が飯田は幼き頃に見た自慢の兄の笑顔と重なって見えた。
「君は、本当に立派な兄だ!!」
「お、おう、ありがと。そろそろHRが始まるから、教室に戻か」
「ああ」
☆
そして当然ヒーロー科も通常の高校と変わらない授業も行われる。午前は必須科目で授業はプロのヒーローが担当。
今は英語の授業でプレゼントマイクが担当だ。そして
「じゃあ、この英文で間違っているのは?」
普通なのだ。
プロヒーローの授業はどう言った内容なのだろうか?と、思ったけど普通。しかも簡単なんだよな。
「どうした!もっとテンション上げてけ!エディバディセイヘイ!!」
テンション上げれる程難しくないんだよな。
昼は大食堂でクックヒーローランチラッシュが作る一流の料理を安価でいただける。
席は俺の正面にユエ、横に発目、そしてユエの横に八百万がいる。
「お兄様の料理はなんですか?私はオムライスです」
「鯖の味噌煮定食だよ」
「あーん」
「はい、どうぞ」
口を開けて待つユエに鯖の味噌煮を一口食べさせる。それを幸せそうに食べるユエを一騎も微笑みながら見る。
そしてユエもオムライスを一口一騎に差す出し、一騎もそれを食べる。そんな二人の遣り取りを一緒に居た発目と八百万は目をぱちくりしながら見る。
「美味しいな」
「ですね! どうしたの?モモちゃんメイちゃん」
「いえ、お二人ともまるで恋人のようだと思いまして」
「え?兄妹だとこういうのは普通にするんじゃ無いの」
「え」
「え?だって・・・ユエ?」
「・・・」メソラシ
「ユエ?」
「てへぺろ」
あざとくウインクしてベロを出すユエを見て一騎と八百万は内心可愛いと思って仕舞い二人は深い溜め息をつく。
「ん?どうした発目」
「・・・いえ、何も」
「そう」
「あ、お兄様。ゴニョゴニョ」
「なるほ・・・ど?」
ユエに何かを吹き込まれた一騎は味噌煮を一口分取ると発目に差し出す。
「ほら発目」
「なんでしょうか?」
「あれ?発目も食べたかったんじゃないの?・・・違った?」
「・・・! いえ!頂きます!」
とまあこんな事も有り、そして午後の授業はズッと待っていた。ヒーロー基礎学!
本鈴と共に教室のドアが力強く開いた。
「わーたーしーがー!!普通にドアから来た!!」
ドアから現れたのはオールマイト。それにクラスは一気に盛り上がる。
「オールマイトだ……! すげえや、本当に先生やってるんだな…!」
「
「画風が違いすぎて鳥肌が……」
皆が盛り上がるなか
「ッチ」
舌打ちをしたちいさな苛立ちも上がる。
「今舌打ち聞こえた?」
「あ?気のせいだろ」
が、それに気づいた者は気のせいだと思い直ぐに忘れる。
色々と説明して話を終えるとオールマイトはポーズを取りながら『BATTLE』と書かれた白いカードを掲げる。
「早速だが、今日はコレ! 戦闘訓練! そしてそいつに伴って……こちら! 入学前に送ってもらった『個性届け』と『要望』に沿ってあつらえた戦闘服コスチューム!!」
教室の壁が迫り出して、戦闘服が入ったロッカーが現れる。これには全員のテンションが上がる。中には立ち上がって喜ぶクラスメイトもいる。
「着替えたら、順次グラウンドβに集まるんだ!」
「はーい!!」
気をつけないとな。俺はオールマイトが嫌いでも他の皆はオールマイトは憧れなんだ。気づかれ無いようにしないと、・・・大丈夫俺なら出来る。でも、さっきの舌打ちは。
全員が更衣室に移動してコスチュームに着替えるなか、一騎は合格が分かった時の発目夫婦との遣り取りを思い出す。
『不死黒君、君にお願いがあるんだが』
『お願いですか?俺に出来る事であれば』
『一騎君。コスチュームの要望が有るわよね?』
『?はい』
『俺達に君のコスチュームを作らしてくれないか?』
『え?』
『私達はアイテムライセンスだけじゃなくコスチューム製作のライセンスもあるの』
『・・・』
『ダメかな?』
『いえ、ただ驚いたんです。無個性の俺に良くしてしてくれるだけでは無く、ここまでして貰えるのに』
『不死黒君。出会ってたった2年ほどしか経ってないが、何時も妻が言っているように、俺達にとって君は息子の様なもんだ。良くするのは当然さ』
