無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第22話:その後

 

 

 ~???~

 

 

 USJ襲撃から翌日、エリクは様々な医療器具が置かれ顔や首に生命維持の為のチューブが何本も繋がれている男に会っていた。

 

「やはりダメだったか。残念だねー」

 

 その男の言葉を鼻で笑うとエリクは口を開く。

 

「嘘おっしゃい。あんな考え無しのガキが襲撃を成功させるとか思って無いだろ? てか元々失敗して成長させるのが目的。何人か殺せたらめっけもん。てな感じだろ、オール・フォー・ワン」

 

 目的を言い当てられるとオール・フォー・ワンは不気味に笑う。

 

「やはり良いね~。君も君の個性も欲しくなるね」

「やめろ気持ち悪い。それともまた、戦争を起こすか?」

「冗談さ。今の僕は見ての通りだからね。争えば確実に僕が死ぬよ」

「そりゃそうだ」

 

 それからもいくつか話してから話題は一騎に移る。

 

「あの子はどうだい?」

「わざと喰らったとはいえ、肋骨のいくつか砕かれ内臓もダメになった。それほどの攻撃を放てるようには成長してるよ、一騎は」

「それは良かった。あの子は僕の最後の○○○だからね。成長は嬉しいものだね~」

「・・・いままで何も手を差し出していなかったくせに」

「だって君がいるだろ?」

「まあね。一騎を成長させるのは俺だからな」

「いやー、やっぱり欲しくなっちゃうね。あの子」

 

 オール・フォー・ワンが笑顔でそう言った瞬間にエリクはとんでもないほどの殺気をぶつける。

 

「おい、確かに一騎はお前の細胞に100%合う子だ。だが、俺の許可無く一騎を乗っ取るようなことしてみろ。あのクソガキ諸共お前も殺すぞ?」

 

 最後の言葉で更に殺気が高まり、近くの小物がガタガタと動き出しガラスには亀裂が入る。

 

(帰りたい)

 

 この場に出入り口として黒霧が居るが、彼はエリクの凄まじい殺気を肌で体験して今すぐにでもこの場から逃げ出したいと思っていた。

 

「分っているよ。さっきもいったが今の僕はこの通りだ」

 

 決して怯えること無く両手を広げ今の自分の姿を見せるように言ってからオール・フォー・ワンは「それに」と言って言葉を続ける。

 

「僕は僕で弔を育てる必要があるからね」

「そうだな」

 

 殺気をおさめ、近くに置かれている紅茶を一口飲む。それを見たオール・フォー・ワンは安堵し、口を開く。

 

「それじゃあ、妹のユエちゃんに手を出したら?」

「・・・っ」

 

 エリクはその言葉にピクリと眉間を動かし紅茶をテーブルに置く。

 

「出しても良いけど、その時はエリザベートがガチギレするよ?怒った女ほど怖い物はない。それはアンタも知ってるだろ?」

「そうだったね。・・・結局は手出しをしたらダメなんだね」

「別にダメとは言ってない。手を出せば殺すと言ってるだけ」

 

 残念そうにするオール・フォー・ワンにエリクは目の笑ってない笑みを浮かべる。

 

「さてと」

「もう帰るのかい?」

「ああ。そろそろ一騎が目覚める頃だしな」

「君も君で大変だね」

「俺は俺の野望の為さ。それじゃ、気が向いたらまた協力するよ()()()()()

「ははは。君にそう呼ばれるのは何年ぶりだろうね」

「さあ。少なくとも数十年は経ってんじゃねえの?それじゃ」

 

 そういうとエリクは黒霧にゲートを開いて貰い帰る。

 それを見届けるとオール・フォー・ワンはクツクツと笑う。

 

「やはり欲しくなるね。不死黒君」

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~

 

 

 

 

 雄英高校から近い大型のセントラル病院、その一室にユエ、根津、相澤、13号、オールマイトが居た。

 そしてその病室は一騎が入院している病室でもある。

 

 

「なんでですか。なんで先生達はもう目覚めてるのにお兄様はまだ目覚めないんですか」

 

 眠っている一騎の右手を両手で握りながらユエは相澤達に問うが、誰も答えられない。

 

