無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第44話:職場体験終わり

 

 

「二虎流 鉄砕・蹴!!」

半月狩り(ルナハント)!!

 

 一騎の金砕棒の様に硬く全てを叩き折るような鋭い剛脚とミルコの鞭の様にしなり全てを刈り取るような鋭い柔脚、2人の蹴りがぶつかると共に個性使用可の市立総合体育館の中に激しい衝突音が響き渡る。

 

「クッそぉおお!!!」

 

 蹴りの押し合いの結果、一騎が押し負け、後ろに少し下がる。

 そして「また負けたぁ!」と嘆き座り込む一騎に手を差しだし優しげに笑うミルコ。

 

「もう押し負けても吹き飛ばなくなったな。良くやった(私もそこそこ本気なんだけどな)」

「まだまだですがね」

 

俺はミルコさんの手を取り立ち上がり、また組手ならぬ組脚を始める。

 

 

昨日ミルコさんは本当に先生達を説得して今日の最終日ちゃんと出来る様にしてくれた。

そして今日は朝早くから退院してみるミルコさんと行動していたがまぁ、当然のように賞金稼ぎが襲ってくる。

 

が、それだけじゃなかった。なんと俺を無個性差別で個性使用の虐めをしていたのが学校にバレて退学させられた元同級生と先輩方が報復で個性や刃物を使って襲ってきた。のだが

 

『私の義弟になにしてんだぁ!!』

 

って言いながらミルコさんが全員蹴り飛ばして速効でとっ捕まえちゃった。

しかも「相手の親が示談を申し込んできても絶対に許すな」とミルコさんに言われた。昨日の件が原因かわかんないけどやけに過保護?になっている。

 

他にはミルコさんの紹介で町外れの廃倉庫で目から上をマスクで覆い、手にナックルダスターを装備した人と会い・・・殴り合った。

あの人の強さ(筋肉)は個性由来のモノじゃなくマジの本物だった。しかもマジ強い、だから多分あの男・・・いや、あの漢はUSJで戦った脳無にも勝てる。・・・でも、凄い酒とタバコ臭かったからガツガツこないで欲しかった。

 

「そうだ」

「どうした?」

「母さんってどんな個性だったんですか?」

「あ~」

 

俺の質問にミルコさんは少し遠い目をすると口を開く。

 

「まぁ、チートかな」

「?」

「強姉の個性は強化で、自分と物にのみ効果を付与できる個性でな。戦いにおいては身体能力、打撃力、パンチ力の三つを強化して5の力を50にでも500にでもすんだよ。

 コレを刀でやると切れ味、斬撃、強度、強化でえげつない切れ味を誇る刀になるし何なら斬撃を飛ばすんだよ」

 

「いや、チートじゃん」

「だろ!しかもコレを防御や回復力にも使うし滞空時間強化とかしたら空も飛ぶしな」

「えぇ~」

 

「まぁ強姉曰く

『何事も頭を使うの。個性の解釈を広げるのよ』

 だとよ」

 

何ソレ。そんな凄い人から俺みたいなの生まれたの?負い目しか無いよそれ。

 

「強姉がその気なら間違い無く№2には慣れたな。余裕で。

 それでソレが無くても良い人でいい女だな」

 

「そんなにですか」

「そうだ。あ、もう17時だし終わりにするか」

「ウッス!職場体験、ありがとう御座いました!」

「おう!もう教師連中、外で待ってるぞ」

「はーい。そうだ」

「ん?」

「ユエも会いたがってましたよ」

「じゃあ何時の日か会いに行くかな」

「そうして下さい。俺も会わせたい人とかいるんで」

 

そう言って荷物を持つ。

 

「それではさようならです。ミルコさん」

「・・・」

 

笑顔のまま返事は無い。無視される。

 

「あのー」

「・・・」

「・・・さようなら、ルミ姉」

「おう!また今度な」

 

ミルコさんは昨日から2人の時だけはこう呼ばないと反応してくれない。ミルコさんってこんな性格だっけ?

