「ご機嫌よろしゅう雄英高校!!我ら敵連合開闢行動隊!!」
「敵・・・連合!!」
蜥蜴男こと敵名スピナーは大手を広げ告げるとその名を一騎は怒りを滲ませた表情で呟く。
「この子猫ちゃんどうしようかしら。頭、潰しちゃおうかしら?ねぇえ、どう思う?」
「なさぬは! っ!?」
「させるか!」
ピクシーボブの頭を潰そうとするオネエヴィラン、マグネに対して虎がさせまいと動こうとしたそのときには既に一騎がマグネの直ぐ側にいた。
(この子動画の通り凄い運動神経!?・・・けど!)
「うっ!テメェ!?」
鉄砕を繰り出そうとした瞬間頭がいきなり後ろに引っ張られる形になり大きく仰け反るとそのまま後ろに吹き飛ぶ。
しかし驚きはするがタダでは終わらない。後ろに吹き飛ぶ時に向けられていたサポートアイテムと思わしき巨大磁石を全力で蹴り飛ばす。
(体勢が悪すぎた。腕を持って行けなかった!)
(この子あんな体勢でこんな蹴りを打てるの!?それに子猫ちゃんを取られたわ!!)
「お兄様!」
「俺は大丈夫」
ユエ達の元まで吹き飛ばされた一騎は抱きかかえたピクシーボブを丁寧に下ろすと姿勢を低くし戦闘態勢を取る。
「待て待て!!今この場において生殺与奪の権利は―――ステインの仰る主張に沿うか否か、だ!」
「ステインの意思に当てられた者か!!」
スピナーの言葉にステインと深い関わり合いが有る飯田が反応するとスピナーは布にくるまれた者を手に取り一騎に向ける。
「そうだ!そして俺はお前に用がある! イノベーター、いや不死黒一騎!保須市にてステインに終焉を与えた男!申し遅れたが俺の名はスピナー。―――彼の夢を紡ぐものだ」
名乗りながら布を取り抜刀する。そこにあったのはあらゆる刃物を無理矢理繋ぎ合わせて作り上げた悪趣味な大剣だった。
歪な大剣やそれを軽々しく振るうスピナーに緑谷達は脅威を感じるが、一騎はそんなこと微塵も感じず言い返す。
「知るか!こちとら人生初めての林間合宿を滅茶苦茶にされて怒ってるんだよ!!こんな所まできや・・・・がっ・・・・・・・て・・・・っ!!」
言い返すもこの場にヴィランが居る、しかも言葉からして他の場所にも居ると一騎は考えだんだん顔から怒りの表情は消え、青ざめていく。
(そうだ!今日も洸太君はあの場所で夜ご飯を食べてたしマタタビ荘に戻ったのを見てない!!マズイ、マズイマズイ!!)
もし洸太君がヴィランと接触したら!!と一騎は考え顔が青ざめマンダレイの方を見ると彼女も洸汰のことを考えていたのか悲痛めいた表情を浮かべていた。その顔を見て一騎は叫ぶ。
「マンダレイ!俺とユエに戦闘と個性の許可を!」
「え?どういう「居場所に心当たりがある!」な!け、けど・・・」
本当に許可を出し何かあれば責任を取れないと考え迷ったそのとき一騎が叫ぶ。
「早く決めろ!洸太君が死んでも良いのか!!」
「っ!」
いまは状況が分らず一分一秒を争う事態。もしかしたら洸汰は無事かも知れないが、そんな事は今のマンダレイ達には分らない。
つまり悩んでいる暇なんて無い、一騎の言葉で覚悟を決めたマンダレイは声を上げる。
「不死黒君、ユエちゃんの両名をマンダレイの名の下に戦闘並びに個性使用を許可します!お願い洸汰を守って!」
「了解」
「分りました」
マンダレイは宣言すると虎と共にスピナー達と戦闘を始める。そしてマンダレイの言葉を聞いた一騎は即座に重りを全部外し皆の方を向く。
「これから委員長命令だ!飯田、お前が引率して直ぐにマタタビ荘に戻れ!全員、列からの離脱は絶対に許さん、速やかに戻れ!いいな!!」
一騎の命令に全員が頷いて返事を返す。
「行くぞユエ!全力で走る!!」
「はい!!」
ユエが返事すると一騎は全力で走り出しユエも赤鱗躍動を使い一騎の後を追いかけ走り出す。
二人の姿が瞬く間に森の闇の中に消えると飯田は声を出し皆を連れてマタタビ荘に戻る。
☆
「ユエ!洸汰君を保護出来たらそのままマタタビ荘に戻ってくれ!」
「分りました!でもお兄様は」
「俺は他の奴らの保護にい、く・・・・・「お兄様!!」 分ってる!!」
洸汰の元に向かっている途中、一騎達の目の前にガタイがよく金髪をオールバックにしている人物が現れ二人は足を止め戦闘態勢を取る。
「貴方も居るなんて、ハンター!!」
「ハンター、お前が・・・・!」
ユエの言葉に一騎は少し驚きの表情を浮かべるとハンターは猛攻な笑みを浮かべ告げる。
「そうだ。俺の名はハンター、
「天童式戦闘術!」
ハンターが名乗っていても一騎は関係無く一瞬で距離を詰め奇襲を仕掛ける。
「1の型5番!焔火扇!!」
一騎の奇襲は成功しがら空きになっている腹に渾身の右ストレートが入った!――はずだった。
「な!?何だこれは!!」
拳は寸での所で蒼白い薄透明な何かに受け止められていた。それは余りにも硬く一騎の拳撃でも罅すら入らなかった。
「マキシマムペイン」
「なっ!?」
「お兄様!!」
拳を防いだバリアの様な物はハンターが指を鳴らすと扇状に広がり一騎を軽々と跳ね返し吹き飛ばした。
しかもその勢いで一騎は完全に隙を晒すこととなる。援護に入ろうとユエは鮮血を打とうとするも一騎がハンターに重なり手が出せなかった。
(ヤバイ体勢が悪い!このままじゃ――ッ!?)