「なんでお兄様が先生達以上の重傷を負っていたんですか?なんでオールマイトがいながらお兄様があんな怪我をしていたんですか!貴方達ヒーローでしょ!あの場に居たのになんで!!」

 

 一騎はUSJで瀕死の重傷を負っていたがユエのお陰で()()完治しているが既に丸1日目を覚まさない状態だった。

 それどころかユエは一騎が病院に運ばれてからズッと治癒の個性を一騎に施しているのに目覚めないから更に不安が高鳴り怒鳴ってしまう。

 

「それは・・・」

 

 だが、誰も答えられない。相澤と13号は戦ったが黒霧と脳無にやられたけど、オールマイトは襲撃時には学校に居たが活動限界で動けなかったなどと今の飽和社会を揺るがすような情報を言えなかった。

 その為に四人は悲痛な表情を浮かべることしか出来なかった。

 

「ごめんなさい。ヒーローだって人間、神じゃないから全員守れるわけじゃないのは分ってます。でも、・・・・・・でも」

 

 涙を流しながらも言おうとするがうまく言えずにいたときだった。ユエが握っていた手に力が入る。

 

「っ! お兄様!」

「うっ、うう」

 

 ユエの声に答えるかのように一騎が目を覚ます。

 

「こ、ここは・・・」

「不死黒少年!?」

 

 目を覚まし起き上がった一騎は右手を握るユエを見た後に目の前に立つ心配している表情を浮かべる相澤達を見て段々とUSJでの事を思い出す。

 

「・・・!? 先生!! 八百万は!? 皆は無事ですか!?誰も怪我をうっうう」

「お兄様!?」

 

 いきなり動いたのが悪かったのか胸が痛み抑える。それに心配したユエが落ち着かせようとした時だった。一騎がユエの方を向くと頭や顔、体を触り、何かを確かめる。

 

「ユエ!? お前は何もないか?誰かに襲われてないか?怪我してないか?」

「お兄様落ち着いて下さい。大丈夫ですよ、お兄様が一番の怪我で他のクラスメイトはみんなリカバリーガールが治癒しました」

「そうか・・・・よかった。相澤先生そして13号先生も無事で良かった」

 

 死者が出てないことを知り安堵する。

 

「・・・俺の怪我はユエが治してくれたのか?」

「その、はい。そうです」

「・・・そっか、ありがと」

 

 謎の間のあとに優しくユエの頭を撫でる一騎の元に13号が駆け寄り一騎の左手を握る。

 

「不死黒君、無事で良かったのは此方の台詞です! 目覚めてくれて良かったですよ」

 

 その言葉に一騎は申し訳なさそうな表情を浮かべると質問する。

 

「その声は13号先生ですよね?」

 

 今更だが13号はコスチュームが壊れたために着ていない素顔の状態だった。故に一騎は声だけで13号と認識した。

 

「そうですよ」

「ごめんなさい。素顔をみるのは初めてですので」

「いえいえ!気にしないでください」

 

 優しく13号に言われた後は一騎は深く頭を下げる。

 

「ごめんなさい、13号先生。最初黒霧が現れたとき先生が後手に回ったのは切島とばか、爆豪が独断先行した所為です。そしてそれは二人をちゃんと止められなかった俺の責任です。

 相澤先生にもクラスを任せられたのに。スミマセン」

 

 一騎の謝罪を聞いて13号は今にも泣き出しそうな表情を浮かべるが、直ぐに元に戻すと一騎に頭を上げるように促す。

 

「謝らないで下さい。謝るなら僕達の方です」

「そうだ不死黒。お前は何一つ謝ることはない。あの事件で一番の成果を出したのはお前だ。胸を張って誇れ」

「はは。それは過大評価のお世辞ですかね?でも嬉しいです」

 

 自身を過小評価する一騎に内心溜め息をつく相澤。

 そして相澤の肩に乗っていた根津がベットの上に乗り移ると一騎の元に近づく。

 

「過大評価じゃなくまっとうな評価なのさ! それにさっき13号君が言ったけど謝るのは僕達の方さ」

「不死黒少年」

 

 そしてここまでずっと空気だったオールマイトが口を開く。

 

