無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第53話:地獄のショッピングモール②

 

 

 

 ――ドガッシャーン!!

 

 家族や友達、恋人との楽しい会話で賑わうショッピングモールに似つかわしくない物同士が激しくぶつかり合う音が響く。

 発生源近くに居た市民は理解出来なかった。その時

 

 

「イッツア、パーリィータァイム♪」

 

 

 気味の悪いニヤけた仮面を着けた男、エリクが両腕を広げ高らかに告げる。

 少しして状況を理解出来た一般人達は我先にと逃げ初め、危険な状態が広がる。

 

「マジかよ」

 

 二階の渡り廊下まで殴り飛ばされた一騎はエリクの一言で逃げ惑う人々を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ、手すりを掴み廊下に乗り移ると二階を歩きながら重り全てを外し、エスカレーターで降り元いた位置に戻る。

 

「やってくれたな」

 

 人が居なくなったショッピングモールをみて一騎が呟くとエリクはお面を外し、上に放り投げる。

 

「舞台を作っただけさ」

 

 落下したお面は陶器で出来ていたために地面にぶつかるとガシャンと音を立てて壊れる。そしてその音が戦いの開始音だった。

 

「ッ!!」

 

 強烈な踏み込みで瞬時に接近して拳を繰り出す。しかしエリクに片手で簡単に逸らされる。

 それでも立て続けに鉄砕や鉄砕・蹴と連続で繰り出し、中には橾流ノ型や他流派を織り交ぜて使うもエリクには通用せず、簡単に逸らされ、避けられ、受け止められる。

 

「おーらよっと」

「ゲハッ!」

 

 掴まれた拳を引っ張られたと同時に横っ面に強烈な裏拳をたたき込まれ横に吹き飛び通路の中央にあるソファーにぶつかる。

 ソファーにぶつかった衝撃でも少しうめき声が出るも直ぐに近くにあったカートをエリク目掛け蹴り飛ばす。が、エリクは猛スピードで来るカート内に買い物の荷物を入れて手すりを一瞬だけ触って進路を変えると壁際に移動させる。しかもカートは壁にぶつかるすれすれで止まるように調整までしていた。

 

「来い一騎。飽きるまで遊んでやる」

「っ!!」

 

 

 ☆

 

 

「不死黒君!!」

「え!?不死黒くん!?」

 

 立ち上がり戦闘態勢を取ったタイミングでショッピングモール内にいたA組の皆がユエ達の元に来て一騎と対面しているエリクを見て驚愕の声を上げる。

 

「お、おい嘘だろ・・・・・あれ、エリクか・・・」

「け、警察に通報は!」

「してるよ!でも、でも!圏外なの!!」

「!?」

 

 上鳴の言葉に芦戸が悲痛混じりに告げる。

 現在ショッピングモール内は電波遮断され圏外となっていた。それがみんなには否応にもUSJでの事件が想起される。

 

「ねぇ逃げよ!」

「そうだ!俺達じゃ不死黒の邪魔になる!」

 

 葉隠がその場からの逃走を提案して瀬呂が賛成し、何人かがその場から逃げようとする。

 

 期末の実技試験の成果がよく出ていた。勝てないなら逃げて助けを求めるのも重要と。みんなエリクには何が有っても勝てないと本能で理解した。

 しかし、その行為を止めたのが他の誰でもないエリクだった。彼は一騎を蹴り飛ばすと手を叩き視線を集める。

 

「逃げることは許さない。もし逃げればその瞬間に殺す」

 

 いまの言葉は只の言葉だが、全員に逃げれば殺される確信させる程の効果を持ってた。

 ユエ以外が恐怖で動けなくなったのを見てエリクは小さく鼻で笑うと視線を一騎に戻しニヤリと笑う。

 

「続きをしようか」

「あぁ――っ!?きえ」

「こっち」

「!?いつのまっグゥッ!!?」

 

 構えたその瞬間、20メートル程離れた位置に居たエリクが一瞬で消えた。

 目線を逸らしていなければ瞬きもしていない。なのにエリクは一瞬で視界から消えて一騎の背後に立つと一騎が振り返った瞬間に腹に一撃をたたき込む。

 

「ウッウ"えぇ!」

 

 咄嗟に不壊で防御するも、途轍もない打撃に一騎は腹を押さえて膝を着き吐血する。

 内臓が潰れた様な破裂したような感覚に一騎は困惑するも途轍もない嘔吐感と激痛に襲われ思考が纏らず蹲る。

 

「お兄様!!」

「やっべぇ~手加減間違えた」

 

 明らかにやっちまった、と言う表情を浮かべ殴った手を振り自身の荷物の場所に行き荷物の中から水の入ったペットボトルを取り出す。

 

「なぁ一騎~。お前がそう蹲ってる間に・・・・・何人のクラスメイトが死んでると思う?」

「っ!」

 

