無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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初っぱな誤字報告ありがとう御座います!!


一騎には途轍もない地獄が待ってるから今は楽しんで欲しいね♡


第59話:林間合宿②

 

 

 合宿2日目AM5:30。

 A組は全員学校指定のジャージに着替えているがそれでも早朝すぎて眠たそうにする者もいるが、相澤はお構いなしに話し始める。

 

「本日から本格的に強化合宿を始める。今回の合宿の目的は全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように、というわけで爆豪。こいつを投げてみろ」

 

 言い終わると爆豪に個性把握テストで使ったボールを投げ渡す。

 

「前回の…入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」

「おぉ!成長具合か!」

「この三ヶ月色々濃かったからな! 不死黒みたいに1kmとかいくんじゃねぇの!?」

「いったれバクゴー!」

「んじゃ、よっこら…くたばれ!!!」

 

 物騒な言葉をいいながらボールを投げる爆豪にみんな内心クタバレ?と疑問を浮かべていた。

 そして出た記録は

 

「709.6m」

 

「「「「「「!?」」」」」」

 

「あれ…?思ったより…」

 

 思ったよりも地味すぎる記録にザワつくA組。そこに相澤先生が追い打ちをかける。

 

「約三ヶ月間、様々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまでも精神面や技術面。あとは多少の体力的な成長がメインで、個性そのものは今見た通りでそこまで成長していない。だから今日から君らの個性を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも…死なないように」

 

 そう言って相澤先生は話を締めくくった。いや、締めくくろうとした。

 

「先生!私もして良いですか?」

 

 ユエが手を上げ遮った。相澤は少し怪訝な目を向けるも一騎が全力で鍛練を付けているユエは何処まで伸びてるのかと個人的興味も有りボールを投げ渡す。

 

「では、赤鱗躍動・載!!」

 

 その一言で額から頬まで縦線が浮かび下側の端が目尻に届くような横線の模様が浮かぶ。

 

「それではいきまーす!!」

 

 軽い声で告げると勢いよくボールを投げ、即座に穿血を放ち更にボールを飛ばす。

 記録はどんどん伸び爆豪の記録を超しユエの個性把握テスト時の記録978.6も越え、何と出た記録は。

 

「ッ!2364m」

 

「「「「「2㎞超え!?!?」」」」

 

 出た記録は前の記録を明らかに超える記録だった。これには相澤も目を見開いて驚き爆豪も目を見開き口をあんぐりと開け「バカな」と呟くしか無かった。

 ユエがやったのは単純にボールを投球し、穿血で更に打ち出しただけなのだからあぁも驚くのは仕方無い。

 

「ユエちゃん凄いわ」

「ねぇユエの赤鱗躍動?の顔のあの痣ってあんな形だった?」

「し、知りませんわ。私も初めて見ました」

 

 皆がそれぞれ言ってるが、それよりも皆が思うのは、爆豪は記録が大して変わらなかったのにユエだけ変わりすぎだろと言う事だった。

 

「ユエさんいつの間にそのような成長を・・・」

「何言ってるのももちゃん」

 

 八百万の呟きに本当に不思議そうにするユエの顔を見て八百万は首を傾げユエはニコッと笑う。

 

「お兄様の鍛練には常に個性特訓も入ってるじゃん♪」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「すなわち、やるべき事はひとつ……限界突破!!」

 

 A組に遅れて来たB組は開けた場所に出ると、地獄絵図が拡がっていた。

 全員が全員、個性の特訓を行なっていた。例えば発動型は上限の底上げ、異形型と他複合型は個性に由来する器官・部位のさらなる鍛錬とかだ。

 

「通常であれば肉体の成長に合わせて行うが…「あぁあああ!!」!?」

 

 ブラドが言い終わる前に言葉を遮るように叫び声が響き人が落下してくる。

 

「き、切島ぁああ!!!」

 

 B組の元に落ちてきたのは切島だった。その事に鉄哲は駆け寄ると切島を抱きかかえるも彼は白目を剥いて気絶していた。

 

「よぉB組」

「不死黒!?」

 

 普通に登場した一騎は軽く挨拶すると切島に近づきそこそこの力で胸を踏みつける。

 

「不死黒!?」

「おい!不死黒!!何してんだよォ!?」

 

 みんな優しい一騎の姿を知ってるからこの行動には流石に驚く。あの物間ですら驚き一騎を切島から引き剥がそうと動く程だ。

 しかし、一騎は皆の反応を無視して切島に冷めた目を向ける。

 