「すまなかった。もっと私が早く来ていれば」

「別に良いですよ。だってお「ちょ!ちょっと待って下さい」どうしたユエ」

「オールマイトは最初っから居たんじゃ無いんですか?」

「居なかったよ」

「えっえぇー」

 

 オールマイトが居なかった事を知ったユエは一騎が瀕死になった理由に納得する。

 納得はするが、それと同時に怒りの感情が湧き上がりオールマイトを睨む。

 

「今回の襲撃は彼方が雄英教師になった所為で起きたのに!狙った時間だって彼方が担当科目でしょ!?なんで居ないのよ!!ヒーロー業で教師の責務を全うできないのなら教師にならないでよ!!」

 

 ユエは怒鳴る。言い方はともかく言ってる事は正しかった。授業があるにもかかわらずオールマイトは事件があるとそこに駆け付け、隣町にも行って使用制限の三時間を使い切ったのだ。

 その為にオールマイトは何一つ言い返せない。そしてユエの言い分に根津達もオールマイトを庇うことが出来なかった。

 

「お兄様や相澤先生に13号先生が大けがしたのだってあなたのせ「ユエ」 あう、お兄様?」

 

 一騎はまだオールマイトに言おうとしたユエの頭に手を置き止める。

 

「仕方無いよユエ。オールマイトは教師の前にヒーローなんだから」

 

 頭を撫で落ち着かせると「それに」と言ってから言葉を続ける。

 

「助けてと言って、本当に助けに来てくれるヒーローなんてテレビか漫画だけで、実際には居ないんだから」

「・・・・お兄様」

 

 その言葉はオールマイトに向けて言った言葉だったが、流れ弾として相澤達三人にぶち当たる。が、その事に一騎は気づかない。

 

「そう言えばユエはあの場に居なかったのになんでヴィランの目的知ってるの?」

「学校に向かってる途中に私の前にも現れたんです」

「ユエ!?」

 

 ヴィランがユエの前にも現れたと知った一騎は驚くが、ユエは両手を左右に振って安心させようとする。

 

「安心して下さい。襲われたとかはないので」

 

 

 ~ユエの回想~

 

「よお!」

「誰ですか?」

「俺の名はハンター。ヴィランだ」

「・・・ッ」

「そう警戒すんな。俺はお前も知ってるエリクサー、エリクの仲間だ」

「あの男の?」

「そう。そして今な、雄英にヴィランが襲撃している。そしてお前の愛しのお兄様はオールマイト殺す用の兵器を相手にしている。だから急げよ?お前の個性(治癒)がないと・・・死ぬぞ」

「っ! お兄様!!」

 

 ~回想終了~

 

 

「てな感じです」

「待って。なんでエリクも知ってるの?」

「あ、実は――」

 

 そしてユエが話したのは、オールマイトが一騎に無個性ではヒーロー成れないと言った日と一騎がオールマイトを憎んだ面接の日にエリクが現れて全部知ったと語った。

 

「マジか・・・」

「はい。だから私もオールマイトが大っ嫌いです!初めての授業で舌打ちしてしまう程には!」ニコ

 

 満面の笑みで告げるユエにオールマイトはますますいたたまれなくなる。

 

「あはは。あ、そうだ。クラスの皆が無事って事は脳無ってどうなったんですか? 俺が瀕死になって直ぐにオールマイトが来たんですか?」

 

 その言葉に全員暗い顔をする。その意味が分らずきょとんとした顔を浮かべる一騎に相澤が話す。

 

「不死黒、覚えてないのか?」

「どう言う意味ですか? 俺、脳無に殴り飛ばされてからの記憶が無くて」

「そうか、生徒達の話ではお前が脳無を殺したと」

 

 あの相澤が気まずそな顔をして言うのを見て一騎は両手で顔を押さえて深い溜め息をつく。

 

「お兄様!?」

「いや、大丈夫だ。てかやっぱり俺は脳無を殺したのか」

「やっぱり?」

「エリクから聞いた。脳無は・・・人の遺体を使って作っていると」

 

「「「「「!?!?!?!?」」」」

 

「だから俺は脳無を生け捕り。それが出来ないのなら殺して休ませてやろうと思ってたんだ」

 

