無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第55話:I・アイランド②

 

 

 

「えぇ!?それじゃぁこのアミちゃんは不死黒君がプログラミングしたの!?」

「はい。色々と調べて頑張りました」

「凄いわね!普通出来る事じゃないわ!」

 

 

 戻って来た一騎はメリッサと話していた。

 

「・・・ムー」

 

 紅茶を飲みながら横目で一騎の楽しそうに話す姿・・・いや、自分に向けてくれたことの無い笑顔を見て才子は頬を膨らませていた。

 そしてそんな才子を見たユエが隣に座り声をかける。

 

「どうしたの?さーえちゃん」

「・・・一騎くんのあの笑顔、ユエさんにしか向けないと思ってたわ・・・。私には一度も向けてくれたことない」

 

 一騎と一緒にいる時間が長いのはユエを除いたら自分だと才子は自信を持って言える。 関わり合いを持つようになってからは一緒に鍛練したりご飯を食べたり、出掛けたり、何だったら一日中一緒にいたときだって多々あった。

 一緒にいると一騎はよく笑っていた。でも、その中でユエに向けている笑顔だけは絶対に引き出すことはできなかった、なのにあって1日も経っていない()がその笑顔を引き出した。それが才子には堪らなく面白く無い。

 

「でも仕方無いですよ?メリッサさんは私達では絶対になれないお兄様と同じ立場にいるんですから」

 

 一騎と同じ立場、それは――無個性。

 無個性と生きる人生の大変さを話し合えるのは同じ無個性の人。特にこの世界では無個性と会えるのは稀なこと、ならば会えれば一騎も笑みがこぼれてしまうもの。 

 

 だから仕方無いと才子も思ってる。思ってはいるがそれでも考えてしまう。

 

(もし私も無個性なら)

 

 あの笑顔を自分に向けてくれるのではないか?心の底から、素の笑顔を向けてくれるのではないかと。

 そこまで思い紅茶を一口のみ溜め息をつく。

 

(これじゃぁ只の重たい面倒くさい女じゃない)

 

 自分の持つ嫉妬に醜いと思いもう一度紅茶を飲みカップをソーサーに置くと一言「不味い」と呟く。

 

「どうしました?才先輩」

 

 何時の間にか近くで空いたカップに新しい紅茶を丁寧に入れ差し出してくれた一騎に少し驚くも直ぐに笑みを見せる。

 

「なにもなくってよ」

 

 答えてから新たな紅茶を飲むと今度は美味しく感じた。

 そして才子の率いるチームの子達は一騎の紅茶を注ぐ姿を見て「綺麗」「丁寧」と称賛していた。しかも自分が見られていることを感じた一騎の振り向きざまの笑顔にドキッとする子がいた。

 

「不死黒ぉー!」

「お前本当に!本当にィィイイ!!」

 

 席に戻ってきた一騎に上鳴と峰田が詰め寄るが、一騎はなんで自分が詰め寄られているのか分らず頭に?を浮かべながら2人にアイアンクローをかます。

 

「君達!仕事はちゃんとしないか!」

「飯田ぁぁああ!!こればかりはぁばばばばばばば!!!」

「オイラ達の前でイチャコラしやがってイッテテテテテテテ!!」

 

「いちゃこらって。俺にそんなのする相手ができるわけないだろ?」

 

 手を離しながらクソボケをかます一騎を見て才子とユエは白い目を向ける。

 

「・・・・ユエちゃん。確かに一騎くんの過去を知ってるために仕方無いとは思うわ。でも、流石にアレは蹴っても許されるわよね?」

「あはは・・・・。流石に今のは私も庇えませんね」(汗

 

 

 ☆

 

 

「休憩もできたことですし。みなさん、そろそろ行きましてよ」

 

 少ししてから才子の呼びかけにチームの子達は返事をして立ち上がり、会計をしようとするがそこに一騎が待ったを掛ける。

 

「才先輩ここは俺が払いますよ。当然ユエ達の分も」

「良いの?」

 

 ユエ達の分は纏めても二千円ちょいだが、才子達の方は千円ちょいの紅茶セット、それが10人分で約1万強になる。

 二万円は学生にとっては大金、だから才子達は心配するも一騎は笑顔で「たまには人前で格好付けさせてください」と言って全員の支払いを済ます。

 

「ありがと。一騎くん」

「いえいえ」

「あ、それともし暇でしたらみなさんアッチのエリアをおすすめするわ。多分貴方達なら興味が有ると思いましてよ」

 

 指を差して告げた後に才子が示していた先が爆発音と共に煙を上げたことに一騎達は驚き、才子に礼を言ってから件の場所に急いで向かう。

 

 

 ☆

 

 

 メリッサの案内のもと爆発のあった会場に行き中に入ると空中モニターには丘の上に立つ切島の姿が映し出されていた。

 

『クリアタイム、33秒!第8位です!』

 

「切島君!?」

「緑谷あれ」

「えぇえ!?かっちゃん!?」

 

 切島が映し出されていた事に驚き更に一騎が指を差す方には爆豪が居り更に驚く。

 

『それでは!次のヴィランアタック! スタート!!』

 

 司会人の開始の掛声と共に爆豪は「ぶっ殺す!」の声と共に個性を使い縦横無尽に動き回り圧倒的な速さでロボを破壊していく。

 

『これはすごーい!クリアタイム、15秒!トップです!』

 

「ふん…「あれ?あそこにいるの緑谷じゃね?」…あ?」

「あはは…」

 

 ここで切島と爆豪が緑谷に気付く。すると爆豪は爆破で吹っ飛んで来て、険しい顔で緑谷に吠える。

 

「何でここにいるんだぁ!?」

「切島さん達もエキスポへ招待受けたんですの?」

 

 そんな爆豪を八百万は無視して切島に声を駆ける。

 

「いや!ただ爆豪が商店街の福引きでIアイランドの旅行券を当てたから来ただけだよ!なに?お前らもアレ挑戦すんの?」

 

 なぜか強制的に緑谷が挑戦する事になる。そして記録は16秒と二位という結果だった。

 緑谷の結果に爆豪が「ありえねぇ!?」と叫んでる時に氷結がフィールドごとロボットを覆う。スタート地点にいたのは白い息を小さく吐き出すのは轟だった。

 

『ひゃー!すごい!すごーい!記録は…14秒!現在トップです!!』

 

「てめぇ!この半分野郎!」

「爆豪」

「いきなり出てきて俺スゲーアピールか、コラ!「緑谷達も来てんのか」無視すんな!大体なんでテメーがここにいんだよ!」

「招待を受けた。親父の代理…」

 

