無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第38話:スカウトと新たな弟子

 

 

「ハアハアハアハア」

 

 緑谷は大の字に倒れ乱れた呼吸を整えていた。そんな彼を一騎は上からのぞき込む形で見下ろしていた。

 

「もう降参か?」

「う、うん」

「まだ始まってから30分も経ってないぞ」

「でも、ずっとフルカウル状態で」

「・・・じゃあ休憩するか」

「ごめん」

「気にするな」

 

 謝る緑谷に答えると一騎は緑谷から距離を取り一人でなにかを使用する。それを見たユエは八百万との練習を止めて駆け寄り心配そうに声をかける。

 

「お兄様、あれをするんですか?」

「ああ。毎日しないと身に付かないしな」

「そう、ですか」

 

 寂しく返事をするとユエは一騎から離れ八百万の元に戻ると、八百万が心配して声をかける。

 

「どうしました?」

「ううん。なんでもないよ」

「でもそのようには「グッァア」 !?」

 

 八百万の言葉を遮るように一騎の苦しむ声が聞こえ振り返ると一騎は滝の様な汗を流し胸を押さえ苦しんでいた。それを見て緑谷も焦り飛び起きる。

 

「HAY!不死黒!いったい・・・・」

うっううう"!!

「なに、この音」

「エンジン音か?これ」

 

 耳を澄ませると一騎のうめき声と共にエンジン音の様な物が聞こえ、一騎に目を凝らすと体が赤く成り始めるのが見え、ミッドナイトとマイクは首を傾げる。

 

 

 今一騎は二つの技術を合わせている。

 

 一つ目はユエが赤鱗躍動を使った時にヒントを得た、増強させた心肺により、一度に大量の酸素を血中に取り込む事で、血管や筋肉を強化・熱化させて瞬間的に身体能力を大幅に上昇させる特殊な呼吸法、全集中の呼吸。

 

 二つ目はエリクにUSJ襲撃翌日に教えて貰った、意識的に心拍数を高めることで血流を加速させて発生した熱量を運動能力に変える前借り。

 

 この二つを合わし、先ず全集中の呼吸で血中に大量に酸素を取り込み次に前借りで血流を更に上げる。それにより得た運動能力は従来の3倍にも及ぶ。

 

ガッア"ァ"アアア!!

「ふ、不死黒さん!!」

 

 しかし、そんなことをすれば当然体には尋常ではない程の負担が掛かる。

 血管は大量に酸素をとりこまれたことで、膨張した血と流速の増した血流の速度に耐えきれずにすり切れ千切れだす。その所為で一騎の体は頭の天辺から足先、そして眼球の裏側まで、文字通り全身に千切れる激痛が走る。

 

大丈夫大丈夫!

 

 無理に笑いながら告げるもどう見ても大丈夫じゃない。だから付き添いのミッドナイトとマイクも慌てて近寄るも一騎が腕を振り上げたことで動きを止めて次の行動を見る。

 

鉄砕ィ!!

 

 振り下ろされたその拳はとてつもない威力を誇り地面に巨大な蜘蛛の巣状の罅を入れた。

 みんなはその光景を見て唖然とする。特に緑谷は個性があるのに今の自分では到底出せない威力に更に驚愕していた。しかしユエは一騎に駆け寄ると背後から抱きつき必死に止める。

 

「お兄様!1分経ちました、もうダメです!」

まだ少し

「それ以上は本当に危険です」

「・・・」

「お願い、ですから!」

「っ・・・・わかった」

 

 ユエが悲痛めいた声で懇願してくるために技を解くと疲労がどっと出てきたのか、壁まで行くとぐったりともたれる。

 そしてユエは一騎に治癒を掛けると水を差し入れして八百万達の元に戻る。

 

「ユエさん、不死黒さんは」

「治癒したから大丈夫」

 

 とは言うもののチラチラと顔にタオルを掛ける休んでる一騎を心配な目で見ていた。

 それも当然で、体育祭翌日(二日前)の夜の鍛練で初めてやったときに余りにもの激痛で一騎は意識を飛ばし気絶したのだ。それを目の前で見たユエは死んだのかと思い大泣きし、ある意味トラウマになった。