 まさかホントに殺したとはっと呟く一騎に相澤達は一騎の優しさを知りヴィラン連合の危険度の見直しが必要だと考える。

 

「相澤先生」

「なんだ?」

「俺は雄英退学ですかね?」

「・・・は?なんでそうなる」

 

 予想しない質問に相澤は思わず思考が停止しかける。

 

「俺は脳無が死体から作った人形だって知ってるけど皆は俺が人殺しだと思ったでしょ。だから」

「いや、除籍なんてさせない。お前を除籍させるなんて非合理的だ。それにお前を除籍させるなら俺が全責任を取ってヒーローも教師も辞職する」

「なっ!? 先生がいなくなったら誰がA組の面倒をみるんですか!?絶対にダメですよ!!」

「だったらお前も間違っても今回の事件で責任を感じて退学するなんて考えるなよ」

「・・・はい」

 

 あの合理性主義の相澤にここまで言われ何も言えなくなり黙り込む。だが、それと同時に何故か自分の胸の中に嬉しさが湧き上がることに困惑する。

 

(見込みがない者に半端に夢を追わせる事ほど残酷なものはない。だが、不死黒は個性関係無くアイツと同じで根っからのヒーロー。なら俺がするべき事は今回の事件でマスコミがこいつを嗅ぎつけたときは何が有っても守る事だ)

 

 相澤は本気で一騎にヒーローに成って欲しいと思っていた。

 

「あのースミマセン」

 

 そんなとき、一騎の病室に一人の看護師が訪れる。

 

「そろそろ不死黒さんの検査って!? 目覚めてる!?!? す、直ぐに先生を呼んできます!!!」

 

 看護師は一騎が目覚めてるのをみて急いで医師を呼びに行く。その姿を見て根津は「目覚めた事言うの完全に忘れていたね!」と言って笑い、一騎は苦笑いを浮かべる。

 

「それじゃあ不死黒君。医者が来る前に大事な事を話すよ」

「はい」

「まず、今日は緊急の休校になったのさ。そして明日、明後日は休日な為に次の登校は来週になるのさ!」

「分りました。それとすみません。お願いが三つほどあるんですけど良いですか?」

「うん!僕達に出来る事ならなんでも言って欲しいのさ!」

「では――」

 

 

 一騎のするお願いは、三つ。

 

 一つ、退院は明日の朝に出来る様にする事。

 二つ、自分が目覚めた事はクラスメイトには内緒。無論面会も謝絶。

 三つ、HRの時にクラスの皆に話したいことがあるから時間を貰う。

 

 

 この三つだった。

 

「それと最後に、オールマイト」

「な、何かな?」

「あんた、自分の言った言葉に責任取らないんだから余計な事を言わないで下さい」

「どう言うことかな?」

「あの時、アイツらが分不相応な戦場に足を踏み入れたのはアンタが最初の授業で今日からヒーローなんだなんて言った所為ですよ」

「っ!」

「俺が居なかったらアイツらは死んでた。俺達はヒーローじゃなく、まだ学生。しかも一年だ。まだ親鳥から産み落とされた卵でしか無い。何だったらまだ湿っけのある卵だ。

 それなのにアイツらが戦場に来たのはアンタの言葉の所為。アレはただの蛮勇だ。それをさせる程、アンタの言葉と立場は大きいんです。もう少し考えて下さい」

 

「す、すまなかった」

 