「切島いつまで寝ているつもりだ。とっとと起きろ」

「な、何言ってんだよ!!」

「落ち行け鉄哲。これも此奴の特訓だ?」

「はぁ?」

「お前らは個性特訓の内容聞いたな?」

「お、おう」

 

「此奴の特訓は硬化を維持しつつ俺の攻撃をを耐えて俺に一撃入れる事だ」

 

 昨日の昼頃に一騎は相澤に切島と尾白の面倒を見て欲しいと頼まれたのだ。その尾白は切島が吹き飛ばされた後に即行で気絶させられた。

 元々の切島と尾白の特訓は硬化した切島を尾白が尻尾でただ殴るといった物だった。

 

「・・・切島はもう無理そうだし俺の特訓からは離れるか」

 

 そう言って踵を返し既に起き上がった尾白の方に歩きだすと声が届く。

 

「ま待てよ」

 

 それは切島の声だった。彼はふらふらと立ち上がると今にも倒れそうなのにゆっくりと一騎に近づき両腕を硬化し構える。

 

「俺はまだまだいけるぞ!!」

「流石だな。じゃぁ来い」

「おう!!」

 

 元気に返事をすると切島は一騎の後ろをついて行くそのと一騎は振り返り拳藤と鉄哲に声をかける。

 

「因みに拳藤と鉄哲、お前らもこっち側だがどうする?」

 

 一騎の問いかけに二人は少し驚くもお互いに顔を見合うと一騎に向き直り頭を下げる。

 

「「お願いします!!」」

 

 

 

 ☆

 

 

 

「頑張れ~」

 

 ユエは一騎を相手に全力で挑みに行く切島、尾白、拳藤、鉄哲に水で作った小さな旗を振りエールを送る。

 現在ユエはなにもしてないように見えるが実際はかんかん照りのいま、皆が熱中症にならないように空高くに水の天井を作り日光を抑えていた。しかも水で旗を作ったり無数のパチンコ玉の大きさの水滴を周囲に飛回せていたりしている。

 

 そしてなんと今のユエが操っている水量は3.5㌧。これは体育祭で爆豪の戦いで操っていた水量と同じだが、今回普通に操れているのはあれから日々の鍛練があったのも有るし、今は戦闘や観客に被害が及ぶことや綺麗な水と汚水の仕分けやその他の事にリソースを割く必要が無いために3.5㌧もの水量を物ともせず簡単に操れていた。

 

「ふっ!」

「ッ!?」

 

 個性で巨大化した拳で殴り掛かられるも一騎は右手で殴り弾き返しもう片方の手は裏拳で外に弾き軽く足払いをして体勢を崩させると左手で拳藤の額に本気のデコピンを打ち込む。

 

「イッタ!!」

「拳藤!?」

「よそ見だ鉄哲」

「あっぁああ!?」

 

 拳藤が倒れたことに鉄哲は声を上げるもそれが隙となり、死角に回り込まれ横腹を思いっきり殴られる。個性を使ってる為に打撃はたいした事無いが、内部まで響く衝撃にうめき声を上げ吹き飛ばされる。

 

 横にいた切島は鉄哲が吹き飛ばされるのと同時に殴りにかかるが、即座に全ていなされ逆に硬化していても痛い一撃を何度も叩き込まれ最後は腕を掴まれ鉄哲に向けて投げ飛ばされ鉄哲と衝突する。

 最後に尾白が尻尾で回転を加えた打撃を撃ってくるが一騎は反回転して鋭い突き蹴りで跳ね返すとそのままもう一度突き蹴りを放ち腹に叩き込み尾白もやはり耐えきれず吹き飛ばされた。

 

 

 今は切島と尾白だけではなく拳藤と鉄哲の二人も増えて4対1で一騎と個性特訓のついでに戦闘特訓もしていた。

 二人の個性特訓は、まず拳藤は個性を使いひたすら一騎を殴る、鉄哲は切島と同じ事だった。

 

「どうした?四人なんだからまだ体力残ってるだろ」

 

 息1つ切らさず佇む一騎に対し切島達は地面に倒れ伏し返事も碌にできない程に疲弊していた。だがそれも無理は無い、だって今の時刻は9時58分やく10時。切島と尾白は4時間半、拳藤と鉄哲は三時間程ずっと大した休息も無しで行なっていた。

 

 因みに一騎は四時間半では無く、いつものように自主的に朝の鍛練して皆の朝食を作ったりの為に早朝の2時から起きて行動している為に八時間はほぼ動きっぱなし、・・・切島達の疲弊が当たり前で一騎の体力が化け物過ぎるだけだ。

 

「ま、まだまだ!」

「私達はまだやれる!!」

 

