第47話:救助レースと
「来て貰って済まない不死黒君、ユエ君」
一騎とユエは学校に着くなり飯田に呼ばれ一騎が何時の日か行った人気の無い場所に居た。
「何の用でしょうか飯田さん」
ユエが声を掛けると飯田は少し俯いてからゆっくりと話し出す。
「昨日、兄さんがしっかりと目を覚ましたんだ」
「良かったですね!」
「あぁ」
2人は天晴が目を覚ますのを知っていた。怪我は全て完治しているのだから目を覚ますのは時間の問題。
「そして兄さんはそれだけでは無く立ち上がって怪我前と何ら変わらない動きをしていたんだ」
「それは良かったな!」
「飯田さんの日頃の行い良さのお陰ですね!!」
お祝いの言葉を聞いた後、飯田は顔を下に向け首を横に振り小さく喋る。
「あり得ないんだ。兄さんは下半身麻痺、脊髄損傷で2度と自身の足で立ち上がることが出来ないはずだったんだ。これはリカバリーガール先生も同じ意見だった」
その言葉に2人はなにも言えなくなる。そこで飯田は顔を上げると確信めいた目をユエに向ける。
「兄さんの怪我を治してくれたのはユエ君じぁないのかい」
飯田には確信があった。兄の怪我を治したのが目の前に居るユエだと。
証拠があるわけでは無いし、ユエは出来ても骨折までしか治せないと言っていた。なら脊髄損傷は不可能に近い・・・いや、不可能だ。
だがしかし、直感が告げるのだ。兄の怪我を治したのは救ってくれたのは、自分のヒーローを助けてくれたのは眼の前に居る水無月ユエだと。
「・・・・・ッ・・・・ハァー。よく分かりましたね」
飯田の目を見て言い逃れ出来ないと確信したユエは溜め息をついてから認める。
ユエが参ったなというような表情と言葉を聞いて飯田はやはりと言った顔を浮かべると土下座をするような勢いで頭を下げる。
「ありがとう!本当に・・・ほんとうにありがとう」
涙をぽろぽろこぼす飯田を見てユエは優しく微笑み、近づくと両肩を掴んで顔を上げさせる。
「お礼なんて言わなくていいですよ。あれは私がやりたくてやったことですから」
優しく微笑むユエの顔を見て飯田は涙を拭う。そして飯田は疑問に思った口にする。
「しかしユエ君の治癒の個性は最大でも骨折しか治せなかったのでは?」
「あぅ・・・・えっと・・・・・・」
触れられ無いと思っていた所を突かれユエは思わずどうしようか迷い、一騎に助けを求める目を向ける。
視線に気づいた一騎は静かに頷く。それがなにを意味しているのか理解し、ユエはゆっくりと話し出す。
「私の個性、治癒はどんな病気も治せますし、私とお兄様だけでしたら死んでいなければ下半身失っても1から作って治癒します。他の人でも腕が切断されてもその切断された腕があればくっつけて治し完治することはできます。
つまり、脊髄損傷や神経切断は簡単に治せる分類なんです」
説明された治癒の個性を聞いて飯田は予想だにしない詳細に驚き少しの間言葉を失う。
「す・・・凄い個性じゃないか!リカバリーガールせんせいのように体力を消費するといったことはないんだよな?」
「はい。体力の消費はありません。寿命の消費もありません」
ユエの言葉を聞き飯田は更に驚愕の表情を浮かべ、驚き称賛する。
しかし、それなら何故個性の本来の能力を隠しているのか分らなかった。どんな病気も治せるのなら数多くの人を助けられる。それこそ一国並の数の人達を。
その為にそれを聞くと答えたのはユエではなく一騎だった。
「そ、ユエなら多くの人を助けられる。それこそ金稼ぎに使えば国家予算の半分は普通に稼げる位には」
「それに私の治癒は増血効果も付属してます。そして私の血はO型のRh null型ですしね」
「な、なら――」
「しかし!」
O型のRh null型がどれだけ希少な稀血なのかを飯田は知っている。だからそれらを人助けに使えばと思いい言おうとするが、なにを言うのか前もって把握した一騎が飯田の言葉を遮るように言葉を重ねる。