『・・・!』
『それでどうかな?』
『どうもこうも、本当は俺の方からお願いをしようと思ってました』
『!じゃあ』
『はい。お願いします!』
でもまさか俺の要望全部取り入れてくれてるとは。
服は全部アラミド繊維。タクティカルブーツにズボンは少し大きめでいくつかポケットが付いてる。上はフードの着いた半袖ジャンパーに腰までのコート。しかもコートのテール?部分は長めにして貰った。
サポートアイテムはアラミド繊維製のタクティカルグローブ。刀身を交換できる特殊日本刀とデザートイーグル(無論ゴム弾)。
しかも服は防刃は無論、耐熱、耐冷、撥水がある。これで通気性も抜群、どんな技術だよ。
早く着替え終えた一騎は一足先にグランドβに向かう。
その時、同じく早く着替え終わっていたユエは一騎を見つけると声をかけ駆け寄る。
「お兄様!」
「おう、ユエ。着替えるの早いな」
「えへへ~。どうですか~?」
後ろから抱きついたユエは一騎の前に出ると手を広げるとくるりと回り、右手で帽子のつばを掴み少し上に上げポーズを取り感想を求める。
「白の軍服。すごく似合ってるよ」
「えへへ。お兄様も格好いいですよ!」
「ありがと」
「さあ、行きましょう!」
ユエは一騎の手といつのまにかいた八百万手の手を握りグラウンドβに向かい走る。
☆
「形から入るってのも、大事なことだぜ!少年少女!そして自覚するのだ、今日から自分はヒーローであることを!」
全員自分のコスチュームに自信を持っていた。そしてクラスメイトと話し出す。
そして一騎は葉隠のコスチュームに疑問を持ち声をかける。
「なあ葉隠さん」
「なに?不死黒君! あ、敬語も要らないよ」
「分かった。それで葉隠ってコスチュームは透明なのにグローブとかもそうしなかったの?」
「え?」
「?」
「着てないよ?」
「え?」
「だからコスチューム着てないよ」
「・・・え? グローブと靴だけ?何も着てない?」
「うん」
(((((な、何も着てない!?)))))
何も着てないでその場の音が止み、全員の目線が葉隠に向く。
「は、葉隠ちゃん。ちょっとごめん」
ユエはその場の全員が恐らく思ってることを確かめるために背後から葉隠に抱きつき、体中を触る。
「本当だった」
そして何も着ていないと言うのはホントのようだった。
「とりあえず葉隠、俺のコート貸すから着てろ」
そう言うと自分の着ていたコートを葉隠に掛ける。
「え?なんで?」
「なんでって、八百万にも言えるけど、二人ともその格好でヒーローになったら、露出ヒーローとか破廉恥ヒーローって呼ばれるぞ。18禁ヒーローはもう居るんだから。
何より思春期の男子の想像力を甘く見ない方がいい」
「あ、そっか・・・」
「とりあえず葉隠はそのコートきてな」
「ありがと! でも良いの?そのコートの裾地面に着いて汚れちゃうけど」
それを聞くと一騎は葉隠の頭に手を置く。無論見えて無いがこの辺りだろと感で当てた。
そして手を置くといつもユエにしてるように優しく撫でる。
「気にするな。服なんてどうせ汚れる、それが早いか遅いかの違いだ。ヒーローコスチュームなら、尚更な。
それより葉隠のコスチュームにケチ付けるみたいでごめんな」
優しく微笑み撫でる一騎の姿にその場の全員が釘付けになり「これが兄かー!!」と殆どの者が思っていた。
「っとと。悪い、ついユエにしてる癖で」
「ううん。大丈夫」
「葉隠さぁ、今日の放課後開いてる?コスチュームで力になってくれそうな人が居るんだ。その人達が目に関する個性だから」
「ホントに!ありがとー!!」
葉隠は思いも寄らない言葉に喜び、一騎の手を掴むとぎゅっと握り、ブンブンと腕を振った。
「落ち着け」
「あう・・・」
握られてない手を葉隠の頭に置き少し撫でて大人しくさせる。そして手を離すと葉隠が手を振ったときに落ちたコートを拾い上げてもう一度着させ、前を少し締めて落ちないようにする。
「さて、そろそろ授業の説明が始まるぞ」
「う、うん」
(((流石は兄だ!!)))