 一方的にギャーギャー騒ぐ爆豪に司会の人は次があるために速く退場して貰おうと声をかけるが、怖い顔で言い換えされ怯えてしまいソレを見た飯田、緑谷、切島の3人が止めに行く。

 

『それでは!気を取り直して、次は飛び入り参加のこの子!! ヴィランアタック!』

 

 そして爆豪達が居なくなるとなんと、ユエが飛び入り参加で挑戦を始める。

 

「不死黒さん、なんでユエさんの周りに大量のナイフが浮いているんですの?」

「あー」

 

 ユエの周囲には大量のナイフが浮かんでいた。初めて見る物に八百万が問いかけるが一騎はニコと笑うだけだった。

 

『スタート!』

 

「パルチザン!」

 

 言うのと共に右手を銃の形にして撃つ真似をするとナイフは瞬く間に飛んでいき、たったの一撃でロボットを破壊する。そして出たタイムに司会の人は目を見開く。

 

『す、凄い!何となんと!!記録は8秒!歴代二位!!』

 

 結果に会場は湧き上がり歓声が響き渡る。

 

 因みにユエのナイフは発目夫妻が作った特別製。そのナイフは刀身の重さだけで紙を切るほどの鋭利さを誇り丈夫さも桁違いな代物。しかもナイフの中には1本の液体の入ったチューブが入っており、これによりユエはこのナイフを自由自在に操ることができる。

 そしてそのナイフ達と技名をユエはパルチザン!と名付けた。

 

「流石は不死黒君の妹、ユエちゃんね!」

「俺の自慢の妹ですから」

 

「お兄様~!どうでした?」

「流石はユエだったぞ」

 

 戻って来たユエを撫でているときに耳朗がふと気になり一騎は参加しないのか聞くと一騎は少し困った表情を浮かべ答える。

 

「このイベントは恐らく個性を使って派手にするから良いのであって俺が遣っても地味で退屈なだけだと思うからやらないかな」

 

 この返答にみんな爆豪、轟そしてユエの派手なやり方を思い出し納得してしまう。

 

 しかし司会の人が一騎を見つけほぼ強制的に参加させた。しかも一騎は走りながら銃を使い出したタイムは轟と同じ14秒の同時二位だった。

 

 ☆

 

 

『本日は18時で閉園になります。ご来園、ありがとうございました。』

 

「つ、疲れたぁ~」

「プレオープン前でこの忙しさって」

「辞めろ峰田・・・考えたくねぇ」

 

 上鳴と峰田は予想以上の客にせわしなく対応し疲弊しまくっていた。そんなとき。

 

「やぁ!よく頑張ったな、上鳴君峰田君」

 

 飯田を初めメリッサの案内で更にI・アイランドを回っていた一騎達が現れる。そして耳朗が2人にパーティーの招待状を渡す。それはメリッサが持っていた物だった。

 自分たちの労働が報われたと上鳴と峰田は抱き合い泣いて喜び、飯田が18時半に集合と言い解散する。

 

「じゃあ楽しんできてみんな」

「え!お兄様はパーティーに行かないんですか!?」

「行かないよ」

「どうしてですの?」

 

 八百万の質問に一騎はメリッサを一瞬見て答える。

 

「メリッサさんに会うためだよ?」

「えぇ!?」

 

 その答えに驚いたのは他の誰でもないメリッサだった。

 

「もしかして不死黒くん、本当に私に会うためだけにIアイランドに来てくれたの?」

「はい」

 

 まさか自分に合うためだけに態々来てくれたことにメリッサは驚きと共に申し訳なさを感じる。

 そしてユエからせっかくだから行きましょうと誘われるも一騎はう~んと難しい顔をするだけだった。

 

「パーティーに行く用の服とないし態々そんな物の為に何万と払ってスーツ借りようと思わないしなぁ・・・」

「お兄様、忘れていませんか?ももちゃんを!」

「はい!不死黒さんご安心を!」

「八百万?」

「不死黒さんに合う衣装は私がご用をさせて頂きますわ!!」

「それって八百万が個性で創造するってこと?」

「はい」

 

 胸を張って答える八百万。しかも頼りにして貰えると思ってるのか周囲にキラキラした物を浮かべ、一騎はそれが見えたために流石の一騎もその優しさを無碍にする事は出来ず頼むことにした。

 

「それじゃぁお願い八百万」

「っ! はい♪」

 

「では!改めて18時半に集合だ!」

 

 

 

 ☆

 

 

 セントラルタワーのロビーに白の正装に身を包んだ轟と青の正装に身を包んだ飯田が入って来る。

 

「来るの速いな不死黒」

「そうか?てか服似合ってるよ」

「不死黒君も似合っているぞ!」

「どうも」

 

 少ししてからバイトの服のままの上鳴と峰田もきて、少し遅れ緑谷も来る。

 

「ごめん!遅れちゃった?」

「いや、時間ぴったりだぞ緑谷」

「よかった」

 

 遅刻したと思い慌ててきた緑谷セーフだったことに安堵し呼吸を整えていると扉が開き麗日が現れる。

 

「ごめん!遅刻してもーたぁ」

「「おぉ~!」」

 

 峰田と上鳴は興奮する。続けて八百万とユエの後ろに隠れるように耳郎が連れ立ってやって来たのに一騎達が気付く。八百万は大人っぽいエレガントなドレスに身を包み。

 

「…申し訳ありません。耳郎さんが……」

「うう…ウチ、こういうカッコは…その、なんとゆーか…」

 

 可愛らしくもシックなドレス姿の耳郎は恥ずかしそうに言葉を濁す。

 

「「Oh~イエス!イエス!」」

 

 それでも華やかな女子達を見た上鳴と峰田は更に興奮し、上鳴は耳郎にビシッとサムズアップした。

 

「馬子にも衣装って奴だな!」

「女の殺し屋みてー…」

「ふん!」

 

「「ギャアアアアアアアアアア!!」」

 

 二人の感想に怒った耳郎は『イヤホンジャック』で二人に爆音を流し込む。

 

「黙れ」

「ナンだよ!俺は褒めたじゃねぇか!」

「褒めてない」

 

「お兄様!どうですか?」

「あぁ凄く綺麗だよ」

「うへへ~。あ!写真撮りましょ!」

「いいよ」

「でしたら私が撮りますわ」

「ありがとももちゃん!後でももちゃんも一緒に撮ろ~」

「はい」

「八百万も凄く綺麗だよ」

「! ありがとう御座いますわ」

 

 そして3人の写真を撮ってるときに自動ドアが開き、メリッサがやって来た。

 

「「ヒョ~~!」」

「デク君達まだここにいたの?パーティー始まってるわよ」

「真打登場だぜ!」

 

