無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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今回は一騎がステインよりも格下にやられる!!そしてミルコの過去が!!


第43話:賞金首

 

 

「なんか今日はヴィランの数多くないか?」

「そうっすね」

 

 呆れ気味に問いかけるミルコに一騎は呑気に答える。

 ミルコが言ったようにいまの二人の足もとには三人のヴィランが気絶して倒れている。

 

「たっく。まだ午前中だぞ」

 

 ミルコは若干イラついているがそれは仕方が無い。いまは午前10時過ぎだが、既にこれで4回目なのだ。しかも全部が襲撃。

 

 

 ☆

 

 

 引き渡し書類を書いてから河川の土手に二人はならんで寝転んで休んでいる。

 

「こんなの珍しいぞ。しかも4回目なんて3回目から1時間も経ってねぇーしよ」

「・・・」

 

 ミルコの言葉を聞きながら一騎は考えに耽る。返事が無かったことが気になり、目だけを向けて一騎を見るとミルコは首を少し傾げてから問いかける。

 

「どった?」

「もしかしたら俺が原因?」

「どう言うことだ?」

「アイツら全員基本俺を狙ってましたよね?」

「そうだな」

「つまり俺狙い。なら原因は俺に有るってことですよね」

「その考えだとそうなるな」

 

 一騎の考えなら狙われるのは納得する。ヴィランの中には名を上げるためや腕試しのために襲ってくるヴィランはよく居る。ミルコもいままでにもそう言う目的での襲撃されたのが何回か有った。

 無個性でありながら雄英体育祭一年の部を優勝し、ステインを単独撃破した。もし倒せば名が売れるのは間違いない。

 

「・・・妬まれてるとか?」

「は?」

 

 いきなりの一騎の言葉にミルコは間の抜けた声を漏らし顔を向ける。

 

「なんでお前が妬まれるんだ」

「ミルコさんが人気者だから?」

「なんで疑問形なんだよ」

 

「あはは。それでミルコさんはサイドキックも事務所も持たず活動する孤高のヒーローで格好いいし」

(格好いい・・・か?)

 

「人気ヒーローランキングでは常に上位、女性ヒーロー編では1位だし。因みに男女とわずのアンケートでは抱かれたいヒーロー、ミルコさん一位でしたよ。そしてヴィランからの人気も高いですし」

「ふーん・・・」

 

 両手を頭の後ろで組み興味なさそうにするも、少ししてからなにかを思いついたのか口角を上げ

 

「じゃあお前も」

 

 一旦言葉を区切るとミルコは体を起こし隣で寝転ぶ一騎の上に跨がり両手を一騎の顔の左右に着き押し倒した形で覆い被さる。

 

「私に抱かれたいのか」

 

 耳元でハスキーボイスで囁くと顔を離し何時もの不適な笑みでは無く綺麗な笑みを浮かべルビーの様に紅い瞳が一騎を捉える。

 左右に垂れたミルコの長い髪がカーテンのようになり、ミルコの顔しか目に入らなくなる。そして初めての表情を見て少し目を見開くと表情を変えふっと笑い、ミルコの顔に右手を伸ばし頬を触る。

 

「残念ですけど俺は抱かれるより抱きたい派ですので」

「ほーう。大胆な事言うな」

「ミルコさんの方が大胆ですよ。いま現在客観的に見たら学生を押し倒してる様に見えてますよ」

「ハッ!」

 

 鼻で笑うと立ち上がり一騎に手を伸ばす。一騎もその手を掴み立ち上がると服に付いた草とかのはたき落とし、ミルコが歩き始めると後を追う。

 因みに一騎が抱きたい派と言ったのは性的な意味では無く、ユエとかは抱きしめてあげると喜ぶから、そっちでの抱きたい派という意味。そもそも抱きたいを抱きしめると勘違いしてるほどだ。

 

「この後の予定は?」

「適当にヴィラン2・3人位蹴飛ばしたらメシ食いに行くぞ」

「ウッス!・・・」

 

 返事をしてから一騎はミルコの後ろ姿を見て少し訝しむ。

 

(何故ミルコさんは俺に良くしてくれる?昨日の戦いだってヒーロー達が邪魔しないようにミルコさん止めてくれたし。・・・分らん、蹴り技が勿体ないからとか、そんな下らない理由だけとは思えない。なにを企んでいる?