 

 

 

 ☆

 

 

「お兄様ぁ~♡」

「ユ~エ~」

 

「「ひしっ!」」

 

 家まで送って貰った一騎は既に帰宅して出迎えて抱きついてきたユエと抱きしめあう。

 

「なんなんだこの兄妹」

「あらあら、仲良しね」

「あはは」

 

 護衛に来た相澤は2人の反応に呆れミッドナイトは温かい目で見守りスナイプは乾いて笑っていた。

 一騎の職場体験は終わったが賞金はまだ6時間残っているために賞金が下ろされるまでこの3人が護衛に当たる。

 

 最終日もする代わりに17時以降は教師陣に一騎をちゃんと渡す。これはミルコが根津に出した提案だった。

 相澤も最初は「合理性に欠ける」と苦言を呈したが、一騎が「ミルコさんがいるから大丈夫」と言った事で渋々信用して了承した。

 

「さぁ先生方、あがって下さい! ご飯作ります!」

「お兄様、メトリさんが既に人数分を作って待ってますよ」

「そうなの?」

「はい。職場体験で疲れた子にそんな事させられないわって言ってました」

「そっか」

「あ、いや」

 

 一騎とユエが話してるのを相澤が遮る。 

 

「ご飯は要らん。俺達は警備に来たのだから」

 

 そう、3人は一騎の賞金が取り下げられるまで守る為に来ている。家に入れば警備が出来ないし、ご飯を食べていれば気が緩む。コレに関してはミッドナイトとスナイプも同意見だった。

 スナイプに関しては既に昨夜に一騎の家に行き、周辺で狙撃出来そうな場所を把握し、隠れて見張れる場所も探し出しているのだ。

 

「まぁまぁ、そう言わずにどうです?」

 

 なかなか家に入ってこないからトウシが迎えに出てきた。

 

「いや、ですが」

「既に妻もあなた方の多分のご飯も作ってますから全ては食べきれません。それに私の個性は透視、どんな障害物も透過してみることが出来、遥か先のモノもみることが出来る個性です。

 私も警戒するので、何かあれば即座にあなた方にお伝えします。それに不死黒君も側に居てくれた方が心強いでしょうし、子供達の学校でのことを教師であるあなた方からも聞きたいんですよ」

 

 ここまで言われ、特に個性を知ると確かに外で気を張り詰め続ける必要が無いので3人は話し合いその結果、御相伴に預かることにした。

 

 

 ☆

 

 

「俺の職場体験はこんな感じでした」

 

 一騎の家でご飯を食べ、食後の紅茶を飲みながら一騎とユエの職場体験の話で盛り上がった。しかも話のネタにミッドナイトも学生時代を話していたが、やはり一騎の話が特に盛り上がった。

 

「それでお兄様」

「どうした?」

 

 話が終わるとユエは背後から一騎に抱き、左首筋に有る八重歯の噛み痕を撫でる。

 

「この八重歯の後はナンデスカ?」

「あ、いやヴィランにやられたとか特に無いぞ」

「ジャアナンデスカ?」

 

 

 

 八重歯のあと、それはステイン戦後の夜にまで遡る。

 

 

 

 ★

 

 

「何してんだろあの子」

 

 あのときはまだ賞金首になっていたことを知らなかっために泊るホテルを決めた後に近くの森林公園で10キロのランニングをしている途中に真夜中にも関わらずベンチに座ってる女の子を見つけ近づく。

 次第に分るのは失敗した感じのお団子ヘアーに制服を着た同年代ぐらいの女の子だった。

 

「何してるの?」

 

 真夜中に女の子一人、しかも何処かの学校の制服を着てるときた。流石に心配になり声を掛けると、その子は一騎をみるとただ一言。

 

「血の香りがします」

 

 思いもしない言葉を返す。

 

「え?」

 

 血の香り、その言葉で一騎が最初に思いつくのはステインに付けられたこめかみの怪我だった。

 

「あー怪我してるからソレが原因かも」

 

 素直に答えるが、それと同時に一騎は眼前の女の子に違和感を持つ。

 

(血ならこの子からも臭う。怪我の様子はないのにだ。そして何だこの一般人とは思えない気配は朧気な気配は?)

 

 考えるがとりあえず最初の質問を繰り返す。

 

「で、なに「貴方の血飲みたいです」 え、血?」

 

 血が飲みたいと言う言葉に驚くも直ぐに血液嗜好症(ヘマトフィリア)なのか個性でそっち側に引っ張られたのかと考え、血の臭いがするのにも納得する。

 その間も女の子がコッチがみているから一騎は笑って答える。

 

「俺なんかでよければ良いよ」

「っ!」

 

 その返答に女の子は驚く。いままで笑顔で良いよなんて言ってくれた人は居なかった。

 

「い、良いのですか?」

 

 つい聞き返してしまうも、一騎の返答は変わらない。

 

「さっきも言ったけど俺で良ければね。っても汗掻いてて臭いけど」

「あの人の言った通りです」

 

 呟いた瞬間にぬるっと一騎との間合いを詰めると正面から襟を少しずらすと左首筋に噛みつく。

 

