職場体験二日目、ユエはホークスの元に体験に行き
「クソヒーロー共がァ!!」
「五月蠅い!雑魚!」
「ウギャアア!!」
一騎と共にミルコの元に行けなかったイラつきをヴィランにぶつけていた。
「わー相変わらず凄いね」
「五月蠅いです鳥」
「辛辣!?俺一応先輩だよ~」
「・・・!」
いまだにイラつきが収まらないユエの元にホークスが現れるが、今にも殺しかねないほど恐ろしい目付きで睨まれる。
それをホークスは一切怯むこと無く自分の名を呼ぶ女子のファンに笑顔で手を振ってファンサしていた。
「てかダメだよ。許可無しでの個性使用の戦闘は」
「個性使用の戦闘?フン! 今のは全体重とスピードを乗せた只の跳び蹴りです。個性無いと戦えないのは只の雑魚ですよ。ホースさん」
「ホークスね」
わざと言い間違えるユエに丁寧に訂正するもユエは顔を逸らし、ホークスのサイドキックの人が事後処理を開始するのを見ると飛んでいく。
「おーい待って~」
「・・・ハアハア」
その後を追ってホークスも付いて行き、片手間にヴィラン退治を行なう。そして飛んでいく二人の姿を常闇は肩で息をしながら見て、また後を追い走り出す。
「ねぇそろそろ休まない?美味しい喫茶店このちか・・・・通り過ぎた」
「なら一人でどうぞ。着いてこなくて良いでしょ」
「そういう訳にはいかないんだな~。てか凄いね! なんで俺の飛行に着いてこられるの?」
「はぁ~」
心底うっとうしいトでも言うかのように深い溜め息をついてからユエは更に速度と高度を上げて飛ぶ。その速さにホークスは口笛を吹いてから後を追い、ユエの突っ込んだ分厚い雲に突っ込み突き抜ける。
止ってるユエの高さまで行くと背中を見てから周りを見て口を開く。
「良い眺めだね」
「・・・本当にウザイ、公安の犬・・・じゃなかった鳥が」
「そんない嫌かい?」
「私はお兄様に着いて行くの。絶対に公安なんかには行かない」
「じゃあ不死黒くんが公安に行ったら?」
「ッ!」
最後の言葉でユエは振り向きざまに焔丸を作り切っ先をホークスの首筋に当て睨む。
「お兄様に手を出せば今度こそ殺す」
「・・・ヒーローを目指す者が言っていい言葉では無いね」
「正義の為と言ってヴィランを殺し口封じのために罪を犯してない人も殺した貴方が言いますか?」
「痛いとこ突いて来るね」
「は!それに私はヒーローになりたい訳では無い。お兄様の側に居たいだけ。
そして、私を利用して金儲けして良いのも、命令して良いのも、私の個性をこの体を好きにして良いのもお兄様だけ」
向ける瞳の中に確固たる意思が有り、本気で言ってるのを見てホークスは嫌な汗が流れるのを感じた。
それと同時にホークスの脳裏には2年前にヒーロー公安委員会本部でユエの起こした事件が蘇る。
☆
2年前、ヒーロー公安本部でユエは父以外の公安官部と公安所属のヒーロー達に言い寄られていた。
治癒系統個性の中でも歴代ダントツトップを誇る治癒と液体であれば完全犯罪も出来るし、治癒で他国に多大な恩を着せることも容易くできる。ユエの個性は日本を平和にするには1番最適な個性だった。
『いい加減に頷いてくれないか?君は自分の
『たった1人に拘るな。多くの者を救え。それが才能を持った者の使命だ』
どれだけ言われようとユエは拒否し続けた。自分を利用して良いのは一騎だけと。一騎が家を追い出されたあの日からズッとだ。だがある日、幹部の人がユエに対して1番言ってはいけないことを言った。
『我々も本当はしたくないんだよ。君も嫌だろ、愛しの兄が永遠に日の光をあびられない生活をするのは』
これが何を意味してるのか、ユエは理解した。一騎を捕らえタルタロスに入れ自分を扱う為の材料に使おうとしていると。
そしてこの世には助けてくれるヒーローも大人も居ないとも理解した。だって自分たちを苦しめるのがその大人でヒーローと呼ばれる者達なのだから。
だからユエは決めた。
――大人が権力に寄る恐怖で支配しようとするのなら、自分は強個性に寄る恐怖で抵抗する。