 プロヒーローが俺によくするってことはなにか狙いが有るってことだ。ユエか?だったら納得だが。情報がなさ過ぎる。なにを企んでる、ミルコ・・・・・)

 

 

 それから本当に2人は2・3人ほどヴィランを確保してから軽くご飯を食べてパトロールに戻りほっつき歩く。

 

「今更ですけどミルコさんって家とか有るんですか?」

「ん?無いな。有っても邪魔だし」

「あ~納得。だから持ってるのはスマホと財布だけなんですね」

「そうだな。コスチュームの予備も実家の方だしなにか有れば取りに行けばいいしな。洗濯はお前もしてるように夜泊るホテルの浴衣着てコインランドリー使えばいいしな」

「こう聞くと自由で良いすっね」

「気楽で良いぞ~」

 

 2人は気楽に話しながら手を振る人に振り替えしたりしている。

 その時ふと一騎は有ることに気づく。

 

「サイドキックは雇わないんですか?」

「・・・無いな」

「その理由は」

「そこら辺の雇っても足手まといなだけだ」

「Oh~ストレート」

 

 ミルコは快活に笑い驚いてる一騎を見るとニヤリと悪戯を思いついたような顔をして一騎の肩に腕を回す。

 

「じゃあお前が私のさい――」

 

 ――ゾクリ

 

「っ! イノ!」

「分ってる!これは」

 

「「殺気だ」」

 

 刺すような殺気。それを感知した2人は離れて背中合わせになり神経を研ぎ澄まし周りを見渡す。

 

「ミルコさ――え」

 

 声を掛け振り返った瞬間に右足がいきなり大きく後ろにずれ前のめりに転倒する。

 転倒してから右足を見ると大量に血を流してるのが見え、遅れながら激痛が駆け巡る。

 

「あ"っぁぁあ"!

「一騎!」

 

 周りから悲鳴が上がる。一騎は撃たれた脚を押さえ激痛に顔を歪め、ミルコは一騎に駆け寄る。

 

「っ!」

 

 顔を上げ近づくミルコを見るとミルコの背後の遠くのビルからマズルフラッシュが見えた時、痛む脚を無視してミルコを押し退けると2人の間を弾丸が通り抜ける。

 

「前方1800メートル先、高層マンションの屋上看板の下ぁ!!」

「お前は隠れて手当しろ!」

「了解です!」

 

 ミルコは目当てのビルに向けて駆け出し、一騎は周りの人達に隠れろと指示を出し自分も物陰に隠れる。

 脚の撃たれた周囲の筋肉に集中して力み強制的に止血すると腰の耐震性ポーチから赤い液体が入った小瓶を取り出し蓋を開けて中身を飲む。

 

「よお、7000万」

「あ"?・・・ヴィランか」

 

 直前に声を掛けられと同時に小瓶をになにかをぶつけ壊される。中身が地面に垂れたのを見てイラつきながら振り向くとラフな格好をしている男がたっていた。

 その男の顔に浮かべられているのは一般のソレでは無くヴィランが浮かべる下卑た笑みだった。

 

「あのスナイパーの仲間か?」

「そうだ。てっきりあれで終わりと思ったのになぁ~」

「残念でした」

「まあ、これでころ・・・え」

「そんなもん出してまでべちゃくちゃ喋んなや」

「えっちょ!はや!」

 

 ナイフを取り出した瞬間に一騎は懐まで入ると拳を繰り出す。男も咄嗟にナイフを振り下ろそうとするも間に合わず腹に重い一撃を食らい吹き飛ぶ。

 

「チッ、プロテクターか」

 