 尾白と拳藤は一騎ほどでは無くとも武術家、体力はある方で切島と鉄哲は根性で立ち上がる。

 

「おっよく立ち上がったな。じゃぁ俺は用事があるから今から切島と鉄哲で殴り合って拳藤と尾白で個性箇所で殴り合って特訓しててくれ」

「えっ不死黒は?」

「俺は昼餉の準備だよ。ほら、俺って合宿期間中の食事全部任されてるから」

 

「えっえぇええ」

 

 全員で50人もの人数分の食事を朝昼晩作るなんて大変な事をなんてことも無いように言う一騎に拳藤達は若干引いてしまった。

 だが一騎はこの食事管理を相澤達に言われたときちょっとした取引が出来て気に入っている。あと何気に料理が好きだし。

 

 

 ☆

 

 

 時刻10:25

 

「ふっふふ~♪」

 

 マタタビ荘の厨房で一騎は鼻歌を歌いながらみそ汁を少し味見し鍋の中をかき混ぜる。

 

「味も良い具合」

 

 火を消すと次に米の炊き具合を確かめると一瞬だけ動きを止めるが直ぐに作業を再開する。

 

「えい!」 

「おっと」

 

 作業しているなか、かわいらしい掛声とともに何かに抱きつかれるのを感じるも一切驚く事も無く普通に作業しながら口を開く。

 

「いきなりどうした葉隠」

 

 そう、以外にも抱きついてきたのはユエでは無く葉隠だった。

 

「全然驚かないね。もしかして気づいてた?」

「少し前からズッと見てたろ?」

「かなり気配消せたと思ったんだけどな~」

「あんなに目線向けられたら誰でも気づくよ」

「普通無理だと思うよ~」

「そうか?それより女の子が何時までも男に引っ付かないの」

 

 現在の葉隠は一騎に背後から抱きついて肩に顎をおいている体勢だったから離れる様に促すも葉隠は「え~」と遠回しに否定する。

 

「え~って」

「よくユエちゃんも抱きついてるから大丈夫だよ~」

「そうか?・・・そうかも。ならいいか」

 

 何故か納得してしまった一騎に葉隠れは内心「ちょろい!!」と驚くも直ぐに一騎が混ぜている牛の時雨煮に目が行く。

 

「今は休憩時間か?」

「うん・・・」

「・・・?」

「・・・」

「・・・」

 

「じ~~」

「遂に口で言った!? えっと食べる?」

「食べる!」

「じゃぁまって」

 

 一言返すと菜箸で時雨煮を小皿に取り箸を変えて少し時雨煮を冷ますと未だに肩に顎を乗せる葉隠の口元に持って行く。時雨煮と箸の先端が消えるのと同時に耳元から美味しそうに「ん~!!」といった声が聞こえお気に召したと分かり安心する。

 

「どう?」

「最高!味は少し濃いけど、これがまた疲れた身体に最高!!」

 

 葉隠は腕を振り全身で美味しさをアピールするのだが、いかんせん透明な所為でなにも見えない。

 

「これ絶対にご飯に合う奴だよ!」

「今日の昼は大量のお握りとみそ汁だよ」

「やったー!!合宿らしい!!・・・」

(これが合宿らしいものなのか・・・?)

 

 大喜びすると次第に大人しくなりじっと料理を見つめ出すのを感じ一騎はなんとなく予想は付くも一応声をかける。

 

「どうした?」

「おにぎり食べたい!」

「だと思った。ダメだよ」

「えー!食べたい食べたい食べたい!!」

「ダーメ」

「食べたい食べたい!・・・お兄ちゃん!!」

「ッ!??」

 

 自分をスルーし作業を再開する一騎に駄々をこねる子供の様に言い続けお兄ちゃんと言った瞬間に一騎が躓き転けそうになるのを見て悪戯を思いついた子供と同じ笑みを浮かべる。

 

「お握り食べたい!お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!」

 

 葉隠が思いついたのはお兄ちゃんを連呼する事だった。何度も何度もお兄ちゃんと連呼し最初は良かったが段々恥ずかしくなったり疲れたり面白くなり後半は言葉にならなくっていた。

 

「おにっん~!!」

「分った!作ってやる!つくってやるからこれ以上言うな!!」

 

 まだ言おうとする葉隠の口を無理矢理塞ぐ一騎に対し葉隠は勝ち誇った笑みを浮かべる。

 

「んんんん、んんんんん ん?」

「無理矢理喋ろうとするな、手を舐めるな。んで、なんて?」

 

「ぷはぁ~、不死黒君はお兄ちゃん呼びに弱いの?」

「いや、なんて言うかクラスメイトに言われるとこ~背中かソワ!ってする」

「へ~」

 