(お兄様、カッコイイ!)
☆
「おっほん!まあ色々あったみたいだけど……説明を始めていくぞ!」
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!」
「いいや、もう2歩先に踏み込む!今日行うのは……屋内での対人戦闘訓練だ!」
2歩を意味したピースサインと共にオールマイトが放った一言に、生徒達から一斉に質問が飛び交う
それに対しオールマイトは皆に背を向け眉間に皺を寄せ「聖徳太子~!!」と嘆く。
それから今回の戦闘訓練の内容が語られる。カンペ見ながら・・・。
今回の戦闘訓練で行われるのは、2人1組のヒーローチームと敵チームに分かれての屋内における戦闘。
核兵器が隠された敵のアジトにヒーローが潜入するというアメリカンな状況設定が設けられており、ヒーローの勝利条件は、制限時間内に核を見つけ出して確保するか、相手チームを両方とも捕獲して無効化することのいずれか一つ。敵の勝利条件は制限時間いっぱいで核を守り切るか、相手チームを両方とも捕獲して無効化することのいずれか一つ。
「それじゃあ!皆にはクジを引いて貰うよ!!」
「適当なのですか!」
「違うぞ飯田。ヒーローは時にはその場で別の事務所の者と即興チームを作らないといけないからそれを前もって体験するんだよ」
飯田の質問に答えたのはオールマイトではなく、一騎だった。
その答えを聞いた飯田は「先を見据えた計らい!失礼しました!!」とオールマイトに頭を下げていた。
「いいよ!それじゃあチームわけ行ってみよう!」
「いや、ダメでしょ」
張り切って進めようとしたオールマイトに一騎が待ったをかける。それに不思議に思いユエが一騎に訪う。
「何でですか?お兄様」
「ユエ、このクラスは何人?」
「21人です」
「そう。じゃあさっきの説明で何人で一チーム?」
「二人で一チームです。・・・あ」
「気づいたな。一人余るんだよ。だから、一人のチームになるか何処か三人のチームになるんだよ。その説明が無い」
一騎の言葉にオールマイトは思わず「あ」と声を漏らし、全員の目がオールマイトに向き「あ?」と頸を傾げる。
「む、無論わかっていたさ!」
「その言葉を信用されると思うのですか?」
「グッ!」
「教師なんだから嘘は良くないな~」
「ウグッ!」
「カンペ読み」
「グハ!」
胸を押さえ最後には膝と手を地面に着くオールマイトに一騎は深い溜め息をつく。
「じゃあ、俺一人でやりたいです」
「いいのかい?不死黒少年」
「ええ」
「じゃあお願いするよ」
「はーい」
そのあと、チーム決めと対戦相手決めが順調に決る。
まあ、一人でやることになった一騎に爆豪が突っかかるちょっとしたトラブルも有ったが、おおかた事なきえた。
Aチーム:緑谷・麗日
Bチーム:轟・障子
Cチーム:八百万・水無月
Dチーム:飯田・爆豪
Eチーム:芦戸・青山
Fチーム:砂藤・峰田
Gチーム:耳郎・上鳴
Hチーム:蛙吹・常闇
Iチーム:葉隠・尾白
Jチーム:切島・瀬呂
Kチーム:不死黒
この様なかんじだ。そして最初の第1試合はAチーム対Dチームだ。
試合の無い人達はモニター室に移動となった。
第1試合は凄い戦いとなった。
窓から潜入した緑谷達は身長に進むが、待ち伏せしていた爆豪に奇襲を受ける。だが緑谷は咄嗟に麗日を庇いながら神がかりな回避を見せる。
だが、完全回避というわけにはいかず、顔面のマスクは半分ほど布が爆風でちぎれてしまった。
「いきなり奇襲」
「爆豪ズッケー!!奇襲なんて男らしくねぇ!!」
「何言ってんだ切島。奇襲も立派な戦法。ヒーローがヴィラン組織にいきなり突入するのも奇襲みたいなもんだ」
「なるほど! 確かに!」
「おお!スゲぇ!緑谷、達人みたいな動きで爆豪を背負い投げた!!」