 

 しかもその後、トウシとメトリの個性をフル活用して一騎を調べたところあの全集中の呼吸と前借りを同時に使った状態だと1分で10%の確率で死ぬことが分った上に維持し続ければ確率は更に上がることも分かった為に尚更心配だった。

 

 

 ☆

 

 

 10分ほど休息した一騎は立ち上がり軽く体を動かすと緑谷に顔を向ける。

 

「緑谷ー10分も休憩したんだ。やるぞ」

「不死黒君はもう大丈夫なの?」

「あぁ。もうだいじ・・・・・? 外が騒がしい」

 

 一騎達が鍛練してる場所は校舎から車で行くほど離れている――運転は先生がする――ために人が全然居らず静かなのに今は人の声や足音が沢山聞こえるのだ。その事にユエ達も疑問に思うとTDLの扉が勢いよく開く。

 

「えええ!?」

 

 そして入って来た人をみて 一騎以外全員驚き、緑谷は驚愕の声を上げる。

 

「確か此所だったよな」

 

 入って来たのは勝ち気な笑顔にウサギ耳と尻尾を生やし、バニーのようなコシュチュームを着た女性、プロヒーローミルコだった。

 

「ミルコぉお!?!?」

「ん?おー居たいた! 探したぞ」

 

 緑谷の声など気にも止めずにミルコは歩き、一騎の前で止るり、数秒間一騎を下から上へと見ると笑みを浮かべる。

 

「お前が不死黒一騎で間違い無いな!」

「はい。それで、プロヒーローとして忙しいミルコさんが俺なんかに何かようですか?」

 

 一騎はそう言うとミルコに怪訝な目を向けてしまう。

 

「職場体験の話が有るだろ」

「有りますが、俺を指名してなかった貴方には関係無い話でしょう?」

「ところがどっこい関係ある」

「は?」

「正確には今からだけどな」

 

 そこで一旦区切ると一騎の目を見て一騎の胸に人差す指を当て話す。

 

「不死黒、お前を指名するから体験先は私の所に来い!」

 

「「「「「はああああああ!?!?!?!?」」」

 

 TDLに最初からいた緑谷達だけでは無くミルコを追っかけて来た生徒達の驚愕の声が響き渡る。その言葉の威力は一騎ですら驚き声が出せなくなるほどだった。

 

「な、なにを企んでるんですか?」

「企んでる、か」

 

 一騎の更なる疑いの目を見てほんの僅かに瞳に悲しみの色を見せてから不適な笑みを浮かべる。

 

「別に、ただ・・・勿体ないなと思ったからだ」

「勿体ない?」

「体育祭見たがお前、手技に比べ足技がショボいことに気づいてんだろ」

「な!」

 

 確かに一騎は足技のレベルが低いことに気づいていたが、誰にも言ってなかった為に言い当てられるとは思ってもいなかった。

 

「あたしの所に来れば強くしてやる」

「ふ~ん」

 

 笑みを浮かべるミルコを見てさっきとは違い次に一騎がミルコのことを下から上へと見る。そして右足を一歩だけ後ろにさげる。

 

「来いよ」

「フン!」

 

 するといきなり左足の後ろ回し蹴りをミルコの顔に放つ。

 

「遅ぇな」

 

 しかしミルコはいきなりの蹴りにも関わらず体を反らすだけで避ける。

 

「お兄様!?」

 

 いきなりの行為にユエが叫ぶも一騎は止らず軸足を変えて右足で下中上の順に三段蹴りを放つもミルコもそれに合わせ同じ蹴りを放つ。

 そしてお互いの上段蹴りがぶつかったときに一騎はその反動を使い右回転の突き蹴りをする。無論のことミルコも同じ技を放つ。ただ、反動の勢いは無くし単純の突き蹴りだ。

 お互いの攻撃がぶつかり合った時にもの凄い音がTDL内に響き渡る。

 