 しかし殴った一騎は拳に来た感覚に舌打ちをして悪態を着く。その姿を見た男は立ち上がりニヤリと笑い聞いても無い説明を始める。

 

「そ、そして俺の個性は硬化。触れた無機物の硬度を上げるんだよ。つまりお前の拳は効かない」

「あっそ。でもこんな人目の有るとこで襲撃とかお前らなに考えてる」

「それが賞金獲得条件なんだよ」

「は?」

「知らないのか?」

 

 男はスマホを操作してその画面を一騎に見せる。

 

「お前の首には7000万の価値があんだよ」

「・・・」

「ヒーローだろ?俺達の為に死んでくれ!!」

 

 男は銃を取り出し発砲するも一騎は直ぐに橾流ノ型・流刃で弾丸を逸らし男に接近する。信じられない芸当に男は驚くも直ぐに後方に下がり銃を向ける。

 

「?」

 

 のだが狙いは一騎ではなかった。その事に疑問を持つと銃口は1人の女性に向いてると知り。

 

「い、いや。助けて」

「どうする」

 

 乾いた銃声が響く。女性はもう終わりだと思い目を瞑るも痛みが来ず目を開けると目の前には一騎が立って鞘で弾丸を受け止めていた。

 

「狙うなら俺を狙えよヴィラン」

「無論そのつもり」

「ホントにめんどっぐっふ・・・あ?」

 

 突如と背部に来る灼熱感。その疑問に目線を動かすと背中にナイフが突き刺されていた。

 

「残念」

 

 しかも刺したのが助けた女だった。

 

「ぐ、るか・・・・ハァハァ」

 

 女はナイフを抜いて男の元に行くと嫌な笑みを浮かべる。そして一騎は刺されたところを抑えて膝を着く。

 

「そうよ。坊やは私達にハメられたの」

「クソ」

 

 悪態を着きながらも一騎は考える。

 

 

(確かミルコさんが見回ってるところは何処もヒーローが少ないか居ない場所だった。現にここでもヒーローと殆ど会わなかった。

 いまは色んな人が通報してるけど、到着には最低3分かかるな。あーマジしくった)

 

 一騎は呪った。

 朝から襲撃が有り疲労していた、スナイパーに脚を撃たれたから、助けた人がヴィランだったからいまの現状になった。とは、思っていない。自分が未熟だからいまの現状になった。自分の未熟さを呪った。

 

「ま、やることをやるか」

 

 色んなことを思うもとりあえず一騎は傷口を押さえ立ち上がり、不壊の要領で傷口を塞ぎ、更に怪我の場所を意識して力を込め出血を抑える。

 そして立ち上がった一騎の姿に2人は笑う。

 

「無理しない方が良いわよこのナイフには毒を塗っているもの。長くは無いわよ」

「大人しくすれば苦しまずに殺してやるぞ?」

 

 2人はゲラゲラと下卑た笑みを浮かべ。それに対して一騎は不適な笑みを浮かべ呟く。

 

「毒か、いいね。まだ毒殺されるには時間はあるな」

「なにをいっ「烈火!」 ぐげぶ!!?」

 

 一騎は撃たれて無い左脚に力を込め烈火を使うと瞬時に男に近づき飛斧脚で蹴り飛ばし着地すると女を睨む。

 

「な、なんで!毒は!?」

「むかし空腹に負けて毒キノコ食ったことあってなぁ~それから毒耐性付いてんだわ」

「は、はぁ!」

「覚悟出来てんな」

「お、おんなを殴らないわよね・・・?」

「ヴィランであれば俺は女でも殴る。金剛ノ型・鉄砕ィ!」

 

 殺そうとしてるのに未だに殺されないどころか、女だから殴られないと思ってる女の腹を思いっきり殴り男の方まで吹き飛ばす。

 

「くっそなに・・・は?」

 

 男は目を覚ますと隣で女が倒れてるのを見た後に自分を見下ろす一騎を見て急いで立ち上がる。

 