と。そして眼の前の幹部と捕らえようとする息の掛かったヒーロー達12人を半殺しにした。その場にはホークスも居たが、ホークスの剛翼がユエに届く前にユエは液体操作でホークスの内臓を潰し戦闘不能にし、翼を根元から引き千切った。
少ししてから怒りが収まるとユエはホークスとトップ100入りした5人のヒーローだけ怪我を治し、残りは放置した。そして騒動を嗅ぎつけた他幹部、ヒーロー、そして父。これらが現れたときにユエは血塗れの顔で笑みを浮かべて言った。
『私の身も心も個性も命も全てがお兄様の物。お兄様に手を出すなら、私は容赦しない。これ以上私から、心の拠り所の止まり木を奪い、お兄様を遠ざけるのなら、
こんな社会も国も世界も全部ぶち壊してやる! 私は液体なら何でも操れる。人は約60%が水の只の水袋、そして地球は90%以上が水。人を殺すのも自然環境を壊すのも簡単。
偽りの平和社会を維持する前に住めない国にしましょうか?』
ハイライトオフの目と殺気の籠もった声に全員が怯み、それは死を覚悟させる程のものだった。
そしてユエはこの日から、上から目線や見下した態度を時には取り強く見せ、こういった人間達やヒーローにはへたに下手にでないと決めた。
愛しの兄に迷惑を掛けないように、側に居られるように。
☆
いまのユエの目はあの時と全く同じでハイライトオフの目だった。
焔丸を解除するとユエはホークスから距離を取り構える。
「さあ、構えてください最速の男、ホークス。
ガンマン風に言いますと・・・ぬきな!どっちが速いか試そうか、というやつです・・・・・」
「此所で殺し合うと問題になるよ」
「大丈夫。此所はインカムの通信範囲外。それにアナタを殺してもエリクかハンターの所為にするから。お国の得意分野の隠蔽工作をするから死んでも安心してください。どうせあの日のことも隠蔽したんでしょ?」
「(羽はさっき雲を突っ切って来た所為で濡れてる。ハメられたかな)・・・降参降参」
数泊の間のあとにホークスは両手を挙げて降参の意を示す。
「俺はただ君が公安入るように説得して欲しいと上に頼まれただけだから」
「・・・」
「君は本当に不死黒君主義だね」
「当然です! 私のヒーローはお兄様だけ。そしてお兄様は絶対正義! お兄様が白は黒と言えば白は黒だし、黒は白と言えば黒は白になるの」
(今の表情は年相応の恋する乙女なんだけどな~)
頬を赤く染めるユエを見てホークスには恋する子供にしか見えなかった。
それからユエが急落下したのを見て後を追いかける。
「あーあ。お兄様に会いたい。血か髪の毛貰えば良かった」
☆
「クシュン!」
「どうした、風邪か?(可愛いくしゃみするな)」
「健康そのものです」
「そうか。それでそこの記入欄に名前だ」
「はい」
一騎は倒したヴィランの引き渡し書類の書き方をミルコに教わっていた。
「ブラボー! おぉ・・・ブラボー!」
引き渡しが完了して見回りに行こうとしたその時に男が響く。二人は声のした方を振り返ると何故が男が仰向けの状態で宙に浮いている状態だった。
「ゲッ」
「誰?」
「いやー。こんな所で君みたいな有名人に会えるなんてね」
男を見るとミルコは嫌そうな顔をして、一騎は誰か分らず首を傾げる。そして男は普通に着地すると一騎に近寄る。
「ハッピーうれピーよろピくねェ~」
「あ、よろしくです」
手を差し出されたために握手をしようとした時にミルコが割って入り一騎を庇うように前に立つ。
「お前何しに来た」
「ミルコさん知り合いですか?」
「あぁ。高校の同期で変態だ」
「・・・変態。なるほど」
「Oh my God!! わたしは変態ではない!」
ミルコの言葉に何処か納得した感じを出す一騎にショックを受けてポーズを取り訂正する。
「変人だぁ!!」
「変は変わらないのか」
「yes!」
「俺は無個性ヒーローのイノベーターです。イノと呼んで下さい」
「変わり身早いね。わたしはゴールデンソウルだ! ソウルで良いぞ!」
「それは置いといて、なにしに来た。公安所属のお前がなに企んでる」
