「おい、耳朗響香よぉ~。お前マジいい加減にしろよ? この状況で仲間の目潰しとかお前マジ状況考えろ」
「はい。ごめんなさい」
今はヤオモモッパイを見た一騎は耳朗のイヤホンジャックを目に喰らい、一時期目が見えなくなっていた。
現在は視力が戻り目の前で正座している耳朗に静かに怒っていた。
「まあ、いい。お前らは無事・・・なのか?上鳴は」
「あれは恐らくキャパオーバーですわ」
「なるほど電気容量の問題か」
「そうですわ。それより不死黒さん、上着よろしかったのですか?」
「ああ」
一騎は目潰しをされてからも上着を脱ぎ八百万にかぶせていたの。
「不死黒は状況どうなってるか分る?」
「分らん。けど奴らの目的は分る」
「目的?なに」
「オールマイトを殺すことだって」
「「!?」」
驚く二人に一騎は仕入れた情報を話す。すると二人は顔を青ざめる。
「じゃあ俺はそろそろ行くわ」
手を振り噴水広場の方に向かおうとする一騎の手を八百万が握って引き留める。
それに対して一騎は首を傾げて疑問を浮かべる。
「行くって何処に行きますの」
「脳無の所」
掴まれていない方の手で八百万の手を離させるとまた噴水の方を見る。その後ろ姿に耳朗が声をかける。
「何でよ!脳無はオールマイトをも殺せるんでしょ!なんでそんな所に」
「だからだよ」
「どういう事ですの?」
「エリクはいった。俺なら脳無に勝てると。だからだ。じゃあな」
言い終わると走り出す。途中で「ヴィランが居るから地中に音撃しとけ」と言ってから崖を飛び降りる。
「何考えてんのよアイツは」
「とりあえず、耳朗さん、地中に攻撃を」
「分った。・・・・あ、本当に居た」
地中に隠れていたヴィランは耳朗の攻撃で呆気なく気絶した。
☆
全力で相澤先生の戦闘場所に向かってるけど可笑しい。静か過ぎる。聴覚に意識を込めてもヴィランの声が聞こえない。
全滅させた?いや、楽観過的ぎる。脳無が動いたと考えるべきか。もし、生け捕りが無理なら殺して眠らせる!・・・ッ!!
「何やってんだ彼奴ら!!」
一騎はイラついたように吐き捨てる。
水難ゾーンの縁の水中から緑谷達は相澤の戦闘の一部始終を見ていた。その後、黒霧に何か報告を受けた後に癇癪を起こすも落ち着き、最後に見ていた緑谷達に瞬く間に迫る。
「なんで動かないんだ彼奴らは!」
そうはいうが、死柄木の動きが見えてるのは一騎のみで緑谷、蛙吹、峰田の三人は全く見えて無いのだ
だから一騎は即座に銃の標準を死柄木の進路場に合わせて発砲する。
「ッチ」
死柄木は即座に止ると後ろに跳び回避する。そして一騎はなんとか緑谷達の前に立ち、庇うことに成功する。
「不死黒君!」
「不死黒ちゃん!」
「ふしぐろぉぉぉお!!」
三人は不死黒の登場に喜び峰田は涙を流していた。だが一騎は三人よりその奥にある水に浮いているヴィランの固まりを見る。
「お前ら何してる。チンピラ風情に通用したからって調子に乗ったか! チンピラ風情に通用したからって本物のヴィランに通用する訳じゃ無い!」
その言葉に三人は暗い顔をする。
「お前らとっとと出て避難しろ。足手まとい」
それだけ言うと死柄木に向き直り歩き出す。
「ヒーローが躊躇無く撃つなよ」
「は!銃みたいなの使う奴なんて沢山いんだろ。なに甘いこと言ってんだ?」
鼻で笑い言い放つと一騎は脳無に組み伏されてる相澤に目を向け笑みを浮かべる。
「相澤先生、もう少し待っていて下さい。絶対に助けますので」
「だ・・・・めだ。・・・・逃げ・・・・・ろ」
「先生を助けたら」