「くっクソガキがァ!!!」

「鉄砕!!」

 

 叫ぶ男に一騎は容赦なく拳を振り抜く。しかし男は違法サポートアイテムである折りたたみ盾を展開して個性で更に強度を上げて拳を防ぐ。

 

「残念だ「オラ!!」 な!!」

 

 一騎は脚を撃たれ背中を刺され、さらには毒にも犯されてる。だから優位に立ってると思った男は余裕を見せるが、一騎は痛みなど感じていないかのように怪我などお構い無く更に拳を振るう。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」

 

「なにぃい!!?」

 

 

 鉄砕による非常に硬く握り絞められた拳の連打に遂に盾は破壊され男は丸腰になる。しかし一騎は止らない。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ――ッ!!!」」

 

 無数の打撃が男を襲い吹き飛ばす。男は体に身に着けてるプレテクターすら意味を無くし飛ばされた後は壁に激突し完全に戦意が砕かれた。

 

「ひぃぃ!く、るな」

「どうした、お前から始めた戦いだろうが」

「来るな!」

 

 いままでも人は殺してきた。大抵は死にたくないと嘆き逃げるのに目の前の漢は学生にも関わらず嘆くどころか立ち向かってくる。撃たれた脚で強く地面を踏む。そのいままで見たこと無い未知の姿に漢は恐怖した。

 

何かを傷付ける者は何かに傷付けられる覚悟を。

 

 何かを苦します者は何かに苦しめられる覚悟を。

 

 そして、何かを殺す者は何かに殺される覚悟を。

 

 一騎は撃たれた右足で一歩を踏み出し右手を銃の形にして男に向ける。

 

「なにをするにも覚悟が要る! 覚悟はいいな、俺は出来てる!!」

 

「お、俺のそばに近寄るなぁああ――――ッ!!」

 

 一騎が更に一歩踏みだすと男は叫ぶ。しかし一騎はお構い無く近づく。すると次の瞬間

 

踵半月輪(ルナアーク)!!」

 

 2人の人間を脇に抱えたミルコが男の頭に踵落としをたたき込み、完全に意識を刈り取る。

 

「いっ・・・イノ!大丈夫か!!」

「なんとかっすね。その2人は?」

「あぁ、お前を撃った音を消す個性の奴とその護衛だ」

「それ、は・・・・よか・・・・ね・・・ハァハァ」

「お、おい」

 

 一騎の異変に気づきミルコは脇抱えしていた気絶している2人をドサリと下ろし一騎に近づき肩に手を置こうとした瞬間に一騎が前のめりに倒れる。

 

「・・・お、おい!!」

 

 倒れた一騎から大量出血してるのを見てミルコは青ざめる。

 

 

 

 

 ☆

 

 

「うっ・・・うぅう」

 

 一騎は気を失っていたが周りの音に目が覚め薄目を開ける。

 そこは病院――では無く病院に向かう途中の救急車の中。それで一騎はうつ伏せの状態で寝ている。

 

「一騎!死ぬな!目を覚ましてくれ!頼む!」

 

 涙目で声を掛けるミルコをみて一騎は思わず「女の子みたいになくんだ」と呑気なことを思っていた。

 

「不死黒さーん!!聞こえますか?聞こえるおなら手を握って下さーい」

 

 目を覚ましたことに気づいた救急隊員が声を掛けるが一騎は反応しない。その代わり思いっきり歯を食いしばりベットに手を付いて起き上がる。

 

「ちょちょちょ!!なにしてるんですか!安静にして下さい!!」

 

 予想外の行動に全員驚き止めるなか一騎は気軽に大丈夫と答えると自分のポーチの中にある赤い液体の入った残り2本の内の1本の小瓶を取って貰う。

 

「おい、それは?」

「コレは俺専用のポーションです」

 

 ミルコの質問に笑顔で答えると小瓶の蓋を開け中身を一騎に飲み干す。

 

「うっ、ユエには悪いけど流石に味がキツイ」

 