「俺はユエの個性をおいそれと人の為には使わせない」
「何故だい?」
「頭の良いお前なら分るだろ?そんなユエのことを知れば国は、世界はどう動くか」
「世界は、どう動く・・・・」
どう動くか考えるが、最初に飯田の頭に浮かんだのは初めての戦闘訓練の時に一騎が言った言葉、『ユエは怪我を治す体の言い道具じゃない』を思い出しそこから考えると、飯田の顔はみるみる青ざめていく。
飯田が考えついたのはユエがヒーロー関係無く国のために国も人も救い治す回復道具として使われる未来。そしてこの世には個性婚があり、ユエの個性を量産しようと無理矢理子を孕ませて生ませられる。
しかも子が腹に居ようが個性は使えるために妊娠中も個性を使わされる。更に増血効果もありどの血液型にも輸血出来るO型のRh null型の血なら永遠に血を抜かれても可笑しくはない。綺麗事を抜けば奴隷として扱われる一生だった。いや、コレでも表現は甘いかも知れないが。
ここまで想像しても尚、生々しすぎる悪い想像は止らず飯田の顔は青を通り過ぎ白くなり吐きそうになったのか彼は手で口を抑える。
「大丈夫ですか?飯田さん」
流石にヤバいと思いユエが声を掛けると飯田は引き攣った笑みを浮かべ大丈夫には見えないが、大丈夫と告げる。
「そうか、不死黒君はそんな未来を回避するべく」
「ユエには俺が言った。・・・・いや、この言い方は卑怯か。俺が命令した。学校の奴らにも大人にも何処まで治せるか聞かれれば出来て骨折までと言えと」
「そう、だったのか・・・・・」
飯田は2人が世間に隠してるモノを知りその大きさに、重さに驚愕し僅かに体が震えてるのを自覚した。
それを見てないとは思いながら一騎は頭を下げる。
「ふ、不死黒君!?」
「頼む。お前はユエの個性の秘密を知った。けど、どうか誰にも言わないで欲しい」
一騎のお願いを聞き飯田は何処までも妹思いな男だと実感し飯田は決心する。
「お願いだから顔を上げてくれ不死黒君」
言われ顔を上げると覚悟を決めた飯田の表情が目に入る。
そして飯田は右手を顔の高さまで上げ、告げる。
「僕は!飯田天哉、そして兄さんから貰ったインゲニウムの名に誓って! ユエ君の秘密を誰にも言わないし墓場まで持っていくと誓おう!!」
まさか墓場まで持っていくとまで重い言葉を言うわれるとは思っておらず一騎もユエも一瞬思考が止るが何処までも飯田らしいと思い笑う。
「ありがと」
「ありがとう御座います」
「礼は僕が言うほうさ!兄さんの怪我を治して貰ったんだ、個性を言いふらすなんて恩を仇で返す真似なんて出来ないよ」
そこから少し3人は笑って教室に戻るが、その途中で飯田が気まずそうに口を開く。
「それとすまない。2人はお母さんのことで大変なのに」
「あ~気にしなくて良いですよ。葬式は終わりましたし」
「俺は余り良い思い出無いしな」
一騎の義母にしてユエの実母、水無月忍が死んだことは朝一のニュースで報道されたが、まさかのその放送された日の夕方には葬式が行なわれた。
異例のその速さに疑問に思う人も居たが忍の両親は他界している為に忍の両親を待つという行程が無く、葬式も家族葬で行なった為に早く終わったのだ。それでもやはり異例だが。
☆
「「アッハッハッハマジか!!マジか爆豪!!」」
一騎達が教室に戻ってから少しして爆豪が教室に入ってくる爆豪を見た切島と瀬呂が爆笑した。
何故なら今の爆豪の髪はいつものツンツン頭なのに今は8:2分けのぴっちりした感じにされていたのが理由だった。
「笑うなァ!! クセついちまって洗っても直らねぇんだッ……」
笑い続ける二人にブチ切れた爆豪の髪が逆立ちいつも通りの髪型に戻りそれにまた2人は爆笑した。
「とても……有意義だったよ……」