ソウルに顔を近づけてミルコはガンを飛ばしながら一騎には聞こえないように問う。
「・・・フ」
数秒の沈黙の後に意味深な笑みを浮かべるとケラケラとした表情を浮かべてソウルは答える。
「別に企んでないよ~。ただ有名なイノ君がこの辺りにいると知り会いに聞いただけさぁ!」
「行くぞイノ」
「はい」
「ちょ、待てよ」
「ンだよ」
呼び止められ面倒くさそうに振り返ったミルコにソウルはコッチ来いと手で示してミルコだけ来させる。と一騎に聞こえないようにコソコソと話し出す。
「企んでるんでは無くお前に伝言だ。電話で来てると思うが一応口頭でもと言われてな。
イノ、ではなかった。不死黒一騎がヒーローを諦めるように説得しろ」
伝言を聞いた瞬間にミルコからは殺気と共にドスの効いた声が漏れる
「あ?」
「あの子はヒーローになれる道を示した。これからは同じ無個性や没個性の者もヒーローを目指すだろう。そしてあの子と同じ道に行けなかった者達がどうなるか大体察しは付くだろ?酷ければ殆どが
「その為にアイツの夢を潰せと? 巫山戯るなよ」
「なんであの子にそこまで執着する? 血の繋がりが無ければ親子でも姉弟でも無いだろ?」
「・・・」
普通の人なら怯えながら失禁しても可笑しくないほど怖い目を向けられるも、ソウルは一切怯えずミルコの胸元、正確には何時も首に掛けているロケットに指差した。
「それとも何時も肌身離さず身に付けていたロケットに何か関係があるのか?」
「黙れよ。それ以上喋ると蹴っ飛ばすぞ」
「おー怖い怖い。まあ俺は伝言を頼まれただけだから」
「複数のヴィラン同士の戦闘だ!!」
「「「!?」」」
「行くぞイノ!」
「はい!」
険悪な雰囲気になり始めた時にヴィランの戦闘を聞き即座に行動を開始する。
現場に着くと複数のヴィラン団体同士で戦闘をしていた。それでもミルコとソウルは即座にその中に入り鎮圧を始める。
「お仕置きの時間だぜベイビー」
「こいつ! 変態ヒーローゴールデンボールだ!!」
「変人ヒーローゴールデンソウルだぁ!」
「グベヤ!!」
「逃げろ!」
「こっ――」
「
「ぐべ!」
「オゴ!」
「ワーオー。俺の出番無し」
争いをしていた場所に着くなりミルコとソウルはヴィランの制圧に速効で動き、一騎は唖然と見ていた。
「凄い。てか変た・・・じゃなかった、ソウルから人型のナニかが見えた気がするが・・・」
「退け!クソガキ!!」
「あらら。橾流ノ型・柳」
「え・・・ガハ!?」
迫って来たヴィランの手を掴むとそのまま背負い投げで背中から地面に叩き付け、うつ伏せに変えると相手の右腕を取り肩と肘の関節を極める。
「水天ノ型・捻切地蔵」
「イッダダダダ!! ギブギブ!ギーブゥ!!」
余りの痛さにヴィランは何度も地面を叩くも悲しきかな、コレは戦闘で合ってスポーツでは無い。よって止める審判もいない。
「ほへ~テレビで見て思ったが見たこと無い流派だぁった!?」
ソウルは一騎の使った二虎流を見て目を細めて観察し始めたところでミルコが思いっきり足を踏みつけてから一騎の元に行く。
☆
「よし。引き渡しも終わったし行くぞ」
「はい!」
「それじゃあわたしもこのへんで。I'll be back!」
「二度と帰ってくるな」
サムズアップして去って行くソウルの後ろ姿にミルコは悪態をつき、歩き出す。
その姿に一騎は首を傾げるも直ぐに駆け寄る。
「さっき話してるときに何かあったんですか?」
「・・・ガキが気にすることじゃねぇよ」
「そうですか」
「今日は速めに切り上げんぞ」
「ウッス!」
それからヴィラン退治をしたり、ファンサしたりと色々して二人は午後に大きな体育館の様な所に来ていた。
「ここは?」
「個性使用も許されてるかなり少ない総合体育館だ」
「そんなとこ有るんだ」
「そんじゃあとっととやるぞ」
「?」
「ほら、構えろ」
「あー」
ミルコが中央付近まで行き振り返り構えるのを見て察した一騎はコートや他のサポートアイテムを全部取り軽くストレッチをしながらミルコの前に立つ。