 エリクが体に粘り着く様な気色の悪い気配を出すと一騎は咄嗟に顔を上げる。次の瞬間、ペットボトルが飛んで来たのを見てキャッチすると困惑の表情を浮かべる。

 困惑する一騎を面白がるように見て笑みを浮かべると気配を納めて話す。

 

「それで口ゆすぎな~」

「・・・何の真似だ?」

「言った事以外に意味があると思うか?」

「無いな」

 

 即答すると蓋を開け水を口に含み濯いで吐き捨てゆっくりと立ち上がる。

 

「内臓は潰れて無いがそれなりに損傷してるな。あと何気に肋骨が2本折れてるのか」

「それが個性・・・・ではないな」

「只の技術の先さ」

「は?」

 

 明らかに体内を透けて見えている言い方。どう考えても個性による能力のはずなのにエリクはケロッと否定して答えた。

 その答えは流石の一騎でも面くらい鳩が豆鉄砲を喰らったような表情するのを見てエリクは優しい笑みを浮かべると話を続ける。

 

「武を極める途中で身に付く技術でな、相手の体内のウィークポイント(弱点)が明確に透けて見えるんだよ。何処がどれだけ怪我してるか、本人が気づいてすらいない弱点がな。病気も分るぜ、癌とか」

 

「俺も出来るか?」

「どうだろうな。お前、武の極地にいないし」

「・・・」

「いろんな奴に武の極地にいるとか言われてるがお前自身気づいてんだろ?自分が武の極地にいないこと。なんなら武の極地が見えてすらいないことに」

「・・・っ」

 

 確かにエリクが言うように一騎はいろんな人に武の極地にいると言われるが、一騎自身自分が武の極地に居ないと思っていた。

 思っていたが実際に武の極地にいる人間にこう言われると来るものがあった。

 

「はは。これから身に付ける!」

 

 しかしそれと同時に嬉しさもあり子供が新しい玩具を前にしたような明るい笑みを浮かべた。

 だってまだまだ成長が、身に付ける技術が、進める道が、沢山ある証明なのだから。

 

「ならよし! それじゃあまずは・・・」

 

 笑みを浮かべた表情のままギロリと目だけを動かしユエ・・・では無くその後ろに居る八百万達を捕らえるとぐるんと体の向きを変え八百万達に向かい走り出す。

 いきなりで驚くも体は即座に動きエリクを追いかけるも距離が縮まらず更に脚に力を込めて走り出した。

 

「雷心流・雷閃」

「・・・なッ!?」

 

 走り出した瞬間、エリクが急停止し身を翻すと地面が抉れる程の脚力で走り出し、雷速といっても過言ではない速度で一騎に近づくと拳を突き出し胸部を狙う。

 

 力を込めて走り出した瞬間に眼前にエリクが現れ殴られる――その直前に両腕の前腕筋を固める金剛ノ型・棍棒を使い山勘で腕をクロスにして胸部を守ったお陰でできる限りダメージを抑えた。

 

 が、走り出した勢いとエリクの接近の勢いでガードしてもその威力は高く両足は地面から離れ後方に吹き飛ばされる。

 地面と水平に後方に吹き飛び数回バウンドしてから転がり止ると驚いた顔で両腕を見る。

 

「う、うで・・・腕はちゃんと有る。ビックリした、腕が吹き飛んだかと思った・・・・!!」

 

 あまりもの衝撃に腕が千切れ吹き飛んだと思った一騎はちゃんとあることに安堵する。

 そんな姿を見ながらエリクは少し考え期待と不安の色を瞳に一瞬だけ浮かべると声をはる。

 

「一騎!お前クラスメイトを守るように動いたが、自分を賭けるほどクラスメイトは大事か?」

「当たり前だろ!」

 

 同じく声を張り答える一騎にエリクは1度息を吐いてからニヤリと口角を上げ笑みを作る。

 

「けどお前のクラスメイトはお前を大事に思って無いぞ」

「・・・っ。なんの、ことだ」

 

「USJでのことだ」

「俺が・・・・脳無を殺した事か」

「違う。そんなクソ下らない(あんな木偶人形の)ことじゃない。その後だ」

 

 一騎は自分が脳無を殺した事は知ってる。しかしその時には脳無に殴り飛ばされた影響で意識は無かった為に「その後?」と困惑の表情と共に若干首を傾げる。

 そんな姿を見てエリクは「言って無いのか」とひとりごちり演説するかのようにしゃべり出す・

 

「お前はさぁ、自分が脳無を殺した後直ぐにユエちゃんが来て自分を治してくれたと思ったのか?」

「まさか・・・」

「そ!クラスメイトの誰かでは無く、俺が最大限応急処置した」

「・・・・・・ありがとう?」

「まぁこれもどうでも良い」

 

 疑問文を浮かべながら礼を言う一騎にエリクは一言言ってから厳しい目付きで指を差す。

 

「いま思ったろ?何でクラスの皆じゃなくてエリクなんだって」

「っ」

 

 図星だった。一瞬、ほんの一瞬思ってしまった「なんでクラスの皆は助けてくれなかった?」と。しかしそれは仕方のないこと。

 