麗日はゴオオオオオという音を立てながら、正拳突きの型の様な物をしていた。その姿を一騎は見ていると麗日が視線に気づき頬をかく。
「どうしたん?不死黒君。う、ウチなんか変やった?」
「あ~勿体ないと思って」
「勿体ない?」
一騎の言葉に麗日は首を傾げ言葉を繰り返す。そして一騎は少し考えた後にまぁ良いかと思い立ち上がると麗日の前に立って両手を重ね前に出す。
「よし、殴ってみろ」
「え、良いの?」
「おう」
「そ、それじゃ・・・・・フッ!」
呼吸を整えると鋭く拳を繰り出す。そして一騎の広げた手の平を打つとパチン!といい音が鳴り皆は「おぉ~」と声を漏らすも一騎が惜しいといった表情を浮かべるのを見て麗日は若干不安の表情を浮かべる。
「どう?」
「構えがあれかな」
「構え?」
「そう。体触るけど良い?」
「うん」
返事を聞くと先ずは正拳突きの構えを取って貰い、麗日の体に合わせ軸足の向きや重心の位置、拳の置き位置を変える。
「次は打ち込み後の体勢になって」
「うん」
「踏み出した足はこの位置で拳は・・・・麗日の身長だとこの位置だと良いかな」
伸ばされた腕の位置を調整して後は繰り出すタイミングを教え、もう一度手を重ねて来いと告げる。
「行くよ!」
そして麗日は吸気と呼気をすこし繰り返しタイミングを合わせ勢いよく拳を打ち込む。すると先ほどとは違いバチン!!と大きい音が鳴った。
先ほどとは比べものにならない音に皆は驚き、殴った麗日自身も驚き驚愕の表情を一騎に向ける。
「なんで変わったん?」
「同性でも体付きは違うんだ、なら男女では体付きは全く異なる。そしてさっき麗日の体を触ったときに技を出すのに最適に微調整したんだ」
さも当然のように言う一騎にユエと八百万以外全員が唖然とする。体を触ったときに技を出すのに最適に微調整した、詰まりは少し触っただけで筋肉の付き方や骨格を直ぐに理解した事になる。そんなもの高校生が身につけれる技術では無い。その為に一騎とユエを抜けば一番武を知る尾白は驚愕を通り過ぎ引き攣った表情をする。
「でも流石は不死黒だよな。あのヒーロー殺しと戦って生き延びるどころか勝っちまうんだもん」
そう言って上鳴はネットに投稿されていた一騎とステインの戦闘動画を見せる。すると皆の視線が一騎に集まる。
「ヒーロー殺しと戦ったんだよな。命あって何よりだぜマジでさ」
「……心配しましたわ」
切島が爆豪にシバかれながら会話に入ると次に八百万が素直な感情を漏らした。
あの一件では飯田達は個性無断使用どころかステインと戦闘すらしていないことになった。正確にはもみ消した。
「俺ニュースとか見たけどさ、ヒーロー殺しヴィラン連合ともつながってたんだろ?もしあんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ」
「それは無い。俺は彼奴と本気でぶつかったけど死柄木達とは繋がってないと思う。幼稚な思想で力を振るう死柄木はどちらかでいうと嫌いな方だと思うよステインは」
「そ、そっか」
尾白の言葉に一騎は真剣に返す。
「でもさぁ確かに怖ぇけどさ……尾白動画見た?」
「動画ってステインの?」
「そう、それ!アレ見ると一本気っつーか、執念っつーか……かっこよくね?とか思っちゃわね?」
誰かが投稿したステインの動画。それはどんな思想で信念でステインが動いてるのかを知らしめた。その結果多くのヴィランや一般人に影響を及ぼした。
格好いい。そう思っても仕方無い。しかし、上鳴の思うだけなら良いが口にするのはダメだ。だから一騎は鋭い目を上鳴に向けた。
「ステイン、彼奴の思想も分る。家族を楽させるために金稼ぐためにヒーローを目指すなら俺は文句は言わないしむしろ応援する。でも、モテたいだとか人気者になりたいだとかそんな理由でならヒーロー目指すなと思うよ。
