才先輩が引っ越してから数ヶ月、俺は二年生になった。あの日以降は暴力とかの虐めはそこそこ無くなった。その代わり教科書とかや鞄を切り裂いていたり落書き、あと無視は酷くなった。けど教科書はもう内容全部丸覚えしたから痛くもなんともない!
あとあの時に大岩を壊したけどアレって正確には器物損害罪に当たるけど先生達は何も言わなかったな~。
「今日の鍛錬終わり。家に帰って風呂に入ったら食材買いに行かなきゃ」
そう、今の俺の冷蔵庫の中の食材は豆腐ともやししかない。才先輩と鍛錬をしていた時はよくご飯とかを作っていたから食材を買い溜めとかしてたけど、一人になると満足バーとかカロリーメイトやエネルギーゼリーで1日済ましちゃったりして食材買ったりしないのよね~。分るよね!(謎の威圧)
「って事で買いに行くか」
☆
「まいどあり~」
運動がてら隣町まで買い物に行ったら安くて良い食材が沢山買えた!少し公園で休むか。
「・・・季節的にまだ寒いな~。ん?」
なんか小さい子がコッチまで来た。少し長めの白い髪に赤い瞳。そして一番特徴なのが右側の額に生えた茶色味掛かった角だ。じゃなくて。
「どうしたの?迷子・・・では無いね」
あそこにお爺ちゃん?みたいな人が居るし。てか何か護衛みたいな人居ない?近くに黒塗りのベンツ止ってるし。てかあの人の貫禄凄いな。 ああ、そうだ。
「遊んで欲しいのかな?」
「うん」
良いのかな~?あ、あのお爺ちゃんは手を合わせてお願いしてる。じゃあいいか。
一騎はしゃがみ女の子に目線を合わせる。
「良いよ遊ぼうか。俺は一騎。お嬢ちゃんの名前は?」
「エリ」
「エリちゃんか。可愛い名前だ。それじゃあ何して遊ぶ?」
「あれ」
「ブランコか。良いよ」
そのまま一騎はブランコに乗るエリの背中を優しく押してあげたり、次には足の上に乗せて滑り台を滑ったりと、一緒に遊んであげてその様は中の良い兄妹だった。
「ふぅ~。子供って遊ぶときは凄く元気だよな~、何気に付いて行くので精一杯だった」
「若いの、あの子の相手をして貰って悪いな」
一騎は砂場で遊んでるエリを見守りながら一休みの為にベンチに座り小さく呟いているとエリの祖父と思わしき人が一騎の隣に座り話しかける。
「気にしないで下さい。俺も昔を思い出して楽しかったので」
「妹か弟が居るのか?」
「ええ。腹違いの妹が居ました。それであのこと遊んでいた時を思い出して楽しかったですよ」
「そういって貰えれば助かるよ」
「あ、申し遅れました。俺は不死黒一騎と申します」
「ああ、すまんな。俺は・・・いや止めよう。君も薄々気づいているだろ?」
「・・・はい。貴方から感じる気配は普通の人間の物じゃない。それに貴方の着物の胸元にあるその家紋は今では絶滅危惧種と呼ばれている極道、死穢八斎會のものですね」
「薄々と呼べるものではない、博識だな」
「どうも」
「なら、俺達と関わり合いがあるのは不味いだろうから。此所は親父とでも呼んでくれ」
「それはそれで誤解生みそうなので、ここはオヤッサンで」
「ああそれで」
二人は握手を交わす。
「それで今更ですが、エリちゃんはオヤッサンの孫ですか?」
「そうだ。よく分かったな」
「見た目を考えて下さーい」
「はは。・・・」
「・・・あの、聞きずらい事を聞いても良いですか?」
「なんだ?」
「なんで貴方は時折そんなに悲しい眼をするのですか?」
「・・・」
「ごめんなさい。会って時間も経たないのに出しゃばり過ぎました」
「いや、いい。・・・君は優しく信用出来るからな。話そう」
「はい」
「あの子はな生まれて直ぐに個性を発現したんだ。だがその個性の所為でエリの父親は消えた」
「き、消えた?瞬間移動系の個性とか?・・・いやでも、そんな素振りは無かったような・・・」
「あの子の個性は巻き戻し。そしてその個性の暴走で父親を存在する前まで巻き戻したんだ」
「!?!?」
「それで母親は、まあ俺の娘だったんだがな。アイツはエリは呪われているといって捨てた。そして俺が引き取ったんだ」
