無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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今回は一騎の強化回?と書きたかったから書いただけの物デス。しかも1万5千文字超え!?

沢山の誤字脱字報告ありがとう御座います!! m(_ _)m




第45話:その後①暗殺一族

 

 

 

 

「よし、そろそろ休憩するぞ二人とも」

 

「「はい!!」」

 

 一騎の言葉にユエと八百万は汗を拭いながら元気よく返事を返す。

 

 

 今日は職場体験最終日の翌日、時刻は午前6時。

 

 いつもは一騎とユエだけだが、今日は八百万も居るのには理由が有った。

 昨夜にユエが「モモちゃんも弟子になりましたし、明日朝の鍛練誘ってみては?」と提案してから八百万に連絡したところ「是非とも!」と返信が来たことで今日の鍛練に朝5時から加わっているのだ。

 

「所で不死黒さん、お一つ良いでしょうか?」

「なに?」

「首の複数の絆創膏はどうしたのでしょうか?」

「・・・」

 

 昨日ユエに右首筋に噛みつかれて正に吸血鬼に噛まれたような痕が有るのだ。ユエはトガみたいな八重歯ではない代わりに血で八重歯を作った。

 しかも噛み痕が普通に目で見えるところなので絆創膏で隠している。

 

「気にしないでくれ。頼むから」

「・・・」ニコニコ

「あ、はい」

 

 困ったように目を逸らす一騎とニコニコとしているユエを見てなんとなく察した八百万はそれ以上追求しない。

 

「よし初め・・・・・」

「「??」」

 

 いきなり黙り込みなにかに集中するような表情になり、ユエと八百万はお互いに顔を見ると首を傾げ一騎をみる。

 

「誰だ!そこに居るのは!」

「「ッ!?」」

 

 誰も居ない所に向かっての叫ぶ。その事にユエ達は体をびくりと跳ね上がらせ、ユエは咄嗟に液体操作の個性を使い周辺確認をすると驚愕の表情を浮かべると同時に一騎が見つめる木、正確には木の枝に人影が現れる。

 

「よく気配を感じ取ったな。関心関心」

 

 現れたのは頭の右側に鈴の飾りの付いた狐面を付け長く鮮やかな鼠色の髪にアメジストのような紫紺の瞳、紫の生地に黒い龍の刺繍されたチャイナ服にズボンが特徴の女性だった。

 

「すみません姉様」

「私達・・・・の所為で見つかり、ました」

 

 更に最初の女性の立って居る枝の下に更に二人、一人は紫色の髪に緑色の瞳が特徴の女性と綠の髪に灰色の瞳が特徴の女性が現れる。

 

「よい。どうせ声を掛けるつもりだったのだからな」

 

 二人の女性が片膝立ちで頭を下げ謝罪すると最初の女性は木から飛び降り普通に着地して一騎達を見る。そたタイミングで二人の女性も立ち上がり後ろに控える。

 

「誰だ?」

「うむ。名乗っておらんかったな。儂の名は呉翠鈴(スイリン)

 

「はーい!私は呉稟花(リンファ)だよ~!」

「私・・・は、呉美花(ミーファ)で、です」

 

「・・・・呉?」

「鈴飾りの狐面・・・」

 

 三人がそれぞれ名乗り終わった時にユエと八百万はお互いに考え込む。すると直ぐに何かに気づき顔を蒼白くし、驚愕の表情を浮かべる。八百万に限っては恐怖の表情も混じっていた。

 

「呉!!? 呉ってあの中国の呉一族!!」

「知ってるのか?ユエ」

「お兄様!呉一族って裏の業界では有名な殺し屋一族ですよ!! 中には海外の№1ヒーローを殺した経験のある者も複数存在してるんです!」

「そうなの?」

 

 ユエの慌ててする説明に一騎はいまいちぴんと来ない様子で八百万を見ると、八百万はコクコクコク首を縦に大きく振るう。

 

「へー。そんな凄い人が俺に何用で? 賞金が目当てですか?でも残念なことに既に俺の賞金は取り下げられてますよ」

「賞金?くだらん」

 

 笑いながら言う一騎に翠鈴は鼻で笑い飛ばす。

 

「そんなものより、儂はお主に用があり来た」

「なんだ?」

 

 一騎が聞く耳を持つと翠鈴は嬉しそうに口角をあげ、右手を一騎に向ける。

 

「お主、儂に子を仕込まぬか?」

「は?」

 

「「はぁあああああ!!??」」

 

 翠鈴の爆弾にも似た発言に一騎はフリーズし、ユエと八百万は驚愕の声を上げる。

 

「なんの冗談ですか?」

「儂は冗談めいて言ったりはするが命を扱う以上は冗談を言わん」

「・・・子をしこ・・・・それは俺が貴女を妊娠させるってことで?」

「うむ!その解釈であっておる」

 

 思わず頭が痛くなったのか一騎は頭を押させる。そしてユエは同類を見るような目を翠鈴に向ける。

 

「えーっと、なんでですか?」

「儂もあと数年もすれば肉体の全盛期。そうなる前に跡継ぎの子を儲けようと思ってな。相手はだいぶ前から探しておったがなかなか見つからなんだ。だが、この間の体育祭でお主を見つけたわけだ」

 

「あと数年で肉体の全盛期ってことは二十歳?」

「惜しい、19じゃ」

「理由は分りましたが、俺は無個性ですよ」

「ハ!くだらん」

 

 一騎の言いたいことが分った翠鈴は鼻で笑うと、怪訝な目を向ける一騎に説明する。

 

「個性の有無などくだらぬことよ」

「なぜ?言いたくないけど貴方の家業の者なら個性は大事でしょ?ヒーローの中にも個性婚する者も居るし」

「まったく分っておらぬな」

「?」

 

「個性など、所詮は人類という種族に後付けされた物に過ぎぬ。

 そしてどれだけ強き有用な個性だろうと、ソレの使い手が個性を扱える頭を持っておらなければ、個性に耐えきれる体をしていなければ、塵芥にも等しいわ」

 

