「着きましたわ」
「わ、わーおー」
約束通り一騎は八百万の家に訪れていたのだが、そのあまりの大きさに開いた口が塞がらなかった。
「門を通って家まで車で約五分。どんだけ敷地広いの?」
しかも広大な敷地に似合う程に巨大な屋敷だった。
「八百万さん家の百さんや」
「何でしょうか?」
「流石に俺場違いではない?普段着で良いって言うから普段着で来たけどこれスーツやタキシードの方が良くなかった?持ってないけど」
一騎の目の前に広がっている光景はまず、屋敷の扉の前に男女2人、恐らく八百万の両親。と、その左右、まず右側に執事10人左側にメイド10人がならんで出迎えていた。
「必要要りませんわ」
口を引きずらせる一騎にそう告げると手を取り八百万は進む。
「ようこそお出で下さりました、不死黒さん。私は百の父です」
「母です」
「お初にお目にかかります。既にご存じとは思いますが、私は恐れながら娘さんと仲良くさせて頂いている不死黒 一騎と申します」
「そう硬くならないでくれ不死黒君。常々君とは会いたいと思っていたんだ。だから会えて光栄だよ」
「恐縮です。あ、此方つまらない物ですがどうぞ、お納め下さい」
八百万父の差し出された手を取り固い握手を交わした後に手土産を渡し屋敷内に入ると一騎は足を止めて天井を見上げる。
「入って早々にシャンデリア!?」
「どうしました?不死黒さん」
「いや、なにも」
☆
「どうぞ、ダージリンティーで御座います」
「ありがとう御座います」
何十人も会食が出来そうなほどの広い部屋に大きなテーブル、煌びやかに彩られた装飾品の有る部屋に通され対面になるように座り、差し出された紅茶を飲む。
「・・・美味しい」
「それは良かった。百から君はダージリンティーが今は気に入ってると聞いてね」
「痛み入ります」
「不死黒君、君は礼儀正しいね」
「いえいえ」
「・・・・不死黒君、私達は君に感謝をしているんだ」
「感謝?」
「百から聞いていたんだ。USJ襲撃事件の時に百の命を救ってくれたこと。その結果、君が瀕死になってしまったこと」
「・・・そう、ですか」
「ありがとう、娘を助けてくれて」
八百万父と八百万母が立ち上がり頭を下げると、待機していた使用人達全員も一切ズレも無く頭を下げる。
頭を下げてお礼を言われることに慣れてない一騎は慌てて立ち上がり頭を上げるように促す。
「頭を上げてください!お礼なんて言う必要無いですよ!」
「いや、娘の命の恩人に礼を尽くすのは当然だ。・・・襲撃事件のあと、直ぐにお礼を言えなくてすまない」
1度頭を上げてからもう一度頭を下げ今度はお礼では無く直ぐに礼を言えなかった事にたいして謝罪する姿を見て一騎は思う。
(こんな人が親なら、ユエは苦しまずに過ごせただろうな)
と。何処までも自分よりも妹の事を考える。
「過ぎたこと、気にしなくて良いですよ。娘さんは大きな怪我をしなかった、それで良いじゃないですか」
「しかし、その代わりに君は顔にそのような大きな傷を・・・」
「今更身体に傷の1つや2つ増えたとこで大した違いはありません。とりあえず頭を上げてください」
「・・・!」
促されるまま頭を上げた八百万父が見たのは顔の傷を撫でてからニカッと笑う。
「・・・それに娘さんにも言いましたが、俺はこの傷気に入ってるんですよ!」
「っ! え、気に入っている?」
「はい。女を守って着いた傷ですよ?男にとっては勲章です。しかも顔にある刀傷なんて男のロマンですよ!」
「恩に着る。・・・不死黒君、これから困った事が有れば遠慮無く言ってくれ。八百万家は君の後ろ盾なろう」
ぱんぱかぱーん!不死黒一騎は新たな後ろ盾を手に入れた。
八百万父の恩返しに一騎は内心大げさではないか?と思うも表情には出さず、「その時は頼りにさせて貰います」とだけ告げる。
☆
「不死黒、答え合わせお願い」
「どれどれ、・・・うん。合っているよ尾白、全問正解」
「よっしぃ!」
「ヤオモモ!私はどう~?」
「残念ですが点数が下がっていますわ、芦戸さん」
「うわーん!」
「諦めろ芦戸」
「上鳴は点は下がってないが上がってもないぞ」
「ウグッ!」
翌日、八百万の家にいっていた上鳴、芦戸、耳朗、瀬呂、尾白の他にユエ、轟、爆豪、飯田以外のA組のメンバーが参加して今は一騎が作った予想のテストの答え合わせを行なっていた。
「不死黒君、私は~?」
「葉隠は目標の80点超えてるよ」
「やったー! 褒めて~」
「よしよし」
「えへへ。・・・?」
ユエみたいに甘える葉隠に一騎は優しく頭を撫で、葉隠は幸せそうに頬を緩めたそのとき一騎が少し遠い目をしているのに気づく。
「どうしたの?」
「いや、ユエは元気にしてるかな、と」