 そして一騎が一瞬浮かべた寂しげな表情をエリクは見逃さなかった。

 

「なぁ一騎。お前のクラスメイトは守る為に身を挺して命を懸けてまで戦い、瀕死になったお前を見捨てて見殺しにしようとした。

 本当に此奴らはお前に取って守るだけの価値が、意味が、理由があるのか」

 

 低く優しさを感じない声色での問いに一騎は視線や肩を下げて遂には俯いてしまう。

 

「・・・ま、しかたないぃっ!!?」

 

 少し一騎から目を逸らしまた視線を戻した時にエリクの視界に映っていたのは一騎の跳び蹴りだった。

 

「あっぶな」

 

 驚くも軽い口調で少し体を動かして避けると着地と同時に振り返り蹴りを放つ一騎と目が合う。

 

偽・半月蹴り(ルナハントⅡ)

「ヒュ~・・・(型はミルコの技だが、それに上手いこと鉄砕・蹴を混ぜてるな。。実に良い!)」

 

 半歩後ろに身を引いて服すれすれで蹴りを避けながら一騎の蹴りを分析して自分以外の誰かの武を我が物にする成長をみて喜ぶ。

 続いて軸足を変えての突き蹴りをバックステップで距離を開けると大きく数回バク転して更に距離を取る。

 

「なぁエリク。 お前誤解してんぞ」

「誤解?」

 

 立ち上がりながら言われた言葉を口にして首を傾げると同時に覚えのある感覚に襲われ、頬がつり上がりそうになる。

 

 そして一騎は立ち上がると右手をエリクに伸ばし右手を握り絞める。

 

 

「友達を守るのに、助けるのに、理由なんて要るのかい」

 

 

 何の躊躇も戸惑いも無く、真っ直ぐな眼で言い切る一騎。その姿を見てエリクは・・・。

 

 

 

『なんでって、友達なんだよ?助ける理由はそれだけで充分だしそれ以外の理由なんて要らないんだよ。お兄ちゃん』

 

 

 

 在りし日の過去、高一の強香との遣り取りを思い出す。そして

 

 

 

 

「・・・はは、はははは、あっはははは!!あっーはははははははははははははははははははは!!!!!!!」

 

 

 

 

 右手で顔を押さえ天を仰ぎ大きく笑う。何処までも、何処までも幸せそうに雄叫びを上げる。

 

「そうだろうよ!お前はそう言うだろうよぉ!!・・・強香と同じだ。同じ眼だ

 

 最後の言葉は先ほどまでとは違う嬉しさを含んでいた。

 しかし直ぐに表情は変わり寂しげな色を薄らと浮かべる。

 

(けどダメだ。いまのお前があの子と同じ事を思うのは・・・いまのお前じゃダメなんだ)

 

 

 

 

 

 

「ユエ!」

 

 背後にいるユエに眼を向け声をかけると即座に返答が帰ってくる。

 

「分っていますお兄様。後のことは私にお任せください。死んでいなければ例え半身が消し飛んで様と私が絶対に治してみせます。

 ですので、思う存分、心ゆくまで戦いください」

 

 最後まで言われなくてもユエは全てを理解した。いまの一騎は後先考えず全力でエリクに挑みたいと。

 だからユエは全力でサポートをすることを決めて告げると、一騎は途轍もなく嬉しそうな笑みを浮かべお礼を言うとエリクに不敵な笑みを向ける。

 

「行くぞ、エリク!!」

 

 

(可笑しい・・・)

 

 再び再開された戦闘を見ながらユエは違和感を感じていた。

 

(お兄様達が戦ってから既に6分は経っているのになんで警察どころかヒーローも来ないの?)

 

 感じた違和感がヒーローが来ないことだった。

 大型ショッピングモールとかの人通りの多い場所だと何かあった時の為に周辺を巡回するヒーローは多い、というかこのショッピングモールにも何人か居たのに来ない。

 

 だからユエは考えると同時に液体操作を使い周辺を調べ理解した。

 

(5人ほど倒れてる!?この体格はヒーロー?死んではいない。後は工事中の新規エリアに1人居る、けど・・・・・朧気すぎるて男女すらも判別できない。しかたないから次!)

 

 建物内の状況は大体把握し、次にショッピングモールの敷地外に意識を向けて分ったのが多くの人が敷地に入ろうとするも何かに阻まれている様子だけだった。

 結果、周囲の探知を辞めた。

 

「・・・不死黒君」

 

 攻撃が一切当たらず強烈な一撃を食らいボコられる一騎を見て緑谷は拳を握りしめてフルカウルを使ったときの綠の稲妻が腕に走る。

 横目でその姿を見たユエは小さく告げる。

 

「一応言いますがあそこに割って入るなんて絶対にしないでくださいね」

 

 放たれた言葉に緑谷だけでは無く八百万以外が驚く。一騎を1番に思ってるユエなら真っ先に止めに行くと思っていたから無理はない。

 