「ンじゃあ胸を借りま、す!」
「は! 甘ぇな」
喋ってる途中で不意打ちの蹴りを放つも足を上げるだけで完全に防がれる。
「まだまだ!」
それから何度もミルコに蹴り技で襲い掛かるも直ぐに簡単に避けられ受け止められ受け流される。しまいには蹴りを放ったタイミングでカウンターを喰らい蹴り飛ばされるしまつだ。
一騎は戦闘に長けているが、どうしても足技は手業に比べ弱くなってしまい、ミルコにパワーでもスピードでも押し負けるも一騎は必ず立ち上がる。
「痛いけどまだまだ!」
「良い根性だ!」
ボコボコにされても立ち上がる一騎の根性にミルコは笑うと同時に走り出し直ぐさまジャンプをして正面から一騎の肩に乗り太股付近で頭部を挟み足先を腹近くで組む。
そして目だけを上げる一騎を見ると狂気にも近い笑みを浮かべて口を開く。
「フランケンシュタイナーって知ってるか?」
「っ!? う、嘘ですよね?」
フランケンシュタイナーはプロレスの投げ技。前方から相手に跳び付き、相手の頭部を自身の両太腿ではさんだままバック宙をする要領で回転しマットに頭部を叩きつける。
しかしここはマットは無い。そんなとこでされたらどうなるかなんて火を見るより明らかだ。そのうえ一騎は1度テレビで見たことが有り、その時はやられた奴の胸部まで地面にめり込み犬神家状態になっていた。無論見たのはアニメだが。
「オーラよっと!!」
「クッソがアァアアア!!」
遂に地面に叩き付けられると思い覚悟する。しかし流石のミルコも地面に叩き付けることはせず、一騎を壁に投げ飛ばす。
「アアアアア、グハ!! ・・・・・・凄いな」
壁に叩きつけられ落下した一騎は肩を押さえながら立ち上がりミルコのした技術に称賛する。
ミルコがしたのは地面に叩き付けるなら簡単だが、放り投げるとなると先ずバク宙して手を地面に付けてから勢いよく一騎の脳天が自身の臍に当たるほどに引きつけるが、そうするには一騎の体に絡ませた足がほどけないようにする必要があり、そして一騎の頭が下で足が上になった時に思いっきりから絡ませた足、正確には足の甲で押し出すように一騎を投げ飛ばしたのだ。しかも投げ飛ばした壁までは役10メートル近く離れている。
「おーうまいこと受け身を取ったな。関心関心」
「まあ受け身は昔に色々としてたので、受け身と受け流しは得意ですよ」
「そういやお前の言ってた中学は無個性差別を平気で容認していたクソ学校だったか」
「ですです」
「それで来年の入学希望者が減って廃校になりかけてるんだっけか」
「詳しいっすね。あと廃校確定らしいです」
「あんだけニュースになってたらな」
「あー」
ミルコに言われて通ってた中学が雄英進学者が出たことで有名になるも体育祭の日の夜に無個性差別、個性使用の虐めを教師全員が見てぬふりをしていた事が発覚してヤバイ状況になったのをニュースで見た事を思い出した。
まぁ、一騎は余り内容を知らないが、一騎への無個性差別の虐めを看過していた教師は全員来年に教員免許剥奪。虐めをしていたのがバレた同級生と先輩達はヒーロー校に居る者は強制退学、デビューが決っていようが関係無く。そうじゃない一般の道を進んでた者は退学は免れても回りから白い目で見られ腫れ物扱いされている。中には地元に住めなくなり田舎に引っ越した者も居れば家庭崩壊した者も居る。
因みに才子も疑われたが、才子は学校側に一騎との関係を話や引っ越す時に撮った写真を見せて免れた。それどころか聖愛では凄い重宝されている。
「まぁーどうでも良いですよ。それよりもう一度お願いします!」
「フランケンシュタイナーをか? むっつりめ!」
「違いますよ!組手ですよ!!」
「分ってるわかってる。でもやり過ぎだ。もう15時だ。既に3時間もやってる。もう少し休むぞ」
「分かり「あー! 不死黒君だ!」 え?」
「お、リューキュウ」