 

 ~~~~~~~~

 

 

 

 

 あれから教師陣は帰り一騎が検査から戻って来て午後二時。現在は

 

「お兄様お兄様お兄様~♡」

 

 ユエがベットに潜り込み一騎の右腕に抱きつきべったりになっていた。

 

「ユエ、引っ付きすぎじゃない?」

「そんな事ありません!! 私お兄様の瀕死になった姿を見たんですよ?どれだけ心配したと思います?」

「うっ」

「だから今は・・・ね?」

「仕方無いな」

「やった!心配掛けて悲しませたんですから今度お願いを聞いて下さいね」

「俺に出来る事ならな」

「孕ませて下さい!」

「女の子が何言ってるの!?」

「えへへ」

 

 顔を少し赤くしてほにゃりと笑うユエを可愛いなと思いながら頭を撫でる。

 そしてユエと目が合うと一騎は微笑みかけるがユエが気まずそうな顔をする。

 

「どうした?」

「ごめんなさい。ちゃんとお兄様の怪我を治せれなくて」

「痛むとこ無いし、体もちゃんと動くよ?」

「え?」

「え?」

「え?お兄様、右眼見えてるんですか?」

「そうだけど? なんで」

「だ、だって」

 

 急いでベットから出るとユエは持ってきていたカバンの中から化粧ケースを取り、その中からコンパクトを取り出し一騎に鏡を見せる。

 

 

「おー・・・」

 

 一騎の右眼には大きな縦線の刀傷が付いていたのだ。例え的では海賊狩りの左目に付いてる傷が右側に着いている感じだ。

 そしてそれも驚くが何より一騎が驚いたのは傷が眼球にも付いていたのだ。

 

「これはまた(医者の人達が妙に気を使ってたのはこれが原因か)」

「ごめんなさい。他の怪我は治ったんですけどその傷だけは何故か治らなくて」

 

 目に涙を浮かべてしゅんとして謝るユエ。そんなユエに対して一騎は頭を優しく撫でる。

 

「まあ、気にするな。ユエ」

「・・・でも」

「確かに顔の傷は女なら欠点だけど、男ならロマンだ!」

「へ?」

 

 驚いて顔を上げるユエ。すると一騎は親指で傷を指さすと笑う。

 

「どうよ、女を守って付いた勲章()だ。格好いいだろ?」

「・・・! はい!! お兄様は最高に格好いいです!!」

「ありがと」

「えへへ」

 

 また、頭を撫でられてはにかむユエ。

 

「あ、お兄様。何か飲み物買ってきますよ! 何が良いですか?」

「じゃあサバスで」

「はーい」

 

 良い返事をして病室を出るユエを見送り一騎は右眼の傷を撫でる。

 

「右眼は、諦めよう」

 

 そして、少ししてから扉が勢いよく開きもうユエが帰って来たのかと思い顔を向けると目を見開く。

 

「一騎くん!」

「才先輩!?」

 

 そう、来たのは印照才子だった。

 才子は急いで来たのか、何時もの優雅さや気品はなく服は少し着崩れ髪は乱れていた。

 

「どうして此所に?」

「テレビで雄英襲撃事件が流れてそこに一騎君が映って無くてアミに連絡とったら瀕死に追い込まれたって聞いたの!!」

「そんな理由でわざわざ学校休んで来たんですか?!」

「そんな理由じゃないわ!!」

「!」ビク

 

 そんな理由と言う言葉でムキになって一騎に少し近づいた時に才子は一騎の右眼の傷に気づき急いで駆け寄り、一騎の顔を両手で掴むと顔を近づける。

 それも鼻先がお互いに当たるくらいに。

 

「一騎くん。これは・・・酷い」

「あーまあ男の勲章です」

「そう(まあ、一騎くんならそう言うわよね)」

 

「それより何時までくっついてるんですか?お二人とも」

 

「へ?きゃああ!」

 

 横から声がしたために振り向くとそこにはユエがスマホを持って此方を見ていたのだ。

 才子はそれに驚いてバックステップで飛び退き、一騎は軽く「お帰り~」と言う。

 

「お兄様、その人は?(何処かで見たこと有るような)」