 一騎はエリによくお兄ちゃんと呼ばれていたからお兄ちゃん呼びには慣れてるが、クラスメイトに言われると背徳感を感じてしまい複雑だった。

 

「で、葉隠は何が食べたい?2個までね」

「何が有るの?」

「さっきの時雨煮に、昆布、鮭、梅そしてシンプルな塩お握りかな」

「じゃぁおすすめで!!」

「分った。座って待ってて」

「はーい」

 

 元気に返事を返し椅子に座るのを見た一騎は小さく溜め息をつくも口元は少し笑っていた。

 

 手を洗い軽く手に塩をかけ炊きたてのご飯を取り具材を入れ握りたくあんやみそ汁の準備してトレーに乗せる。

 

「ほら、お待ちどう。牛時雨煮と昆布だよ」

「わ~お!頂きます」

 

 お握り2つにたくあん2切れとみそ汁を出すと葉隠は元気に食べ始めるのを見て一騎も少し休憩しようと椅子に座り机頬杖を付きながら元気に食べる葉隠を見る。

 

「ん?どうしたの?」

 

 何故自分を見ているのか気になりお握りを持ちながら首を傾げ問いかけると、一騎は少し微笑んで答える。

 

「いや、作った物をおいしそうに食べて貰えるのって嬉しいなと思っただけ。葉隠、ご飯粒着いてる」

 

 理由を答えると、ご飯粒が宙に浮いてるのを見て指を差し教えると葉隠は「取って~」と甘える為に一騎は仕方無いな~といった感じでご飯粒を取りユエにしてあげているときの癖で食べる。

 

「ありがと~。・・・今日の夜ご飯は?」

「カレーだよ」

「カレー・・・ジュルリ」

「お握り食べながらよだれ垂らしてやがる」

「味見・・・したいな~お兄ちゃん」

「ハハ・・・・あ」

 

 味見と言う名の摘まみ食いをしたいと露骨に露わにする葉隠に一騎は呆れながらもクスリと笑うと有ることを思いつきニヤリと口角を上げる。

 

「もし食べたかったらまたバレないようにおいで」

「ほんと!?」

「本当だよ・・・透」

「やっ・・・え?」

「どうした?」

 

 初めて透と下の名前で呼ばれた事で葉隠は動きが止りニヤニヤと笑みを浮かべている一騎を見る。

 

「いま、下の名前で・・・」

「だってお前がお兄ちゃんと呼ぶなら俺も透を妹の様に接しないと」

「ッ//」

 

 頬杖を突きながら優しい笑顔を浮かべて言う一騎に一瞬ドキッとした葉隠は照れくさそうに「えへへ」と笑みをこぼしお握りを食べる。

 少しぎこちなさは残るも葉隠は一騎をお兄ちゃんと呼び一騎は葉隠を透と呼ぶ二人の姿は本当の兄妹の様だった。

 

「ご馳走様!!」

「お粗末様でした」

「あ、休憩終わっちゃう!?」

「行ってこい」

「うん!またね~」

「そうだ。一応いっとっけどお兄ちゃん呼びは人が居るときはするなよ誤解生まれるから。二人の時だけな」

「は~い!」

 

 元気に返事を返し葉隠は去ってゆき残った一騎は食器を洗い場に出し大量のお握りを作る準備を手っ取り早く終わらせる。

 

「後だいたい1時間半で12時か。急げば10合分のお握り作れるな」

 

 時計を見てから一騎は腕まくりして笑みを浮かべた。

 

「さっ!腕の見せ所!!」

 

 気合いを入れてランチラッシュも恐らくビックリする程の速度でお握りを作って行く。

 

 因みに一騎と葉隠が兄妹的な会話?している時、ユエは「妹の座のNTRを感知しました!!」と叫んでいたとか。

 そして、個性伸ばし場に行く時に葉隠は一騎との遣り取りを思い返していた。

 

(兄妹が居るってあんな感じなのか~)

 

 葉隠は擬似的な兄妹を楽しんでいた。

 彼女は一人っ子の為に兄妹に憧れていた、だから一騎が嘘でも妹の様に接してくれたのが嬉しく、たのしかった。

 

「♪~」

 

 ユエには悪いと思いながらも一騎と二人で居る時間を葉隠は楽しみになっていた。

 

 

 ☆

 

 

 昼食が終わりまた個性強化特訓が始まった。

 

「ほら鉄哲!個性を解いたら骨が砕けるぞ!!」

「まっ!まってぇえええ!!??」

「切島!尾白!拳藤!お前らも気張れよぉ!!」

 

「「「「ギャァアアアアアアア!!!!!!」」」」

 

 一騎の掛け声の後に4人の叫び声の後にガキーン!と鉄同士がぶつかった時のような音や肉を叩く音が響く。

 

「ワーオー。鉄哲さーん!頭に血がいって辛いでしょうが頑張って!! 切島さん!踏ん張って下さい!男気見せるとこですよ!!