 ユエはUSJでの出来事を考え自分がいなくても一騎の怪我を治せるモノと試行錯誤で作り作り上げた回復薬《ポーション》。

 中身はユエの血液。治癒の個性を最大限まで込めた血液を時間をかけて抽出して溜めたモノ。小瓶一個分作るのに一週間ちょいかかるレアアイテムだ。

 

 しかも()()()()()()()()()()()()()にしか効果を発揮しない。が、一騎なら骨折も今回のような殺傷、毒物等の怪我も治す。

 

「これでもう大丈夫です」

「バカか!とりあえず病院だ!!」

「はい」

 

 笑顔で言うもミルコに怒られ素直に従う。

 

 

 ☆

 

 

「「・・・」」

 

 病院で検査を受けた結果ポーションのお陰で怪我は完治して一晩様子見で入院して明日退院出来るとのこと。

 

「たっく、無理しやがって」

 

 現在は病室のベットの上で一騎は休み、ミルコは横にイスを置いて座っていた。

 

「あの程度無理にはならないんよ~」

 

「「・・・」」

 

 ミルコが叱るも一騎はまるで聞いていなかった。

 

 ずっと疑問に思っていた。ミルコは孤高のヒーローとしてサイドキックどころか事務所も無い。なのに今回は生徒を引き受けたどころか、態々自ら出向いてスカウトしにいった。こんなのは初めてのこと。

 それからもミルコは自分に見せる態度や目がなにか違和感を感じるモノだった。特に救急車の中でのことが1番。

 

「ミルコさん」

 

 だから一騎はこの際だから聞いてみることにする。

 

「なんだ?」

「なんでミルコさんは俺なんかにそんな良くしてくれるんですか?蹴り技が未熟で勿体ないだけとか嘘ですよね」

「・・・」

 

 目を見て真剣に尋ねる一騎を見てミルコは覚悟を決めた。そして首に掛けている人参型のロケットペンダントを取り、中の写真を見せる。

 

「・・・ッ!?」

 

 写真には長い黒髪の女性と子供の頃のミルコが写っていた。

 

 そして写真を見た瞬間、正確には黒髪の女性の方を見た時に一騎は心拍数や体温が上がったのが自分でもよく分かった。

 誰かは知らない、しかし何故か懐かしさを安心さを覚える。そして何故か目を離せなかった。

 

「分ると思うけどこのチビが私だ。そしってコッチの女性は私の母親の様な存在で、姉で、恩人で、師匠で、そして――お前の母、不死黒 強佳だ」

 

「・・・・・・・はぁああ!?」

 

 自分の母。顔どころか名前も知らないのに若かりし頃の母親の写真が眼の前にあるのだから思わず数秒間の沈黙の後に驚愕の声を上げる。

 

「私の家は貧乏って訳ではないけど両親が共働きでな、幼い頃からよくお前の母が、強姉が面倒を見てくれた。家周りのことは無論、勉強面もな」

 

 ミルコは静かに語る。大事な存在であった一騎の母である強佳との日々を懐かしむかのように話す。

 

「強姉はヒーローになってからもよく面倒をみてくれた。サイドキックは付けず事務所兼家で運営して色んなとこに飛び回ってた」

「ミルコさんは母のをまねて?」

「そうだ」

 

 即答だった。それほどまでにミルコが母に憧れてることを知ると変な気分だった。それからも話は続き、そして辛い表情になる。

 

「そして強姉は彼奴、あの男と・・・結婚した」

「!」

 

 結婚。その言葉を口にした瞬間にミルコの目には明らかな怒りが浮かんでいた。

 

「それからは強姉とは会うどころか連絡すらろくに出来なくなった」

 

 出していたロケットペンダントを大事に服の中に仕舞うと一騎を易しい目で見る。

 

「でも15年前、私が11の頃に強姉から電話が来た」

「内容は?」

「息子が生まれたって報告だった。そして『この子、一騎は恐らく無個性なの。これからの人生は大変だと思うから困っていたら助けてあげてね、ルミちゃん』って内容だった」

 