 メガネを外し、華やかで大胆なドレス姿のメリッサは峰田と上鳴のハートを直撃した。

 

「それじゃぁいこ《マスター!!》っ!?」

 

 移動しようとした時に一騎のスマホからアミの声が大音量で流れ全員驚き一騎はスマホを取り出す。

 

「どうした?」

 

《緊急事態です! 38秒前にネットワークへの接続を強制的に遮断されました!》

 

「は!?」

 

 アミの警告を聞いて全員がゾッとした瞬間に

 

《最初はネット不良と思いましたが、明らかに不自然です!!》

 

『《I・アイランド》、管理システムよりお知らせします。警備システムより、《I・エキスポ》エリアに爆弾が仕掛けられているという情報を入手しました。《I・アイランド》は現時刻をもって厳重警戒モードに移行します』

 

 警報が鳴り響き、アナウンスの緊急放送が流れ、防火シャッターが次々と閉じられて入り口が塞がれた。

 

「アミちゃんの言うとおり携帯が圏外です。情報関係は全て遮断されてます」

「エレベーターも反応ないよ。」

「マジかよ…」

 

 不安と焦りが来る中、メリッサさんが何か引っかかっているように考えていた

 

「爆発物が設置されただけで、警備システムが厳戒モードになるなんて…」

「パーティー会場に行こう」

 

 その時緑谷が提案した

 

「何故だ?」

「会場にはオールマイトが来ているんだ」

「オールマイトが!?」

「なんだ、それなら心配いらねーな」

 

 皆安堵する。自分もだ。平和の象徴がここにいると知るだけで安心が生まれる。

 

「メリッサさん、どうにかパーティー会場まで行けませんか?」

「非常階段を使えば会場の近くに行けると思うけど…」

「案内、お願いします!」

「任せて!」

 

 そして全員メリッサの案内の元行動を開始する。

 

 

 

 ☆

 

 

「嘘だろ」

 

 非常階段で会場を見渡せる場所まで行き会場内を見渡せばオールマイトを初め全員が拘束されていた。それをみて緑谷が耳朗と共に何かをしている中、一騎の耳に付けていたインカムから音が聞こえる。

 

「チ チチ チー」

 

 それはモールス信号だった。

 

 一騎が使ってるインカムは発目と共に作った特別製でインターネットに繋がっていなくても同じ物が近くにあるとトランシーバーの様になり会話が可能になる。

 ならいま一騎が身に付けているインカムから来る音のを出している人物の正体に一騎は直ぐに分る。だって見ていたから。

 

「才先輩」

 

 相手は印照才子。彼女は一騎がくれた菱形のアクセサリーが付いた特別製のイヤリングを身に付けていた。だから一騎が近づいてきたことが分った。

 

『一騎君、放送は嘘でヴィランがタワーを占拠して警備システムを乗っ取ったわ。目に見える数は10人、強敵はリーダーと思わしき人物だけ』*1

「才先輩・・・」

『私は大丈夫でしてよ。(だって何とかしてくれるでしょ?一騎君なら)』*2

 

 才子から情報を貰い一騎は覚悟を決める。そのタイミングで耳朗もオールマイトから情報を全て貰い驚き声を上げる。

 

「やばいよ!みど「シー!」!?」

「ヴィランの中にどんな個性を持った奴が居るか分らないからできるだけ声を抑えて」

「ん」コクリ

 

 耳朗はいきなり口を塞がれことで最初はビックリするも理由を聞いてなっとくして頷く。その後は全員音を立てずに非常階段に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…オールマイトからのメッセージは受け取った。俺は雄英校教師であるオールマイトの言葉に従い、ここから脱出することを提案する」

 

 飯田が真っ当なあんを出す。まだ学生の身、しかもヒーロー免許も無いのに勝手に戦闘などすれば問題になる。個性を使えば更にだ、もしかするとヴィラン扱いされる可能性も出る。

 

「脱出して外にいるヒーローに救けを求めるのは…」

「脱出は困難だと思う。ここは敵犯罪者を収容するタルタロスと同じレベルの防災設計で建てられているから…」

「じゃあ救けが来るまで待つしかない…「上鳴、それでいいわけ?」どういう意味だよ?」

「救けに行こうと思わないの?」

「耳郎ちゃん?」

 

 そして耳郎が別意見の提案をする。

 

「おいおい、オールマイトまで捕まってんだぞ!オイラ達だけで救けに行くなんて無理すぎだっての!」

 

 峰田が怯えながら答え、上鳴は答えにつまる。

 

「…俺らはヒーローを目指している。」

「轟君!…保須市の事、忘れたのかい?」

 

 保須、あの時は表向きは一騎がステインと遭遇し戦闘したとされてる。だが裏では緑谷と轟そして飯田は許可なく勝手に戦闘と個性使用をした事で警察に怒られた。

 

「忘れてねぇ…だからって何もしないでいいのか?」

「だけど……それでいいのか」

 

「……救けたい。」

 

 緑谷の呟きに、一騎とユエ以外が緑谷を見る。

 

「デク君…」

「救けに行きたい」

「ヴィランと戦う気か!? USJで懲りてないのかよ緑谷! 今度こそ誰か死んじまうぞ!」

「違うよ峰田くん。僕は考えているんだ。ヴィランと戦わずに、オールマイトを、みんなを助ける方法を!」

 

 此所で完全に意見が分かれる。

 助けに動きたい緑谷、轟、耳朗。 大人しくする飯田、上鳴、峰田。 そしてどちらも未だに選んでいない一騎、ユエ、八百万、麗日。

 

 しかし、それでも緑谷は説明を続けた。

 

「これならイケるんじゃね!?」

「だよね!」

 

 結果、上鳴は賛同する。

 

「ちょっと待ってくれ!上には敵が沢山いる事を忘れていないかね!?」

 

 飯田がそう言うけど、緑谷は落ち着いた口調で言う。

 

「戦う必要は無いんだ。システムさえ戻せば後はオールマイトやプロヒーロー達が解放されて、形勢は一気に逆転するんだ…」

「緑谷君……「デク君!行こう!」麗日くん!?」

 

 麗日も賛同し緑谷が「うん!困っている人達を救けよう。人として当たり前の事をしよう!」と言って飯田、そしてなんだかんだ峰田も行くことを決める。

 だが、そこで八百万が待ったを掛ける。

 

「お待ちください皆さん。行くかどうかは私としては」

 

 一旦言葉を止めると一騎に目を向ける。

 

「此所の誰よりも戦闘経験が豊富な不死黒さんが決めるべきではないでしょうか」

 