「!! なるほど。つまりは個性よりも健康で健全な体が優先ってことか」

「うむ、その通り!そしてお主は儂が見てきた人間の中で1番理想なのでな」

 

 翠鈴の言葉に一騎は納得する。確かにどれだけ強い個性だろうと身体が耐えきれ無ければ意味は無いのだから。

 

「シンプルイズベストって言葉もあしね~」

「お、お姉ちゃん」

 

 後ろに控えていた稟花が付け加え、美花がオロオロする。2人のその様をみて翠鈴は易しい目で見ると、一騎に目線を移し問う。

 

「それでどうじゃ?儂は自分で言うのもあれだが、胸は有るし良い体しておる。これをお主の好きにして良いぞ。お主の年齢で言えば魅力的じゃろ?さらに子が出来たからと言って籍を入れろとは言わぬ」

「・・・」

 

 一騎には突拍子もない話な為に思わず考えてしまった。その姿にユエと八百万は凄く心配して見る。

 そして一騎の答えは。

 

「普通にごめんなさい。犯罪の片棒は担ぎませんよ?」

 

 拒否だった。しかし、翠鈴もそのような返答は予想済み。

 

「やはりか。ならばこうせんか?いまから儂と戦え。そして儂が勝てばお主の子種を貰う。儂が負ければお主には近づかん。どうじゃ?」

「自首するって選択はないのね」

「ないな。それにお主に主導権はありはせんよ?儂は堅気に手を出しても良いのだからな」

 

 最後の一言だけで一騎は全て理解する。全て計画にはめられていたことを。ただ、最初っから一般人を人質に子種を要求しないのは慈悲の様な物だと。

 しかし、これらとは別で一騎自身、目の前の女の強さを見ただけで分ったから途轍もなく、手合わせをしてみたかったのだ。

 

「良いよ。やろうか」

「うむ!」

 

「「お兄様!/不死黒さん!」」

 

「悪いな、二人とも。子供云々の前に、俺はこの人とどうしても戦ってみたいんだ。直感で分る、俺の知らな武のなにか(領域)を見れると」

 

 一騎の考えてる事を聞いてユエはしかたないか、と諦めて後ろに下がる。それを見て八百万も後ろに下がるが、一応相澤に連絡をと思いスマホを取る

 

「ごめんね~。スマホは没収だよ」

「なっ!?何時の間に!!」

「ごめんな、さい。・・・姉様の、邪魔はさせ、させないよ」

 

 知らぬ間に回り込まれてた稟花と美花の二人に八百万とユエはスマホを没収され黙って見届けるしかなくなった。

 そしてユエは二人の体の動かし方を見て、自分と同等の強さだと理解する。

 

 

 ☆

 

 

 二人は10メートル程離れ向かい合い、一騎が口を開く。

 

 

「決着は相手を行動不能にするか参ったと言わせるかだ」

「うむ。ルールは」

「バーリトゥード」

「何でも有り、か。よいのか?」

「個性を使えば良いよ。それでも俺は負けないから」

「やはりよいの、お主・・・!」

 

 三日月の様に口元を歪め笑みを浮かべる一騎。それを見て翠鈴は纏う雰囲気を変えると、あっという間に一騎との距離を詰め眼前に立つ。

 

「なっ!(脳無と同等かよ!?)」

 

 想像を超えた速度に驚くも即座に縦拳を放つ。しかし翠鈴は簡単に片手で受け止める。

 

「マ~ジカー」

「うむ、良き拳じゃ! 次は儂から行くぞ。 フッ!」

「ガハッ!・・・オラ!」

 

 翠鈴は受け止めた一騎の拳を握ると捻る、たったそれだけで一騎の体は大きく回転して背中から地面に叩き付けられた。

 一瞬なにが起きたか理解出来なかったが、直ぐに脚を蹴り上げ翠鈴を蹴る。しかし翠鈴はぶつかる直前に手を挟むことが出来、自ら後方に跳んだことでたいしてダメージはなかった。

 

 そして一騎は思わず笑みがこぼれ、笑いながら起き上がる。

 

「ふ、ふふふふ。 いまのは合気だな?」

「うむ、正しくな。儂もそちら側ゆえ」

「あ~やっぱり。次は俺から、行くぞ」

 

 宣言と共に一気に間合いを詰める。

 

「二虎流・金剛ノ型 飛斧脚!」

 

 強烈な跳び蹴りを放つ。それに合わせ翠鈴は縦拳をぶつける。

 押し込めないと悟った一騎はバク転で着地と同時に足払いをしかける。しかし翠鈴はジャンプで避けると一騎の脳天に目掛けて脚を振り落とす。

 

「橾流ノ型・流刃」

 

 振り下ろされた脚をギリギリで側面を叩き、逸らすとバク転で後方に下がり仕切り直す。

 が、一騎は冷や汗が止らなかった。先ほど振り下ろされた脚はまるでギロチンの刃に見えた。だから受け止めてからの反撃では無く、いなしてからの撤退を選んだ。

 

 そして逸らしただけなのに痺れている右手を見て強く握り開いてから軽く振るって構える。

 

「なんです?その速度とパワー」

「お主と同じ身体能力・・・・・っと言いたいが、儂は小細工(個性)を使っておる」

「なるほど。個性と体術を合わせればそうなるのか。・・・いいね~」

 

 まだまだ自分の知らない武の高みが、未知の武があると知り、思わずニヤリと口角を上げ一騎は笑う。そして身に付けている重り全てを外し構え直す。

 

「ゴォォオオオ」

「っ(なんじゃこの気配、音は。音?呼吸音か?)」

 

 変わった呼吸音が聞こえ始めると一騎の纏う雰囲気が異質な物に変わり翠鈴は息を飲む。

 

「火天ノ型・烈火!」

「速い! 黒雷(くろいかづち)!」

 

 一騎の接近に合わせ翠鈴も残像が残る程の速度で接近する。

 

