無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第46話:その後②ユエとデート

 

 

 ~午前8時~

 

「準備できたか?ユエ」

「はい!」

 

 朝方に翠鈴と本気の戦いをして疲れても今日は絶対に外せないことがあった。それは

 

「それじゃあ行こうか」

「はい♪ お楽しみのデートです♪」

 

 そう、職場体験初日別れるときにしていたデートする約束日だ。

 

「あ、どうですか?この服」

 

 家を出て直ぐにユエはクルリと回り感想を求める。

  

 黒縁眼鏡をかけキャスケット帽を被り、服装は白のシャツと膝丈スカートにスニーカーといった服装だ。

 

「可愛いよ」

「えへへ。お兄様も何時もとは違う方向のクールで格好いいですよ!」

 

 一騎は何時も黒い服しか着ないが今回は白のポロシャツに前を全部開けた袖の長い薄手のシャツ、紺色のジーパンにスニーカーといった余り着ない服装と色だ。

 顔の怪我は化粧で隠して眼鏡している。

 

 2人とも眼鏡を着けているがそれは眼鏡さえしてれば変装出来てると思ってしまっているタイプだからだ。才子がそうだったから。

 

「ありがと。それじゃいこうか」

「はい♪」

 

 一騎が右手を出すとユエは手を取り2人は仲良く手を繋いで歩く。

 

 

「今日は何処に行くんですか?」

「神奈川に有る大田美市に新しく出来た大田美水族館だよ」

「っ!それって」

「そ、前にユエ大田美水族館のCM見て行ってみたいって言ってたでしょ?」

 

 ユエは何故か幼少の頃から水族館が大好きだった。

 そしてこの前新しい水族館が公開されたのをCM見て行きたいと言ったのは覚えてるが、その時一騎は洗い物をしていたから聞いて無いと思っていた為にスッゴく嬉しくなり、テンションが凄く跳ね上がるのを自分でも自覚していた。

 

「っ~! お兄様大好きです! さぁさぁ早く行きましょ!」

 

 嬉しくてつい腕に抱きついた後に小走りで前に行き、興奮を抑えられないでいた。

 

「走ると転ぶぞ」

「大丈夫ですよ~っとっと!?」

 

 大丈夫と言った側からユエは躓き前のめりになる。それを見て一騎は、言わんこっちゃないと思い即座に駆け寄り優しく受け止める。

 

「開店は10時からだから焦らなくても良いよ。チケットはもうネットで買ってるし」

 

 立たせた後にズレた帽子を直してあげるとスマホを見せる。それを見てからユエは「は~い」と照れくさそうに言って差し出された手を握り歩き出す。

 

(お兄様準備いいな~)

 

「さて、今日はユエのやりたい事を何でもしようか!」

「はい!」

 

 

 ☆

 

 

 

「やってきました!大田美水族館!!」

 

「「「「水族館!!」」」」

 

 ユエは来る途中の電車内で仲良くなった家族連れの子供達と一緒に迷惑にならないように叫んで興奮を露わにしていた。

 そんな姿を一騎と子供の家族の人達は幸せそうに微笑んで見守る。しかも一騎はスマホでユエが子供達と叫んでるときから動画撮りながら写真も撮っていた。

 

「可愛い彼女さんですね」

「可愛いのは認めますけど彼女ではなく妹なんです」

「兄妹で来ているのかい?仲良いね」

「えぇ」

 

「お兄様!行きましょ!」

「あぁ」

 

「「「「お姉ちゃんバイバーイ!」」」

 

「バイバーイ」

 

 子供達に手を振り返して別れると2人は水族館に入る。因みに一騎達が去ったあと、3組の家族の親は何処かで見たこと有る?と一騎とユエに気づかなかった。

 

「うわー!凄い!」

「ほんとだな」

 

 入り口からホールまでの床には液晶モニターが着けられ魚が泳いでる映像が流れてるうえに、周囲には3Dホログラムで様々な種類の魚が空中を泳いでいた。

 

「いやホントに凄いな」

「お兄様?」

「いや、行こうか」

「はい! できれば手を」

「手、繋いでいこうかユエ」

「っ!はい♪」

 

 

 

 最初にやってきたのは沢山のサメが居るサメコーナー。

 

「サメ~だぁー!」

「お兄様!あれ、シュモクザメって言うんですよ!」

「へ~アレは?」

「ツマグロです」

「マグロ?」

「の、仲間ではないですよ」

「ほへ~」

「それでアレは、ネムリブカ、あっちはネコザメでその横はイヌザメ、その下の方に居るのがカスザメにノコギリザメです!!」

「詳しいな。流石はユエ」

「っ!それにあっちは――」

 