 異形系や目に見える常時発動型の目に見えて分る個性ではない限り、子供が個性持ちか無個性かの判断なんて出来ない。だから一騎は驚いた。

 

「なんで俺が無個性を知れるんだ」

「多分、女の勘と親の感だろうな。強姉は感が鋭いから」

 

 女の勘と言われれば納得せざる得ない。いままでもユエ、才子、メトリの3人にはよく、鍛練で無理して怪我したのを隠してもよくバレる。その時よく女の勘と言われるから。

 納得すると次の疑問が湧いた。ソレは

 

「ミルコさんは母へ恩返しのために俺に良くしてくれるんですか?」

 

 その質問に尽きる。そしてミルコは複雑そうな表情を浮かべる。

 

「蹴り技が勿体ないってのもあるし。恩返し、それもある」

「それも?」

 

「さっきも言ったが、私にとって強姉は母でもあり姉貴でもある存在だ。だから強姉の息子のお前は、勝手だが私にとっては弟の様な存在だからだ」

「そう、ですか」

 

 ミルコの言う事を一騎は疑えない。だってエリは自分を兄だと慕ってくれてるし自分もエリを実の妹の様に思ってる。ソレと同じだと理解しミルコの目を見るともう、疑えない。

 

「すまなかった」

「なんでミルコさんさんが謝るんですか」

 

 何時もは男勝りで勝ち気な表情を浮かべるミルコがいまは泣きそうなほど弱々しい表情を浮かべている。

 しかもいつもピンっと立っている耳は心なしかシュンっとなってるよう見えている。

 

「私は強姉が死んだのを1年ほど経ってから知った。それからずっとお前に会いたくてあそこに行っても何度も門前払いだった。ヒーローになってもだ。時には待ち伏せもしたけどダメだった。

 そして3年前にお前が養子に出されたと知った」

 

 3年前、それは一騎が家を出て言った時。それほど長く考えて探してくれていたのを知ると一騎は唖然とするしかなかった。だって単純計算で10年以上は自分を気に掛けていてくれたってことになるのだから。

 

 そしてミルコは言わないが、一騎が養子に出されたと聞かされてからは文字通り北海道から沖縄まで全国の養子縁組や孤児院の全てを捜し回ったのだ。

 

「傷ついて苦しんでるのを知らずに会えず守れなかった。ごめん」

 

 頭を深く下げるミルコをみて一騎は悟った。ミルコは信用して良いと、目の前のヒーローは初めて信用して良い人だと。

 だって、さっき言ってたときに嘘を言った様子はなく、頭を下げてるいまは顔は見えないが涙が零れているのだから。

 

「顔を上げて下さい」

 

 言われるがまま顔を上げる。

 

「いままで気にしていてくれてありがとう御座いました。でも、これからは俺なんかを気にしないで下さい」

「っ」

 

 その言葉にミルコは心が締め付けられた。

 気にしなくて良い、それは聞き方によれば関わらなくていいって意味になる。何より自分のことを『なんか』と卑下した言い方が聞いてて辛かった。

 

「だから、これからは母の言葉に縛られず自由に生きて下さい。ミルコさ・・・・

 

 ――ルミ姉」

 

「!!」

 

 だが一騎の微笑む笑顔がその感情を吹き飛ばした。だってその笑顔はミルコには強佳と重なって見えたから。

 この職場体験の時に何度も一騎の不意に見せる笑顔や行動が強佳と重なることがあった。一騎の作った味噌汁の味なんて驚く事に全く同じだった。そして今回のコレは流石は親子か、完全に似ていた。

 

「えっちょ!ミルコさん!?」

 

 だからミルコは思わず一騎を抱きしめた、力強く。

 いきなりで驚いた一騎はミルコを退けようとするもミルコは離さない。

 

(自由に、なら私は強姉が出来なかった一騎の成長を見届ける)