けどどれだけ正当性のあることだろうと人殺しはダメだ。人殺しをして成した世界など砂の城並に脆い」
静かに言う一騎に誰も口を挟めなかった。そして一騎は上鳴の目を真剣に見つめる。
「それにお前が今言ったことは、被害者遺族の前で言う事では無いぞ」
「あっ! わ、悪い飯田。そんなつもりは・・・・・」
被害者遺族で上鳴は飯田を思い出し手を合わせて気まずそうに謝ると飯田は静かに首を横に振る。
「確かに信念の男ではあった…。クールだと思う人がいるのも分かる。ただ奴は信念の果てに“粛清”という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ。俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!改めてヒーローの道を俺は歩む!!」
飯田は腕をビシっと伸ばし決意表明をする。それに飯田は凄く嬉しそうな表情を浮かべる。
「それに兄さんは既に事務だが、ヒーロー活動が出来る程に回復しているからな!」
「テレビ見たぜ!確か昨日急に完全完治して今日復帰って」
「そうなんだ!」
嬉しそうに楽しそうに話す飯田の後ろ姿をユエは微笑みながら見る。そんなユエを見ていた八百万は声を掛ける。
「もしかしてユエさんが治癒を?」
「・・・ふふふ」
その質問にユエは小首を傾げすこし笑い人差し指を口元に持って来て微笑みながら告げる。
「私が神経なんて複雑な物治癒出来ると思う?」
微笑むその姿は八百万の質問を聞いてユエを見ていた男子は無論、同姓である八百万達まで思わずドキッとしてしまう程のものだった。
☆
「ハイ私が来た。ってな感じでやっていくわけだけどもね、ハイヒーロー基礎学ね!久しぶりだ少年少女!元気か!?」
「ヌルっと入ったな」
「久々なのにな」
「パターン尽きたのかしら」
ネタが尽きたのかオールマイトはいつものセリフをスッと言って話し始めた。
「職場体験直後ってことで今回は遊びの要素を含めた、救助訓練レースだ!!」
「救助訓練ならUSJでやるべきではないですか!?」
「あそこは災害救助がメインだから今回のような救助レースには不向きじゃない?」
「そう!不死黒少年の言うとおりだ!」
飯田の疑問に一騎が返すとオールマイトはそれを肯定してルールの説明を始める。
「ここは運動場γ!複雑に入り組んだ迷路のような細道が続く密集工業地帯!5人4組に分かれて1組ずつ訓練を行う!一組だけ6人な。そして私がどこかで救難信号を出したら街外から一斉スタート!誰が一番に私を助けに来てくれるかの競争だ!!もちろん建物の被害は最小限にな!」
最後でオールマイトは爆豪を指さす。爆豪は不満の顔をするも皆は、納得している。
「それじゃあみんな位置に着いて!」
最初に指名された組は、一騎、緑谷、尾白、飯田、瀬呂、芦戸の6名だ。
「クラスでも機動力の良い奴が集まったな~」
「一位は皆誰だと思う?」
「やっぱ飯田が一位かな」
「あー……うーん、でも尾白もあるぜ」
「オイラは芦戸!あいつ運動神経すげぇぞ!」
「デクが最下位」
「だから一位予想だって」
「怪我のハンデがあっても飯田くんな気がするなぁ」
「ケロ」
「勝つのはお兄様です!」
「私もそう思いますわ」
「ハイ、スタート!!」
開始の宣言と同時にオールマイトの居場所が全員に知らされたことにより一斉に行動を開始する。
「あっははははは!! 軽い軽い!!」
一騎は重りもサポートアイテムも全部置いてきて身軽の状態でパルクールのような動きをしながら目的地まで走っていた。
「ほへ?」
「え?」
だが、いきなり暗くなり人影ができた上に間の抜けた声が聞こえたことで上を見ると緑谷が落ちてくるのがわかった。
『いいか一騎。高くジャンプするにはしゃがみ込み、足に力を溜め一気に伸ばす!それを素早くするんだ。例えるなら圧縮したバネが勢いよく跳ねるのをイメージしろ』