 お互いが間合いに入ると先ず一騎が拳を繰り出すも腕が伸びきる前に受け止められる。次に蹴ろうとするも予備動作の段階で脚で止められる。

 そして翠鈴が一騎の手を掴み合気を使い転倒させようとした瞬間、一騎は無理矢理体を捻り体勢を立て直すと逆に柳で翠鈴のバランスを崩させる。

 

「ほう」

「フッ!・・・チッ」

 

 完璧のタイミングで拳を放つもまたしても型が完成する前に止められる。更に攻撃を仕掛けるも同じことを繰り返すことしかできず、一騎は違和感を覚えることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「嘘、不死黒さんが手も足もでないなんて・・・・」

「お兄様の攻撃が全て読まれてる」

 

「当然だよ。姉様の目は特別だから」

「姉様は、現代最強のあ・・・・・暗殺者(アサシン)、だ、から」

 

 驚愕する八百万とユエの言葉に対して稟花と美花は胸を張って答える。

 

(あの子のヤバいよ。手加減されてるとはいえ、なんで姉様の攻撃をああも避けたり出来るの?)

(私、た、戦ったら恐らく・・・・・負けるよね? うん、間違い無く負ける)

 

 答えるが、二人は内心冷や汗が凄かった。いままでにも何度も殺しの依頼で人を殺してきた。それでも一騎の強さに驚愕を禁じ得なかった。

 強個性持ちに生まれ、最強と錯覚しやりたい放題する輩を沢山見て来た。そしてそいつらは大抵一手二手で終わるのに、一騎と真っ正面で戦えば勝てるイメージがあまり湧かなかった。

 

 

 

 

 

 

(なぜ俺の攻撃を初動作で止められる?戦闘の感か?違う、なにを見ている。視力に関する個性・・・では、ない。最初の速度は個性と言っていた、増強系の個性か)

 

「よいの~よいの~。その年で此所までとは!流石は儂が見込んだ男よの!」

「そりゃどうも!」

 

 一騎の中で暗殺者は不意打ちで殺すイメージが強く、真っ正面の戦闘は苦手と思っていたが、大いに間違いだった。

 既に体感した。手加減してるのに翠鈴の強さはミルコ以上、つまりはヒーローランキングトップに余裕で入る実力を持っていると実感させられる。いや、ミルコも本気でやればどうかは分からないが。

 

 それに個性の詳細を一切見せない。それを見ると現役ヒーローより厄介。その上、個性だよりの戦闘だけではなく武も身に付け洗練されているからなおのことヤバイ。

 

「ならばこの技はどう対処する?」

「ヤバ!」

若雷(わかいかづち)!」

「うっ!」

 

 一騎の拳を掻い潜ると胸に掌底をたたき込む。その瞬間、雷のエフェクトの様な物が走り一騎を大きく吹き飛ばす。

 

「お兄様!!」

 

 

 翠鈴は吹き飛ばした一騎の元に行き、ユエ達はその後を追う。

 

「ゲホゲホ! クソ、いまのは発勁か? しかも雷みたいのが見えたが。・・・クソ、不壊も通用しない。これが本物の中国武術か」

 

 一騎は川まで吹き飛ばされて、立ち上がり吐血と共に数回咳き込んだ後に目の前に降り立った翠鈴に目を向ける。

 

「カッカッカッ! お主、若雷を撃ち込まれた直後自ら後ろに跳び威力を軽減したな。実に良き判断じゃ!」

「どうも!!」

 

 水面に水斬りを放ち巨大な水柱を立てて姿を隠す。

 

「目隠し。・・・否、水を飛ばし目潰しも兼ねておるな。 おっと」

 

 水柱の中から無数の石が飛来してくるが、全てを余裕を持って叩き砕いていく。

 

「軽率に距離を詰めないのは、評価しよう」

「オッラァ!!」

 

 川に居てもスピードを落とさず瞬時に接近すると下から上えと三段蹴りをするも、翠鈴は最初っから分っていたかのように片手で防ぐ。

 

「残念じゃったの~。本体が見えんでも、気配が見えておるよ」

「クッ」

 

 防いだと同時に右手の人差し指と中指、薬指と小指を合わせ三つ指の形をすると一騎の鳩尾を掴む。

 

鳳牙(ほうが)

「ガッァ!?」

 

 そして思いっきり捻る。すると一騎の体はグルンと回り、上下が逆さまさになった。

 当然それだけでは止らない。

 

(ふし)(いかづち)

 

 強力な回し蹴りを繰り出し、対岸まで吹き飛ばすと木に叩きつける。

 

「ガッハァアア!!?」

 

 そかもその技は両腕をクロスして受け止めたにも関わらず衝撃が体内に浸透して破裂したような衝撃が内臓を襲い、吐血と同時に地面に倒れ込む。

 

「・・・震えてる?」

 

 一騎は体が小刻みに震えてるのに気づく。

 体が震える正体は恐怖。未知への恐怖だった。

 

 この世界で一騎は一部からは恐怖の対象となっている。その理由は一騎の巫山戯た強さを理解出来ないから、人々は当たり前から逸脱している一騎の未知(存在)に恐怖した。

 そして一騎は此所に来て真の未知に遭遇した。エリクの強さも未知だが、あれは個性は使わず単純の体術だとエリク自身から言われている。完全に個性と体術を合わせた技術は初めてだった。初めてとは未知と言う事だ。

 

 無論いままで個性と体術を同時に使う者、緑谷、尾白、拳藤と既に会ったが、一騎からして見ればこの三人の居る体術は既に通った場所だった。そして個性も知っているために未知(恐怖)とは感じない。

 だから翠鈴の未知の領域で恐怖した。

 

 そして恐怖した者は二つに分かれる。そのまま恐怖して心が折れる者、そして恐怖を前に笑う者。

 

 

「は、はははは」

 

 一騎は武に生きる者。だから、笑った。

 

「アッハハハハハ!!!」

 

「!?」

 

 

 楽しくて、ワクワクして、笑った。未知を前にしてまるで子供が新しい玩具を前にしたときの様な顔をして笑った。

 

(翠鈴の個性はなんだ?・・・・・・・・あぁ、そうだ。あの時なんで『気配で分る』じゃなくて『気配が見えてる』と言った。・・・気配・・・・気・・・・・気を見る?・・・・!)