「クッゥ・・・・な!」

「お兄様!」

 

 少しの拮抗の後に一騎が押し負け壁まで吹き飛ばされ、みんなは信じられないものを見たような目をする。

 

「うそ!」

「不死黒さんが押し負けた!?」

 

 吹き飛ばされたのを見て緑谷と八百万は驚愕の声を上げる。

 一騎は最初は驚いたが、直ぐに空中で体勢を整えて壁を足場にして張り付く様にとまると無事に着地してミルコの前にまで戻る。その姿を見てユエを抜いた全員ヒヤヒヤした目で見る。

 

「それで、私はお眼鏡にかなったか?」

「え、お眼鏡に?」

 

 自分の発言に緑谷が首を傾げるのを目だけで見てから一騎に目線を戻して説明する。

 

「此奴は私のとこに行くだけの価値があるかを今ので見たんだよ。つまりは値踏みだ」

「えぇええ!!」

「で、どうだ?」

 

 問われた一騎は無表情から一転、満面の笑みを浮かべる。

 

「職場体験! お願いします!!」

「おう!」

 

 頭を下げ手を差し出す一騎の手をミルコは握り了承する。その光景を見たユエはキラキラした目で見て声を出す。

 

「ミルコさん!」

「ん?お前はあのくz・・・公安の娘か」

「その言い方は嫌いです! 私はお兄様の妹です!」

「そうか。んで、ようは?」

「あ、私も行かせてください!!」

「・・・良いぞ。指名は二票まで入れれるからな」

「んーやった!」

 

 許可を貰ったユエは喜んで一騎の腕に抱き一騎は優しく頭を撫でる。その姿を見たミルコは先ほどとは少し違う笑みを浮かべ踵を返し帰る。

 

「じゃ、指名は出しとくからぜってーに来いよ」

 

 去りながら手を振りミルコはTDLを出ると他の生徒に見向きもせずに跳んで何処かに行く。

 

 

 ☆

 

 

 ミルコが帰ってからも鍛練を続け、時間は午後6時にさしかかっていた。

 

 

「鍛練はこれで終わりだ」

 

「「「はい!」」」

 

 一騎の一言で今日の鍛練は終了して全員荷物を片付けて準備を完了すると、不意に一騎が声を掛ける。

 

「緑谷、八百万、大事な話が有る」

 

 大事な話と聞いて二人はお互いの顔を見合ってから一騎の方を見て次の言葉を待つ。

 

「お前ら二人への鍛練は今日限りで終わりだ」

「・・・え」

「ど、どう言うことですの」

 

 いきなり言われたことに理解出来なくて動揺して聞き返すも一騎は淡々と答える。

 

「そのままの意味だ。二人ともちゃんと成長した。緑谷は個性をちゃんと扱えるようになった。八百万は戦闘に置いてちゃんとした判断が即座に出来る様になった。二人はちゃんと戦えるようになったからだ」

「で、でも!ぼく「それに!」 !」

「こっちもそろそろちゃんとした鍛練したいんだ」

 

 そう言われると二人はなにも言えない。いま思い返すだけでもいままでの鍛練は自分たちのギリギリこなせる物で、時には一騎もユエも息切れした様子は只の一つも無い。それは自分たちに合わせていたからで二人はちゃんとした鍛練になってないと言う事だった。そう思うとなにも言えなくなってしまう。

 

「悪いな」

 

 一言謝ってから帰路に着く。

 

 

 その翌日、一騎とユエは何時もの様にTDLに行こうと先生が運転してくれる車に向かってるとき、駐車場に待ってる人が1人居た。

 

「「・・・」」

「どうしたのももちゃん」

 

 待っていたは八百万百。ジャージを着たその姿を見たとき、一騎達は眉顰めた。

 

「鍛練は昨日で終わりと言ったよな」

「はい」

「じゃあなんで俺達を待っている?」

「不死黒さんにお願いがありますわ」

「・・・鍛練は付けないぞ」

「それは理解しておりますわ」

「じゃあなに?」

 