 褒められたのが嬉しく更にサメの名前や豆知識を言っていくユエ。その姿は緑谷が人にヒーロー紹介するのとほぼ同じだった。

 でも不思議なことに緑谷だとドン引きしてしまうが、ユエがするとどうしても途轍もなく可愛く思ってしまう。その事に一騎は疑問を持つが、ユエの笑顔を見ると直ぐに消える。

 それとなぜかサメたちがユエの前に集まる不可思議現象を無視して次に向かう。

 

 

「ぜんたーい並べ!」

 

「「「「「グァーグァ!」」」」」

 

「前ぇー進め!!」

 

「「「「「グァ!!」」」」

 

 ペンギンの触れ合いコーナーではなぜかペンギン達はユエの元に集まりユエの指示に従い

 

 

『イルカさーん!おーい!』

『先輩、どうしましょ』

『いや、どうするって・・・・・・・どうしよ』

『いや聞かないで下さい』

 

「ユエ」

「はい?」

「何してるの?」

「さ~?」

 

 イルカショーでは何故かイルカがユエに一番近い水槽の端まで来て動かない。それにユエが手を振るとイルカは胸びれを振るう。

 

 

 昼頃、一騎達は巨大水槽に囲まれた食事エリアで昼ご飯を取ることにするも、一騎は思わず疑問を呟く。

 

「可笑しくない?」

「なにがですか?」

「なんで海で生きる生物にそんなに好かれてるの?」

 

 キョトンとユエが首を傾げるのを見て一騎は乾いた笑みを浮かべユエの背後、正確には背後の水槽に目を向けると殆どの魚類が集まりユエを見ていた。

 

(確か子供の頃もユエは飼ってた金魚や鯉に好かれていたな。これが(生命の母)に愛された漢、水無月海神の孫の実力・・・か? 俺も一応は孫なんだけどな)

 

「お兄様」

「ん?」

「あーん」

「はい、どうぞ」

 

 周りにもの凄く注目されて時には写真を撮られても二人は2人だけの空間で楽しんで、ユエのお願いでご飯の食べさし合いとかをしていた。

 

「お兄様、このあとは東京都に行きたいんですけど良いですか?」

「良いよ。今日はとことんユエの行きたい場所に行ってしたいことをしようか」

「ありがとう御座います!」

 

 

 ☆

 

 

「ってことで次は東京都にある巨大ショッピングモールにやってきました」

「わーい!」

 

 ここに来たのは新しい服を買いたいとのユエの要望だった。その為に来たのだが。

 

「此奴強い!!」

「きゃぁ!」

「クソヒーロー共がぁ!!」

 

 まさかの近くで増強系の個性を持つヴィランと数人のヒーローが戦闘を行なっていた。

 

「どうします?」

「無視して良いよね? 多くのヒーローが居るから大丈夫でしょ」

 

 一騎の言葉にユエも賛同してショッピングモールに入ろうと歩き出しした。その時、まさかのヴィランが1人のヒーローを薙ぎ倒しユエの方に走ってきた。

 

「こうなったらあのガキを人質に!!・・・・・グエ!?」

 

 ヴィランはユエを人質にして逃げようと考え近づくも一騎の前蹴りで胸を蹴られ仰向けに倒れる。直ぐに起き上がろうとしたが、一騎に胸を踏みつけられ、起き上がれない。

 

「グハ! て、テメ!」

「おい」

「っ!?」

 

 なにかを言おうとするも一騎の顔を見た瞬間に口を閉ざす。

 

「俺はヒーロー免許が無いからお前が何処で暴れようが手出しは出来ない。が、妹に手を出すなら話は別だ。お前、叩きのめすぞ」

 

 光りが無くなり、全てを吸い込むような真っ黒な瞳を向ける一騎にヴィランなにも言えなくなる。その姿を見て一騎は足を退けて、ヒーロー達を見てからショッピングモールに入ろうとするが

 

「ふ、巫山戯んな!クソガキがぁぁあああ!!!」

 

 逆上したヴィランが起き上がり一騎に殴り掛かる。一騎の姿に呆気にとられ立ち止まっていたヒーローは間に合わない。

 

「ダメです!!」

 

 ユエが叫ぶが遅く、ヴィランの拳が振り向いた一騎の額を捉え『ゴン!』と言う音が鳴り、そして

 

「ぎゃぁあああああ」

 

 ヴィランの手の甲の骨が砕け中手骨骨折をお越し折れた骨が飛び出した。

 

「あちゃ~」

 