「なんで!」

「個性無しだとお兄様どころか私にも負けるのに何言ってるんですか。あそこに入るなら最低でも私レベルの体術が必要です」

 

 冷たく言われた言葉に緑谷も周りの皆も口を閉ざす姿を見て「それに」と言葉を続ける。

 

「あんなに楽しんでいるんですから邪魔しないで上げてください」

「は?」

 

 楽しんでる?あんなに殴られて怪我してるのに? 全員がユエの言葉を理解出来ないながらも一騎の顔を見ると確かに一騎は笑みを浮かべていた。

 子供が友達と遊ぶような、新しい物を見て興奮するようなそんな純粋な笑顔。

 

「なん、で」

「雄英で全力のお兄様と真っ正面から武の戦闘をできる人は両手有れば数えきれ、個性無しなら片手で充分です。・・・当然教師含めてです。

 そんな環境では当然お兄様は全力を出さない。いえ、出せません。だって出せば余裕で相手を殺してしまえるから。だから必ず手加減します、雄英体育祭の時も」

 

 ユエの言うとおり一騎は体育祭の個人戦では殺さない、大怪我させない範囲で手加減して轟と爆豪を殴りまくったり蹴り飛ばしたりしたが骨折はさせないように気遣いが出来る程には余裕があった。

 

 一騎が全力(本気)戦う(やる)とUSJで脳無に使った橾流ノ型・絡みを使ったり間接技が主体の水天ノ型で関節破壊も入る。

 当然こんな物を使えばアウト、だから一騎はいくつもの技を身に付けていても使わない。しかし――。

 

「ほぉらどぉしたぁ?しっかり意識して俺を見ないとまた見失うぞ・・・・・・ほらぁ!」」

「クッ!またか、よ!!」

「甘いなぁ~付け焼き刃かぁ?」

「グァッ!!?」

 

 この男、エリクには使っても一切が通じない。 

 今の所、一騎と真正面から武で戦い続けれるのはユエと翠鈴、そしてエリクの三名のみ。しかもエリクに関しては個性を使わずに戦える。

 

 

 エリクには技術、パワー、スピード、戦闘知識、全てに置いて敵わない。どれだけやっても真正面から叩き潰される。

 どれだけやっても勝てる兆しが見えない。追いつけない辿り着けない遙か高みにエリクはいる。だがそれで良い・・・それがいい。だって――。

 

 

 

「全力でやっても勝てない相手が居るなんて、控えめに言って最高ですよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ、何なんだよその技術。膝抜きの要領で只速く動いてるわけではないだろ」

「これは孤影流の技で名を『(またたき)』と言う」

 

 質問にエリクが答え語るその技術は相手の瞬きの瞬間に死角に回りこむことによって消えたように見せている技だった。

 しかしそれだけでは無く。エリクは瞬きの間に一瞬で距離を詰めて背後を取っているのだ。

 

「いやまて!俺は瞬きしてない」

 

 一騎の疑問は最もだった。だって彼は瞬きしてないのにエリクは瞬の技を使えている。

 

「それはな、人はどれだけ意識していても必ず意識が途切れて無意識になる瞬間が存在するからそこを突いてるだけだ。技の名は『刻撃』と言う」

 

「・・・は、はは」

 

 あの一騎が乾いた笑い声しか出なかった。

 『刻撃』それはなんだ?説明を聞く限りエリクは無意識になる瞬間を感じてることになる。そんな物は技術では無く天賦の才の類いだ。

 

「いっとくがこれは経験から目覚める才だぞ」

 

「・・・・・ほんと・・・・・・本当に」

 

 

 

 

 

 

 

 ――お前から学ぶことしかねぇよ。

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ~一騎ここからどう・・・「瞬はこれでいいかぁ?」・・・は?」

「二虎流✖天童式戦闘術」

 

 技の説明はした。だからほんの興味本位でエリクは瞬きをしたら一騎は5メートルの距離を詰め眼下にいた。

 

「金剛ノ型1の型15番!」

 

 血管が浮き上がる程に腕の筋肉が隆起し力強く拳を握り、『瞬』を使ったことに驚くエリクの顔目掛けて拳が跳ね上がる。

 

鉄砕(てっさい)鯉鮒(りゅう)!!!」

 

 殆どの人間なら反応できずに顎を下から打ち抜かれ吹き飛ぶがエリクは違う。

 驚きはするもしっかりと右手で拳を受け止めた。

 

「クッ!? ウラッシャァァァアアアアアアアアア!!!!」

 

 しかしそれでも一騎は無理矢理に拳を振り抜きエリクをカチ上げた!