 

 ミルコはこれからのことを決意すると一騎から離れる。解放された一騎は少し咳き込む。

 

「どうしたんですかいきなり」

「いやー、お前が・・・ルミ姉なんて可愛いことを言ってくれるからつい、な」

「さいで」

 

 ふてくされたように呟くとミルコは「可愛い奴め~」といいながら背中をバシバシ叩く。

 

「俺病人!」

「ふー。じゃれ合いはこの程度にして」

 

 ミルコの纏う雰囲気が変わったことで一騎も姿勢を正し真剣に聞く。

 

「今日、お前を襲った奴らだが全員が賞金稼ぎだと警察から情報が来た」

「賞金稼ぎ?」

「そうだ。どうやら闇サイトにお前の首に7000万の賞金が賭けられてるようだ」

「最後の男も俺の事を7000万って言ってたな」

 

 そこまでの情報を聞いて確かに今日やった奴らは普通のヴィランとはなにか違ったといまになって気づく。

 

「それで雄英の先公ウッゥ"ン! 教師陣との話でお前の職場体験は今日で終わりとなった」

「なっぁ」

「闇サイトの期限は明日で終わりだ。だから今日の夜から雄英の教師でイレイザーヘッド、ミッドナイト、スナイプの3人がお前の護衛に来る」

「賞金稼ぎ相手に過剰戦力ですね」

「まあ、雄英の教師ならいざ知らず。生徒、ましてや1年の首に7000万もの賞金が付くなんて前代未聞だからな」

 

 話を聞いて一騎は次第に俯く。

 まだ15しか生きてないガキで学生なんだ。ビビっても仕方無いとミルコは思いどう声を掛けようか悩み、声を掛けようとしただ時だった。

 

「ミルコさんは俺に嘘を付くんですか?」

「ああ"?」

 

 そんなことを言われ思わず素で返してしまう。そしてその反応を見た一騎はもの凄い不適な笑みを浮かべる。

 

「ミルコさんが言ったんじゃないですか。『私の所に来れば強くしてやる』って!

 俺はまだ、全然強くなったと思えてませんよ?」

 

「いや、しかしなぁ・・・」

「貴女も俺のこと邪魔になりました?」

 

 いきなりシュンと捨てられそうになる子犬の様な落ち込んだ表情を浮かべる。するとミルコは一騎の両肩を力強く掴む。

 

「ンなわけねぇだろ!」

「じゃぁ良いじゃないですか!」

 

 直ぐに明るい表情になる。コロコロと変わる表情にミルコは思わず「汚ぇ」と内心思ってしまうも、なぜか笑ってしまう。

 

「後悔すんなよ」

「この程度でイモ引いてたらそれこそ後悔しますよ」

「生意気め!!」

 

 それだけ言うと一騎の背中をバシンと強く叩くと立ち上がる。

 

「じゃあ説得はしとくから後には退けねぇぞ」

「後退のネジなんざとっくの昔に壊れてますよ」

「言うじゃねぇか(明日は一日中側に居るって言えば何とかなんだろ。多分)」

 

 また笑うとミルコは電話をしに部屋を出ようとすると一騎が呼び止める。

 

「ミルコさん」

「どうした?」

 

 ミルコが振り返ると一騎は一旦目を瞑ると次にもの凄く優しい表情を浮かべる。

 

「改めて、これからよろしね。ルミ姉」

「・・・!」

 

 その笑みは性別や年齢は違っても一騎の表情は何処までも母である強佳にそっくりだった。

 

「おう!」

 

 

 

 ミルコがヒーローになったのは強佳に憧れたから。でもその強佳はもう居ない、だからこれからは一騎と腹違いとは言え大事にしている妹のユエの2人を絶対に守ると天国に居る強佳に誓う。

 

「まずはどうにかして公安の連中を黙らせないとな」





ミルコのキャラが違い過ぎる。
因みにミルコは一騎を為に努力しまくり原作より強いです。

次回「職場体験終わり」

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