 ユエはこうなるのが分ってた。だからダメと言ったが遅かった。

 そして一騎は問題にならないように二虎流を使わず、ラウェイやベアナックルの様に額で攻撃を受けた・・・・のだが、まさかこうなるとは思っていなかった。

 

 一騎の頭はもの凄く硬い。その証拠に体育祭で爆豪の爆風の乗ったコンクリ片の投石を額に受けたのに、頭が潰れることなく額が割れる程度で済んでいるのだ。それほどまでにも硬い。

 例えるなら額に痣があり家族思いの少年並の硬さ。

 

「どうしよ、あそこまで脆いとは思わなかった。」

「君!何してるんだ!!」

 

 ヴィランの想像以上の脆さに困惑している一騎を駆け付けたヒーローが叱る。しかしそれにユエが反論する。

 

「悪いのはお兄様ではなくヴィランをみすみす取り逃がした貴方達ヒーローではないんですか?」

「うっそれは」

「それともお兄様が怪我するか私が人質にされれば良かったですか?」

「・・・っ」

「貴方達のミスを棚に上げて叱らないで下さい。先に謝罪するのが常識でしょ?」

「うっそれはすまなかった。しかし、個性を使うのは良くないぞ!ヴィランとはいえ怪我をさせてしま「無いです」 よく・・・え?」

 

 一旦軽く謝るも直ぐに一騎に注意するが、無いと言われ困惑する。

 

「俺、個性無いです」

「は?」

 

 ヒーローや周りの反応に溜め息をついてから眼鏡を外してユエが差し出したハンカチをお礼を言ってから受け取り、怪我を隠す化粧を拭いて落とし素顔を見せる。

 そしてどうやら一騎の第一印象は顔の怪我らしく怪我有りの一騎の顔を見て全員が不死黒一騎と認識し、驚愕の声が上がる。

 

「そ、それじゃあ」

 

 ヒーローは次にユエの方を見るとユエは帽子を取り、頭を振って帽子の中に隠していた髪を解放して、眼鏡を外し素顔を見せる。

 

「み、水無月さん!?」

 

 ヒーロー達は全員がユエの素顔を見た瞬間にユエに敬礼する。その様は水戸黄門が正体を現わした時のようだった。

 そして敬礼するのも、ユエと一騎の父と祖父を知っているうえに、さっき言った言葉にユエが鋭い目付きをしているからだった。

 

「・・・」ギロリ

 

 自身の顔を見ていきなり敬意を示すヒーロー達を見てユエは嫌悪感を感じてしまい、更に鋭く切れるナイフのような眼で睨む。

 

「それで、どうなんですか?悪いのは何の抵抗もせず攻撃を受けたお兄様ですか? それとも5人も居たにもかかわらずヴィランをみすみす逃がしてお兄様に被害出した貴方達ですか?」

「わ、私達の責任です」

「ヴィランが怪我をしたのは貴方達の所為ですよね?」

「・・・はい」

「じゃあ私達行きますね」

「・・・・・はい」

 

 一騎を叱ったヒーローが自分たちが非を認めると、ユエは一騎の手を掴んでショッピングモールに入る。そしてヴィランの怪我は自業自得のため治癒せず無視することをユエは決める。

 そしてヒーロー達は今の遣り取りを野次馬に撮られていたためにこの先ヒーロー生命が大変な事になる。一言目が叱りでは無く謝罪ならユエも怒らなかったのに。

 

 

 ☆

 

 

「やっほ~」

「流石は最強の無個性少年だね」

 

 ショッピングモールに入ると同い年ぐらいの男女が声を掛ける。

 

「・・・褒め言葉として受け取るよ」

「褒めてるよ。素直に」

 

 男の方が苦笑いをしながら答えると気を取り直し名乗る。

 

「初めまして、俺は荒天(あらたか) 盲天」

「私は、双子の妹の荒天 未来(みく)。よろしく」

 

 二人は名乗ると手を差しだす。それをみて一騎とユエはお互いに顔を見合わせてから一応二人と握手する。

 

「それで凄いね。体育祭の時もそうだが殴られるときに目を閉じなかったな。顔面を殴られそうになれば反射的に眼を閉じるのに。」

「慣れだよ」

「さっすが~」

 

 盲天は軽く口笛を吹くとニッコリと笑う。

 

「あの一瞬をちゃんと見ていたなんて眼が良いんだな」

「視力に関する個性だからな」

「へぇ~」

「にしても、俺もヒーロー校に居るが・・・お前みたいな越えがいの有る奴が居ると楽しいね」

 

 眼の前まで行き顔を近づけ不適に笑う盲天を見て一騎も不適に笑い顔をすこし上げ見下ろす。

 