 

 だが!エリクは空中で思いっきり仰け反りバク転のようにして着地すると軽やかにバックステップで距離を取る。

 

(即座に見て俺の死角範囲を見抜いたか。やっぱり良い眼をしているなぁ)

 

 一騎の眼は天性の物・・・・・ではなく、後天的な物。

 幼少の頃から大の大人からの虐待に個性を使った虐め。そのクソみたいな環境から生き延びるために一騎は相手の動きを見た、当たり所が悪ければ最悪死亡に繋がる為に生きるために見た。

 その果てに身に付けた眼はオールマイト対策の兵器である脳無の動きすら捕らえるほどの物。それどころか全盛期は分らないが今のオールマイトであれば彼の高速移動も視認できている。

 

 それほどまでに一騎の眼は凄い。

 

(しかしステイン戦以降からやはり右眼が見えて無いな)

 

 右の失明に確信を得ると地面に罅を入れる程の力強い震脚で距離を一瞬で詰める。

 

「雷心流・陽炎」

 

 次の瞬間、一騎に打撃の雨が降り注ぐ。

 四白・神庭・迎香・下関・承漿へと部位に応じて横拳、掌底、突き、縦拳など打つ型を変えることにより、深くダメージを浸透させる。

 

 この拳撃の嵐は雄英体育祭決勝戦で一騎が爆豪にした截拳道(ジークンドー)の直突きを基点とした高速のコンビネーションを遥かに超える速度と威力を誇っていた。

 しかも最後には一騎の胸部に強烈な発勁を打ち込こまれた。

 

「ブッウ"!グッウウウ!!」

 

 咄嗟に後方に大きく飛がそれでも威力は絶大で通路の中央に植えられている木をなぎ倒してなお、反対側の壁に叩きつけられる程だった。

 

「がッハ!!?」

 

 背中を強打し肺から空気が押し出され視界がチカチカする。

 更にエリクは掌底の構えを取り強い踏み込みで迫り追撃を仕掛ける。

 

「なら!!それ、を・・・っ!」

「羅刹掌」

 

 骨数本は絶対に砕けるが受け止めてからのカウンター!と覚悟した直後、一騎の生存本能が大音量で逃げろと警鈴をならし、一騎は横に思いっきり飛び退き回避を選ぶ。

 そしてエリクの掌底が一騎が退いたことで背後の壁に炸裂する。

 

 ――ドゴンぉん!!!

 

 次の瞬間、壁は捻れる様にゆがみ爆発する。

 轟音を立てながら壁が崩れ連鎖して二階と左右五メートルが瓦礫と化すのを見て流石の一騎も顔を青ざめる。

 

「・・・・いやいやいやいや、流石にそれは無い。・・・・・・・受けてたら俺死んでるじゃん。いや俺が避けたから本気でしたのか?」

 

 戦いでは頭を回し思考停止は絶対にしないようにしているが、こればかりは流石の一騎も思考停止して瓦礫になった場所を凝視してしまう。

 当然一騎がこれだからユエ達も驚愕していた。中には開いた口が塞がらない者まで居るぐらいだ。

 

 

 ☆

 

 

「よ!ハンター」

 

 一騎が避けたのをみて腕が潰れるほどの力で羅刹掌を打ってから即座にその場を離れた位置、開発中の新エリアに来ると先に居たハンターに手を上げて声をかける。

 

「もう終わったのか?」

「いや、まだだよ。所でアレ有った」

「あったよ」

 

 質問にハンターは親指を立て後ろを指して答えエリクがそちらに向ける。

 

「おぉーよく有ったな」

「ホントにな。てか何だよこのメール」

 

 向けられたスマホには『帰る前に開発中エリアの方に来といて、あと      を探しといて』との内容だった。これは一騎と一緒に居たときに送ったメールだった。

 軽く笑いながら目的の物の上に乗るとハンターに顔を向けて一騎の居る方向を指さす。

 

「それじゃぁ投げてくれ!アッチ方面で41メートル前方だ!」

「おう!それじゃ行ってこい。ちゃんと結界は張ってるからなぁ!!」

 

 軽々と持ち上げるとハンターは思いっきりエリクごとそれを投げ飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

「っ!エリクは!?」

 

 煙が晴れてからエリクが居ないことに気づいた一騎は直ぐに立ち上がり周りを警戒しながら通路の真ん中に移動する。

 

「いない?何処行った。・・・帰ったとは思えない。・・・相変わらず気配は感知できないけど分る!なんかヤバいということは!!」

 

 一騎には確信がある、エリクが黙って帰ることは無いと。そしてそれは正解だ!

 周囲を警戒していた一騎の周囲に影ができる。段々と影が大きくなり流石に違和感を持ち顔を上げるとそこには

 

「はぁ~?」

 

 エリクがある物と同時に降って来た。それは

 

 

 

 

「ロードローラーだぁあッ!!!!」

 

 

 

 

「な!?なにぃぃー!!!」

「ウリイイイヤアアアッーぶっつぶれよォォッ!!!」

 

 何故か期待混じりのワクワクした表情の笑みを浮かべるエリクとは正反対に鬼気迫る表情で全力でその場から飛び退く一騎。

 

 

 ――ドンッ!!