途切れ途切れに言う相澤に対して優しい声で拒否する。そして一騎のその態度を死柄木は気に入らなかった。
「おいおい。偉く余裕だな~」
「お前強く無いだろ」
「は?お前イラつくな~やれ脳無」
脳無は目にもとまらない速さで一騎に近づき、その豪腕を振り下ろす。
「二虎流 橾流ノ型・流刃」
しかし一騎は生まれつきか、はたまた
振り下ろされた豪腕を手の甲で廻し受けの要領を使い弾くようにして逸らす。
「はあ?」
「ん?何驚いてる」
「巫山戯んなよ。脳無!!何してる、とっととその男を殺せ!」
死柄木の言葉に応えるように地面に突き刺さった腕を引き抜き一騎に迫り拳を振るう。
だがその悉くを一騎は余裕で逸らしていく。
「なんで攻撃が全く効かねぇんだよ!!」
「効かないよ?当たってないもん。脳無はパワーはよし、スピードは微妙、技術はクソ。芯の無い拳なんて簡単に攻撃の軌道を逸らす事が出来る。てかさっきまで戦ってたエリクが強すぎたんだよ」
「はあ!お前やっぱりアイツが言ってた奴か!ああクソが!とっとと死ねよ!!」
「やなこった。橾流ノ型」
右の拳を手の平で受け止めるようにして力の進行方向を変える。それにより、脳無の打撃力をそのまま返し関節を破壊する。
「
脳無の右関節は完全に壊れ明後日の方向を向いていた。痛覚が無いのかなにが起きたのか分らず、自分の右腕をみて首を傾げる脳無。
「はあ? おいおいなんだよ!!なんで脳無の腕が折られてんだよ!!ああ!ああ”!!」
癇癪を起こし血が滲むほど自分の首を掻きむしる。そんな死柄木を黒霧は落ち着かせるが、それを気にせず一騎は二人に接近する。
「シネ!!」
「バカじゃないの」
迫り来た一騎に死柄木は触れようと両手を前に突き出すが一騎は両手首を掴み手前に引き寄せバランスを崩させると顎に膝蹴りを入れる。
「ガフ!」
「まだまだ!」
そのままがら空きになった死柄木の鳩尾に回し蹴りを放つ。それは一騎がエリクにやられた奴のパクリだった。
「あー痛ー。なんなんだよマジで」
「只のヒーロー科の生徒さ。おっと、もう怪我治ってる」
死柄木の方を見て喋っていた一騎を背後から脳無が殴り掛かるが、一撃を避けた後は少し後退してまた拳の雨を逸らし続ける。
「火天ノ型・幽歩」
瞬時に脳無の死角に回り込み一撃入れる。
「おら!・・・って!何これ、分厚いゴムタイヤ殴った感覚だ」
「それはショック吸収だな。その脳無はオールマイトの100%の攻撃にも耐えられる、最強のサウンドバックだ!」
「100!?それは聞いて無いなァ~。・・・5秒!!」
やり過ごしながら叫ぶ5秒になんの意味があるのか全員分からなかったが、脳無の両腕を逸らすと胸元に手を置く。
「破ッ!!」
腰を落とし叫ぶと脳無は後方に吹き飛ぶ。その現象に死柄木達は唖然としてしまう。
一騎が言った5秒はイレイザーに向けて放った言葉で有り、5秒後に個性を消せという意味だった。そして一騎は個性の無い状態の脳無に発勁を撃ち込んだ。
脳無はゆらゆらと立ち上がるも口から大量に血を吐く。それだけで内臓を損傷している事が容易に分る。
「シッ!」
皆が唖然とする中一騎だけは行動を起こす。急いで横たわる相澤の元まで行き担ぐと直ぐさま緑谷達の元まで戻る。
「スミマセン、無理させて」
「かまわん。それより銃は脳無には効かん」
「分りました。あとは俺に任せて休んでいて下さい。・・・緑谷、蛙吹、峰田。お前ら何時まで水に浸かってるつもりだよ・・・まあいい。先生連れて逃げろ」
「不死黒君はどうするの!?」