 

 気と見るという言葉に何かを感づき、スッと腑に落ちた。そして更に笑う。

 

「アハハハ! お前の個性は『気』だな?中国武術は気の流れを大事にする。そしてその気を操るのがお前の個性だな」

「・・・フ」

 

 一騎の言葉を聞き、翠鈴は嬉しそうに笑みを零す。

 

「うむ!良い答えじゃ!まぁ正確には『気』ではなく『(タオ)』じゃがな。字が違うだけだから答えは正解じゃ!」

 

 自身の推察が当たったことに一騎は更に笑みを深める。

 

「氣は万物に流れるエネルギー。水柱の時、お前は水柱を透けて見えた俺の氣を見て判断したんだろ」

「そうじゃ」

「ようやくいままでの疑問が全てなくなった。お前が攻撃の型が完成する前に止められたのも俺の氣の流れを見たからだろ」

 

「うむ、相手に感づかれぬようにしていても、体の氣は攻撃箇所に集まるからな!

 ・・・にしても、よいの~よいの~。いままで儂の個性をこうも簡単に見破れた者は居らなんだ。やはりお主はよい!」

 

「そりゃどうも!」

 

 縮地で距離を詰める。そのかんの間は指弾で小石を飛ばして潰す。

 

「金剛・火天ノ型 瞬鉄・穿!」

 

 

 右の高速抜き手を放つ。

 

(え、普通に川の上を走ってきた)

 

 翠鈴は一騎が水の上を走ったのに驚いただけで他はなにも変わらず左手で手首を掴み受け止める。

 

「まぁ、個性を看破したとて、氣の対策は楽なものでは・・・!」

 

 一騎は掴まれた手とは逆の手で手首を掴み柳でバランスを崩させる。

 

「金剛ノ型 鉄砕・蹴」

「なっ!」

 

 翠鈴の顔が低くなった瞬間に左の強烈な蹴りを放つ。しかし翠鈴は咄嗟に左手を振り払い右手を入れ防ぐと蹴り飛ばされる途中で体を回転させて体勢を立て直す。

 

(なにいまの。いま、氣の揺らめきが)

「天童式戦闘術 1の型3番」

「速い!?」

轆轤鹿伏鬼(ろくろかぶと)!」

 

 気づけば一騎は眼前に迫り拳を振り抜いていた。その速さに翠鈴は驚くもなんとなく理解した。いままで個性を見破るのに裂いていたリソースを全て戦闘に投入したのだと。

 理解したからこそ、この攻撃極振りの技を食らえば確実にダメージを負うと知る。

 

甲天修武(こうてんしゅぶん)

 

 氣を両腕に集中させて肉体強度を高め、轆轤鹿伏鬼を受け止める。

 それと同時に驚愕した。

 

(何故、氣の揺らめきがない! ・・・まさか、いやあり得ない)

 

 そう、いままで一騎は攻撃する直前にその箇所に氣が集中して氣が大きくなっていた。なのに今はそれが無いのだ。

 だから翠鈴は対応に遅れた。

 

「なぜじゃ、なぜ氣が」

「ん?あぁ~氣は俺にも流れてる。流れてるなら意識すれば知覚できる」

「・・・はぁ?」

「知覚できるものは干渉でき、干渉できるものは操作できる」

「は、はは。巫山戯てる」

 

 一騎の言ってることはまぁ、理解はできる。でも、理解はできても納得はできないものだった。

 

(巫山戯てる。私ですら氣の操作が自在にできるようになったのは個性発現から1年後なのに。

 一族の者なら氣を認識して操作できるのに最低3年は掛かるのに、この男は半年どころか半日も経たず、僅か数分でした・・・あり得ない!!

 あり得ないあり得ないあり得ない。そんなの、そんなもの!生まれたときから、いや

 

 ()()()()()()()()()()()()()()無ければできない!!)

 

 翠鈴は思わず一騎が未知の生物に見えた。そして驚愕した、一騎の才能に。

 

「あぁー、よい、よいぞ」

 

 そして、一騎とその才能に憧れ、恋い焦がれた。

 

「儂よりも凶手に向いているとはな」

「それは嬉しくないねぇ~! 金剛・火天ノ型 瞬鉄・脚!」

 

 途轍もなく強い踏み込みから放たれた跳び蹴りは飛斧脚を遥かに超える速度と威力を誇る。

 しかし、翠鈴はニヤリと笑う。

 

「蚩尤鎧式・承力天鳳」

 

 瞬鉄・脚と翠鈴の技がぶつかった瞬間、一騎の方が吹き飛ばされた。

 

「なにされた?いま、自分の力を返されたような」

「よそ見」

「っ!」

「蚩尤戟式・白虎弧月」

「金剛いやだめだ!」

 

 眼前に強烈なハイキックが迫る。最初は不壊で受け止めようとするも悪寒が走り咄嗟に大きく飛び退く。

 そして轟音が響き、居た場所を見ると川が大きく裂けていた。中心は一騎から見て胸まで浸かるのに、だ。

 

「ワオ~。何その技」

「一族の長だけが受け継ぐ秘技・蚩尤じゃ。(まさか、あの男への復讐に使う前に使うとは)」

 

 人生何が有るか分らん。と呟いてから両手を合わせなにかをこねるように動かし、右手を伸ばした状態で構えると勢いよく手の平を一騎に向ける。

 

「あ?・・・オッガァ!」

 

 なにをしてる?と思った瞬間に腹に内部にまで響く強烈な衝撃を暗い思わず前屈みになり吐血する。

 

「なに、見えいやそうか。氣を集め飛ばしたのか」

「正解。名は遠当じゃ。 ほれ、まだまだ行くぞ!」

「クッ」

 

 更に氣を飛ばしてくるも一騎は走り全てを回避する。

 

(よく避ける。見えてはないが、感で判断してるのか。

 あぁー。最初はここまでのつもりではなかったが、久々に出そうかな!)