 その一言に全員の目が一騎に集まる。そして一騎は静かに話す。

 

「警備室には行くよ」

「不死黒君!」

 

 一騎の言葉に緑谷は明るい表情をするが次の言葉でそれは消える。

 

「だが、行くのは俺とユエだけだ。お前らは全員ここに残れ」

 

 この言葉に緑谷は「何で」と抗議し、轟も少し鋭い目を一騎に向ける。

 

「敵はあのタルタロスに匹敵するここを襲撃できてる。詰まりは中に内通者が居ると考えるべきだ。しかも重火器まで持ってる奴らだ、見張りが其処ら中に居ると考えるべきだろ?」

「そ、それは」

「彼奴らは絶対に個性だけでは無く銃も撃ってくるぞ?それで聞くが、俺とユエ以外で個性無しで銃の対処出来る奴どれだけ居る?」

 

 強い口調から放たれた言葉。当然銃の対処なんかできるわけも無く全員黙り込む。その姿を見て更に一騎は言葉を続ける。

 

「俺は置いといてユエは個性が無くとも戦える。個性を使わなくてもお前らに勝つことが出来る程にユエは素手でも強い。てか俺と同じく弾丸を逸らすこともできる」

 

 静かに淡々と事実を突き出す一騎に誰も言い返せず黙り込む――

 

「それでもだよ。不死黒君」

 

 事は無く、緑谷は一騎の目を見て答える。

 

「それでも!僕達は人として、ヒーローとしてやるべき事をやるんだ!」

「俺達はヒーローじゃない。ヒーローの卵でしかないんだ、まだ」

「でも動けるのは僕達だけだよ!」

「だから俺とユエだけで行くとい「不死黒君」 っ!・・・」

 

 真剣に真っ直ぐな目を向けられ一騎は言葉が詰まり心の中にジワリと醜いどす黒い物が滲み出すのを感じる。

 

(あ~。お前のその信念は伝播する。真っ白な和紙に墨汁を垂らした時の様に周囲に広がる・・・。

 俺には無い。絶対に持つことのできないヒーローに必要な資格(心意気)。こいつはそれが凄い・・・・・・・だからオールマイトも緑谷を贔屓に、する、の・・・・「お兄様」っ!!)

 

 思考の海に落ちそうになるもユエが手を掴み声を駆けてくれたお陰で意識を戻し、わざと深く大きな溜め息をつく。

 

「はぁ~~。自分の身は自分で守れよ?」

「!? それって!」

「USJの時とは違い俺はお前らの身を守らないからな?行くからには死の覚悟はしろよ?」

「うん!!」

 

 元気に頷く緑谷に一騎は内心もう一度溜め息をつく。来るなと言っても緑谷は恐らく来る。なら、下手に動かれるよりも近くに居させた方が良いと内心自分を納得させる。

 そして笑顔を浮かべるとメリッサの方を向く。

 

「それでメリッサさんは・・・聞く必要は無いですね」

「勿論!私も行くわ」

「えぇ!」

 

 メリッサも行くかと聞こうとするもメリッサの顔をみて一騎は既に覚悟を決めてると悟る。そしてメリッサはハッキリと言い切ったことに緑谷は驚く。

 

「で、でもメリッサさんにはこせ「緑谷」ッ!?」

 

 個性が無いと言おうとした時に一騎が低い声でそれを遮り緑谷に鋭い目を向ける。

 

「個性の有無で言えば俺も個性は無いぞ」

「け、けど」

「それにお前がソレを言う資格は1番無い」

「え」

 

 一騎の言葉に緑谷は目を見開き愕然とするが、一騎はふと表情を崩し言葉を続ける。

 

「だってお前ヘドロヴィランのとき個性も戦う術も無いのに爆豪を助けに行ったろ?いまメリッサさんがする事とお前がした事の違いは無いぞ?」

「うっ」

「それにお前らにはあぁ言ったが、メリッサさんは俺が守るから大丈夫」

「いいの?不死黒くん」

「はい。これ(万里ノ鎖)を貰ったんです。持ち合わせがないので働いて返しますよ」

 

 ニコっと笑い腰にアクセサリーの様に着けた万里ノ鎖を見せる。その姿を見てメリッサも笑みをこぼす。

 

「ありがと。不死黒くんが居てくれたら何よりも心強いわ」

 

 そして全員は覚悟を決めて最上階にある警備システムに向かう。その際に飯田の「それじゃぁ行こう!」の掛声で全員が「おぉー!」と声を出すが一騎に「静かに!」と言われ全員慌てて口を押さえる。

 

 

 ☆

 

 

 警備システム奪還の為、一騎達は非常階段を使って上へ上る。

 

「メリッサさん、最上階は?」

「ハッ……ハッ……200階よ」

「マジかよ!?」

「そんなに昇るのかよ!?」

「敵と出くわすよりマシですわ」

 

 休む事なく、一騎達は駆け上る。日頃訓練してるから疲労は少ないがメリッサは明らかに疲弊して遅れ始めている。

 

「メリッサさん、ウチの“個性”使おうか?」

「う、ううん大丈夫!」

「よっと!」

 

 メリッサが止ったのを気配で感じ取った一騎は階段を全段飛び降りメリッサの横に付くとしゃがみ背を向ける。

 

「乗って!メリッサさん」

「でもそれじゃ不死黒くんに負担が!」

「メリッサさんには頭脳面で頼りにします!なので肉体面では俺に頼ってください! それに、無個性同士助け合いですよ」

 

 優しい笑みを向ける一騎にメリッサはドキッとするが直ぐに切り替える。

 

「それじゃ遠慮無く頼らせて貰うわね」

「はい」

 

 背に乗ったメリッサをしっかりと抱えると脚に力を溜め「行きます!」と行って走り出し瞬く間に階段を上り麗日の元に着く。

 

「麗日はどうする?個性を使って俺に捕まって一緒に上に行くか?」

「ウチはまだ大丈夫!ウチに気にせず不死黒君は行って!」

「おう」

 

 答えるとまた走り出し速度を落とさず階段を上り遂には先頭を走っていたユエ達に追いつき追い抜かした。

 

「大丈夫?その私重くない?」

「はは、メリッサさんは全然軽いです、よ!」

 

 言うやいなや更に速度を上げる。今は危険な状態なのに一騎の身体能力の高さを直で体験できメリッサは興奮し、それと同時に子供の頃に父デイヴおんぶして貰っていた頃の記憶を思い出し捕まる力が強まる。

 

(捕まる力が強まった。少し速度を上げすぎて怖かったかな?速度落とすか)

(あ、速度落ちちゃった。やっぱり重かったかしら?)