「そんな辛い事が・・・」
「ああ。そして俺の組の者にも似た個性の者が居てなソイツに預けたんだ」
「それは良い考えですね。似た個性なら扱い方の指導も出来ますし何よりエリちゃんの居場所に「俺もそう思ってた」 え?」
組長は俯いて血管が浮き出るほど力強く拳を握る。それに一騎は何かあったと思い固唾を飲んで次の言葉を待った。
「ソイツはな、あの子の個性を利用して地上を支配しようと企んだんだ」
「え、それって・・・」
「そう。恐らく不死黒君の思った通り、あの子の体を元に、だ」
「っ!」
その言葉を来た瞬間に一騎は組長の胸ぐらを掴んでいた。それに護衛の人が止めに入ろうとするが組長は手を翳しそれを止める。
「そんなの!あんな小さな子にする事か!」
「本当に、そうだな」
「・・・!ごめんなさい」
「気にするな。君は本当に心優しい子だ」
一騎はまた座ると、二人は砂場で泥団子を作ってるエリを見つめる。
「それでどうしようかと悩んでいてな、今日はその息抜きの為にエリも此所に連れてきたんだ」
「そうですか。・・・でも、だからエリちゃんはどことなく俺に似ていると思ったのか」
「?・・・不死黒君も何か厄介な個性を?」
「いえ、真逆です。俺もある種の絶滅危惧種なんです。個性の無い、無個性人間なんですよ」
「!そうなのかい?」
「はい。それで今のご時世無個性がどんな扱いを受けるか知ってますか?」
「まあよく有る無個性差別か」
「そうです、俺はよく小さいときに親から暴力を受けていました。受けない日の方が少ないぐらいに。俺を普通の人間として見てくれたのは片手で数えられる数しか居ません」
「なるほど。確かに君はエリと境遇が似てるかもな」
「個性が無いと生きるのは大変。面倒くさい個性が有ればそれもまた大変。世知辛いな」
「ガキが言う台詞じゃあねぇな」
「あはは」
「・・・坊主、お前はまだその親と一緒に暮らしてるのか?」
「いえ、中学に成るときに家を追い出されて今は1人暮らしです」
「そうか。・・・君も大変だな」
「はは。・・・どうしたの?エリちゃん」
「出来た!」
エリは顔に泥を少し付けながら、綺麗に丸められた泥団子2個を一騎に見せる。
「上手く作れてるね」
「うん!」ニコ
エリの頭を撫でながら褒めるとエリは花が咲いたような笑顔で喜ぶ。
「え、何この子可愛い!じゃなかった。じゃあこの泥団子をもっとピカピカにする?」
「うん、する」
そのまま一騎はエリと一緒に砂場に行き泥団子を更にピカピカにしていく。その二人の姿を見て組長は微笑ましく眺めた後に何かを考え込む。
☆
「かんせーい」
「わーい!」
二人の目の前には少し光を反射する程の泥団子が有った。エリはそれをキラキラした眼で見つめピョンピョン跳びはねて喜んでいた。
「オヤッさん、じゃなかった。お爺ちゃんに見せに行こうか」
「うん。・・・・・・・見て」
「綺麗に作れてるな」
「うん!」
「じゃあ手を洗おうか」
「はーい」
綺麗な泥団子を組長の横に置くと一騎と手を繋ぎ楽しそうに水道まで行く。その後ろ姿を組長は微笑みながら見つめ、何かを決心した様な顔付きになる。
「ちょっと待ってね~・・・はい」
「ありがとう」
戻るときに自動販売機で買ったほっとココアを開けるとエリに渡す。受け取ったほっとココアをちびちびと飲んでるエリの姿を一騎はホワホワしながら見ていた。
「不死黒君、少し良いか?」
「はい?」
そんな時にさっきとは違い真剣な表情と声で組長に話しかけられ、思わず惚けた声が出てしまうが、一度咳払いをして背筋を伸ばし組長を見る。
「何でしょうか?」
「君は心が優しく良い人間だ。そんな君に頼みがある」
「受けましょう」
「即決か。疑いとかは無いのか?」
「貴方はいい人ですから。こんな中坊にヤバイ相談なんかしないでしょ?」
「えらく買われているな。まあその方が都合は良いか」
「今の台詞はそれぽくってヤバいですよ。それで頼みとは一体何ですか?」