右手が弾かれ大きく体勢を崩したことで一騎は危機を感じハンターに目を向けると彼は一瞬で一騎の眼前に現れる。
(は?速すぎる。なんだ今の速度は、明らかにエリクより速い。まるで瞬間移動!! マズッ追撃が!)
「オラ!」
「おっ!確か蹴り足ハサミ殺し、だったか?」
伸びたハンターの腕を右肘右膝でハサミ受け止めるが。
「残念」
「!!」
一騎の力でも止めきれなかった。
「エンドレススクリーム!!」
「グッ!ガハッ!!」
ハンターの掌底が一騎の腹に当てられたその瞬間!まるで槍で貫かれたかのように腹を貫かれ周囲に血肉をまき散らしながら倒れる、ことはなく膝を着くだけで耐える。
「あっあぁあぁあ(なんだ今の攻撃は!不壊が効かず一瞬で貫かれた!ヤバイこれ死ぬ怪我だ)」
「お兄様!!」
「大丈夫、致命傷だ。ゴフッ」
「それは大丈夫と言いません!!」
悲鳴を上げ駆け寄るユエに一騎は大量に血を吐きながらも笑顔で答えるが、一切安心できる者では無くユエは迅速に一騎を治癒する。
「悪い悪い。お前が予想以上に速かったから思わずイマジナリー・ギミックを使っちまった」
「イマジナリー・ギミック?」
「あぁ簡単に言うと斥力の個性だ。あ、そうそうあと今回の俺の目当てはお前じゃ無いぞ」
「どう言う意味だ」
怪我を完全に治して貰い殺気を込めて睨む一騎に対してハンターはあっけらかんとした表情でユエを指さす。
「妹ちゃんの成長を見て来てとエリザベートに頼まれてな。あ、エリザベートは・・・きっとエリクが教えてるから説明は大丈夫かな」
「ユエが目的」
「お兄様先に行って下さい。私なら大丈夫です」
「・・・わかった!気を付けろよ」
「はい!」
僅かに悩んだ後に一騎はまた全力で走り出そうとした瞬間、ハンターが思い出したように指を鳴らす。
「穴空いて血塗れの服だと色々大変だろ」
ハンターが指を鳴らした直後に一騎の敗れた服は元に戻り、服に染み付いた血も完全に臭い諸共消える。
「誰の所為だだれの!!!!!」
思わず一騎は突っ込んでしまうが直ぐに斥力とは違う別の個性を使ったことに気づき驚愕の目でハンターを見ると彼はただニコ~と笑みを浮かべる。
「速く行かないとあのガキ死んじゃうぞ」
その反応に舌打ちし走る。
そして横を一騎が通り過ぎるとハンターは「俺達にとっては雑魚だが端から見たら強い奴いるからな~。あと脳無もいるぞ~」と声を掛け大きく手を振り見えなくなると狂気の笑みを浮かべユエの方を向く。
(予想通り一騎を傷付ければ妹ちゃんは怒ったか。楽しもうか)
「お兄様を傷付けたんです。覚悟は出来てますね?」
――赤血橾術 赤鱗躍動・載
(載、か。エリザベートからの情報では赤鱗躍動の上位技だったか?)