「あれらの足止め」
「一人では危険だわ!」
「そうだよ!」
「じゃあなに?個性ある癖に見ているだけでの足手まといの君達が戦う? いまお前らが出来る事は先生連れて逃げること」
蛙吹と緑谷が止めるが一騎の言葉に黙り込む。それを見て一騎は相澤を地面に置き死柄木の方に足を数歩進め立ち止まる。
「酷いこと言ったけど所詮は適材適所だ。それになお前ら・・・・・だいじょうブイ!俺、これでも強いから」
振り返りざまに一騎は指でVサインを作り笑顔を見せる。その姿に緑谷達は何故か一騎の姿をオールマイトに重ねてしまう。そして一騎なら大丈夫と思ってしまった。
「さあ続きをしようか?」
「ああ"お前マジでなんなんだよ!! チートがァ”」
「チーター呼ばわりか。でも残念だな~俺は個性なんて持ってないよ。ただのノーマルキャラだ」
「はあ?無個性・・・だと。じゃあ脳無は無個性野郎にやられたってのか!!ふっざけんな!!」
自分達が無個性にいいようにされていた事実に死柄木は苛つき癇癪を起こし喉をひっかく。そして脳無に叫ぶ。
「脳無!そのガキを殺せぇ!!」
怪我が治った脳無は直ぐさま一騎に迫る。
「さあ来いよ! 流水岩砕拳!!」
そして振るわれる脳無の攻撃を流水の如き動きで逸らして行く。
「キヒ!良いねぇ~」
エリクはUSJの入り口の階段に腰掛けて一騎の戦いを見下ろしていた。その後ろでは瀬呂、砂藤、障子が戦闘態勢を取りエリクを睨んでいた。
「そう睨むな。お前ら雑魚には興味ない」
「なら、お前の目的はなんだ!」
「五月蠅いなぁ~」ギロ
瀬呂の問いにエリクは睨みながら答えると三人はおののき数歩後ろに下がる。
「ハ!この程度でビビるのかよ。前ら本当にヒーロー志望か? 一騎はそこそこの殺気をぶつけても怯まず挑みに来たのに。てかこっちが殺されそうになったけどな!あっははは」
嬉しそうに楽しそうに笑う。そして他の場所に飛ばされた生徒が一騎達の所に集まり始めているのを見ると更に嬉しそうに口角を上げて笑みを浮かべる。
「さぁ一騎。足手まといを抱えて何処までやる?」
☆
「なんなんだよアイツ!・・・ん?」
イラつきだした死柄木の目線の先には一丁の銃が落ちていた。それは相澤が一騎から借りていたいた銃。
それを拾い残弾を確認するとヴィランに相応しくニヤつく。そしてゆっくりと標準を合わせる。
「あ?」
それに一騎も気づく。脳無を相手しながら中核である死柄木と黒霧の動向にも注意していたから気づいた。が、有一の疑問が銃口が自分ではなく他に向いていることだった。そして銃口の先を目で追うとそこには切島と爆豪が居た。
「!」
驚いて死柄木をみると目が合った。
「さあ、どうするヒーロー」
死柄木が一騎にも見えるように呟く。
「クソ!」
悪態をつくと脳無の攻撃に合わせ、橾流ノ型・柳で脳無のバランスを崩させ縮地で切島接近すると、速度を落とさずに切島を蹴り飛ばし爆豪にぶつけ二人を吹き飛ばす。
だがその代わりに、右膝横を撃たれる。無論ゴム弾だが、それでも当たれば痛いではすまない。
「いっつ!関節ズレた! おいバカ共!!足手まとっ!アッぶな!」
切島達に文句言おうとした一騎は危険を感じ上体を思いっきり反らすとその場に脳無の拳が通る。そしてこの時一騎は周囲に他のクラスメイトが集まってる事に気づき顔を顰める。
何故ならそこには避難したと思った緑谷までも居たからだ。
「ック! あーもう!面倒くさいな!」