「・・・君さえ良ければしばらくの間エリ預かってくれないか?」
「え?」
「あの子が初めて会う人にこうまでなつくのは始めてでな。それで預かるって言ってもずっとでは無く、組の中の問題が片づくまでで良い。無論、資金援助もさせて貰う。・・・だが、正直君にメリットは無い。だがどうかな?頼まれてはくれないか?」
「俺の答えは・・・前もって言ってますよ。あとはエリちゃんの答えだけです。ねえエリちゃん」
一騎はでしゃがみエリに目線を合わせる。それに少し首を傾げるエリは不思議に思いながらも聞く。
「なに?」
「エリちゃんさえ良ければしばらくの間、俺の家で暮らさないかい?」
「暮らす?」
「うん、エリちゃんさえ良ければだけど。どうかな」
その言葉に不意に組長を見るエリ。それに対して組長は優しく頭を撫でて上げると優しく答える。
「エリの好きにしな」
「・・・!うん」
そしてエリは差し出された一騎の手を取る。
その行為に二人はエリが了承したと理解し、胸をなで下ろす。
「よし!あ、でもオヤッサン」
「なんだ?」
「ちゃんと問題が片づいたらエリちゃんを迎えに来て下さいね。男同士の約束ですよ!」
「ああ分った」
「あと資金援助は要りません。俺もネットでかなり稼いでいるのでお金には困ってません。それにもしそのエリちゃんを悪用してる人がそれに気づいたらヤバいので」
「それもそうだな。すまんな」
「気にしないで下さい。俺がやりたくてやっていることなので」
最後に二人は握手をして、一騎はエリを連れて家に帰る。その姿を見ていた組長に側近の男が近寄って来た。
「良かったんですか親父」
「治崎の奴、絶対に動きますよ」
「そん時は俺達でなんとかするしかないだろ。こっからは大人のするべき事だ。それに、アイツでも流石に堅気には手ぇ出させねぇだろう」
「わかりやした」
「それじゃあ帰るぞお前ら」
「「「へい!」」」
組長は車に乗り帰路につく。そして、自分にエリを連れて公園に行くことを進めた見知らぬ男をとの会話を思い出す。
『よお、くーみちょーさん』
『だれだテメぇー!』
その男は突如組長が部屋で一人の時に現れた。まるで最初っからそこにいたかのように。
それに驚き咄嗟に銃を抜き、構える。それに対して男は鼻から上はフードで見えなかったが口元はヘラヘラとニヤけていた。
『おーこわいこわい。別にアンタに往生せいやとかで来たんじゃねえからそのチャカ卸せ』
そう言うと両手を挙げて降参のポーズを取る。ソレを見ると組長は部屋のソファーに座り銃をテーブルの上に置く。が、いつでも構えれるようにする。
『要件はなんだ(声からして二十歳前半)』
『とある日時にとある場所に行け。この紙に書いてある』
ぽいっと組長に向けて折りたたまれた五センチ四方の紙を投げ渡す。
『何が目的だ?』
『そこに書かれてる場所に芯の通った男が来る。ソイツは何処までも優しい。いまアンタが悩んでいるエリの手助けをしてくれる』
『何故エリのことを!?』
『ま、行くも行かないもあんた次第。それじゃ』
そう言ってから男は窓から飛び降りる。直ぐ後に窓に寄るが、男の姿は既に無かった。
「あれはどう考えても不死黒君のことだったな」
「親父? どうかしましたか?」
「いや、何でも無い」
そう答えると外の景色を見ながら、帰った時に治崎をどう説得するか考える。
☆
エリを連れて家に着いた一騎はエリに優しく話す。
「此所が今日からエリちゃんの新しい家だよ」
「・・・新しい家」
「そうだよ。どうぞ」
ドアを開けるとエリはおずおずと中に入る。
「お邪魔します」
「違うよ。此所は今日からエリちゃんの家でも有るから、帰って来たときには?」
「た、ただいま//」
少し恥ずかしそうにモジモジしながら言うエリに可愛いと思いながら笑みを向ける一騎。
「うん。お帰り、エリちゃん」
少しの時間とは言え、迎えが来るまではエリちゃんが良い子に育つように育てようと心に誓う一騎だった。