 

 遠当てを辞め、脚の裏が天に向くほど上げると勢いよく振り下ろし力強く震脚をする。

 

雷帝・(らいてい・)雷光脚(らいこうきゃく)

 

 脚が蒼白く光るとしだいに稲妻を纏い始める。しかもバチバチと音が鳴っている。

 その不思議な現象に一騎は驚愕して瞬きをして目を開けたときには既に目の前に翠鈴のハイキックが迫っていた。

 

「蚩尤戟式・白虎弧月!」

「あぶな!!」

 

 大きく体を反らし首も逸らして避ける。避けたのに身体は痺れるし、脚の通った軌道に引き寄せられる。

 

 そして翠鈴は避けられるのは想定済みで、蹴りの回転力を使い左の裏拳をたたき込む。

 一騎は裏拳を受け止め絡みを使おうとした瞬間に翠鈴の迫り来る裏拳が燃えた。

 

炎帝・(えんてい・)皇炎拳(こうえんけん)

 

 いきなり燃えた拳を見て触れてはいけないと悟った一騎は避けると同時に翠鈴の左横腹に蹴りを入れて無理矢理距離を開ける。

 

「なにそれ。個性複数持ち?」

「違うぞ。これは体内の氣を燃料にして炎に変えて使う炎式。そして同じやり方で氣を雷に変えて使う雷式じゃ」

「それチート?じゃないの」

「失敬な。儂はただ、個性の解釈を広げただけよ。そして個性覚醒をし、身に付けた技よ」

「凄いな」

 

 自分では絶対に辿り着けない領域を前に一騎はヴィランにも思えるような笑みを浮かべ攻撃を仕掛ける。無論それに翠鈴も笑みを浮かべ迎え打つ。

 

 

「すごい」

「姉様が、ひ、人に・・・・雷式と炎式を使うのはじ、初めて?」

「うん。アレらを引き出すとは流石は将来のご主人かな」

 

 稟花と美花は一騎のポテンシャルに称賛する。のに対し八百万は驚愕しかしてない。

 

「あの不死黒さんが押されているなんて・・・」

「当然だよ、モモちゃん」

 

 ユエが呟きに答えると八百万は驚いてユエを見る。見られたことに気づいたユエは言葉を続ける。

 

「お兄様とあの人の使ってる武は違うから」

「え、武?確かに翠鈴さんは中国武術で不死黒さんは」

「違う違う」

「?」

「お兄様が使ってるのは戦う為の武で、翠鈴さんが使ってるのは殺しの武なの」

「えっと」

 

 説明されてもやはり難しいのか八百万は首を傾げる。その姿を見てユエはどう説明しようかと困り頭を少し掻いて悩んでいるときに美花が声をかける。 

 

「つまり、ね。 姉様は、刃の付いた刀で戦ってるけ、けど、不死黒様は・・・・・ぼ、木刀で戦ってるって意味なの」

 

 その説明(例え)で八百万はようやくユエの言いたい事を理解する。

 

「補足ありがとね、美花ちゃん」

「うん」

(え何この笑顔。可愛い)

 

 アサシンとは思えないほどにオドオドしているのに、そこから浮かべた笑顔のかわいさにユエは思わずキュンとしてしまった。

 そのとき、一騎と翠鈴の状態を理解した八百万が声をあげる。

 

「どうしたのモモちゃん」

「木刀ってことは不死黒さんに勝ち目はないのでは!?」

「あぁー、補足の補足だけど。お兄様が使ってるのは木刀じゃ無くて鞘に入れたままの刀で戦ってるの」

「?」

 

 またしても意味が分らなくなり八百万は首を傾げるが、ユエのこの言葉に稟花と美花が反応を見せた。

 

「うそ・・・・じゃ、じゃあ不死黒様はあの年で使い分けて、るって、こと」

「どれだけ武神に愛されてるの!?」

「お兄様は想像できない程壮絶な鍛練して身に付けたの」

 

 言うと真剣な表情を浮かべ前を向く。その姿を見て三人も前を向く。

 

 

 一騎達の戦いが一旦止ると一騎は呼吸を整え翠鈴は雷式と炎式を解除する。

 

「ハァハァ、このままじゃダメだな」

「ならどうすのかのぉ?」

「俺の新技の実験台になってもらう、お前相手なら本気で行ける」

 

 新技、本気と言う言葉に翠鈴は何するのか警戒する。

 その姿を見て一騎はニヤリと笑うと右手で心臓付近を鷲掴むような構えを取る。

 

 

 

「全集中の呼吸✖前借り」

 

 相手から見て時計回りに捻るように手を動かす。すると辺りからエンジンの様な音が鳴り響き、一騎の身体はみるみると体表の血管が腫脹し、皮膚が赤く変わる。

 

モード・阿修羅

 

 あまりにも異質な見た目の変わりように翠鈴は思わず冷や汗を流し、頬を引き攣らせる。

 

(なにあれ。なんで氣があんなに大きくなってるの!? 倍・・・いや、二倍は有る。それに前借りって)

瞬鉄・砕!

「はやウッブフ!!」

 

 その状態は従来とは違い速度もパワーも段違いだった。

 想像を遥かに越える速度に反応が出来ず攻撃を食らう。殴られた時はハンマーのフルスイングを食らったかの衝撃で、翠鈴は氣を鎧の様に纏って無ければヤバかったと冷や汗を流す。しかも今も鈍痛が響く。

 

「煌炎拳!」

 

 追撃される前に炎式を使い拳を燃やて、即行で氣を練り固め炎の弾を作る。

 

煌波(こうは)烈朱弾(れっしゅうだん)

しゃらくッ!!