咄嗟に銃を取り出すと死柄木の銃を撃ち遠くに飛ばす。が、また来た脳無の一撃を避ける際に銃を壊される。その瞬間に一騎の目付きが鋭くなる。
「オッラ!」
突如一騎は脳無の振るった拳を殴る。その時、死柄木は勝ったと思うがそうはなら無かった。なんと一騎は脳無の拳を弾いたのだ。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
しかも一度や二度では無く何度も何度も脳無の拳を弾いて退けるのだ。
「火天ノ型・幽歩」
またも一瞬で死角に回り込むと山岳で拾ったナイフ2本を脳無の股関節に突き刺す。そしてバランスを崩しながらも振るわれた右拳を掴む。
「橾流ノ型・
一騎が作ったオリジナル技。相手の力で関節を破壊する『絡み』の一歩手前、相手の力を使い相手の関節を外す技。これにより脳無の右側の肘と肩は完全に外された。
そして脳無が困惑している内に左手首を両手で掴むと振り回し最後はハンマー投げのように土砂ゾーンにまで投げ飛ばした。
「はあ?はああああ!?巫山戯んな巫山戯んな巫山戯んな!! 脳無だぞ!!対オールマイトの兵器だぞ!ああああ脳無!何してる!!」
「死柄木弔! ここは撤退を!!」
「させねえよ」
どこからともなくテーザー銃を取り出し黒霧の首元の防具に撃つ。だがこれは普通のテーザー銃ではなかった。
「な! クっう・・・か、体に力が」
体に力が入らなくなり力無く倒れる黒霧は自身の体に何が起きたのか分らず困惑する。
「人間はな、あるいみ精密機械なんだよ、常に微弱な電気が流れてる。そしてこの銃はそれと同じ電圧を流すことが出来る。(調整はアミがしてくれるが。)
そしてその電圧は只の電圧じゃ無く人間の行動を阻害する。無論個性を使うにも電気信号が送られる。まあなにが言いたいかと言うと事実上ソイツは無力化されたということだ。(これ今日はもう使えないが)」
説明しながら死柄木に近づく。そのときに刀に手を掛け鍔を左に回す。
一騎の刀はサポートアイテムであり、基本は刃の無い刀身だが鍔を左に回すと刃のある刀身に切り替わるのだ。
「何してる脳無!早く来い!」
「来るわけ無いじゃん」
脳無を呼ぶ死柄木に一騎が答える。それに死柄木が睨むと一騎は口角を上げ口を開く。
「無理だよ。脳無の超再生はあれだろ、明らか怪我だと分るやつだけの再生だろ? だから最初に両股関節にナイフを突き刺し足を動かなくさせ、絡取りを使った。
絡取りは簡単に言うと関節を外す技だ、これで後は遠くに投げ飛ばせば脳無は動けない。お前の
そして刀を抜き、座り込んでしまった死柄木に切っ先を向ける。
「これで詰み、お前らの負けだ」
「なんなんだよお前は!!なんで脳無と打ち合えんだよ!!」
「それは簡単だ。パンチは腕が伸びきった時に威力が1番高くなる。だから俺はその状態でまだ腕が伸びきってない脳無の拳を打ち跳ね返しただけだ」
「・・・はあ!?そんな事出来る訳無いだろ!!」
「出来てたろ?男は努力と度胸があれば大抵は何でも出来る」
「チートが・・・いや、バグ・・・そうこのバグ野郎が!!」
「言いたい事は終わったか?」
冷たい目で死柄木を見下ろす。
「それじゃあまず、お前は拘束するがその手は危険だから切り落とす」
一騎は自分が残酷なことをしようとしてることは理解している。でも、するしかない。相澤に頼まれた上に。
手加減や油断して誰かが死ぬなんて嫌だった。無個性の自分を快く受け入れてくれたクラスメイトを守りたかった。
大丈夫、演技は大の得意だから。と、自分に言い聞かせて冷酷に徹する。例えクラスメイトに嫌われることになっても。