 一佳ちゃん!尾白さん!真っ正面からでは無く回し受けをして上手いこと防御して下さい!!

 

 ユエが見ながらアドバイスするも全員それを聞いている暇は無かった、特に鉄哲は。 

 何故なら現在は一騎が鉄哲の足を掴みまるで鉄棒のように振り回し切島達をぶん殴っていたからだ。

 

「ふ~これぐらにするか」

 

 切島達が地に伏したのを見て軽く息を吐き一騎は鉄哲を手放す。手放された鉄哲は個性を解除し皆とお同じ様に地に伏し気絶する。

 

「どうしますお兄様。みなさんに水を掛けて起こしますか?」

「3分経ったらそうしよう」

 

 そんな会話をして本当に3分経つと水を掛けて起こす一騎達の姿を見て他の皆はドン引きする。当然マンダレイ達も含まれているしブラドは流石に止めようとするが、思い留まる。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「イッ!!」

「がッァア!?」

 

 拳藤は防御に徹しすぎて逆に隙が生まれた所を突かれ投げ飛ばされ、尾白は拳藤を投げ飛ばす際の回転を使われ強烈な回し蹴りを尻尾の防御の上からでも蹴り抜かれ吹き飛ぶ。

 

 

「うぉおおおお!!」

「おらぁあああ!!」

 

 切島と鉄哲は個性を使いタッグを組み一騎に挑むも簡単に逸らされカウンターを喰らうも2人は根性で耐える。

 

「やっぱり2人の根性は頭1つ抜き出てるな」

 

 一騎が2人の根性に感心しているときに2人はお互いに顔を見合い頷くと左右に分かれ左右から殴り掛かる。

 

「作戦は良いが無闇に打っても当たらないぞ」

 

 そう言うと一騎は2人の右拳の高さを瞬時に確認して鉄哲の方を向き2人の拳が頭部に来るように腰を落とす。

 すると正面から来る鉄哲の拳を左の回し受けで外側に逸らし腕を掴むのと同時に背後から来る切島の拳を首を左に傾けるだけで避けそのまま腕を掴む。すると――。

 

「フッ!」

 

 強く地面を蹴り、上半身を跳ね上がらせるとその反動で合気を使い鉄哲を後ろに切島を前に大きく投げ落とす。

 

「我流合気・三日月落とし」

 

 頭と足の上下反転し頭から地面に叩き付ける。

 完全にお陀仏になる一撃を受けるも2人は個性のお陰で死ぬことは無かった、のだが・・・・代わりに犬神家状態。

 

「セイ!!」

「お?」

 

 投げ飛ばされた拳藤は即座に体勢を整え走り出し一騎に接近して大拳の縦拳を放つが当然一騎は反応する。

 だが反撃したそのとき、拳藤は個性を解除し反撃が空振り一瞬隙を作れると攻撃を他に任せ背後に周り抱きつき腕を首に足を胴体に絡ませ裸締めをしかける。

 

(解かれる!!)

 

 しかし回した腕を掴まれ簡単に解かれそうになり拳藤は眉を顰め尾白に叫ぶ。

 

「尾白!」

「おう!」

 

 尻尾で地面を叩き推進力を得た尾白は一騎に急接近し、尻尾による攻撃をする。

 

「しっかり密着しろよ」

 

 しかし尾白の攻撃よりも早く一騎は動く。

 掴んでいた首に回された腕を手放し少し前屈みになり背中に拳藤との密着面積を増やすとバン!と強く自身の胸を叩く。次の瞬間

 

「がッ!?」

 

 拳藤の鳩尾に突如強烈な衝撃が襲いかかる。

 

 一騎がした技は『通波衝』。

 通波衝とは衝撃が物質を貫通してダメージを与える秘術。一騎はこれを使い自身の胸に発勁を打ち込みその衝撃を自分を貫通して背中に密着している拳藤で衝撃を爆発させた*1

 

 そして不意打ちの衝撃に拳藤は手足の力が緩み口から透明な液体を吐き一騎から離される。

 

「鉄山靠」

 

 肩からぶつかり拳藤を吹き飛ばす。そしてそのタイミングで尾白の横薙ぎの攻撃が来るが、それは鉄山靠をしたタイミングだったために空振りに終わる。ただ一騎がそうなるように調整をしたが。