 

 烈朱弾は一騎に当たる寸で破裂し一瞬一騎の視界を無くす。それを確認した翠鈴は雷式・雷光脚で一瞬で距離を詰める。

 

「雷虎孤月!」

 

 電撃を纏ったハイキック。喰らえばタダでは済まず、皮一枚で避けても電撃を受ける。だから一騎がした選択は

 

金剛ノ型・棍棒!

 

 まさかの左前腕を不壊で堅めての相打ち。しかもそれに打ちに勝ち、はたき落とした。

 弾かれた翠鈴は驚愕と苦痛の表情を浮かべるが、次に浮かべるのは不適な笑みだった。

 

(・・・・ひひっ。あの男以外でここまで武に長けた男が居るとは・・・)

 

 翠鈴は力強く震脚をして煌炎拳を消す。

 

「雷式・凱禪将雷神(がいぜんしょうらいじん)

 

 そして身体全体が蒼白く光り稲妻を纏う。まさに雷神の様な姿。

 

「行くぞ」

「あぁ!!」

 

 

 

 

 

「「不死黒さん!/姉様!」」

 

 2人の姿に八百万と美花は心配の声を上げる。

 

「ユエさん!不死黒さんのあの姿は危険なものなのでは!?」

「そう、なんだけどね・・・・」

 

「お姉ちゃん、あ、姉様止めな、いと!不死黒様を、こ、殺しちゃう・・・よ!」

「そうだね・・・」

 

 2人の言葉にユエと稟花は歯切れの悪い返答をするしか無かった。

 

「ユエさん!」

「お姉ちゃん!」

 

 軽い反応に2人は声を上げるが、仕方無い。だってあの2人が、一騎が肉体に多大な負担の掛かる阿修羅を使い、翠鈴が今まで人に使わなかった凱禪将雷神を使う理由を分っていたから。

 

「しかたないよモモちゃん」

「美花、あの2人は」

 

「お兄様は」

「姉様は」

 

「「武に生きる人間だから」」

 

「お兄様はヒーローを目指す人の前に、武の極地を目指し武に生きる人なの」

「そして姉様も凶手の前に武に生き、極地を目指す人。・・・だから」

 

「「2人は今出せる武をぶつけたいんだよ」」

 

 ユエと稟花の言葉に八百万と美花は納得してしまう。

 だって一騎と翠鈴はあんなにも楽しそうに笑いながらお互いが出せる武を出しているのだから。

 

(でも可笑しい。なんであの子は、たかだか15歳の子が姉様と渡り合えるの?姉様は幼きときから命を賭ける戦いに身を置いていた。

 それに比べ、あの子は高校に入ってから。なのにあの戦いの姿は様になりすぎている。歴戦の人のよう・・・・)

 

 稟花は一騎の戦闘姿に違和感を感じ訝しみ思考を巡らし考える。使ってる武を何処で知り誰に教えて貰い、鍛えられたのか。

 

 

「次を最後とするかのぉ」

「あぁ"」

 

 一騎は阿修羅での戦闘は初めてなうえ、身体中激痛だらけで辛く翠鈴もガチ戦闘で凱禪将雷神を使うのは初めての為に氣の消費が激しくそれに伴い体力も膨大な量を消費していた。

 ゆえにお互い限界が近いと悟り次の一撃を最後にすることを決める。

 

金剛・火天ノ型――

「雷式――」

 

 

 一騎は残像が残る程の速さで走り、翠鈴は雷を纏い迫る。そしてお互いが腕を伸ばせば相手に届く距離まで迫ると拳を突き出す。

 

瞬鉄・砕!!

雷華(ライカ)!」

 

 一騎の拳は翠鈴の鳩尾を捉え、翠鈴の拳は一騎の胸を捉え背後に稲妻でできた一輪の彼岸花が咲く。

 

 ――ドンッ!!

 

 目を背けたい轟音と共に2人は後方に大きく吹き飛び、一騎は大岩に、翠鈴は木にぶつかりその場にへたり込む。

 

「「お兄様!/不死黒さん!」」

 

「「姉様!!」」

 

 ユエは一騎に駆け寄り悲痛と怒りを交えた顔を一騎に向ける。

 

「お兄様!3分も使うなんてやり過ぎです! 長くて1分半と約束したじゃないですか!! それに怪我した状態で使えば更に危険なんですよ!」

「ご、めん・・・・ごめん」

 

 涙を浮かべるユエの頭に手を置いて優しく撫でる。そして一騎は目を前に向ける。

 

「この戦い俺の負けだな」

 

 その言葉にユエと八百万は一騎の見ている方を見ると翠鈴が稟花と美花の肩を借りて立っていた。

 

「そうじゃな。戦いは最後まで立っている方の勝ち・・・と、言いたいが、儂も2人に肩を借りんと立ってられん。故に儂の負けでもある」

「律儀だな」

「当然のことじゃ」

 

 2人は小さく笑う。その時怪我が痛み苦痛の声を漏らすも何故かそれも面白く感じてまた笑う。

 

「お兄様、治癒終わりです」

「ありがと。それと翠鈴さんにも頼める?」

「・・・」

「大丈夫、あの人は信用出来る」

「お兄様が大丈夫と言うなら確かですね!」

 

 ユエは立ち上がった時に翠鈴は必要無いと止める。

 

「儂は氣の流れを操り自然治癒力を限界まで上げておる。心配には及ばん」

「だめです。翠鈴さんもお兄様と同じで皮下出血に内臓は至る所が出血。骨折も多数のうえ、折れた骨の一部が内臓に刺さってます。危険です」

「・・・お主、体内を見ることができるのか?」

「いえ、私の個性の副産物的効果です」

「そうか。・・・ならばその好意に甘えよう」

「はい」

 

 ユエが身体に触れると翠鈴は瞬く間に怪我が癒えていくのを感じ何の個性か分かり目を見開く。

 