「ふ~ん。(・・・私を撫でながらユエちゃんを考えるのは失礼だと思うな~・・・・)」
誰にも見えないが葉隠は口をとがらせ少しふてくされ、頬を膨らます。葉隠が一騎に向けているのは恋愛では無く、兄に甘える感じのような物のはず。
「よし!」
気分を変える為に一騎は手を叩いて全員の視線を集めると笑顔を浮かべる。
「少し早いけどおやつにしようか!準備するね」
「うま!」
「美味し~♪」
「あぁ、プロの味だ」
「デリシャ~ス」
全員出された
「・・・お、美味しいですわ」
みんなの様子を見てから八百万は紅茶を飲むとその余りの美味しさに目を見開いて口を手で隠す。
「良いな~ヤオモモ何時もこんなに美味しい物食べれるなんて」
「いえ、このケーキも御紅茶も初めてですわ」
「そうなん?」
「いやー、皆に喜んで貰えるとは、朝から準備して良かったよ!」
一騎のその一言で全員は一騎の手作りと理解し驚く。
「スゲぇ!」
「プロ並みに美味しいよ!」
「完璧超人かよ」
「サスフシ!」
皆が称賛して一騎は嬉しそうに笑う。それから麗日達女性陣は甘い物への罪悪感を無視してお替わりして、砂藤は一騎からレシピを貰う。
「てかさぁ、なんで不死黒執事服着てんだ?」
瀬呂はずっと思っていた疑問を投げかける。
いまの一騎は八百万家の執事と同じ服装をしていた。無論その状態でみんなを出迎えて勉強の面倒もみていた。
全員その事に疑問を持つもあまりにも一騎が似合いすぎて今まで口にしなかった。
「朝方に執事やメイドの人達に進められて着たんだよ」
「なるほど」
「服装似合いすぎるだろ」
「ケーキも紅茶も美味しいって」
「紅茶の入れ方も綺麗過ぎるもん」
「嬉しい事言ってくれるね。ケーキと紅茶のお替わり要るひと~」
「「「はーい!!要るいる!!」」」
手を上げる全員にケーキと紅茶のお替わりを入れると定位置とでも言うかのように八百万の→斜め後ろに立つ。
「ケーキも御紅茶も美味しいですわ」
「身に余る光栄です」
「これほどのケーキは初めてですわ」
「それは食材が良いからですよ」
「食材が良くとも料理人の腕次第でダメになりますわよ。しかし紅茶の入れ方は一体誰から?」
「紅茶はとある方からです」
「なるほど。とても良い方から教わりになりましのね。香りも味も最高ですわ。一流ですわね」
「いえ、私などまだまだ二流です」
「謙遜ですわね。お父様もお母様も凄く称賛していたと爺やから聞きましたわ。胸を張って一流と言っても良い腕前ですわよ」
「身に余る光栄で御座います。百お嬢様」
頭を下げて礼を言う一騎。その姿を見て八百万は微笑むと紅茶を飲んで味と鼻に抜ける香りを楽しんでから口を開く。
「しかし何故敬語ですの?不死黒さん」
「その方が雰囲気が出るかと」
「そうですか」
「はい。似合っていれば良いのですが」
(似合いすぎますわ不死黒さん//・・・にしても不死黒さんの紅茶の入れ方は印照家の方々に似ている気がしますわね)
「不死黒似合いすぎだろォ!!チクショー!!」
「ユエちゃんにその姿見せれば絶対喜ぶっしょ」
「着させて貰った時に写真撮って貰って送ったら凄く大量に返信きたよ」
「だろうな」
「さて!ひと休憩したし勉強再開するよ!」
~同日夜・雄英のとある会議室~
教員専用会議室で教師陣は話し合っていた。
「緑谷と爆豪ペアの相手はオールマイトさんにお願いします。理由は――」
期末試験実技は一騎が予想していた通り生徒と教師との戦闘だった。
今日はテスト内容を作り終え、今はその組合わせを話し合いをしていまは最後の方になっていた。のだが。
「最後に不死黒についてですが・・・・」
ここにきて相澤が言葉を詰まらせ沈黙が訪れる。しかしその事に教師陣は誰も疑問に思わなかった。何故なら教師の中に個性無しで一騎と戦闘して追い詰められる人物が存在しないから。
「正直よぉ、彼奴に実技テスト要るか?」
最初に沈黙を破ったのはマイクだった。内容は一騎の実技免除。これに関してはマイクだけでは無く他の教師も同じ事を思った人は正直何人も居る。
USJでA組生徒はヴィランと戦闘をし、特に一騎は撃破したヴィランの数を他生徒より遥かに多い。そのうえ、オールマイト用兵器『脳無』を相手にクラスメイトを守り抜き、瀕死の重傷と気絶中に殺害、職場体験では何人ものヒーローを再起不能にしたヒーロー殺しの討伐に賞金稼ぎとの戦闘。決め手は最強の殺し屋一族呉との戦闘報告。
正直一騎は未知すぎて何が試練になって何が試練にならないのか分らないのだ。
だがそれでも免除を否定する者も居る。
「しかしそれでは特別扱いと言われますよ」
マイクの言葉を否定したのはセメントスだ。