「イッ」

 

 いきなりだったから痛いと言おうとするも抑えて、何故かユエみたいに感じてとりあえず頭を撫でる。

 

「貧血にならない程度でお願いね」

「ンッンッ」

「聞いて無い」

 

 人は美味しいモノを食べると自分の世界に入ったりするからそれかな?と思い満足するのを待つ。

 

「プハ♡ 美味しかったのです」

「・・・!」

 

 離れてから感想を言ってペロリと舌なめずりをする。その姿が一騎にはどうしてもユエに重なり驚く。

 

 

 ☆

 

 

 ってなことがあった。しかしコレをそのまま言う事が出来ないから一騎は少し悩む。そのまま言えない理由は特にない。

 

「あー個性の影響で吸血衝動に引っ張られた子が居て、血が飲みたいと言われたから許可したら首筋をカプッていかれた」

「女の子ですね?」

「え?」

「女の子ですね?」

「そ、うだよ(二回も言った!!)」

 

 一騎だけでは無く、その場に居た全員が同じことを思った。

 

「私以外の女がお兄様の首に噛み痕を残すなんて・・・」

「ユエ?」

 

 小声で呟いたのが聞こえず聞き返すと、ユエは何故か恐怖を感じる笑顔を浮かべる。

 

「お兄様」

「なっなに?」

「私もお兄様の血が吸いたいです。良いですよね?」ニコ

「え、あ・・・」

 

 何故かユエがコワイと思ってしまった一騎は思わず声が詰まる。そしてチラリと壁の方をみたトウシが声をかける。

 

「ユエちゃん。お風呂湧いてるから血を吸うついでに一緒に入ってきな」

「はーい」

「トウシさん!止めて下さい!!」

「行きますよー、お兄様♡」

 

「ちょっ!先生!!」

「フフフ。私達は兄妹の仲良しは止めないわ」

「ミッドナイト! メトリさん!!」

「一騎君、ファイト!」

 

「えぇ!明!」

「あ、明ちゃんも一緒に入る?」

「今回は遠慮します」

「ざーんねん」

「今回もなにも一回もないよ!!」

 

《マスター》

「アミ!説得を!!」

《漢なら腹を括るのもですよ!》

「俺じゃなくてユエの説得を!!」

「行きますよお兄様」

「あぁあああ」

 

 個性も使って無いのに途轍もない力で一騎は抵抗を虚しくつれて行かれる。このあと目眩が起きるほど血を吸われ右首筋にクッキリと八重歯の痕が付いたのは別のお話。

 一騎がつれて行かれた後にトウシはメトリアイコンタクトを取ると、メトリは頷き明に声をかける。

 

「明、食器洗うの手伝って」

「はーい」

 

 そして二人が行くとトウシは相澤達の方をみる。明らかにトウシが一騎達を誘導したのをわかりっていた三人は賞金稼ぎが来たと理解し、服を整えアイテムを確認する。

 

「先生方。この家を取り囲むように合計13人の人物を確認しました。異形系は4人です」

「分りました。ここからは」

「私達ヒーローの役目です」

 

 ミッドナイトが言い切ると三人は立ち上がり部屋を出る――そのとき、

 

「は?・・・え!」

 

 トウシが驚愕きの声を上げ椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がる。その様子に三人がトウシをみるとトウシはだらだらと汗を流す。

 

「どうしました?」

「・・・んだ」

「?」

「ヴィラン13人死にました。瞬きした瞬間に」

 

「「「はぁ?」」」

 

 なにを言われたのか理解出来ず三人は間の抜けた声が漏れる。三人が外に飛び出そうとするがトウシが壁の一方だけを見て固まって居るために三人は動かない。

 もし、13人を文字通り瞬殺した奴が来たら不味いと思い戦闘態勢維持で待機する。

 

「殺したのは男。紺色のジーパン、タンクトップ。オールバックの金髪につり目の金眼」

「っ!」

 

 そこまでの人物像でミッドナイトはUSJでエクトプラズムを倒したエリクの仲間のハンターと分り飛び出す。それに続き相澤とスナイプも出て行く。

 

「・・・あの男何処かで」

 

 一応ハンターが逃げたときの為に見張るが、その時だった。

 

「なっっ!!!」

 

 ハンターと目が合った。相手は外、自分は家中なのに完全にみているのを気づかれている。だってハンターはすでに体をコッチに向けて歩いてるのだから。

 ヤバいと思うもどうしようも無い。そう思ったとき木の葉がハンターの姿が重なった一瞬の間にハンターの姿が掻き消える。

 