「治癒の個性か。内臓に刺さった骨の一部すら取り除き治すほどのもの。代償は・・・特に感じられん、と言うよりほぼ無いな」

「・・・はい。私の個性は治癒です」

 

 少し暗い表情で言うユエに何かを察した翠鈴は笑いかける。

 

「安心せい。お主の個性を狙うなど外道なことはせん。それにお主は一騎以外の者には余り使いたくないのだろ?」

「はい」

「それで良い良い!」

 

 ニカッと笑い優しく頭を撫でる。それに驚きユエは顔を上げると翠鈴は優しい顔をしていた。そして優しい声色で話しかける。

 

「お主の個性はお主だけのモノ。なら好きな男だけに使ってなにが悪い。なにも悪く無い。

 それにとやかく言われる筋合いは例え相手が神とてすらない。なにかを言う者はお主の個性に嫉妬し、妬んでるだけのみみっちい輩のみよ。その様な者達が言う言葉は塵芥、蟲の糞にも劣るモノ。故に無視しせよ」

 

「っ」

 

「己だけの意思に正義にのみ従い使えば良い」

 

 いままで一騎以外に言われたことの無い言葉。何時も誰かの為にと綺麗事を言われ続けたなのに眼の前の人は言い切った。それらは下らないと、自分の為に使えと。そんなまさかの言葉にユエは驚いた。

 

「あ、ありがとう御座います」

「うむ!」

 

 ユエの治癒は金銀財宝に匹敵するほどのモノでも翠鈴にとっては下らないことだった。だって既にユエを妹のように思っているから。

 

「な、ユエ」

「はい」

 

 一騎は未だに若干ほおけてるユエの横に立ち頭を優しく撫でる。彼は分っていた。翠鈴は大丈夫な側の人だと。何故わかっていたのかはか簡単、全力で殴り合ったから。

 とある地上最強の漢は言った『戦いはsex以上のコミュニケーション』と。だからなのか一騎と翠鈴は凄くわかり合っていた。

 

「良き兄妹よ」

「あ、姉様」

「なんじゃ、稟花」

 

 良い雰囲気の中、稟花は気まずいそうに声を掛ける。

 

「言いにくいのですが目的忘れてませんか?」

 

「「・・・あ」」

 

 この戦いの目的、それは一騎の子種をかけてだった。しかし思いのほか戦いが楽しく2人は完全にそのことを忘れていた。もし稟花に言われなければ翠鈴はこのまま帰っていた程に。

 

「忘れてましたね姉様」

「お兄様も」

 

 2人の指摘に一騎と翠鈴は「あはは」と笑う。それに八百万は展開に付いていけず気絶しそうになるし他は呆れて手で顔を押さえていた。

 

「まぁ、それはまたいずれ」

 

 翠鈴から言いだしたことなのに締まらない終わり方だった。

 

「翠鈴さんは直ぐに帰るんですか?」

「いや、まだやることがあるからな」

 

 そう言い翠鈴は去ろうとするが、真剣な表情で振り返り一騎を見る。

 

「一騎よ一つだけ助言だ」

「?」

 

「気を付けよ。お主に死んで欲しいと思っているのはなにもヴィランだけではない。

 お主の死を望む者の中には国に仕え正義の味方を語り、掲げる者達も多く居る」

 

「っ!」

「ど、どう言うことですか!何故不死黒さんを」

「儂は本来、一億ともいう大金でお主の殺害依頼をされていた」

 

「「「!?」」」

 

「でも安心せい。断ったからの」

「なぜ?」

「儂らは殺し屋一族だが、殺すのは悪人だけよ」

「でも、海外の№1ヒーローも殺してると」

「そやつらもあくどい手で勝ち取ったのよ、1位の座を。時には仲間を殺しての」

「あぁーそういうこと」

「理解が早いのぉ~。 それじゃ、次会えるのを楽しみにしておるよ」

 

 そう言い残し今度こそ翠鈴達はその場を去る。

 

「じゃあね~未来のご主人」

「ご主人!?」

 

 稟花は一騎の右手を掴みブンブン振ってから翠鈴の後を追いかける。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 一騎達から別れた翠鈴は鼻歌を歌いながら長いこと使われていない荒れた山道を歩いていた。

 

「あ、姉様」

「どうした美花よ」

「幸せそ、そうな顔してますね」

「同然じゃ。まさかあの若さであの領域に居ようとは、これに喜ばずにいられようか!」

 

 笑みを浮かべている表情を指摘されると嬉しそうに話す。それから優しく美花の頭を撫でると美花は目を細め方を緩める。そこでなにかを考えていた稟花が口を開く。

 

「姉様はご主人が普通だと思いますか?」

「お姉ちゃん?」

 

 いきなりの質問に稟花は足を止め美花は首を傾げる。

 

「私思うんですよね~。彼、絶対に可笑しいですよ。さっき握手したんですけどレベル3の毒にも即座にただの免疫能力の解毒だけで耐えたんですよ。普通なら即死ですよ~」

「お、お姉ちゃん!そんなことし、したの!?」

「いや~」

「稟花よ」

 

 低く静かな声で名を呼び振り返る翠鈴を見て思わず「流石に怒らせた?」と思い冷や汗を流す稟花。

 

「彼奴は自信の氣も即座に操っていた。アレはどう考えても普通の人間ではない。

 汝の推理は的を射てると思うぞ」

 

 朗らかな顔でそう言うと稟花は安心して息を吐く。

 

(それに1つ解った。一騎のアレは二虎流だ。でも何故彼が?二虎流の発祥である二虎一族は1世紀近くも前に全滅し技は途絶えたたと文献で見たのに。・・・どういうこと?)