 

 

 

 ☆

 

 

 更に階段を上り続けたが80階に差し掛かった時、シャッターが下りていた為に脚を止めメリッサを下ろすとシャッターを触り軽く叩き何かを探すように動く。

 

「因みにこれを壊すとー・・・」

「警備室に知らせが行ってバレるわ」

「ですよね~。・・・あった」

 

 シャッターの壁を剥がすと中から基盤を取り出す。そのタイミングで丁度ユエと八百万もやってくる。

 

「八百万、早々で悪いがこの基盤にスマホを繋げられるコード作れるか?」

「どれでしょう? ・・・はい、これなら作れますわ・・・どうぞ」

「ありがと」

 

 受け取った物をスマホと基盤に繋いでアミを起動する。

 

「不死黒くんもしかしてプリント基盤からハッキングをおこなえるの!?」

「はいっと言いたいですけど俺なんかでは無理ですのでアミにお願いするんです。お願いアミ」

 

《畏まりました》

 

 アミがハッキングを始めたとほぼ同じタイミングで上がってくると皆は八百万から状況を聞いて息を整える。

 

《マスター》

 

「どうだった?」

 

《申し訳ありません。タルタロスと同等の防災レベルは伊達ではありませんでした。警備状態はやはり警備室にある専用PCからでないと行えません。しかも行えたとしてもこれより各階にシャッターが下ろされていますので非効率と思われます》

 

「使えないじゃん!!」

「おい峰田!」

 

 緊急事態から来る焦りと疲労の影響で思わず本音が出てしまった峰田に一騎がドスの効いた声で睨む。

 

《私は引き込まれせて頂きます》

 

「待って!アミ!本当に待って!?・・・あ、引きこもった」

「峰田さん!!」

「アンタ今のは流石に」

「おオイラだって悪かったと思ってるよ! うぅそれに行き先が無いのならコッチから行けば――」

 

「ダメよ!?」

「峰田君!!」

「へ?」

 

 一騎達の居るフロアに続く非常扉に手を掛けるのを見たメリッサと緑谷が叫び止めるが、それも虚しく峰田は扉を開けてしまう。

 軽い音と共に扉が空いたのをみて一騎は頬を引き攣らせる。

 

「やっべ~。みんな!走るぞ!!」

 

 叫びと共に一騎達は走りだす。

 

 

 

 非常ドアを開けたことで敵に気づかれたと警戒し通路を走る。

 

「メリッサちゃん他に上に行く方法は?」

「反対側に同じ構造の非常階段があるわ!」

 

 メリッサの案内で反対の非常階段に目指すが、突如として通路の奥から次々と隔壁が閉じられていく。

 目の前の隔壁も降りる瞬間に飯田が轟に呼びかけ、轟は氷結で隔壁が閉じるのを阻止しようとしたが、氷結がギリギリ間に合わず隔壁が閉じてしまう。

 

「わりぃ。間に合わなかった」

「轟の所為じゃないよ」

 

 俯く轟の肩に手を置き言いながら一騎はこの状況をどうしようかと悩むとユエが声をかける。

 

「お兄様!この壁を壊してください!」

「ユエ?」

「壁の向こうは大きなエリアで大量の水が流れてるのを確認しました!」

「この壁の向こうは個性の影響を受けた植物を研究する植物プラントエリアよ」

 

 メリッサはユエの言葉で一騎が自分を見たのを見てどう言う物かの説明を欲してると思い答えると一騎は皆を下がらせる。

 

「不死黒くん?なにするき?」

「壊します」

「えぇ!?厚さ30㎝もあるのよ!」

 

 壊せっこないと思いメリッサは叫ぶも一騎は右の袖をまくり構えると一言「これが人間の可能性です」と告げて拳を振るう。

 

「二重の極み!!」

 

 拳を叩き込まれた壁はドゴッンッ!!と音を立て大きな穴を作り崩れる。

 八百万達は授業とかで時々一騎が使うのをみて慣れているが、メリッサはこんなことが出来るとは思わず開いた口が塞がらない。

 

「・・・・わ、わーお」

「行きますよメリッサさん」

「え、えぇ(不死黒くんってサポートアイテム必要?)」

 

 こんな凄い事してるのに一切自慢せず笑顔を向ける一騎にメリッサは若干引いてしまったが、悪く無いと思う。そして耳朗が呆れ気味に言う。

 

「不死黒って本当に腕力ゴリラだよね?」

「時間が無いんだから壁ぶち壊して最短距離で行った方が良いじゃんね☆」

「お兄様それだれの真似ですか?

「さぁ~?因みに耳朗、あれは腕力じゃ無くて単純な技術じゃんねって止って! なんかエレベーター動いてない?」

 

 軽口を叩きながら移動しているとき、中央にあるエレベーターが動いてるのをみて一騎は全員を止め目を細めると数字を表示する部分がどんどんと自分たちがいる回に近づいているのに気づき全員を茂みに隠れさす。

 

「敵が追ってきたんじゃ」

「とりあえずこのままやり過ごそう」

 

 全員が隠れて少ししてからエレベーターの到着音が鳴り中から2人のヴィランが降りてくる。

 

「チッ!面倒くさいとこに逃げ込みやがって」

「おい!本当にこのエリアに居るんだろうな!」

『あぁそれは確実だ』

 

 1人のヴィランがインカムで誰かと連絡して再確認しているともう一人ののっぽのヴィランが手を巨大化させて個性を発動し何かを一騎達の居ない方に放った!

 

「「「「「「「っ!?」」」」」」

 

 放たれた何かは軌道上の物を抉りながら進んだのを見て全員驚愕するものっぽヴィランは無慈悲にも周囲に無闇矢鱈に放ちその1つが一騎達に迫り全員茂みから飛び出し回避する。

 

「そこに居たのかガキ共ォ!」

 

 見つかったことで戦う覚悟をするも轟が氷壁を作るのと同時に屈み込み氷柱を作り全員を持ち上げ轟は自分だけが残る。

 

「「轟!?/轟君!?」」

 

「先に行け!」

「何言って!」

「不死黒、俺の事も信じてくれ」

「っ!?」

 

 まさか轟にそんな事を言われると思わなかった一騎は言葉が詰まりなにも言えなくなるその時、一騎の横を1つの影が通り過ぎ氷柱を飛び降りる。

 

「ユエ!?」

「私も残ります」

 

 轟の横に着地するとユエは振り返りニコッと微笑む。

 

「私もお兄様に格好いい姿見せたい時だって有るんですよ?」

 

 ユエと轟の目を見て一騎は二人の意を汲みただ一言「任せる!!」とだけいって上の階にむかう。

 