「前にも言った中学の時に俺に良くしてくれた才先輩だよ。才先輩、この子は俺がよく言っていた妹のユエです」

 

 お互いに「こんにちは」と言ってからユエは何かを考え込んだような顔をしてから引きつった顔になり一騎に尋ねる。

 

「もしかしなくても才さんってあの印照財閥の印照才子さんですか?」

「あれ?ユエ知ってるの?」

「印照財閥って日本四大財閥ですよ! あー納得しました。どうりで家の家具や食器が高級品な訳だ。茶葉の種類も豊富だったのも」

「高級品?才先輩がくれたのってそんなに?」

「知らなかったんですか?最低でも50万からで、高くて2~3千万の物まで。お兄様が大切な時のためにって取っていた紅茶セットは印照製品の一点物。その道の人達に向けてオークションに出せば億はくだらないですよ!」

 

「・・・才先輩。マジですか?」

「そうよ。それよりユエさん物知りね。(いや、一騎君が知らなさすぎるだけ?)」

「印照家具は有名ですから」

「・・・お礼できる物が何もないです。才先輩」

「気にしなくても良いのよ。アレらは一騎くんの雄英首席合格の祝いと立てこもり事件の時に命を助けて貰ったお礼の意味も有るのよ。だから気にされるとこっちが気まずいわ」

 

 微笑みながら言う才子。それに思わず綺麗と一騎が呟き、才子は赤面してしまう。

 そんな二人をユエは微笑みながら見てそれから三人で色々と会話をする。

 

「一騎くんはいつ頃退院するの?」

「明日です」

「え? 早すぎじゃないかしら?」

「病院嫌いなんです。入院費高いし鍛練できないですから」

「明らか後者が本命ね」

「あはは」

「お兄様にとって鍛練1日のサボりは10日分のサボり。ですものね!」

「そうそう」

「私も稽古つけて貰ってるときよく言われたわね」

「ほうほう。才ちゃんはお兄様の一番弟子と」

「そうだよ。才先輩は色々と初めての人だな」

「ふぇ//!?」

「ふぇ?ふふ。カワイイですね」

「もう! ユエさんは意地悪ですね。あと一騎くんも誤解を生む言い方しないの!」

「すみません」

「あ、そろそろ面会終了時間」

 

 楽しく話してるときに才子が時計を見るともう既に午後5時に差し迫っていた。その為にユエと才子は荷物を纏めて帰り支度を始める。

 

「それじゃあお兄様。また明日」

「おう」

「一騎くん。余り無茶はしないでね」

「善処します」

 

 そして二人は病室を出る。しばらく歩いていると人気の無い長い廊下にさしあたる。そしてユエが神妙な表情で話し出す。

 

「才ちゃん」

「なにかしら?」

「才ちゃんはお兄様の事好きですよね? 一人の男として」

「・・・え」

 

 この瞬間才子は足を止めて思考が停止しかける。

 ユエが居たために何時もの好意を思わせる行動は気を付けていたから気づかれ無いと思っていた。その為に言い当てられて思わず止る。

 

「な、なんで」

「分りますよ。才ちゃん、恋する乙女の目をお兄様に向けてましたもの。だから気づいたの、才ちゃんも私と同じでお兄様に恋をしていると」

「え」

 

 ユエが一騎を愛してるのを知った才子はまたしても思考が止る。

 そしてユエは数歩先に行くと振り返り顔を少し赤くしながら笑みを見せる。

 

「私も好きですよお兄様のこと。家族として、兄妹として、そして一人の男性として愛してるんです」

「で、でも貴女と一騎くんは・・・」

「腹違いとは言え兄妹ですね。でも関係ありません。お兄様を心の底から愛してしまったんですから」

「・・・そう」

「そこで!才ちゃんにお話があるの!」

 

 もの凄く嬉しそうな顔をしながらユエは才子の右腕に抱きつき見上げる。

 

「な、何かしら?(凄くカワイイ)」

「私と一緒にお兄様のハーレムを作りませんか?」

「・・・・・・え」

 

 才子の思考は今度こそ完全に停止した。

 

 