 

 まるで隕石が落ちたかと思うほどの轟音と振動、もう無茶苦茶だ。

 さっきから驚愕しっぱなしの一騎は座り込んだまま煙の中から現れるエリクをみる。

 

「おい!なんで逃げんだよ!!」

「逃げなきゃ死んでたろ!!」

「そこは下から打ち返して反撃して!虚しく終わってから俺が勝ちを宣言した所で後ろから攻撃して俺にトドメを刺すパターンだったろ!!」

 

「知らねぇよ!何のパターンだよ!!」

「アニメだよ!!」

「尚更知らねぇよ!!」

 

 何故か逆ギレ気味にいうエリクに一騎も若干切れ気味に言い返す。

 

「まぁお遊びはこの辺にするか」

「・・・はぁ? っ!?」

 

 今までの戦闘をお遊びと言われたことで一騎は思わず間の抜けた声を出すが次の瞬間、ロードローラーから降りたエリクから途轍もない威圧が放たれ思わず息が詰まってしまう。

 

「一騎・・・・・死ぬなよ」

 

 最後の一言と同時にエリクの姿が掻き消えた事に一騎は驚くことができなかった。何故なら――。

 

 

 

「がッァアア!!?」

 

 

 視界から消えたと同時に蹴撃をたたき込まれたからだ。

 自身の体がくの字に折れ曲がり、臓物が圧迫され、メキリ、と自身の骨格が軋む音を一騎は聞いた。

 

「ゴップッ!」

「・・・・・おーらよっと!」

 

 蹴られた衝撃で血を吹き出し身体が後方へと吹き飛ぶ。そして地面に衝突しようとした瞬間! なんとエリクが吹き飛ぶ進路上に先回りし、軽い掛声と共に一騎を上空に蹴り上げた。

 

 10メートル程まで上がった一騎を見るとエリクは脚に力を込め跳び上がり一騎の上空を取ると横に蹴り飛ばし

 

 ――ダンッ!

 

 なんと虚空を足場として蹴り、またしても一騎の先に行き地面に向かって殴り落とした。

 

 真下にではなく斜め下方向に飛ばされたお陰で垂れ幕や観葉植物がクッション代わりになって地面に叩き付けられることはなくほぼ無傷だった。ただし、その結果をエリクが狙ってやった事に目を瞑ればだが。

 

「がッハ! ゲホッゲホッ!! なに、当たり、ま、えのように・・・・空中飛んでんだよ」

「飛んでるんじゃ無くて跳んでんだよ」

「あぁ"?」

 

「空中にわな、温度や密度の違いで必ず面が点在する。それをただ捕らえているだけ。 こんな風に、な!」

「! それはもはやファンタジーだろ!! っ!」

「おっ!」

 

 瞬く間に距離を詰めたエリクは踏み込んだ地面がひび割れる程の震脚と共に突き蹴りを放つ。

 ギリギリ一騎は腕をクロスして防御を取れるが、エリクの蹴りは一騎に触れる直前で止る、と言うよりかは届かなかった。なのに

 

「グッウウウ!」

 

 一騎の腕に途轍もない衝撃が襲い威力に耐えきれず後ろに後退る。

 

「なんだ?当たってないのに蹴られた?」

「面を捕らえて押し出しただけ。いや、真マッハ突きかな?」

 

 足を突き出した格好のままエリクは何でもない事の様にごちり、そっと足を地面に落とし、地面の破片を踏み砕く。

 そしてまたしても追撃を仕掛ける。

 

 

 

「その程度じゃないだろ?期末試験でミルコに勝ったんだろ?」

「何で知っている!」

「なんでって、お前らの中に内通者が居るからだ」

「・・・は?」

 

 一騎がミルコに勝ったことを知っているのは今の所A組と教師陣だけなのにエリクはそれを知り、理由を内通者が居るからと言った。

 その一言で一騎は致命的な隙を晒し、肝臓にボディーブローをたたき込まれてしまった。

 

「がっ! ぁ」

 

「不死黒君!」

 

 エリクと戦いボコボコにされている一騎を見て緑谷は歯がみする。例えエリクに殺す意思がなくとも目の前でクラスメイトが一方的にやられているのを見て我慢ができなかった。

 

「・・・っ!」

 

 激痛と共に途轍もない不快感に一騎が膝を着き殴られた箇所を抑えながら前のめりになったのを見て緑谷は動いた。

 

「ダメです!緑谷さん!」

「ん?」

「不死黒君から!離れろォ!! SMASH!!」

 

 エリクの横っ面目掛け拳を繰り出す!

 

「はぁ~」

「がッ!あぁ・・・あぁぁ」

 

 ただし、緑谷程度の速度では余りにも遅すぎてエリクは溜め息を吐くと首を傾けるだけで躱すとがら空きの腹に拳をたたき込む。

 防御を碌にしていなかった腹への攻撃は緑谷の内臓に甚大なダメージを与えた。

 

「この領域はお前程度では分不相応なんだよ。・・・・・・バイバイ」

「っ!?」

 

 手刀の構えを取り手を上げたエリクは最後にいままで緑谷に向けたことの無い優しい表情と声を向けた。

 しかし、緑谷はそれに驚いたのでは無く、エリクの目が自分を見ているのに自分を見ておらず自分じゃ無い何か・・・・・・・いや、自分の中に有るワンフォーオールに向かって言ったのを悟り驚愕と共に胸の中にざわつく何かを感じ動けなかった。

 

 

――ザシュ!