「お任せください、愛しのお兄様」

「いいのか?」

 

 小さく微笑むユエに轟が聞くとユエは氷壁が崩れ始めているのにもかかわらず轟の方をみて答える。

 

「轟さんのベストコンビを張れるのはお兄様の次に私ですよ?」

「そうだったな」

「それじゃやりましょうか」

 

 氷壁に目を向けたのと同時に氷壁が壊れずんぐりとしたヴィランが個性を使い紫肌の大男になりユエに襲い掛かる。

 

「青鬼ですか!」

 

 しかしユエは振るわれた豪腕を片手で受け止める。それでも大男は押しつぶそうと力を込めるが、ユエは軽く捻るだけで大男を背中から地面に叩き付ける。

 

 

 

 2対2のタッグバトルが始まった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「やったー!オイラはやり遂げたぞォ!!」

 

 色々あり峰田は皆の為に外壁から侵入した自身の頑張りに歓喜の声を上げていた、のだが・・・。

 

「お、お疲れ峰田君」

「ふぇ?」

 

 既に皆は峰田が侵入した階にいた。 時は峰田が外に飛び出た直後に遡る。

 

 

 

 

《停滞を確認。どうかなされましたかマスター》

 

 スマホが震えたのを感じた一騎は取り出すとアミが現状確認の為に問いかけた。

 

「あそこの梯子を下ろそうとしているんだ」

 

《状況確認完了。サポートを実行いたします》

 

「え?」

 

 まさかの遠隔操作で非常用橋をアミが下ろした。

 

「まって!あれは手動式だったハズよアミちゃん」

 

《否定、ここセントラルタワーにある非常用梯子は全て万が一の為に手動式と自動式の両方が内臓されています》

 

「じゃあどうやって?」

 

《先ほど行なったハッキングで私のコピーをしのばせ遠隔操作しました》

 

「電波遮断は?」

 

《マスターの端末だけどうにか建物内限定で通信出来るようにハッキングしました》

 

「・・・すご」

 

 アミの手腕にメリッサは驚き全員峰田が居るであろう方向に向けて手を合わせた。

 

 

 

 

「てなことが・・・」

 

 目を見開き硬直する峰田に緑谷が説明して一騎がアミに言われスマホを峰田に向ける。

 

《ざまぁ》

 

 その一言でキレた峰田は一騎からスマホを奪い取り力いっぱい地面に叩き付け叫ぶ。

 

「クソッタレぇぇええ!!!!」

「俺のスマホがぁああ!!??」

 

 アミは自身をAIだから感情は無いと言っているが、本当に無いのだろうか?

 あと、スマホ画面はバキバキに割れると思ったが峰田の身長からでは強く叩きつけられても罅1つ着くことは無かった。そもそも一騎の鍛練について来れてるので丈夫性は折紙付きだ。

 

 

 ☆

 

 

「なあ、なんか100階超えてからシャッターが開きっぱなしなんてラッキーじゃね?」

「ウチらの事見失ったとか?」

「完全に誘い込まれてるよ」

「不死黒さんの言うとおりですわ」

 

 険しい顔で一騎の言葉に賛同する八百万。そして最上階への通り道のフロアには大量の警備マシンがウヨウヨいた。

 

「やはり相手は閉じ込めるのではなく、捕らえる事に方針を変えたか」

「きっと僕達が雄英生である事を知ったんだと思う。」

「なら予定通りプランAで行こう!上鳴君!」

「うっし!俺もやってやるぜ!」

 

 一騎がフロアドアを蹴り開け飯田は上鳴の手を掴むと個性を使い駒のように回転して上鳴を警備マシンの場所へと放り投げる。

 

「くらえ!!無差別放電130万ボルトォオオオ!!!」

 

 上鳴の放電攻撃が周囲の警備マシンを襲う。しかし!警備マシンは防御体勢をとり上鳴の攻撃を防ぐ。

 それにより更に上鳴は電圧を上げようとするが、それを一騎が叫んで止める。

 

「戻れ上鳴!それ以上は個性の無駄遣いになる!!」

「お、おおう!!」

「八百万!」

「はい!」

 

 戻って来る上鳴を見ながら一騎は八百万に手を伸ばし八百万も手を伸ばしお互いにお互いの内肘側を掴むと徐々に手を滑らせ最後は握手の形になると遂には手すらも離れると一騎の手には刀の柄が握られ手いた。

 そしてその柄は八百万の手の平から出ており、一騎が柄を抜くとソレは日本刀となる。

 

 二人の息の合ったパフォーマンス?を見ていた全員は内心格好いいと思い見惚れた。

 因みに二人のこの当たり前の様にした動きはUSJ事件後にユエの「こんなのしたら格好良くないですか?」との提案でやり、二人は無意識に出来るようになった動きだった。

 

 

「緑谷!飯田!やるぞ!!」

 

「「うん!!/あぁ!」」

 

 

 ☆

 

 

「二虎流・橾流ノ型」

「オォオオオオオオ!!」

「柳」

「グッハアア!?」

 

 大男はユエを潰そうと拳を振るうも簡単に力の流れを乱され片手で放り投げられると背中から地面に叩き付けられうめき声を上げる。ユエはそれを意に返さず顔面を踏みつけようと脚を上げるが

 

「させるかぁ!」

 

 のっぽヴィランがユエに向かって空気の塊のような物を複数飛ばす。轟はそれを防ごうとするが、大穴を開けられ複数の内一つがユエに向かうもユエはバク転でそれを躱すがその時、右手が巻き込まれる。

 

「?」

 

 しかし何も変かわなくユエは首を傾げる。のっぽヴィランの攻撃はどんな物も抉ってるのに自分の手に何の影響も無く手首に着けてたシュシュだけが無くなっていた。

 

 ――ごろごろごろごろ。

 

 疑問に思ってるときに轟の氷壁が丸い状態で転がってるを見てユエも轟ものっぽヴィランの個性は物を削り取ってるのでは無く抉り取っており、人には効果は無く完全に対物個性だと推察し、二人の作戦は決る。

 

「ユエ此奴の個性は――」

「分ってます!!」

 

 言うやいなやエリア内を流れる大量の水を操りのっぽヴィランに差し向ける。当然のっぽヴィランは個性で水の塊を壊そうとするが、

 

「水は液体であって固体では無いんです!どれだけ抉り取られようと簡単に元に戻ります!」

 

 やっても意味は無く簡単にのっぽヴィランは濁流に呑まれ身動きが取れなくなる。

 

「このガキがァ!!」

 

 だがのっぽヴィランに意識を向けると大男がユエを襲う。

 