「それは何より」

「あぁ~それと「お兄!」・・・」

「やっぱ兄妹でも普通に風呂に入るって!!」

 

 なにか宣言しおうとした時に未来が声を掛ける。それで盲天は黙り若干ジト目を向ける。

 

「あのさぁ、俺いま格好付けるところだったんだけど」

「なにさぁ~! アタシのお陰で彼に会えたじゃん!褒めることはあっても怒ること無いじゃん!!」

「怒っては無いけど・・・・・・」

「ならよし!」

 

 胸を張って言うと、直ぐにユエとまた話し出す。

 その姿を見て一騎と盲天は若干困惑した表情を浮かべ、盲天が口を開く。

 

「なぁ、不死黒さんや」

「なにかな盲天さんや」

「なんであの二人あそこまで仲良くなってるの?」

「さっさぁ~・・・共通の話題があったとか?」

「例えば?」

「例えば・・・個性?」

「彼奴も俺と同じで眼に関する個性だからなぁ~」

「じゃぁファッション関係? ここっていろんな服屋あるし」

「今日来たのは俺がお前に会いたくて来たからな~」

「・・・分らないかな」

「・・・あ、妹同士って所か?」

「有りそうだね。(なんで此所に来ること知ってたんだ?)」

 

 二人が頭を悩ませてる間にユエ達は意気投合していた。

 

「やっぱこういう話って滅多に無いから共感できる人が居て良かったよ」

「ですね。ミクちゃんの切っ掛けは?」

 

 にこやかに言う未来の言葉をユエは肯定して微笑む。

 未来はユエと同じで兄を異性としても見て恋心を向けているのだ。

 

「私は個性の所為でいじめられてるのを何時も守られていたから、かな」

 

 未来の個性は『未来視』。と、言っても個性はサー・ナイトアイとは少し違いラプラスの悪魔の様な物で、常にモノの動きを予測モーションのように見え数秒先の未来が分るのだ。

 

 幼少期は個性のオンオフが上手く出来ず、その所為でクラス対抗のドッジボールや運動会とかでは常に勝つために回りから「キショい」や「お前が居ると面白く無い」「参加しないで」と言われ距離を取られ虐められていた。しかしそれでも兄の盲天は常に側に居てくれたし、虐めから守ってくれた。その結果、兄大好きになった。

 

「こんな感じで好きになってたの」

「素敵ですね!」

「ユエちゃんは?」

「私もミクちゃんと大体同じですね」

 

 二人は数秒の沈黙の後、良い笑顔でガッチリと固い握手をしていた。兄に恋をする。滅多に居ない同士に会えて二人は喜んだ。

 一騎が予想した仲良くなってる理由が個性とはあながち間違いでは無かった。

 

「ユエ、そろそろ行こうか」

「はい!」

「未来も行くよ~」

「は~い」

 

「あ、そう言えば盲天はさっきなにを言おうとしたの?」

「ん?・・・あ、あぁ~そうそう」

「忘れてたろ」

「ガチめに。それで、俺らも直ぐに其処に行くから忘れんなよ」

 

 其処に行くの意味を理解した一騎は少し目を見開いてからニヤリと笑う。

 

「楽しみにしてる」

 

 本当に楽しそうに言ってから二人は大きい音が鳴るぐらいに強くハイタッチをして手を掴む。

 その光景を見てユエと未来は微笑ましく見ていた。が、未来が思い出したかの様にユエに問いかける。

 

「あ、そうだユエちゃん」

「なにミクちゃん」

「ユエちゃんてさぁ、不死黒君のハーレム作ってるけど、実際は私と同じで――――」

 

 

 ☆

 

 

 

「それじゃあお兄様!行きましょう!!」

「おう」

 

 一騎達は盲天達と別れて買い物を再開する。

 まぁユエの行きたいところに行くだけだったお陰で、途中何度がランジェリーショップに連れ込まれそうになったのを必死で抵抗したりした。まぁ、最後は力及ばずに、になったが。

 

 

 

 それから午後5時頃、二人はある場所を訪れていた。

 

「ごめんなさいお兄様。今からするのは、下手をするとお兄様の人生もダメにするかもしれません」

「気にするな。言ったろ、今日はユエのやりたい事をしようって」

「ありがとう御座います」

 

 お礼を言ってから二人は建物の中に入る。無論回りに騒がれないように一騎は顔の傷を化粧で隠しユエは帽子を深く被る。

 

「ここですね」

 

 二人が訪れた部屋の中にはベットの上で眠り、点滴や心拍数や脳波を検知するための機会に取り付けられている人物がいた。

 