 

「・・・・あ」

 

 エリクの手刀は肉を切り裂き骨を断ち、正に刀だった。辺りに血をまき散らし血桜を咲かせる。ただし、それは緑谷では無く――。

 

「不死黒君!?」

 

 一騎だった。

 彼は緑谷を助けるために突き飛ばしその代償に右腕を二の腕中心から先を失った。

 

「イッ!てぇぇぇええええええ!!!!!!」

 

 耳を塞ぎたくなるほどの痛ましい絶叫。

 腕を握り蹲り叫ぶ、そして少しすると跳ね上がるように起き上がりエリクに拳を振るう。

 

「なるほど、ゲートコントロール理論か」

 

ゲートコントロール理論。簡単にいうと痛みを伝える神経は複雑で細いからその他の太い(伝わりやすい)神経である”圧覚”と”触覚”と”温感”など痛みよりも”優先される刺激を与える”ことで痛みの信号が脳まで届かず痛みが和らがせること。

 別名「痛いの痛いの飛んでゆけ」である。

 

 そのお陰で一騎は反撃に出るが、その姿を見てユエが叫ぶ。

 

「ダメです!!例えお兄様でも満身創痍で片腕を失った状態では危険です!!」

 

 既に一騎の体は打撲、内出血、骨折が酷く普通なら立つことすらままならない程。しかも片腕を失ったことで重心がズレてバランス感覚が乱れてた所為で本来のパフォーマンスの1/10も発起できていない。

 威力の無い拳などエリクには何の危険性も無く、一騎の攻撃を避けず全てを真っ正面から受ける。

 

「一騎、もういい」

 

 裏拳を顔面に食らうも目すら瞑らずに一騎に告げると胸に手を添え、発勁を打ち込む。

 

「がッァ!!?」

「お兄様!」

 

 吹き飛んできた一騎を受け止めるとユエは心配な表情を浮かべ問いかけるも、一騎は答えずに口から血を大量に吐き出しながらもゆっくりと立ち上がろうとする。

 

「まっだ、やれる・・・・ぞ! グフッ!」

「いいや、もう終わりだ。俺は帰る」

 

 そう告げると背を向けカートに乗せた自分の荷物を取ると次に切り落とした一騎の腕をてに取る。

 

「これは貰ってくね」

「かっえせ、泥棒」

「ヴィランだから。 じゃぁね」

 

 一騎の腕でバイバイと手を振るも動きを止め一騎に向き直る。

 

「一騎一つだけ。順番はちゃんとしろよ」

「あ?」

「お前はユエちゃんが大事だ。なら、いざと言うときはそれ以外を切り捨てろ。例え其奴らが全員死ぬことになったとしてもだ。

 守るべきモノの順番は絶対に間違えるなよ。じゃなきゃ一生後悔する事になるぞ」

 

 

 

 言いたい事だけをいうとエリクは今度こそその場から一瞬で居なくなる。

 居なくなったのを見届けた一騎はふと体から力が抜け、最後に「意味分んねぇし、また負けた」と心の中で呟き意識を失う。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「以上が俺とエリクが話していた事です」

 

 あれから2時間後、ユエの懸命な治癒のお陰で一騎の右腕は元通りに治り後遺症無く治ると駆け付けた塚内に事情聴取を受ける。

 

「内通者・・・・」

 

 ただ、事情聴取受ける前に雄英生が襲われたと言う事で教師である相澤と根津も来ていた。そして内通者が居ると聞き、2人は深刻な表情を浮かべる。

 

「エリクの虚偽ってことは?」

「ないです」

「なんでそう言い切れるんだい?」

「彼奴がそんな下らない嘘を言う理由が無いからです。それに、彼奴のそのときの目は本気でした」

 

 塚内の質問に一騎が即答するとその部屋には暗い雰囲気が漂う。

 

「ま!不死黒君が無事でなによりなのさ!」

「俺が無事なのはユエのお陰です」

 

 根津の言葉に自信の右手を見つめながら答える一騎。少ししてから思い出したかの様に一騎は顔を上げて口を開く。

 

「あのそろそろ帰っても?」

「あ、あぁこんな遅い時間まですまなかったね」

「いえ、それでは」

 

 頭をさげてから一騎は退室し外に居るユエの元に向かう。

 

 そして部屋に残った根津、相澤、塚内の表情には深刻さを深めていた。得た情報は雄英に内通者の存在とエリクやハンターと同じ危険性が有ると思わしき人物、エリザベート・バートリーの存在。

 

 

 

 

 

「・・・」

 