何故か緑谷が落ちてきたのを見て一騎は体験中にミルコに言われたことを思い出し膝を曲げる。
「全集中の呼吸!」
大量の酸素を血中に取り込み脚に力を溜めて思いっきり跳躍する。落ちてきた緑谷を抱きかかえると出っ張っている管を足場にして更に跳躍をし、壁を蹴り一番上まで上がりきる。
「ご、ごめん不死黒君!!」
「気にすんな!それより走るから掴まれぇ!!」
「え?なにをぉぉぉおおおおおお!!!」
子は親に似るというのか、一騎が取った行動は一騎がミルコにされていたように緑谷をお姫様抱っこして運動場γのパイプやタンク、建物の屋根を走りオールマイトの元に向かうことだった。
「うそーん!?」
「緑谷を抱えて移動してんの!?」
「流石は不死黒君だ!」
「あっはは」
瀬呂はトップでゴールすると思ったらいきなり目の前に緑谷を抱えて現れた一騎に驚き、ギリ見えた芦戸は驚愕し、飯田は何故か納得して尾白は呆れた笑いをこぼす。
そしてオールマイトが見える位置まで来ると一騎は更に速度を上げ、最後に思いっきりジャンプをすると、緑谷を持ち直し、投げ飛ばす。
「いっけぇえええええ!!!!」
「えぇえぇえええええ!?!?」
投げられた緑谷は叫びながら手足をバタバタするも意味は無く、虚しく虚空をきるだけだった。
☆
「うん、一位は緑谷少年なんだが。・・・・・不死黒少年、流石に緑谷少年を投げ飛ばすのは良くないぞ」
「ごめんよ緑谷。大丈夫?」
レースは緑谷の勝利で幕を閉じたが、緑谷を投げ飛ばした事でオールマイトは一騎を叱るが当の本人は聞く耳を持たず座り込んでる緑谷に謝っていた。
「本当にごめんよ。ミルコさんがこんな感じだったから」
「ううん。大丈夫だよ」
一騎が緑谷を抱えて運動場γを走り回ったのは他のクラスメイトも見ていた。
「緑谷さんズルい!! 私もお兄様にお姫様抱っこされたい!!!」
「「「「突っ込むとこそこ?!?!?」」」
ユエは緑谷にお姫様抱っこに対する文句で全員に総ツッコミを受けていた。
因みに次の組みはユエ、轟、爆豪、青山、常闇でやったが、ホークスに素直に称賛される液体操作技術で飛行したユエがまさかの2分以内で到着というクラスどころか、学年歴代で1.2を争う速度でゴールしてレースにすらならなかった。
授業後に峰田が男子更衣室で女子更衣室の覗き穴を見つける。
「峰田くんやめたまえ! 覗きは立派な犯罪行為だ!」
「うるせぇ! オイラのリトル峰田はもう立派な万歳行為なんだよぉ!!」
よだれを垂らし血走った目で穴を覗こうとする峰田。背後に怖い男が居るのに気づかず。
「八百万のやおよろっぱい! 芦戸の腰つき! 葉隠の浮かぶ下着! 麗日のうららかボディに! 蛙吹の意外おっぱ「オイクソチビ」 ミッ!?」
「お前覗くってことはユエの裸も見ようとしてんだなぁ~?」
「い、いやちが――」
振り返った峰田は残像が残る程の速度で首を左右に振るうも一騎は足を上げる。
「女の尊厳踏みにじろうとしたんだ、煩悩まみれの頭踏み潰される覚悟できてんだ、な!」
「ミギャァ!!」
峰田の顔すれすれに突き蹴りを放ち背後の壁を蹴る。壁が壊れないように手加減しているが峰田は横を見ると壁から何故か少し煙が上がっていた。
顔を真っ青にしながら腰が抜けた峰田を見ると一騎はしゃがみ目線を合わせる。このとき光の無いハイライフの目で見られ更に恐怖を煽る。
「俺の突き蹴りは人の骨を折ったり内臓潰すことできるからな」
「・・・」コクコクコク
この後覗き穴は塞がれた。因みに峰田は一騎のハイライフの瞳にトラウマを覚えしばらく悪夢とならしい。
☆
~エリクの館~
バカみたいに大きいテレビやソファーが有る大きな部屋でエリクはパソコンに向き合い何かを打ち込み、ハンターはソファーに寝転びテレビを見ながらお菓子を食べていた。