渋々休息をしようと思った時に出入り口から声が聞こえ振り返るとそこにはねじれた水色のロングヘアで満面の笑みを浮かべた美少女と金髪ショートヘアでチャイナドレスのようなスリットの入ったコスチュームを身につけており、片目を爪のような髪飾りで隠している女性の二人が立っていた。
「波動先輩!?」
「ねぇねぇ!なんで此所に居るの~?なんでそんなにボロボロなの~?不思議~」
ねじれは一騎を見るなり駆け寄り少し前屈みになり顔を近づける。
「俺は職場体験です。ボロボロなのはミルコさんと組手して負け続けたんです。波動先輩は?」
「私?私はねぇ~インターン中なの!」
「インターン。3年にはそう言うのがあると聞いたこと有るな」
「そうなの!それで私はリューキューの所に行ってるの!」
「リューキュウ?」
「ねじれ。その辺にしてあげなさい」
首を傾げる一騎の元に来るとリューキュウがねじれの質問攻めを止める。
「ごめんなさいね。私はリューキュウよ」
「こんにちは。俺は不死黒一騎です。ヒーロー名はイノベーター。イノと呼んで下さい」
「分かったわ」
二人が挨拶をしたタイミングでミルコが声をかける。
「お前の事務所はこの辺では無いだろ?なんでいんだ?」
「チームアップ要請があってね。それで全部片づいたからねじれと散歩してるときに『クソガぁ』って叫び声が聞こえて覗きに来たのよ。主にねじれが」
リューキュウの説明にミルコは納得してねじれは「えへへ」と笑う。その笑顔を見て一騎はねじれが先輩には見えずユエみたいに妹の様に感じていた。
そんなときにミルコがリューキュウと親しげに話してるのを見て疑問に思ったことを聞く。
「ミルコさんはリューキュウさんとお知り合いなんですか?」
「ん?ああ。まあヒーロービルボードチャートJPの関係でよく会うし同期だからな」
「ヒーロー…びる?」
「ヒーロービルボードチャートJPだ。・・・知らないのか?」
「はい」
「じゃあリューキュウは知ってるか?」
「・・・」
ヒーロービルボードチャートJPを知らないことに三人は驚き、一騎のヒーロー達の知らなさすぎに疑問を持ったミルコが質問をするも、一騎はさっきまでとは違う汗を流し目をもの凄く泳がせる。
「お前、もしかして」
「ごめんなさい知らないです」
「えー!? 今季ではランキング9位なんだよ!?」
「本っ当にすみません!!」
一騎はその場で綺麗な土下座をした。それに驚きリューキュウは急いで一騎を立たせ気にしないでと微笑みながら告げる。
「リューキュウ。そう言えば
「? えぇそうよ」
「よし。不死黒、飛ぶ奴相手の仕方を教えて貰え」
「良いんですか?」
「・・・まぁ、仕事も一段落して時間もあるし今日はコッチで泊まる予定だから大丈夫だけど」
そこまで言うとリューキュウは隣に立つねじれを見ると彼女は気にした様子なく揚々と話す。
「時間あるの? じゃあお姉さんが不死黒くん! イノくん?の為に胸を貸してあげるよ!!!」
「ウッス!お願いします!!」
☆
一騎と空飛ぶねじれとの組手をしているのを離れた位置でミルコとリューキュウは壁にもたれながらみていた。
「ねぇミルコ」
「んあ?」
「同性同名かと思ったけど、あの子はやっぱりあの人の」
「そうだ」
「話したの?」
「してる訳無いだろ、まだ」
「まだってことはちゃんと自分から話すのね」
「当たり前だろ。・・・あれは私から話さないとダメだ」
「そう」
少しの沈黙の後にリューキュウがふと笑う。
「にしても全く受け入れなかったアナタが受け入れるなんてね」
「受け入れるとか関係無い。これからは私が彼奴を守る。あの人との約束だ」
「そう」
「よっし!捉えた!!」
「うっそ!?」
一騎は刀を立て即席の足場にして15メートル程浮いているねじれの足を掴みとる。
まさか浮いてる自分に近づき足を掴まれると思って無かったねじれは明らかに驚愕して動揺を隠せなかった。
「あ」
「・・・え」
動揺した結果個性制御が乱れ落下する。重力に従って落下していくなか一騎は自分が下敷きになるように抱きかかえ落下する。
「ウグ・・・!」
受け身も取れず背中から落ちて強く打ち付けたうえにねじれの体重が全部腹に乗り小さくうめき声に近い声を漏らす。