「あれは人間じゃ無いぞ」

 

 トウシは思わず頭を抱える。だってハンターを見たら何故か体内どころか服の中を見ることすら出来なかったから。

 

「あなた、どうだったの」

「あぁ、一騎君達はどうやら本当に面倒くさい運命に囚われてるな」

「もう私達にはどうすることも・・・」

「出来ない。俺達に出来るのはあの子達をサポートすることだけだ」

「そのようね」

 

 二人は静かに話す。

 

 

 

 ☆

 

 

 深い山の中、不自然に一つだけぽつりと存在する大きな洋館、その一室でエリクはパソコンを操作していた。

 

「さて、賞金は取り下げて、探るか」

 

 今回一騎に賞金を賭けたのはエリクだ。一騎に強い奴をぶつけて成長をさせようと企んでいた。

 しかし、賭けた賞金は1千万だけだった。なのに賞金は最終的に8千万にまで上がったことを訝しみ賞金を賭けた奴らを探し出すことにした。

 

「あー巫山戯たことをしてくれる。まあ予想じゃあ賞金の加算したのは彼奴の父親とAFOだろうがな」

 

 エリクは調べる前に背もたれに大きくもたれ、窓の外の月を見上げると思い出したように呟く。

 

「そう言えば明日は一騎はユエとデートするんだっけか。・・・茶化しに行こうかな・・・辞めよ。折角のデートに保護者同伴とか巫山戯てるな。

 しかも確か中国から殺し屋一族が日本に来てんだっけか。・・・釘を刺しに動かないとな」

 

 やることが多く、エリクは「面倒くせー」と言うも口角は上がり楽しそうな表情を浮かべていた。

 

 

 ~???~

 

 

 港町の片隅に有る古い巨大な廃倉庫。その中に一騎から血を貰っていた女の子、トガヒミコが楽しそうに鼻歌を歌いながら、スキップしていた。

 

「~~~♪」

 

 一騎はいまや時の人状態。しかもファンクラブまで有るほどだ。だからか誰かがネット上に一騎の沢山の台詞の切り抜き動画を上げている。トガはソレを聞いていたのだが、脚を止めて一点を見つめるとイヤホンを外しポッケにしまう。

 

「ご機嫌ね」

 

 声を掛けるのは地面に着きそうなぐらいの紅い髪、赤玉と間違えそうな程に綺麗な紅目が特徴の女、敵名:エリザベート・バートリーが姿を現す。

 そしてエリザベートの問いかけにトガは幸せそうに笑みを浮かべる。その笑顔を見てエリザベートも嬉しそうに微笑む。

 

(フフ。いい顔、・・・・良いメスの顔。坊やの血の味を知ったからかしらね。・・・・・にしても本当にユエちゃんと似た笑顔をするわね)

 

「それでアナタの頼みとはなんですか?」

「?」

「私はアナタのお陰で一騎君の血を吸えました。ですから約束通りアナタの要求を聞くのです」

「あぁー」

 

 確かに二人はエリクがステインと会うよりも前にエリザベートはトガと会い約束をした。が、したことはしたが素直に守るとは思っておらず律儀とエリザベートは思ってしまった。

 

「いま敵連合は精鋭部隊を作るために仲間を探してるわ。だから貴女には敵連合に入って欲しいの」

「えぇー。自由に生きられないのは嫌なのです」

 

 途轍もなく嫌な顔を浮かべるトガ。しかしエリザベートは予想通りと言わんばかりに言葉を続ける。

 

「上手いこと行けば、次は敵同士としてと成るけど坊や、・・・一騎に会えるわよ。――素の貴女で」

「・・・じゃあやりまーす」

 

 少し悩むもまた会える。特に今度は素の自分で会えると思うと素直に承諾する。

 

「近々義欄って男が接触すると思うわ。無論私との関わりは内緒よ」

 

 人差し指を口元に持って来て妖しげに告げる。

 

「はーい」

 

 元気に返事をするトガを見て、エリザベートは陰に沈むようにして消える。

 居なくなったことを確認したトガはスマホを取り出し体育祭個人戦決勝戦で勝ち血塗れの手を天に伸ばし拳を握る一騎の写真を見る。

 

「今度は本当の私と会いましょうね、一騎君♡」

 

 そしてトガはまたイヤホンを耳に付け、鼻歌を歌いながら闇の中に姿を消す。





エリク、ハンター、エリザベートがそれぞれ動くね!

次回「その後① 暗殺一族」

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