その空間に突如エリザベートが元から居たかの様に室内側のドア前に現れる。
「お帰り、エリザベート」
「お疲れ~」
「えぇ、ただいま」
2人の言葉に返事を返すとエリザベートはエリクに近づき分厚い紙の束を渡す。それを見たハンターが何気なくお菓子を投げて問いかける。
「なにそれ?」
「・・・国の企業秘密よ」
「ふ~ん」
受け取ったお菓子を一口食べてから答えるとハンターはつまらなさそうにしてまたテレビを見る。
「サンキュウ~」
「これでようやく16年越しに任務は終わりよ」
「そうだな」
「んーっ、疲れた」
「なぁ」
「ん?」
エリザベートは腕を伸ばし伸びをしているとハンターがテレビを指差さす。
「なんで下半身だけ残したんだ?」
「ん?」
声を掛けられたことで目線をテレビに向けるとテレビに映されているのは水無月忍の事件の追加情報だった。
「簡単よ。散らばっている血肉の身元特定に必要な物が無ければ時間が掛かるでしょ?だからよ」
「なるほどね、にしても付き人を殺す必要は有ったの?」
追加情報には忍以外に3人のDNAが検出され、その人達は忍の付き人のメイド2人と執事のものだった。そしてエリザベートの殺害理由は。
「彼奴ら嫌いだもの」
「はは、お前らしい」
返答を聞いたハンターは笑い楽しそうにお菓子を食べ進める。その姿を見てエリザベートは貰ったお菓子を食べきり問いかける。
「貴方こそアメリカになにしに行っていたのよ?」
「ん?」
「貴方がアメリカに行った日から有名なヒーローが次々と殺害されて大騒ぎよ」
「あー。あるヒーローを探してたんだ」
「へぇ~。貴方が探すなんて相当な人なんでしょうね。会えたの?」
「会えなかった」
「それは残念ね。名前は?私の方でも探してあげるわよ」
「マジか! 元日本のヒーローで名は、ザ・苦労マン」
「・・・は?なんて?」
「?ザ・苦労マン」
「・・・」名前合ってる?」
「あぁ」
バカみたいな名前にエリザベートは真面目にも思わず考え込んでしまう。
(苦労マン?アメリカにそんなダサイ名前のヒーローは居ないわ。そもそも日本にも・・・・いや、確かヴィジランテにそんな名前の人が居たような・・・「やっぱり」 え)
エリザベートが考えてるときにエリクが渡された大量の資料を読み終わり呟く。
「エリク?」
「どうしたの?」
「ん?あぁ、今回一騎に賞金を上乗せした奴らが解った」
少し怒気を滲ませた声を効いてハンターは起き上がりエリザベートが口を開く。
「出したのはAFOとおっ、水無月水重でしょ?」
「半分正解だ」
「違うのか?」
「今回はAFOが3千万出して残りを水無月水重では無く、ヒーロー公安委員会、引いてはこの国だ」
「「・・・はぁ!?」」
まさか国が関わってると聞いてハンターとエリザベートは驚く。
「サイトをハッキングして上乗せした奴らを調べた。いくつかの国のサーバーを経由していたが簡単だった。そして最初は半信半疑だったがこの資料で確信に変わった」
資料を軽く叩くエリクを見てエリザベートは口を開く。
「でも何で国がそんなリスクを犯してまで?」
エリザベートの疑問も最もだが、理由は簡単だった。
「一騎はこの世界を変え始めている。故に彼奴らにとって一騎は今の社会に置いて
現代の個性主義社会は無個性の者達には生きにくかった。
全員が全員では無いが、殆どの無個性の者は無個性と言うだけで差別され理不尽なめに合わされていた。しかしそれを一騎が変えた。
彼が体育祭で大々的に表に出たことにより、日本だけには留まらず、世界中で今まで差別による暴力を受けていた人達が一斉に無個性差別していた人や黙認していた学校の教師達を訴えたのだ。しかも無個性差別をしておきながらヒーローに成った者達も訴えられている。