「金剛・火天ノ型! 瞬鉄・砕!!」

 

 大男が振るう拳を躱しざまに強烈なカウンターを顎に叩き込み悲鳴を上げさせる暇もなくノックダウンさせるとのっぽヴィランを水ごと地面に叩き込む。

 そして最後に轟が前もって伸びてきていた導火線擬きの水を凍らせのっぽヴィランの肩から下を凍り付かす。

 

「はやくお兄様達を追いかけましょう轟さん」

「あぁ」

 

 

 ☆

 

 

 

 耳朗に周囲の音に警戒して貰いながら上を目指し一騎達がたどり着いたのは沢山のスーパーコンピュータがあるサーバールームにたどり着と直ぐに大量の警備マシンがなだれ込む。

 

「くっ……罠か!」

「突破しよう!不死黒君、飯田君!」

「待って!ここのサーバーに被害が出たら、警備システムにも影響が…」

 

 戦闘を開始しようとする緑谷と飯田をメリッサが慌てて止める。

 此所にはセントラルタワーを初めIアイランドの維持に沢山のサポートアイテムの管理を行なわれている。此所で超パワーの緑谷と敵を蹴り飛ばす飯田が全力で戦闘を行なえばコンピュータにどんな被害を与えるか分った物では無い。

 

 どうこの場を乗り切ろうかメリッサが思考を巡らせているときに一騎が八百万の方を向く。

 

「八百万。任せるぞ」

「・・・っ・・・・!!・・・・はい!!」

 

 一騎に任せると期待されたのがとても嬉しかったらしく八百万は凄くキラキラを浮かべ胸を張って返事をする。

 

「ならば不死黒君!緑谷君!メリッサさんを連れて君達は先に行くんだ」

「おう!」

「わかった!メリッサさん、お願いします!」

「お茶子さんも一緒に来て!」

「え、でも!」

 

 何かを閃いたメリッサが麗日を呼び止めて着いてきてくれることを頼むが、麗日は皆が心配で振り返るが飯田が背中を押す。

 

「頼む!麗日くん!」

「うん!」

 

 そして一騎達はメリッサの案内で先を急ぐ。行く後ろ姿を見届けた飯田は奥の手のレシプロバーストを使おうとするが八百万が止める。

 

「飯田さん!レシプロは使わず此方をお使いください」

 

 八百万が渡したのは先がL字になっている鉈を渡す。

 

「飯田さんの奥の手は10秒後のデミリットが大きいですわ!ですのでこちらを使い走りながら警備ロボのを壊してください!」

「うむ分った!」

「峰田さんは不死黒さん達を追わせないように通路をもぎもぎで通行止めを!上鳴さんは此方で峰田さんの援護を!耳朗さん!刀をお使いになれますか?」

「見よう見まねで振ることは出来るけど不死黒やユエみたいにはムリ!!」

「充分ですわ!!此方をお使いください!!」

 

 耳朗に短めの刀を渡すが、耳朗は使えないと言うが八百万は自身の使い慣れている槍を想像しながら説明する。

 

「其方は柄尻にイヤホンジャックの差し込み口がありますわ!それを使い音を振動にすれば耳朗さんでも扱える超振動バイブレーションソードになりますわ!」

「これならウチでもいける!!」

 

 一騎の元での鍛練や戦術訓練が身に付いており今まででは想像すらしなかった作戦が思いつく八百万

 

(不死黒さんに任されました以上!絶対に上手くやり抜けてみせますわ!!)

 

 

 ☆

 

 

「メリッサさんここは…」

「風力発電システムよ。」

 

 見上げると大量に風力発電のプロペラが設置されている場所。

 

「どうしてここに…」

「タワー内は警備マシンが待ち構えているはず…だからここから一気に上層部へ向かうの!ホラあそこに非常口がある!」

「あんなところまで…」

「なるほど。麗日の個性で俺達はあそこから侵入するんだな?」

「えぇその通りよ!」

 

 メリッサはしっかりと作戦を言うもその手は震えていた。それを見た麗日はメリッサの覚悟に答えるために覚悟を決める。

 

「うん!任せて!」

 

 麗日は緑谷、メリッサそしてメリッサを背負った一騎に触れて無重力すると非常口の方に投げる。

 しかし、直ぐに麗日がいるところに大量の警備マシンが現れ麗日に襲い掛かる。

 

「麗日さん!」

「逃げろ麗日!!」

 

「そんなんできひん!」

「麗日さん!!」

 

 逃げるどころか追撃の意思を示した麗日に緑谷は速く着けと強く思うが、無情にも警備マシンの数台が麗日に飛びかかるその時!

 

「赤血橾術・刈祓!!」

 

 無数の高速回転する円形所の血の刃が警備マシンを壊すと麗日の前に二人の影が現れる。

 

「ユエちゃん! 轟君!」

「大丈夫か麗日!」

「麗日さん!此所は私達に任せてください! 来い!焔丸」

 

 戦闘力がトップクラスの2人が来れば安心だと一騎は思い前を向く。

 

「緑谷!前を向け!2人がいればもうあんっ!?!?」

 

 高所ゆえの特徴である強風が吹き一騎達が流される。それを見た轟は辺りを見渡しユエに指示を出す。

 

「ユエ!プロペラを不死黒達の方に向けろ!」

「血刀・肆ノ絶刀 飛び血斬! 三連」

 

 焔丸を振るい複数の血の刃を飛ばしプロペラの根元を切り更には角度を調整する。そして続きざまに轟が炎を使い一騎達を上昇させる。

 

「メリッサさん!腕だけじゃ無く脚も俺に絡めてしっかり捕まってください!」

「うん!」

 

 言われた通りメリッサは掴む腕に力を込め足もしっかりと一騎の胴体に絡ませ捕まったのを確認すると一騎は手を離し万里ノ鎖を刀に括り付けると悪い体勢でも思いっきり投げると向かっていた塔の壁に深々と突き刺さる。そして万里ノ鎖を引き戻す。

 

「緑谷!構えろ!!」

「え、えぇええええ!!」

 

 一騎はただ闇雲に刀を投げた訳では無い。

 万里ノ鎖を引き戻すと無重力の自分が塔に向かう、そして進路場に緑谷が来るようにしっかりと計算していた。

 

 猛スピードで緑谷に接近すると緑谷の背中を蹴り塔の方に吹き飛ばす。

 

「その勢いが有れば踏ん張りがきかなくても壁を破壊できるはずだぁ!」

「うん!」

 

 一騎の目論み通り緑谷は身体強化して壁を破壊する事に成功し、一騎も緑谷が開けた穴に入り無事最上階への侵入に成功するのをみて麗日は個性解除する

 