 ~~~~~~~~~

 

 

 

 ユエと才子が病室を出て行って少ししてから一騎は目を瞑り一息つくと窓の方を見る。

 

 

「何時まで居るんだ、エリク」

「気づいたか」

「ついさっきな。てかここ10階だぞ」

 

 窓の縁にエリクは器用に座り一騎を見ていた。

 そして一騎はそんなエリクが持っていたカゴに目が行く。

 

「あ、コレお見舞い品」

「フルーツの盛り合わせ」

「そ、お見舞いと言ったらこれだろ?」

「まあな。てかお前捕まらなかったのかよ」

「捕まったけど護送中に逃げた」

「犯罪者め!!」

「ヴィランです」

「そうでした」

「はいリンゴ剥けたぞ」

「・・・うさちゃん」

 

 何時の間にかうさちゃんの形に切られたリンゴを見て一騎は思わず「俺は子供かよ」と呟く。

 が、直ぐに斬り方がうまいなーと感心する。

 

「それで今日は何しに来た?」

「お前に新しい技を教えてやろうと思ってな」

「新しい技?」

「そ。その名も体外離脱と前借りと言う」

 

 一騎は新たに技を身に付けるさせるためにエリクは一騎の病室を訪れたのだった。しかし、エリクは一騎の右眼を見ると一瞬で近づき片手で顔を掴み右眼を覗き込む。

 

「なっ!?(目で追えなかった!?)」

「お前、右眼見えて無いだろ」

「!?」

「いや、正確にはちゃんと見えて無い・・・・か」

 

 エリクに言われ一騎は驚いてしまった。その反応を見たエリクは当たりかと思い少し離れるが、その前に一騎がエリクの胸ぐらを掴む。

 

「おい! このことはユエだけには絶対に言うなよ!」

「・・・分ってるよ」

「ホントだな?」

「ああ。それより目は?」

「見えている。しかし、凄くぼんやり?いや、ゴーグル付けずに水に潜ってる感じか?」

「そっか。眼鏡やコンタクトは?」

「そんなもん付ければユエに一瞬でバレる」

「確かに」

 

 納得した顔をするエリクを見て一騎は怪訝な顔を見せる。

 

「なあ、あの時脳無を放ったのお前だろ?」

「バレた?正確には俺の仲間だけど、俺の指示だからね。お前の目が見えなくなったのは俺の所為。悪いね」

「・・・軽いな。あとお前の所為じゃない」

「理由を聞いても?」

「これは俺が選択を間違えたからだ。あの時は八百万を皆の所に投げるんじゃ無くて、抱きかかえて水の中に飛び込むのが正解だった。これは選択を間違えた罰だ」

 

 傷を撫でながら苦々しく話す一騎を見てエリクは口笛を吹く。

 

「大人な答え」

「うるさい」

「そういった考え、好きだよ。さて! それで技はどうする?」

「先生呼ぶぞ。同じ階の別個室に入院してんだから」

「別に良いよ。直ぐに逃げられるし」

「・・・」プイ!

 

 その言葉を聞いて一騎は顔を横にする。

 

「ヴィランからの情けは要らん」

「良いのか?」

「・・・」

「強くなれるよ」

「・・・っ」ピク

「妹ちゃん達を守れ「詳しく聞こうか」 お、おう(全て終わったあとの此奴が凄い心配になった)」

 

 手の平返しの速さに思わずエリクは引いてしまい、将来が少し不安になってしまった。

 

 

 ☆

 

 ~夜11時~

 

 

「ただいまー」

 

 あのあと本気で先生を呼ばれたエリクは窓から飛び降り、普通に館に戻ってきた。

 

「お帰りー」

「・・・何焼いてるの?」

 

 エリクは庭先で馬鹿デカい肉の塊を焼いているハンターを見て思わず聞いてしまう。

 

「牛の丸焼きだけど?」

「そうか。この匂いは黒牛和、違うな。神戸牛か」

「正解。・・・なあ、エリク」

 

 いきなりハンターが真剣な表情と声で話しかけた事でエリクは何かあると思いハンターの次の言葉を待つ。

 

「一騎の状態は?」

「右眼の視力が著しく落ちてる」

「妹ちゃんの個性では治らなかったのか?」

「ああ」

「なぜ?」

「そもそも一騎は生まれつき個性に耐性がある。炎や打撃とかの個性はともかく、洗脳、幻覚等の精神干渉系個性は効きにくい。そしてユエちゃんの治癒は後者の効きにくい側だ。

 そして一騎は更に成長して効きにくくなってる。それが今回右眼に出た。このまま行けば治癒が効かなくなるだろうな」

 

「それ大丈夫か?そのまま行けば妹ちゃん病みそう」

「大丈夫。ユエも成長すれば効果は効く。まあ、そうなるようにエリザベートが動いてるんだ」

「そうか。でも、右眼が治らないんじゃあ最後の計画に響かねぇか?」

「それも大丈夫。その為に()()()との関係を作ったんだ」

 

「そう。それじゃ次、あのとき脳無を使う必要あったか?」

「・・・仕方無いよ。アイツらがそれを選んだんだから」

「まあ、そうだが」

 