そしてねじれは起き上がると一騎の上に座った状態で興奮していた。
「凄いね! 個性無しで私に届く人なんて初めてだよー! どんな身体能力してるの? 不思議~」
「鍛練あるのみですよ」
「それで出来るなんて不思議。不死黒くんの体は不思議が尽きないね!」
「応えられるものなら答えますよ」
「ホントに!」
「ねじれ、とりあえず退いてあげなさい」
「は~い」
リューキュウに言われ今も一騎の上に座ったままなのを思い出し、退いてから手を差し出す。
「重かったよね、ごめんね」
「いえ、先輩は軽過ぎる方ですよ」
(落下のときうめき声上げたくせに)
(気の利いたこと言うじゃない)
手を取り立ち上がり答える。
その返しにミルコとリューキュウは気の利いたことを言ったなと思うも、実際はねじれよりも何時も身に付けてる重りの方が重いから言っただけである。うめき声を上げたのはバックルが食込んだからだった。
「よーし!それじゃあ次は本気で行くよ!」
「お願いします!」
2人は組手を再開する。そしてその姿をミルコとリューキュウは離れた場所で見届ける。
☆
「ミルコさん、ごはん出来ましたよ」
「おーう」
あれから組手を午後17時までしてきりあげ解散した。そしてミルコはまた適当なレストランかホテルでご飯を食べようとするも一騎の提案で一騎の家でご飯をする事にした。
因みに発目家族は出掛けているのか居なかった。
「にんじんハンバーグです」
「へーうまそうじゃん」
「どうぞ。御賞味あれ」
ハンバーグを切ると箸で抑えなくても滝の様に肉汁があるでる。それを一口食べるだけで口の中に牛肉の旨味が広がる。
「・・・うまい」
ボソリと呟いた一言を聞いて一騎は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「口に合って良かったですよ」
そう言われるとミルコは鼻で少し笑ってから家に来たときから疑問に思ってたことを聞く。
「そういやぁ妹のユエは?」
「どうやらフォックス?」
「ホークスな」
「そうその人!その人の事務所にある部屋で過ごすって言ってました」
「ふーん。じゃあ私を呼んだのは賞味期限が近い食材を処理したかったからか?」
「・・・」(汗
少しだけニヤリと笑い悪戯っぽく聞くミルコに一騎は笑顔を貼り付けたまま汗を流し目を逸らして「いいえ」と言いながら首を横に振る。
そんな反応にジト目を向けるも鼻ですこし笑い「まったく」と呟く。
「そ、そんなことより味噌汁美味しいですよ! 得意料理なので!」
「ハンバーグがメインだろ。・・・!」
味噌汁を飲んだ瞬間にミルコは思わず驚いて目を見開き味噌汁を凝視してしまう。
「どうですか?」
『どう、どう?』
「お前コレ、誰から教わった」
「? 自分で考えてたどり着いた味ですよ」
「そうか」
「それでどうです?美味しいですか、ミルコさん」
『美味しいでしょ?ルミちゃん!』
「あぁ。ほ、他の具材とかは入れないのか?」
「俺はシンプルに豆腐とわかめだけの味噌汁が好きなんですよね」
『味噌汁は豆腐とわかめだけなのが至高なの!てか、それが好き』
「でも今度はミルコさんの好物のにんじんを沢山入れましょうか?」
『でも今度はルミちゃんが好きなにんじん盛り沢山入れたの作るね』
「・・・(あーホント似てる)」
一騎の見せる笑顔が、言葉が、そして作った味噌汁の味がミルコの子供の頃の記憶を引きずり出す。
もう一人の母で、姉で、師匠で、恩人の女性と被る。その所為で流れそうになる涙を我慢して勢いよくご飯を食べ進める。その姿に一騎は気に入ってくれたと思い安心してご飯を食べ始める。
「おい、お替わりは?」
「沢山有りますよ」
ユエはあの日理解した。大人もヒーローも信用出来ない。あるいは敵、だから自分の身は自分で守ると。
次回「ヒーロー殺し」
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