 一騎が事情聴取を受けていた建物の外、ユエ達が居る場所はいま途轍もなく気まずい雰囲気が漂っていた。

 理由はオールマイトが居るからとか、言い方は悪いが緑谷が邪魔をしたとか、USJで倒れた一騎を誰も助けに行かなかったこと知り、ユエが明らかに不機嫌だったからだ。

 

「お待たせってどうした?ユエ」

「何でも無いですよ!それより速く帰りましょ!トウシさんが迎えに来てくれました」

「そっか。・・・怪我治してくれてありがとな」

 

 近づいてきたユエを優しく撫でてお礼を言うと、次に何故かまだ残っているクラスメイトの方に目を向ける。

 

「皆はどうした?」

「・・・不死黒さん私達はそ、そのえっと」

 

 誰も口を開けなかったなか八百万が喋るが、段々声が小さくなり最後に黙り込んでしまう姿をみて一騎は何を言いたいのか理解する。

 

「もしかしてUSJのこと?」

「!」

「図星か。皆もそうみたいだが、気にすること無いよ」

 

 今更だが、USJで一騎が死にそうになっていたのに助けに動かなかったことをA組の誰も話していなかった。別に黙っておけば良いと言う考えで言わなかったのでは無い。いうタイミングが分らなかったのだ。

 だがそれを最悪なタイミングで知られた。なのに一騎は気にするなと言うが無理な話だ。

 

「ンでだよ!」

「だってどうでも良いことじゃん」

「は?」

 

 少し歩きクルリと振り返り一騎を両手を広げ、笑顔を見せる。ただし顔の上半分は影で見えないが。

 

「誰も死んでない!ならそれで良いじゃん!気にすること無いよ」

 

 その言葉でオールマイトを初め何人かが気づいた。一騎は本当に気にしてないことを。

 

 相澤ですら気づくことが出来なかったこと。一騎は自身の命を軽んじているのでは無く、自身の命に何の価値も持てていないのだ。

 幼少から生きてることを否定されて生きてきた一騎は自分の命に価値観を持てずにいた。だからいくらでも命を懸けられるし危険も犯せる。そして見捨てられてもそんな事扱いできる。

 

 不死黒一騎は狂っているのだ。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

『じゃあ怪我は無いんだな』

「はい。ユエのお陰で無傷です」

『無傷ってか無傷にして貰ったんだろ』

「あはは」

 

 皆と別れ、トウシが運転する車の中で一騎は事件を聞いて心配して電話をかけてきたミルコと会話をしていた。

 

『それじゃあ余り危険なことするなよ』

「善処します?」

『なんで疑問形なんだよ。じゃぁな』

 

 電話を終え、スマホをしまうと一騎は自分にもたれ掛かり寝ているユエを優しく撫でて運転しているトウシに目を向ける。

 

「トウシさん、態々迎えに来て貰ってありがとう御座います」

「気にしなくて良いよ。・・・俺もだけど母さんも明も電話を貰ってから凄く心配したよ」

「ご迷惑お掛けしました」

「そうだな。かけるならもっと別の迷惑が良いな。頼み事とかな」

「これ以上トウシさん達に迷惑はかけれませんよ」

「子供なんだからもっと大人を頼りなよ」

「あはは」

「・・・家までまだ1時間ぐらいあるから寝な。眠たいだろ?」

「それじゃぁお言葉に甘えて」

 

 そう言うとユエの手を握り背もたれに体重を掛けて眠る。

 

「もっと迷惑も頼み事もかけなよ。俺は君達の父親だと思ってるんだよ」

 

 バックミラーで仲良く寝る2人を見てトウシは「恋人みたいだ」と思い小さく笑い、信号で止ったときに急いで2人の寝ている姿を写真に収める。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「んっ~!ん~・・・よく寝た」

「おはよエリザベート」

 

 館に帰ってきたエリクは棺で眠るエリザベートを声をかけ起こしていた。

 

「えぇおはよ。っと言ってももう夜みたいね」

「あぁ。ご馳走も用意してるから早めに来いよ」

「分ったわ」

「それとコレ。お土産」

 

 差し出された腕を見てエリザベートは首を傾げるもそれを受け取り二の腕の断面に口を付けると目を見開く。

 

「これは坊や(一騎)の腕ね」

「正解。よく分かったな」

「あの子の血は極上なのよ。例えるなら数百年物のロマネ・コンティと同等かそれ以上に素晴らしいのよ」

 

 顔を赤くしながら血を啜り、次第に腕は血の気が失せ干からびミイラの様になるとエリザベートはゆっくりと口を離す。

 銀の橋ができ途切れると舌なめずりをして余韻に浸る。

 

「美味しかった」

 

 ありがとね、とお礼を告げてから立ち上がると自身の血でドレスを作り身に纏う。

 

「それじゃ行くか」

「えぇ」

 

 

 






 一騎は緑谷と違う形で狂ってるね!!因みにエリザベートは一ヶ月ほど寝ていただ。


次回「I・アイランド①」

無論!映画編もやってくぜ!!


それでは、期待せずにお待ち下さい。
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