「大丈夫。ちゃんと手当をすればまたくっつく」
そう言って刀を振り上げ、振り下ろそうとする
「お待ち下さい不死黒さん!!」
がそこで八百万が待ったを掛ける。
「ナニ?」
普段とは違う鋭い目付きと低く優しさを感じない声と口調で話す一騎に一瞬驚くもすぐに胸を張り口を開く。
「それ以上はやり過ぎに、過剰防衛になりますわ」
「は?なるわけ無いだろ。此奴らは俺達を殺しに来たんだ、なら俺達に殺されても文句は言えない。それに俺は殺すんじゃ無くて手を切り落とすだけだ」
「それがいけませんわ!」
「何故だ?此奴は手で触れた物を崩壊させる。つまり手を切り落とせば完全に無力化出来る。だって此奴や爆豪、麗日の様に手で個性を使う者はその手を落とせばなにも出来なくなる。1番の安全策だ」
「いいえ。拘束具ならわたくしが創造しますわ!」
「それで?もし、万が一此奴に逃げられ被害が出ればお前は責任取れるのか?」
「それには心配及びませんわ。その方は捕まりプロである先生方に連れられタルタロスに収監されますわ!そうすれば二度と出てくることはありません」
「・・・」
「不死黒さん。私たちはヒーローです!そのように無闇に傷付けるのはいけませんわ!」
「違う俺たちは卵だ」
「いいえ違います! 訓練の時にオールマイト先生も言っていました! 『自覚しろ! 君たちは今日からヒーローなんだと!』」
「・・・ッチ! ヒーロー?何処がだ?お前らが一体何をした?脳無との戦いの時に動きもせず邪魔な位置で見ていたくせに。決着が付いた頃に口を挟む?巫山戯てるのか?」
一騎はその場に集まっていたクラスメイト全員を睨む。
「そ、それに付いては申し訳ありませんわ。確かに私たちは襲ってきた輩を倒せて調子に乗り、ここに来て私たち全員不死黒さんの足手まといになりました」
そこまで言うとそれぞれ暗い顔をして爆豪は舌打ちをして轟も怖い顔をする。そして八百万は下ろしていた顔を上げ口を開く。
「ですが!! 今はそれはそれ、これはこれと言わせて頂きますわ」
「ッチ!」
その言葉の後にもう一度クラスメイトを見ると緑谷を初めほぼ全員が八百万同じ意見をするような目をしていた。特に緑谷が1番強かった。
そしてもう一度八百万を睨むと舌打ちをして1本のナイフを自身と八百万の位置に突き刺す。
「そのナイフよりこっち側は戦争の域。来るなら油断せず命を賭けろ。自身の身は自身で守れよ!」
「分りましたわ」
そう言うと八百万はナイフの位置を越え一騎の元まで来る。そうすると一騎は気まずそうに目をそらし刀を納めナイフの回収に向かう。
そして八百万は色々と拘束具を作り戦意喪失した死柄木を拘束しようとする。
「ナイフは抜いた関節ははめた。さあ脳無、お前の主人を助けろ」
目的を果たし戻って来たハンターは目の前で倒れてる脳無をまた動けるようにすると、少し喉を押さえ声を調整するように口を開く。。
「脳無、俺を助けろ!」
その声は正に死柄木そのものだった。
これにより脳無は勢いよく起き上がると地面を砕く勢いで駆け出す。
――ドカーン!!
全員が音の方を見る。だが何が起きたのか理解が出来なかったが、一騎だけが唯一視認できた。それは脳無が猛スピードで八百万に迫っていたのだ!
「クソッタレ!」
一騎は急いで八百万の元に行くと、八百万を耳朗の方に投げ飛ばし自分も避けようとしたが、ここに来て撃たれた右足に激痛が走り動けないと悟ると刀を地面に刺し脳無の振るわれた拳を受け止める。
――パリーン!