お、緑谷は麗日だけでも核の部屋に行かすか。確かに爆豪は私怨で動いてるから麗日を追わずに緑谷を狙い続ける。それを考慮しての作戦か? 緑谷。
てか、爆豪は中断されない程度にぶっ叩くとか、思考が本物のヴィランのそれじゃん。
一騎が考察してる間に緑谷は爆豪から逃げる。そしてそんな緑谷を爆豪は追いかける。
「定点カメラじゃ何言ってるか分からねぇな」
「コンビで話してたよ。緑谷は麗日を先に行かして1on1に持っていき、爆豪は飯田からの連絡を無視ってとこだよ切島」
「おう、そうか。・・・なんで分かるんだ?」
「ん?あ~これこれ」
そう言って左耳にしてるインカムをトントンと叩く。
「なにそれ?ワイヤレスイヤホン?」
「んでそうなる?まあだいたい当たりだが。 これはサポートアイテムで一定の範囲内の無線機等の周波数をAIが合わせてくれて盗聴出来るアイテムなんだ」
「なにそれ!?凄い!」
説明に食いついたのは芦戸だった。
「ホントそれな!! 俺も冗談で言ったんだけどまさかホントに作るとは思わなかったよ!」
あははと笑う一騎。そんな姿をオールマイトは気まずそうに見て口を開く。
「ふ、不死黒少年。出来れば今日はそのアイテムを使わないで貰えないだろか?」
「は?」
殆どの者はモニターを見ていて気づかない。または一騎の目を見ても気づかない。が、オールマイトだけは気づいた、一騎の瞳に殺意が籠もっていたことに。
「いや、その~・・・ごめんね」
「・・・ハア~。分かりましたよ」
大きな溜め息をつくとインカムを外しケースにしまいモニターを静かにみる。
そしてちゃんとインカムをしまってくれた一騎にひとまず安心したオールマイトはまたモニターを見て爆豪の生態を理解する。
(爆豪少年は緑谷少年の会話から聞いた感じ自尊心の塊なんだろうが…肥大化しすぎているぞ…ムムム…!)
そしてその危機感は的中した、いや、してしまった。
「(それってまさか…!)爆豪少年ストップだ!殺す気か!?」
オールマイトが突然不穏な言葉を発したため、生徒達は不安を覚える。それと同時にモニターに映っていた建物の一部が盛大に爆発した。
その爆破に合わせてモニタールームも大きく揺れる。
「あのバカ! やりやがった! 屋内で大規模ブッパとか馬鹿か!」
爆豪の行為を見ていた者は中止にした方が良いと言うが、オールマイトは続行をさせる事を選択した。
それに対し一騎は八百万にユエを任せ、オールマイトの横に行き周りの人達に聞こえないように話す。
「正気か? 今は普通に動けてるが終わった後に脳に異常があったらどうする?爆豪がまたやり過ぎて緑谷が大怪我したらどうする? それでも続けるのか?」
「・・・やらせて・・・あげて欲しい」
「・・・バカが。もし緑谷が瀕死になる怪我を負ってもユエの
「な! 不死黒少年それは――」
「当然だろ。ユエは怪我を治す為の体のいい道具じゃ無い」
「・・・わ、わかった」
「・・・ッチ!バカが」
オールマイトの判断にイラつきながらも表情を元に戻し、後ろの壁側に行き背を預けモニターを見る。
その姿に疑問を浮かべるも直ぐに忘れて当然の如くユエは一騎の隣に着く。
「見ても無駄だ」
「え?」
「緑谷達が勝つよ。・・・ただし、反則勝利」
それから、緑谷は自分の階から核兵器のある階までの天井全てを、超パワーに物を言わせたアッパーカットで放った風圧でブチ抜くという奇策をして、麗日が核を回収して緑谷チームは勝利を手にする。
遂に始まったぜ!次回はユエや一騎の戦闘回になるぜ!多分。
次回「戦闘訓練②」
それでは、期待せずにお待ち下さい。
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