 攻撃をからぶった事で明確な隙を作ってしまった尾白は横腹に突き蹴りを喰らい吹き飛ぶ。

 

「みんな動きは良くなってたよ」

 

 汗を拭い爽やかに言う一騎だが、その周りには頭から地面に突き刺さっている切島と鉄鉄、お腹を押さえて蹲る拳藤そしてのたうち回っている尾白と正に地獄絵図だった。

 

「じゃ、俺は夕餉の準備をしてくるね」

「お兄様、今日の夜は何ですか?」

「唐揚げトッピングのカレーだよ」

「やった~!」

 

 喜ぶユエの頭を撫でからマタタビ荘に向かう。そして残ったユエは拳藤に駆け寄り治癒を施し切島達に声をかける。

 

「みなさ~ん、大丈夫ですか?」

 

「「「お、お~う」」」

 

「一応意識は保ててますね。お兄様が調整したのかな?」

 

 ユエは水とタオルを四人に渡すと水で作った内輪で全員に風邪を送り休ませる。

 

「疲れたー!!」

 

 水を一気飲みした鉄哲が叫ぶ。

 

「お疲れ様です」

「不死黒に一撃も入れれなかった」

「でもみなさん良いところまで行ってますよ。このまま行けば」

「勝てる?!」

「お兄様の準備運動の相手にはなれますよ」

「準備運動相手かぁー!!」

 

 笑顔で言われた言葉に4人は悲鳴の様な声をあげ拳藤が代表して想った事を口にする。

 

「私等これだけやってまだ不死黒の準備運動相手出来てないの!?」

「ギリ成れてないね一佳ちゃん」

「え~4人がかりなのに」

「両手足に25キロ重りに明ちゃん特性50キロTシャツの計100キロ重り有りですよお兄様」

「・・・」

「わかってたけどここまで不死黒との差があるのか」

 

 4人は落胆するとユエは立ち上がり両腕を伸ばしクルクルと少し回ると4人の方を向く。

 

「でもそのお陰で皆さんは他の人達と違い個性特訓だけでは無く戦闘訓練も出来てるんですよ?」

 

 その一言に倒れ込んでいた皆は起き上がりユエを見る。

 

「このたった1日で皆さん個性の成長を実感しましたよね?耐久度を初め一佳ちゃんは大拳するときの速度、尾白さんは尻尾の硬度と操作性、切島さんと鉄哲さんは硬度と耐久度上がりましたよね。

 それになにより、皆さんの個性ではもし戦闘になれば接近戦が主になります。お兄様との模擬戦闘でその経験値もUPですよ」

 

 ユエの言葉を切島達は噛み締める。

 確かにこのたった1日でかなり成長した。個性はもとより受け身や防御、連携、戦闘知識とかなりの物が成長した。

 

「確かに不死黒君との戦闘はプールで普段使わない筋肉を使ってるのを実感出来るのと同じぐらい、実感できて身になってるよ」

「うん」

「あぁ」

「そうだな」

 

 尾白の言葉に切島達は頷き良い表情になる。

 

「それじゃみなさん、個性特訓始めますよ!このまま行けば林間合宿最終日には重り無しのお兄様相手に1分は持ちこたえられるかもしれませんよ」

 

 ユエの言うとおりなら今の自分たちは重りを外した一騎が相手だと1分も保たないと。そのことに普通なら落ち込むはずなのに、切島達は逆にテンションが上がる。

 

「よし!それじゃ不死黒に重りを外させれるように頑張ろう!!」

 

「「「おぉー!!!」」」

 

 拳藤の言葉に切島達は拳を上げモチベーションを更に上げる。そんな4人の姿を見てユエは小さく笑い口を開く。

 

「では頑張って下さい。怪我は私が特別に治してあげますので、思う存分高みを目指してください」

 

 

 ☆

 

 

 

 そして時は流れ午後5時。

 

 キャンプ場の料理場に集合したAB両方の組はすでにボロボロでクタクタ状態だった。しかし次の瞬間に鼻腔を擽るスパイスや香辛料の香り更に揚げ物の匂いに全員が元気になりキッチンに集まる。

 

「よぉ~みんなボロボロだね。直ぐにご飯は出来るから手を洗ってこい」

「お兄様、注ぐの手伝います!」

「不死黒、アンタばかりに遣らすわけも行かないからあたしも手伝うよ」

 

 手伝いにユエと拳藤が名乗り出て2人は急いで手を洗い戻ってくると一騎はお礼を言い何を手伝って貰おうか考える。

 