「じゃあ誰が彼奴に個性無しの戦闘をできんだ?」
「別ニ個性ハ使用シテモ良イノデハ?」
「しかし、個性有りで彼の試練になれる者はいるか?」
「ミッドナイトさんはどうです?」
「無理ね」
「即答ですか」
「彼の放課後鍛練を見ていた人なら知っているでしょ?彼、五分間の無呼吸運動できるのよ。彼の運動能力と五分間の無呼吸運動だと確実に鍛練、もとい試練にならないわ」
「では室内では?」
「それじゃあムリゲーよ」
少しの沈黙の後に全員が深刻な溜め息をつく。
今回の実技内容は初めてのことだったが他の学年クラスの子達は直ぐに決ったのに一騎だけはどうしても決らない。てか、決めづらいから最後にした。
「教師2人相手は・・・体罰と言われかねないし水無月君が怒るな」
「スナイプ先生が相手では?」
「ムリだ。前に彼に狙撃対策したいと言われ相手したら全弾捌かれた。・・・素手でだ」
「あー。確か流刃?だったかしら。手の甲で逸らす技」
「それで全弾捌かれた。正面からは無理だ。しかし・・・」
「流石にヴィラン役と言っても生徒を背後から撃つのわね、しかも不意打ちで」
「ですがそれも難しいと思いますよ。だってかなりの範囲の気配探知が出来ますよ彼」
「「「「「・・・・ハァ~」」」」
またしても溜め息が漏れる。
「この際、1から不死黒君の情報整理しない?」
ミッドナイトが軽く挙手してから言うとみんなは同時に頷き、相澤が一騎の資料を取り出す。
「不死黒一騎。家族構成は異母妹のユエが居ます。それ以外は省きます。
個性は無し。幼少期から壮絶な鍛練をして、素で増強系の個性に届くどころか凌駕するほどの身体能力持ち。
戦闘スタイルは素手による格闘術。使う流派は主に二虎流と天童式戦闘術なる情報の無い流派。因みに刀にナイフ、その他の武器も使いこなせる。拳銃等の飛び道具も使える。
使う流派の詳細です。まず二虎流ですが、これは技法が主に4つの系統に分けられ――」
そこから技や戦法の事を事細かに一時間近く話すと、最終的に全員は同じ事を思っい、それを代表にするかのようにミッドナイトが口にする。
「ねぇ、これ誰が本当に彼の相手出来るの?」
「・・・オールマイトさん、緑谷と爆豪の相手の後に相手出来ますか?」
「ど、うだろう」
「不死黒君の相手をオールマイトがするのは辞めた方が良いと思うのさ」
「何故でしょうか?校長」
「彼がオールマイトをどう思ってるのかが問題なのさ。僕達は不死黒君とオールマイトの関係を知っている。それで対戦をするのは酷だとおもんだ」
「しかしそれは甘やかしでは?」
「かも知れないね。しかしね、もし当たれば彼は間違い無くオールマイトを殺しに行くと思うんだ」
根津の言葉を聞いて全員、刀を持ち銃を乱射しながら逃げるオールマイトを追いかける一騎の姿を想像し、オールマイトも必死に逃げる自分を追いかける一騎を想像してしまった。
「ではどうします?正直オールマイトさん以外に不死黒を相手出来る人は教師に居ないと思いますが」
沈黙の中、突如13号が手を少し上げて質問を投げかける。
「・・・あの~、今更ですが生徒の相手って我々雄英教師で無ければダメなんでしょうか?」
「あ、そっか!」
皆が疑問を浮かべたときにミッドナイトが思い出したかの様に声を上げる。
~翌日の朝~
「ん~」
目を覚ましたユエは眠たそうに目を擦ってからスマホをとり画面を見ると05:00と表示されているのを確認すると溜め息をつきスマホを置いて頭まで布団を被り丸まり小さく呟く。
「お兄様元気にしてるかな?」
少しして頭を布団から出すとまたスマホを取って一騎から送られた執事服姿の一騎をうっとりとした表情で見つめる。
「格好いいな~。・・・ハァー、自分で言っといて此所まで寂しくなるとは。 早く帰ってこないかな」
ユエは絶対に無いと分っているが、目が覚めたときに一騎が側に居ないとまた居なくなり、会えなくなると思い寂しく悲しく胸が苦しくなる。
「おにい、さま・・・お兄様・・・お兄様お兄様お兄様」
沢山の一騎の写真を見て何度も呼びもう片方手を股の間に入れるその時。
「って!何してるの!今日は学校で会えるし帰ってくるんだから!」
勢いよく起き上がり顔を強く叩いて気合いを入れると布団から出てカーテンを開ける。
「いつまでもくよくよしない!お兄様が私の側からいきなり消えるなんて事はもう無いんだから!!よし!速く部屋に帰って着替えなきゃ! 朝の鍛練するぞぉー!!」
ユエの台詞がフラグにならないことを祈りたい。
次回「実技試験」
それでは、期待せずにお待ち下さい。
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