「・・・あ、死ぬ」
しかし振るわれた脳無の拳は尋常ではなかった。
『握力 × 体重 × スピード = 破 壊 力 ッッ!!!』
某ヤクザの理論が当てはまった瞬間だった。そして刀が簡単に折られたことで一騎は死を確信した。
「は・・・え?な、にが」
「お、おい?」
その場に居た者は何が起きたのか気づかなかった。
全部理解出来たのは数秒後、突如として土砂ゾーンが爆発音を上げたと暴風・大雨ゾーンの界壁が崩壊、そして八百万が立ってた位置に脳無が立っている事だった。
「や、ヤオモモ!!」
「・・・は、はい」
「え!?は!!」
耳朗は飛ばされたのが八百万と思い名を叫ぶが、自分の横から返事が聞こえたことに驚き見るとそこには座り込んでる八百万が居た。
「どうやって避けたの!」
「わ、分りませんわ・・・!」
全員八百万の生存に安心するが、では誰が飛ばされかと思い煙が晴れた方を見るとそこには一騎の下半身が見えた。
「は、はは!良くやった脳無!良く殺した!」
脳無の登場に死柄木は嬉しそうに立ち上がる。
全員が絶望する。オールマイトを殺せる兵器が復活し、唯一対抗出来る一騎が死んだ事に。
「あ、あんな化け物にどうやって相手しろって」
「お、終わりだ」
「クソが」
「・・・あ、あああ!」
八百万は自身の手元に折れた刀の切っ先が飛んで来た事で自身の判断が間違っていた、自分の所為でクラスメイトが親友の兄が死んだと思い途端に涙を流し悲鳴のような声を漏らす。
「さあ脳無!第2ランドだ。とりあえずあの女を殺せ」
死柄木は八百万に指を差す。それに従い脳無も駆け出す。
(ああ、わたくしは此所で死ぬんですのね。不死黒さん、あの世でお会いできましたら、どのような贖罪でもいたしますわ)
八百万は迫り来る脳無がスローに見えそれが死の前兆だと理解をして目を瞑る。
「・・・はあ?な、なんだよ」
だがいつまで経っても攻撃が来ず、遂には死柄木の驚愕の声を聞き目を開けると脳無の拳が目の前で止っていた。そして脳無や死柄木が見ているのが自分では無いと理解し目線を追うと。
「・・・」
一騎が立っていた。
「なんで死んで無いんだよ!いい加減死ねよ!!・・・あ?」
「ッヒ!」
死柄木が怒鳴る。そして一騎が顔を上げると誰かが悲鳴を上げる。
当然だ。いまの一騎は全身血まみれなに、右目側に折れた刀の破片が突き刺さり口を少し開くだけで大量の血がドボドボと零れている状態だった。
「の、脳無!速くあのバグ野郎を殺せ!!・・・何してる脳無!!」
その命令に脳無は一瞬動かなかったが、もう一度言われたことで一気に距離を詰め拳を振るうがその拳は空振りする。何故なら一騎は来たと同時にジャンプをして脳無を踏み台にして八百万の下まで跳んだのだから。
「ふ、不死黒さん・・・!」
八百万は一騎の状態を間近で見て更に理解した。右眼球は無論、眼窩にまで破片が刺さった事で完全に使い物にならなくなっていた。
左目は虚ろで涙血を流し口は今も血が流れていた。
「あ、ああの・・・あ」
声を掛けるも何も答えず一騎は折れた切っ先の方を掴むとゆらゆらと体を起こし脳無を見る。
「「・・・」」
一騎と脳無は無言で見つめ合うと一瞬で二人の姿は掻き消えた。
「・・・はあ?」
そして次に現れたのは中間位置だった。だがその現れ方は脳無が空中で仰向けになり一騎がその上に乗り折れた刀2本を脳無の脳に突き刺していた。
次回「USJ④」