「う~ん。じゃぁ俺がご飯盛るから」

「私はルーですね!液体操作の見せ場です!!」

「あはは、ここが見せ場なのかな?まぁ私は唐揚げのトッピングかな。一人何個?」

「3個だよ。唐揚げは5キロ分作ってるから大丈夫でしょ」

「りょーかい。このポテサラは?」

「そのポテサラはお替わり分だよ。時間が余ったから人数分の盛り付けは終わってる」

「ほんと凄いな不死黒は」

「お兄様はランチラッシュさんにスカウトされる位には料理の腕は凄いんですよ」

「へ~」

「ユエ、ルーは辛口と甘口の2種類があって右が甘口で左が辛口だから」

「入れる前にどっちが良いか聞きますね!」

「ありがと。じゃぁやるか!」

 

「「はい!!」」

 

 並んでる全員出席番号順に皿を持ち一騎にご飯、ユエにルー、拳藤に唐揚げを入れて貰いポテサラを持って席に付き食べ始める。

 

「美味し~!!」

「うまい!!」

「流石は不死黒君だ!!」

「マジで店出せるぞ!!」

「唐揚げ外はカリッと中はジューシーでもう最高!!

「ランチラッシュにスカウトされてるって噂本当なのか?」

 

 みんなカレーの美味しさに歓喜の声を上げる。あの爆豪ですらカレーを一口食べただけで「うめぇ」とつい言葉にしてしまう程だった。

 そして皆の喜ぶ姿を見て一騎は笑みを浮かべながら唐揚げカレーを用意する。

 

「みんな~!まだまだカレーも唐揚げもポテトサラダもあるからお替わりたくさんしてね!!」

 

 大声で声をかけると一騎は席に向かず山の方を目指しあるきだす。そのとき思い出したかの様にまた口を開く。

 

「あと、デザートはフルーツヨーグルトだよ、それとうどんもあるからカレーうどんも作れるよ~」

 

 などといい本当に山に入っていく。その姿にユエは疑問に思うも大丈夫でしょと思いカレーを頬張る。

 

「ねぇ、私達うどんなんて用意してなかったわよね?」

「そうね。・・・どうやって準備を?」

 

 マンダレイとピクシーボムが一騎のうどん発言に疑問を思い首を傾げているときにラグドールがカレーの具材のジャガイモをスプーンにのせた状態で答える。

 

「不死黒っちはジャガイモで作っていたよ~」

「は?」

「え、それホント?」

「ホントにゃ!」

「うむ!我もジャガイモからうどんを作ってるのを見たぞ」

 

「え、えぇ~・・・」

「あの子、料理人として生きていけるじゃん」

 

 マンダレイとピクシーボムは一騎の料理の腕にドン引きしてしまった。

 

(何か料理の腕が女として負けた気がする)

 

 

 

 ☆

 

 

 

 皆が美味しくカレーを食べているときに一騎は山のそれなりに高いところに行くと洸汰が崖の近くに腰を下ろしていた。

 

「やぁ洸汰君」

「!?」

「ここは良い景色だね」

 

 いきなり話しかけられた洸汰はビクッと立ち上がり、慌てた様子で言い返した。

 

「て、テメェ、な、なんでここが分かった!」

「足跡が有ったし気配でも直ぐに分ったよ」

「は?意味わかんね」

 

 呟いた後に、舌打ちをして座り直す洸汰をみて一騎は洸汰に近づくと隣に晩ご飯の乗ったトレーを置いて少し離れた所に座る。

 

「いらない。言っただろ、つるむ気はないって。俺の秘密基地から出てけ」

 

 秘密基地、自分または友達との特別な居場所。

 それに一騎は自分なら何処かな?と考え真っ先に頭に浮かんだのは何時も鍛練で使っている山の鍛練場だった。

 

「俺はあの鍛練場かな?」

 

 ぽつりと呟いた一騎の言葉に洸汰は少しイラっとしたのかギロリと睨みつけた。

 

「個性を伸ばすとか、張り切っちゃってさ、気味が悪い。そんなに力をひけらかしたいのか」

「別にひけらかしたいからでは無いと思うけど・・・」

 

「頭イカレてるよみんな。バカみたいにヒーローとかヴィランとか言っちゃって殺し合って。個性とか言っちゃってひけらかして気色悪い」

 

 憎々しげに言う洸汰の言葉を聞いて一騎は少し黙り込むと右眼の傷を撫でる。

 この時一騎の脳裏に過ぎったのはUSJで八百万を守った時の記憶、そしてエリクから聞いた脳無殺害の話しだった。

 