ハンターはニヤリと笑いユエは走り出す。
☆
「普通の道では遠回りになる。崖を駆け上がるか!」
崖に近づくにつれ明らかに洸汰では無い大きな影を見つけ一騎は最悪な結果を想像し青ざめるも気配探知では洸汰がまだ生きているのを知り更に速度を上げ崖を駆け上がる。
そして登りきった所で見たのは黒ローグを纏った大男が洸汰を殴ろうとしている瞬間だった。
「させるか! 橾流ノ型・柳」
「お?」
「からの、紅人流・天地返し」
「おぉおおお!」
洸汰と大男の間にギリギリ入れると振るわれた拳に手の平を合わせると『柳』で大男の力を暴走させ力の流れを乱すと腕を取って関節を極め投げ飛ばすと大男を地面に叩き付け直ぐに洸汰を抱え後方に跳ぶ。
「大丈夫か洸太君」
「なんで、お兄ちゃんがここに・・・?」
「君を助けるため。それ以外に理由は無いよ」
一騎が居ることに理解出来ない洸汰は唖然と一騎を見上げ呟くと一騎は当たり前とでも言うかのように答え洸汰の頭を優しく撫でてから立ち上がり大男の方を向く。
大男を見る一騎の顔は険しさを帯びていた。その理由が柳を使ったときに大男の体幹を崩しきれなかったことが原因だった。
「とっとと起きろよ。どうせ大したしたダメージ入ってないだろ」
「かっは!いいねぇ~!!」
先の攻撃は無かったかの様に大男は立ち上がると着けていた仮面が取れ義眼の顔が露わになると大男はゲタゲタと気色悪い笑みを一騎に向ける。
「ってお前、死柄木の殺害リストに有った奴じゃねぇか!マジでついてんなぁ、俺はよぉ!」
「彼奴なら俺に死んで欲しいと思うだろうな(てかこの顔、血狂いマスキュラーか。つまり洸太君の――)」
「なあ!お前、爆豪勝己と物間寧人って奴らが何処にいるか知ってるか!知らねぇよな!!よし、なら話しは終わり!殺し合おォ!!!」
マスキュラーは言うやいなや飛びかかり拳を振るうが、一騎は洸汰を即座に抱きかかえ後方に跳び攻撃を避けると洸汰を降ろし洸汰に被害が行かないようにマスキュラーに接近し攻撃を捌きながら思考を巡らす。
(なんで爆豪と物間を狙ってる?爆豪はヴィランぽい言動が多いから分るが物間は何だ、個性か?・・・いや、今はいい今はどうするかだ。
洸太君を連れて逃げるのは容易だが此奴の目的は俺だよな。なら追いかけてくるし、もし此奴が他の人に会うと危険だ。多分先生達ですら一人でやるのは危険だろうし・・・・・ッ!気温が下がった!?)
「血ィ!見せろや!!」
「あ、しまった」
簡単に攻撃を捌いていたが急に気温がガクンと落ちたことに一騎は気がそれたところにマスキュラーの両足が地面から離れるほど強烈な拳を喰らい、吹き飛ばされ崖に叩きつけられる。
☆
時は少し遡り一騎が先に行ったあとユエはハンターと戦闘を開始していた。
「赤血橾術・刈払」
(・・・刈払は恐らく囮だなメインは肉弾戦)
ユエの作戦を理解したハンターは即座に虫を払うかの如く刈払を払い潰し突き出された拳を軽く受け止める。
「いい一撃だ。次は何だ?」
「グッ!」
手を放すと同時に繰り出す強烈な膝蹴り。ユエはギリギリ腕に
だが、腕を血鎧と不壊で硬めたにも関わらず腕の骨が折れた所為かお陰か意識を失うことは無かった。
「わるいわるい。凄く軽くて力加減ミスった――」
「赤血橾術」
「ん? なっ!?」
「
近づこうと一歩足を踏み出した瞬間、破裂音と共にハンターは足に来た違和感で視線を下げると足先が消し飛び脛辺りまでズタズタになった右足が目に入る。
何故こうなったのか分らないが、血の臭いを感じ何かされたことは分かりハンターは楽しそうに笑う。
(初めて使ったけど上手くいった。僅かに隙を作れた)
ユエが使った新技『血爆』は百斂の様に手の中で血液を加圧するのとは違い外部で血液を限界まで加圧し目的の位置に接地し外部から更に圧が掛かると地雷のように爆発する技。
「攻めるなら今!来い、焔丸! 血刀・参ノ絶刀」
血の太刀を作りだし間合いに入ると抜刀の構えを取り力強い一振りを放つ。
「血桜!!」
その一太刀は途轍もない威力から放たれたうえ、焔丸は血刃と同じく太刀状に輪郭を定めた血液のためチェーンソーまたはウォーターカッターのようになり対象を必ず切り裂く――はずだった。
(・・・・・・う、そ。 今私は何を斬った?人体?違う今の感覚、岩や鉄ではない・・・・・・もっと硬い、なにか。 焔丸の形状が歪んだ)