 高圧的な口調に少し臆するも八百万は深く頭を下げる。それを見た一騎とユエは少し驚く。

 

「お願いします! 不死黒さんの弟子にしてください!」

「は?」

 

 流石にその言葉には一騎は間の抜けた声を漏らす。

 

「ももちゃん」

「はい」

 

 いつものユエなら八百万の為になることを言うが、この時は違った。何時もより声は低く冷たさを感じさせる声だった。

 

「自分がなにを言ってるか分ってる?それはつまりお兄様にまた、自分の鍛練の時間を自分に使えと言ってるんだよ?」

「それは重々承知です」

 

 真剣に言う八百万にユエは一騎に目配せで「後は任せます」と言って目を瞑り黙り込む。

 

「なあ、八百万」

「はい」

「なんで俺に頼む? お前は八百万財閥の娘だろ?俺なんかに頼まなくても親に頼めば一流の指導者をやって貰えるだろ?」

 

 嫌な言い方だと一騎も言いながら感じていた。

 そしてその質問に八百万は答えない。

 

「不死黒さんの言う通りですわ」

 

 ことは無くその質問に頭を上げて一騎の目を見てしっかりと答える。

 自分が一騎の時間を奪うのを理解している。だから自分が差し出せるのはどのような質問にも絶対に答えることと待っている間に決めていたのだ。

 

「確かにお父様に頼めば屈指の指導者を雇って貰えますわ」

「なら――」

「ですが、その方は八百万家の八百万百、又は個性『創造』を持った八百万百としてですわ。

 不死黒さんのように、ただの八百万百として接しての指導ではありませんわ」

「・・・っ」

 

 真剣な表情で言う八百万がどうしても一騎にはあの日の才子と被ってしまい強く否定出来なくなってきていた。

 

「私は戦い方のことや個性の使いや応用のことは不死黒さんに教わりたいでんです。ですから、私を不死黒さんの弟子にしてください!」

 

 そして八百万はさっきよりも深く頭を下げる。

 一騎はどうしようかと思いユエを見るも彼女は目を瞑り腕を組んでそっぽを向いていた。その姿を見て一騎はユエがこれに関して一切関与しないと決めてると分かり、頭を下げる八百万を見る。

 

「分った。弟子にするよ」

「ホントですか!!」

 

 弟子を認める許可を聞いて八百万は勢いよく顔を上げて驚くも一騎は人差し指を向けて八百万の喜びを止める。

 

「ああ、ただし条件がある」

「条件、ですの?」

「もし、辛い、しんどい、休みたい、とかマイナス発言したらその瞬間に破門にする。いいな?」

「はい!!」

 

 出された条件に八百万は即答で返事をする。そして八百万が一騎の弟子になるのが決った。

 

「良かったねももちゃん!」

「はい!ユエさん!」

 

 八百万にユエは抱きついて笑みを浮かべる。それに対して八百万も緊張が切れたのか嬉し涙を流しながら喜ぶ。

 2人の姿を一騎は少し複雑そうな表情を浮かべるも直ぐに笑みを浮かべみていた。

 

「緑谷はどうなんだろ」

 

 その呟きはユエ達には聞こえない。そして一騎は気配探知で緑谷を探すも引っかから無いために居ないと判断する。

 

 

 八百万と緑谷は今日の朝に話して弟子にして貰うと八百万は言うも緑谷はそれに歯切れの悪い反応しかしなかった。そして八百万は一騎に申し出たが緑谷は出来なかった。

 

 だって彼は既にオールマイトの弟子なのだから。しかしそのことを一騎達は知らない。ただ、此所に緑谷が来ないことに少し残念に一騎は思うだけだった。

 

「2人とも行くよ」

 

「「はい!!」」




パンパカパーン! 八百万が弟子になりました!!
一騎はこう言うのに関しては押しに弱いのかもね。

前借りと全集中の呼吸を合わせた技の名前どうしよ・・・(汗


次回「職場体験①」

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