「確かに馬鹿みたいにヒーローやヴィランとか言って殺し合ってるけど、そのお陰で助かった命もあるよ」

「あぁ?」

 

 言われた言葉に洸汰は一騎を睨む。

 

「洸太君の親、ウォーターホースだろ?」

「ッ!?・・・マンダレイか!!」

 

 親を言い当てられたことで洸汰は驚くも直ぐにキリッと表情を鋭くし言ったであろう人物の名を言う。

 

「・・・」

 

 しかし一騎の表情は複雑な顔になるだけだった。

 一騎が洸汰の親をウォーターホースと知ったのはユエから聞いたからだ。

 

 ユエは一騎と違い世間のニュースもしっかり見ているうえにウォーターホースを殺したヴィラン『マスキュラー』は公安の中では一級危険人物として警戒されているのを知っていた。その為に洸汰の親のことを一騎は軽く聞いていた。

 

「まぁ出所は内緒かな」

「なんだよ、それ」

「洸太君はご両親も嫌い?」

「当たり前だ!なにが名誉の死だよ!なにが素晴らしい行いだっただよ!!くだらねぇ!!」

 

 両手を力いっぱい握り叫ぶ洸汰。その姿を見て一騎は何かを決めたかのような顔をすると目を伏せ前を向く。

 

「確かに下らないな」

「は?」

 

 一騎の口から出た言葉に洸汰は驚くも一騎はお構いなしに言葉を続ける。

 

「幼い子を残して死ぬって。確かに名誉でもなんでもない最低だな」

「な、にお」

「確かに君が嫌っても仕方無い。最低過ぎて親しっか――ッ」

 

 親失格。そう言おうとした瞬間に一騎の言葉を遮るように大量の水を頭からかけられびしょ濡れになると洸汰の叫び声が届く。

 

「ぱ、パパとママを侮辱するなぁ!!」

 

 洸汰の叫びに一騎は少しの沈黙の後に「おい」と声を掛ける。その言葉に洸汰はビクッと肩を跳ね上がらせ近づいてくる一騎をただ見ていることしか出来なかった。

 そして一騎が手を伸ばしたのを見て洸汰は咄嗟に目を瞑る。しかし

 

「え?」

 

 痛みは無く、只優しく頭を撫でられているだけだった。その事に洸汰は困惑し顔を上げると悲しく申し訳ない表情をする一騎の顔をみる。

 一騎は撫でるのを辞めると目線を洸汰に合わせると優しくはなす。

 

「洸太君、今の君の叫びは君がご両親を大事に思い愛しているからだ」

 

 先の洸汰の叫びにこの水の攻撃は確かに両親を侮辱された人がする物だった。

 

「ヒーローを目指す俺を、俺達を理解出来ない気色悪い人種と思い嫌いうのも良い。ヒーロー全員を下らない連中と思っても良いけど」

 

 一騎は親を大事と想った事は・・・いや、思えたことは無い。だからこそ親を大事と思ってる洸汰の気持ちが分った。自分には無い物だからこそ嫌というほど無い物を理解している、理解させられている。隣の芝は青いというべきか。

 

「ヒーローは嫌いでも親は嫌いにならないであげてくれ。親を大事に思えるのはとても羨ましいことだから」

 

「・・・・・!!」

 

 向けられる目はとても優しく温かい物で洸汰は驚くが直ぐにギッリ!と睨み声を荒げる。

 

「うるせぇ!!もうここから出てけよ!!」

 

 肩に置いた手を払いのけられ少し困った顔を一騎はしてしまうも直ぐに優しい表情になり立ち上がる。

 

「俺は帰るけど余り遅くならないうちに帰っておいでね。あ、これ懐中電灯ね」

 

 カレーの横に懐中電灯を置いて一騎は戻りその後ろ姿が見えなくなるまで睨み続け見えなくなると懐中電灯をてに取る。

 

「点かないじゃん」

 

 懐中電灯は濡れて点かなかった。

 

「・・・」

 

 置かれたカレーを少し見てから洸汰は一口食べる。

 

「・・・・ウッ・・・・・・・グス」

 

 懐かしい味に一口食べるごとに涙が流れる。

 

「・・・なんで」

 

『洸汰今日の晩ご飯はカレーよ』

 

「なんで母さんのカレーと同じ味がするんだよ」

 

 もう二度と感じることの出来ないと思っていた懐かしい味に洸汰は涙を流しながらカレーを食べ続ける。

*1
失敗したら自身の心臓が止っていた





今更ですが、戦闘描写ホント下手だな私。ムズい!!

次回「林間合宿③」


それでは、期待せずにお待ち下さい。
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