 その人物はクラスメイトの飯田天哉の兄、飯田天晴だった。

 二人が来ていたのは天晴が入院する病院だ。そしてお見舞いに扮して病室まで来たのだ。

 

 

 天晴はステインにやられ一名は取り留めるも、下半身麻痺という重傷を患いヒーロー生命が終わってしまった。

 ユエはそれを知っていた。そして有ることを決めていた。

 

「いま治しますね」

 

 優しく天晴に触れると治癒を施す。

 

 他人に治癒を使うのは否定感があった。ましてや天晴は話したことも会った事も無い赤の他人。しかし、ユエは天哉とお互いの兄の自慢話での馬が合った。だから兄をやられた天哉を見てユエは自分ならと考え、内緒で兄天晴の怪我を治すことに決めた。

 

 他人の部位欠損は無理だが、下半身麻痺と言った脊髄損傷ならユエに取ってはその程度扱いになり、簡単に治すことが出来る。

 だが、コレが世間にバレれば世界的に面倒なことになる。それを分かりながらユエは怪我を治す。それを一時期の気の迷いとは言わないし言わせない。

 

『己だけの意思に正義にのみ従い使えば良い』

 

 翠鈴に言われた言葉をユエはこの瞬間ふと思い出すと同時に治癒は終わる。

 

「特別に骨折や内臓損傷も治しましたよ。天晴さん」

「完全完治か?」

「はい」

「じゃぁあバレないうちに行こうか」

 

「そうで「だれ?」 !?」

 

 出ようと背を向けた瞬間に声を掛けられる。まさか治癒したその瞬間に目を覚ますとはおもわなかったユエは驚き振り返ると確かに天晴が薄目を開けてコッチを見ていた。

 ユエは咄嗟にアドリブをする事にして足早に夕日が差し込む窓側に立ち帽子を取り手を合わせ祈るようなポーズを取る。

 

「天晴さん、貴方の弟さんの願いは神に聞き届けられました」

「てん、や」

「はい。ですので今はお眠り下さい。次に目を覚ますとき、貴方には幸福が待っているでしょう」

 

 そういってユエは右手を天晴の目の上にかざし、少し血液を操り眠らせる。

 

「あ、あせった~!早く帰りましょうお兄様」

「だな」

 

 二人は人目に付かないようにそそくさと病院を出て行く。

 次の日お見舞いに来た天哉と飯田母は起きて立ち上がっている天晴を見て母は腰を抜かし絶叫して、天哉は走って抱きつきに言ったのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

「ユエ、電気消すよ」

「は~い」

「じゃあお休み、ユエ」

「お休みなさいお兄様」

 

 病院から帰った後は普通にご飯を食べ風呂に入り二人は何時ものように一緒に眠る。

 

 しかし日付が変わる数十分前、

 

「お兄様」

 

 ユエは規則正しい寝息を建て仰向けで眠る一騎の腰の上に座り見下ろしていた。

 

「可愛い寝顔ですね。・・・油断したらダメですよ?男は狼と言いますが女だって狼になるんです」

 

 妖艶に微笑み一騎の顔に触れる。その時にユエはショッピングモールで未来に言われた言葉を思い出す。

 

『実際は私と同じで独り占めしたいタイプでしょ』

 

「ふふふ。そう、私はお兄様を独り占めしたい。・・・でもそれと同じでお兄様にはいろんな人に愛されて欲しい。いままで苦しんだんですから報われないと。」

 

 鼻先が当たるほど顔を近づけるとユエは微笑む。

 

「今日は私の好きなことをして良いんですよね、お兄様」

 

 ユエのその姿を月光だけが照らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 深夜3時とある立体駐車場で多くの警官とヒーローが動いていた。

 

「なんてことだ」

「酷すぎる」

 

 その立体駐車場は真っ赤に染まっていた。辺り一面にはもと人間の一部と思われていたモノがスムージーのようになりぶちまけられてるうえに、至る所に骨が刺さっていた。

 しかも中央には女性の下半身だけ何故かあった。

 

「うっウエ!」

 

 その惨劇の場に何人かは走って飛び出て吐く者も居るほどだった。

 

「遺体の身元は?」

「身分証等は見当たりませんでしたが、下半身だけの女性は血液検査で人物の特定は出来ました」

「流石に早くないか?」

「いえ、それがその人の血液は現在世界に2人しか居ないゴールドブラッド(黄金の血液)、O型のRh null型を持ってる人物なんです」

「なんと・・・それでその人物は」

 

 

 

 

 

 

「ヒーロー公安委員会の水無月水重の妻、――水無月 (しのぶ)さんです」

 








次回「キャラ説!」



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