「うわああああ!!」

「きゃぁあああ!!」

 

 緑谷とメリッサは突如として無重力が消え重力に従い落下するのに悲鳴を上げるが、一騎は冷静に刀からほどけた万里ノ鎖だけを巻き戻してメリッサをお姫様抱っこのようにして無事に着地する。

 

「ありが「クソガキ共がぁアア」!?」

 

 お礼を言おうとしたメリッサの言葉を遮り3人のヴィランが襲い掛かる。

 

「緑谷!1人頼んだ」

「うん!」

 

 いうやいなや一騎の行動は速くメリッサを降ろしヴィランの1人が両手をブレードの様にすると同時に間合いを詰め体を勢いよく縦回転させる。

 前方の敵には脳天に強烈な踵落とし。そして背後から銃撃しようとした敵には顎を踵で蹴り上げる。

 

偽・踵月輪(ルナリングⅡ)

「がッ!」

「ガハ!」

 

 2人の敵を同時に伸すして緑谷の方を見ると敵はライフルを使い緑谷を打ち抜こうとするが緑谷は振るガントレットで防ぐも威力はモロに喰らい開けた穴から落ちそうになる。

 更に敵が追い打ちしようとするがメリッサが阻止すると敵はメリッサを殴りライフルを向け発砲する。

 

「!?」

「橾流ノ型・流刃!」

 

 撃たれるより速くメリッサの前に立った一騎は一か八か手首に付けている重りをずらし手の甲を守りライフル弾の軌道を逸らしメリッサを守るが。

 

「不死黒君!?」

 

 流刃をつかった右腕から鮮血が舞う。

 一騎の流刃は拳銃までなら何とか出来るが、ライフル弾となると威力を完全に逸らすことは出来ず外側の手首から肘までを浅くといえど肉を抉られた。

 手の甲は特集重りの繊維、特殊繊維や発目夫妻が作ったオリジナルのモノを使い無事だった。

 

「死ねぇ!」

「逃げて不死黒くん!」

 

 男は容赦なく凶弾を放つ。それなのに一騎は逃げない。

 

(集中しろ。今は(聴覚)は要らない、風景に色も要らない)

 

 命の危機に今は不要な器官を閉じ視ることだけに極限の集中、そして背後には守るべき人が居ることで一騎の脳のリミッターはいくつか外れ、放たれた凶弾全てがスローに見え捕らえられていた。

 

 

 

 二虎流・第弐奥義『降魔(こうま)』成功。

 

 

 

 

(流水岩砕拳✖天衣無縫)

 

 蟷螂手に近い構えると力の流れを体の動きを流水の如き動きで行ない、更にそこから最小限の動きによって凶弾の側面を叩き全ての弾丸を弾く。

 ただ全部は弾かない、メリッサに当たりそうな弾丸と重傷箇所に来る弾丸だけを弾く。それら以外の弾丸は一騎の体中をかすったりする。

 

「うそ・・・」

「なんなんだお前はぁああああ!!!」

 

 メリッサは目前で起きている事に理解できず呟き、敵は更に恐怖から叫ぶが無闇矢鱈に撃っていたことで弾は直ぐに無くなり銃撃が止む。

 慌てて新しい弾倉に入れ替えようとするが、そんな徹底的な隙を一騎が見逃すわけが無い。

 

「罪も無い女に手を上げただけに留まらず」

「ヒィ!!」

 

 一足で間合いを詰め強く踏み込む。

 

「弾こうとしてんじゃねぇええ!!!」

 

 繰り出した右拳(鉄砕)は深々と男の腹に突き刺さり体をくの字どころか手が足に着く程のつの字にまで曲げる。

 このとき右腕の怪我が更に酷くなり傷口が裂け血が吹き出すも一騎は顔を歪めず拳を振り抜く。

 

「シャァンダラァアアア!!!!!」

 

 重火器やプロテクターを身に付けた大の男を一騎は右腕1本で吹き飛ばした。男は壁に亀裂が入るほどのもの凄いいきおいで吹き飛び激突すると薄赤色のよだれを口の端から垂らし動かなくなる。当然死んではいない。

 

「うっ」

 

 右腕を少し押さえ膝を着いた一騎の元に緑谷とメリッサが駆け寄る。 

 

「不死黒君!?」

大丈夫(モーマンタイ)

「でも不死黒君腕が」

「そんなこと気にしてる時間は無い。上に行くぞ」

「でも!」

 

 緑谷は一騎の腕の心配をして行くのを止めようとするが一騎は聞かず上に行こうとする。緑谷は止めたいが最初に一騎の止めるのを変えさせたのを無理矢理だったと自覚があり強く言えない。

 

「わかった!でも不死黒くんこれを!」

 

 立ち上がった一騎の姿を見てメリッサは走りやすいように破いていたスカートを更に破いて簡易的な包帯を作ると一騎の怪我した腕に強く巻き付ける。

 

「ごめんなさい、こんな汚い物で」

「大丈夫ですよ。寧ろ更にドレスをダメにさせてしまってすみません」

「それは最初っからだから大丈夫よ。そしてありがと助けてくれて」

「お礼なんて良いですよ。言ったじゃ無いですかメリッサさんは俺が絶対に守るって」

 

 腕の手当をしてくれているメリッサの手を掴み一切不安げのない笑みを見せる。

 

「まぁカッコ付けてますが完全には守れませんでしたが」

「このぐらい不死黒くんの怪我に比べればたいした事無いわ」

「優しいですね。よし、緑谷いくぞ」

「っ!うん」

 

 2人は笑い合い手当が終わると一騎は緑谷に顔を向けて声をかけると階段を駆け上がる。

 

(不死黒君は本当に凄い。僕なんかよりもよっぽどヒーローだ)

(不死黒くんは本当に凄いわ。あれが自分と向き合い信じて鍛え上げてきた人間の力であり姿。・・・・ユエちゃんが惚れちゃう理由もわかる)

 

 緑谷とメリッサは一騎の姿に色々と思っていた。そしてその一騎は・・・。

 

「グフ」

 

 鼻や口から大量の血が流れ後ろに居る2人にバレないように慌てて抑え服で拭うも速度は落とさない。

 

(流石に脳に負担を掛けすぎたか?凄く頭も腕も凄く痛い、止りたい。指も完全に複雑骨折だ・・・けど、今は無視しろ)

 

 一騎は右腕や脳の激痛を無視して階段を駆け上がる。

*1
解釈してます。

*2
解釈してます。





一騎がどんどんボロボロになって行くね、緑谷。

次回「I・アイランド③」

それでは、期待せずにお待ち下さい。
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