これにより個性主義社会は大きく揺らぎ徐々に崩壊を始めている。
学生、社会人関係無く訴えられた者達は何千万もの賠償金を命じられた。しかも訴えられた学生の殆どの者はヒーローを目指していたが、無個性差別をしていた人間を置いておく、又は入学させるヒーロー校は無く、ほぼ全てのヒーロー校が無個性差別していた者の退学(デビュー目前だろうと)、または推薦や内定取り消しを行なった。
学生時代に虐めていた無個性の人に訴えられたヒーロー達は賠償金で金だけでは無く、それが世間に出てヒーロー活動が出来なくなり家族に見限られるのも出始め、正に家族、金、職、全てを失った者が既に200人近く出ている。
因みに、いま一騎が住んでいる地域で一騎が無個性差別の虐めを受けていたのを見て見ぬ振りをしていたヒーローと教師達は匿名でネットに晒され身内全員から縁切りされ、超が付くド田舎で細々と暮らしてる。同級生は後ろ指をさされ生活している上に学校退学になりかかっていた大金が一瞬でパーになったことで親から暴力を受けている子が殆どとなっている。
正に因果応報だった・・・・のだが。
それをヒーロー公安委員会や国のトップはそうは思わず、一騎の存在の所為だと決めた。
なにせ一騎が存在しなければ多くのヒーローが辞めることも将来有望なヒーロー候補生もいなくなることは無かった。これは国に取っては大き過ぎる損失だった。
その為にヒーロー公安委員会と国のトップは不死黒一騎を個性社会になってから初めての無個性で有りながら現在の社会を壊す特級危険人物としてブラックリストに載せた。
「それで一騎の殺害が望まれたって所だろ」
エリクの予想を聞いたハンターとエリザベートは嫌な表情を浮かべ2人は「腐ってる」と声をそろえて言った。
「坊やの殺害が計画された?」
「そうだ。最初は公安所属のヒーローを暗殺に使うことにしたが、んなことすれば即座にユエに感知されユエが敵に回るから却下された」
「あの子が個性を殺害に使えばオールマイトすら簡単に殺害できてしまうものね」
「そして職場体験の時に一騎に賞金が掛けられていることをクズ共は知り、一騎の殺害賞金を上乗せした。まぁ、一騎を死に追い詰めれたのは1度だけでそれ以降は一騎の命に近づく賞金稼ぎが存在しなかったがな」
「うんで次に公安の連中は暗殺一族の呉に依頼するも一蹴りで断られたっと」
「「「・・・」」」
ハンターが言った後に沈黙が流れてからエリクが怒りと殺意を放つとSとの鳥たちが一斉に飛び立ち館からによるように飛んでいく。
「いっそのこと彼奴ら全員皆殺しにしてやろうか」
エリクの言葉に2人は思わず冷や汗が流れた。
(エリクが怒り狂えば私とハンターでも止められないかも)
(エリクが殺戮だけに動けばそれはそれで面白そうだな)
エリザベートはもの凄く心配するもハンターはワクワクしていた。そしてすこしするとエリクは怒りを静め笑顔を浮かべる。
「ま、この話は置いといてエリザベートが正式に帰って来たしパーティーするか!」
「それはありがたいけどするのなら一ヶ月後にしてちょうだい。私は疲れたから寝るわ」
「じゃあそうすっか」
エリザベートの返答を聞いて、エリクは了承してパーティーをするときの料理を考え解散と成る。
「・・・フフ」
エリクはパソコンを操作して1枚の写真を見て小さく笑う。
一騎、ミルコ、メトリの三人が笑顔で話している写真。
お久しぶりです!本当は年明けに投稿しようと思ったんですけど色々有りパソコンがダメになり遅れました!!(__)
後は去年からブルアカにハマってまして一騎をシャーレの先生にしたら面白そうと思って妄想してたのが原因です。
次回「期末テスト①」
それでは、期待せずにお待ち下さい。
よろしければ評価やコメントの方!お願いします。
頑張って神野区の悪夢編までは行きたい・・・。期待せずに応援してね☆