 

「姉様?」

「何でもない。 にしても汝は抜けてる女子(おなご)に見えるが実際は抜け目がないのぉ~」

「姉様ヒドイ!!」

 

 ショック!とでも言うように稟花は言うと翠鈴も美花も笑う。そのとき

 

「仲良いねぇ~」

 

 突如男の声が聞こえる。

 3人は即行で戦闘態勢を取り声の方を向くと木の上にエリクが立っていた。

 

「お久しぶり翠ちゃん」

「よく私の前に姿を現せれたな! 蓬莱人!!」

「だから蓬莱人じゃねぇって。ほんっとお前らは俺をそう呼ぶの好きだな」

「っ!」

 

 3人がエリクを見た瞬間に稟花と美花は素早くエリクの背後に回り、攻撃する。

 

(この男、危険!)

(姉様を守らないと!)

 

「よせ!稟花!美花!」

 

 翠鈴は止めるが2人は止らず、稟花は手が紫色に変色し美花は五指から細長い糸のような物が出る。

 

「レベル5、ヒュドラ!」

界断糸(かいだんし)

 

 稟花の個性は『毒』。

 そして今出せる最大の技、『ヒュドラ』は象ですら骨すら残さず瞬く間に腐食させる腐食毒。

 

 美花の個性は『糸』

 そして今出せる最大の技、『界断糸』は強靱であらゆる物を簡単に斬ることの出来る程途轍もなく切れ味が良い糸。

 

 二つの技が放たれた次の瞬間、鈍い音が聞こえ2人は翠鈴の横を通り過ぎ、背後の木に激突する。

 翠鈴は振り返り急いで2人の元に駆け寄ると2人は赤色の混じったよだれを垂らし完全に気絶していた。

 

「き、貴様ぁあぁああああ!!!」

 

 翠鈴は2人の氣を操り回復力を高めるとエリクに殺気をぶつけ叫ぶ。それは動物や虫が命の危機を感じ取り逃げ出す程のものだった。

 しかし、そんな殺気をぶつけられてもエリクは笑みを一切崩さない。

 

「おいおい、今のは正当防衛だろ?」

 

 やれやれとでも言うかのようにアピールし、ニヤリと口角を上げる。

 

「にしても殺気は父と母とそっくりだな」

「貴様が父上と母上のことを口にするな!忘れてないないぞ!あの時、私の両親を、数多くの同胞を殺した事!」

 

 翠鈴は昔、五歳の頃にエリクとハンターに村を襲われ前長である父、そして母と136名の同胞を眼の前で殺されていた。

 それからエリクとハンターに復讐することを誓い生きている。

 

「あれも先にお前ら一族が喧嘩をふっかけてきたんだろ?被害者面するなよ」

「黙れ、殺してやる」

「良いけど後ろの子達巻き込むことになるぞ」

「クッ!」

 

 エリクの指摘通りもし殺し合えば後ろに居る2人は巻き込まれて死ぬ。血の繋がりはなくとも大事な家族、大事な妹達を巻き込むことはできない為にこらえる。

 

「今回は殺し合いに来たんじゃない。警告しに来た」

「警告、だと」

「一騎に近づくな」

「! なぜお前が彼に」

「彼奴は俺のものだ」

「・・・断れば」

 

「戦争。いまいる249人の一族を今度こそ皆殺しにする。前回はただの慈悲だからな」

 

 そう言われると翠鈴は血が出るほど唇を強く噛み締める。

 

「今年中は関わらないことにする」

「うん。それで良いよ」

「クッ!」

 

 悔しそうに言葉を漏らし血が滲み出るほどに手を握り絞める。

 そしてエリクは木から飛び降りると背中を向け手を振る。

 

「それじゃ。あと儂っ子キャラが抜けて素が出てるぞ。可愛いね~」

「黙れ」

 

 エリクの言葉を即切る。それでもエリクは楽しそうに笑いその場を去る。

 

「まて」

 

 しかし翠鈴は立ち去るエリクに声を掛け呼び止める。

 

「ん?」

「不死黒一騎は一体何だ?」

「・・・」

 

「昔、個性が現れ始めた頃。人々は個性を持った者は神が新しく作った人類、新人類と呼んだ。

 だが、もし神が作りたかったのが私達個性持ちでは無く、一騎であれば?一騎こそが私達が成るべきだった(まこと)の人類、(しん)人類なのでは無いか」

 

 真剣な表情で告げる翠鈴。彼女の推察を聞いてエリクは少し黙ってから振り合えリ笑う。

 

「あははは。其処まで考えるとは驚いたが、違う。一騎の強さは、だよ」

「何故そこで愛!!?」

「愛ほど歪んだ呪いはなく、愛ほど力を与えるものもない」

 

 翠鈴の驚いた顔を見てエリクはにやっと口角を上げてから踵を返し背を向けると一瞬で姿を消す。

 

「氣の流れが一切変わらない。 化け物め」

 

 エリクが完全に周囲から居なくなったのを確認して呟く。そして意識を取り戻した稟花と美花が翠鈴の元に来る。

 

「すみません姉様」

「わ、私達が足を引っ張ったから。ば、罰は・・・・受けます」

 

 2人の言葉に翠鈴は何時もの優しい笑顔で振り向く。

 

「良い。お前達が無事ならそれだけで。身体は大丈夫か?」

「はい。姉様のお陰で」

「ありがとうござい、ます」

「それでは行くぞ。儂らはまだやることがあるからの」

 

「「はい!!」

 

 

 ☆

 

 

 翠鈴達が去ったあと、一騎はユエに肩を借りながら下山していた。

 

「不死黒さん。今回のことは」

「一応先生に報告かな?」

「呉一族なんてヤバイ人達に会っちゃいましたもんね。お兄様」

「そうだな」

 

 軽く返事をするも、一騎は相澤達にどう説明しようかずっと悩んでいた。暗殺一族の長が自身の子種を狙っているなんて恥ずかしすぎて言えないから。

 

 




一騎、満足のいく戦いを始めて出来たね。USJでのエリクとの戦闘は状況がアレだったからね。

翠鈴はダーヴィンズゲームのシュエランや地獄楽の天仙達をモデルにしてます!
あと、美花の喋り方が独特なのは素です。

次回「その後② ユエとのデート」

それでは、期待せずにお待ち下さい!
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