 あの時、脳無を動けるようにしたのはハンターだが、元々二人は一騎が脳無に勝ち、死柄木の手を切り落とし捕まえようとするとこまでは余裕で行くことは分っていた。

 しかしその後が分らなかった。だから二つのパターンを作った。

 

 一騎のやることを邪魔せずに最後まで任せて見ているのであれば、脳無は使わないAパターン。

 一騎のやることに口出しをして邪魔をしたら、脳無を使うBパターン。

 

 この二つで、選ばれたのがBパターンだった。

 

「ま、今回強めに言ったからガキンチョ共もせい「ダウト」・・・」

 

 エリクの言った言葉にハンターはダウト、嘘と言う。それを聞いてエリクは笑いながら首を傾げる。

 

「お前、アレ本気じゃ無いだろ?」

「バレた?」

「何十年お前と連んでると思ってる。これでもお前の右腕で相棒のつもりだよ」

「そうだった」

 

 そう、あのときエリクは皆にあんな事を言っていたが実際は全く思っていない事だった。じゃあなんで言ったか、答えは簡単『鬱陶しかった』。それだけだ

 

 力も無いのに綺麗事を言う奴が、

 守られ助けられてたくせに、瀕死の一騎を手当もしないどころか駆け寄ることもしないアイツらが、

 手当を手伝いもせず動かず黙ってみていたアイツらが、

 

 どれかは分らないしどれも違うし、どれでもあるかも知れない。分るのはエリク達のみ。ただ、

 正論を言いたかった訳でも論破したかったわけでもましてや説教を垂れるなんて面倒くさい事この上ないことはしない。ただただ、鬱陶しいから言えばダメージを喰らうだろう言葉を選び言ったまで。その時に怒気を込めたり圧を放ったのもそれを本物に見せる為の演技だった。

 

 もし、あの場で本気で言ったことがあるならそれは死柄木と――。

 

「オールマイト。アイツに言った事は本音だな」

「・・・」

「なあ、そんなにワン・フォー・オールの宿しさ「ハンター」 なに?」

「お前は1番の相棒だよ。でもそれ以上は踏み込むな」

 

 威圧は一切無い。ただ静かに話すエリク。それを見たハンターは少し肩を落とし肉を大きめに切り分ける。

 

「悪かった。親しき仲にも礼儀ありだな。詫びの印、食うか?」

「要らん」

「美味しく出来てると思うぞ」

「お前味覚無いだろ」

「こういうのは気分だよ。気分!」

「そうか」

「そこの焼き肉のタレ取って」

「これかって、賞味期限5ヶ月前に切れてるぞ。腹壊すぞ、ほれ」

「サンキュー。そして大丈夫!俺の胃袋は鉄の胃袋だから」

「個性を使えばそうなるが。まあ、俺は寝るよ。お休み」

「おやみ~」

 

 そしてエリクは館に入ると自室に向かう永い廊下を歩いているときに色々と考える。

 

(まあ今回の事でアイツらも命の遣り取りで力の伴わない事を言う危険性を知ったろ。今年はアイツが本気で動くしな。それにあんな所に居て一騎の刃が鈍ると困る)

 

 歩いてるときに窓から満点の星空が見え、立ち止まり眺める。

 

『この子をお願いね。お兄ちゃん』

「フッ」

 

 欠けた月を見て、エリクは少し過去の事を思い出して笑う。そしてガラスに映る自分の顔を見てからまた歩き出す。

 

「どうでもいい。彼奴(オールマイト)が死のうと彼奴(緑谷)が死のうとどうでも良い。一騎が成長し不死の魔王を殺せるようになればそれで良い」

 

 そして右手で前髪をかき上げる。

 

「これは俺の、俺達の野望を果たす為に始めた物語。その為に止めるために死にに逝った彼奴(親友)を見殺しにした。生きたいと願ったあの子を見殺しにした。今更止まれるか、ようやく来た最初で最後のチャンスなんだ。

 失敗なんて許されない」

 

 月明かりしか無い薄暗い廊下の中でエリクの紅い瞳が妖しく光る。





ユエは知っている。ハーレムなら、妹の自分がいても可笑しくないことを!

次回「登校」

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