「俺を前に思考停止か」
「!!」
異常なほどの強度に焔丸が通じないという初めての事に思考が纏らずにいた所を突かれ眼前にハンターの拳が迫る。
「血鬼術・跋弧跳梁!」
「うおっと」
焔丸を崩し血の天蓋を作り攻撃をギリギリ防ぐ。 眼前で血の天蓋とハンターの拳がギリギリと耳を塞ぎたくなる甲高い音と共に火花を散らし攻め合うが、3秒程でユエが落ち負けまたしても吹き飛ばされる。
(くっ!何なの硬すぎる!・・・でもハンターの皮膚が黒くなった箇所の硬度が上がるのだけは分った)
「なぁお前の攻防両方殺意高くないか?」
「それで掠り傷1つ付いてないの、に・・・・!(な、なに?気持ち悪い)」
ハンターの言葉に文句を言っているとき突如襲う目眩、息切れ、怠惰感、そして気分の悪さに膝を着き口元を抑え何が起きてるのか直ぐに分る。
「貧血だな」
ハンターの指摘通り血の攻撃ばかりしていれば当然貧血になる。その為に液体操作を切り治癒を使い増血して貧血を治すとユエは勢いよく立ち上がりパン!と手を合わせ百斂を始める。
「赤血橾術・百斂。穿血や超新星そして血爆?を行なう為に必要な行為だが、溜がデカすぎないか」
「貴方は私の成長を確かめるのが目的。ならこの間に攻撃することは無いでしょ?」
「仰るとおり。・・・溜は終わったな」
「えぇ、最大出力! 穿血!!」
一度も人に対して使ったことの無い穿血最大出力。その初速は音速をも超え非常に高い貫通力を有していた。
そんな強力な一撃に対してハンターは焦ること無く呟く。
「
次の瞬間、音速を越えている穿血の動きが徐々に遅くなり遂には完全に止る。だが止ったのは穿血だけでは無く落ちる木の葉に穿血の風圧で揺れ動く木々、そして音すら完全に止まっていた。
(穿血の最大出力・・・確かにこれなら俺を貫けるが、避けたりするのも簡単に出来る。まぁそれじゃぁ面白く無いよな・・・・此所はこうしてみるか)
左手を挙げると思考加速を解除する。すると直ぐに全ての動きは元に戻り穿血は瞬く間にハンターの左手の平を貫く――はずだった。
「!? なんで穿血が!」
最大出力の穿血はハンターの手を貫けない。
(なんで、なんで!穿血が、なんで貫けないの!?・・・・・・・・・煙?・・・違う蒸気、まさか!?)
「そ、炎系個性の獄炎。穿血は俺に届いてない」
そう届いていない。穿血はハンターの手の平に触れる数㎝手前で完全に蒸発していた。その事に気づくも既に遅くもう穿血に使う血が無くなりかけていた。
(このままじゃ「血が無くなる」っ!!?)
「って思ってるだろ?」
「な、んで」
「安心しろ」
呟いた瞬間、穿血の先端から猛スピードで凍り付きあっという間にユエを含め周囲全てが凍り付く。
「
「ッ!」
一瞬にしてハンターを中心に周囲十数メートルが氷に覆われキラキラと月明かりを綺麗に反射していた。
「さ、寒い。体が凍り付いて下手に動けば割れる・・・・・・・けど!」
首から下が凍り付いたうえ気温がマイナスまで下がった所為で信じられない速度で体温を奪っていく。しかしユエにはそれを攻略する術がある、それは赤鱗躍動で体温を限界まで上げ氷を溶かすことだった。
「頑張るね、でもその必要は無いよ」
体温を上げ頑張って氷を溶かすユエを嘲笑うかの様に指をパチンとならし氷を全て消し去るハンター。
氷が消え去ったことで体が自由に動くようになりユエはガクンと体勢を崩し膝を着く。そして氷が消え去ったからといって気温までも元に戻ったわけでは無いために手が寒さで震える・・・・そう、寒さで震えているだけだ。
「なんのまねです?」
「言ったろ?お前の強さを調べて欲しいと頼まれてると」
「私の強さをもう知ったと?」
「あぁ今のお前はたいした事は無い。弱い、そのままじゃ一騎に置いて行かれるぞ」
「ッ」ギリ
最後のひとことにユエは奥歯を砕くほど強く噛み締めると右手首を大きく噛み千切り掲げる。
手首から吹き出した血で顔が汚れようと気にしない。
「血龍」
吹き出した血は直ぐに全て天に翳した右手の上に集まりだす。
「竜血神じゅ「辞めな」 っ!?
血の球体が龍の頭部を作った途端に崩れ落ち地面に落ちた血は直ぐに地面に吸収され消えていく。
膝を着いてユエは自身の血が制御下から離れたことに驚愕する。
「何故、個性が!?」
「俺は数多の超能りょ――個性を持ってる、当然血液や液体を操る物もな。練度も上だぞ」
「クッ」
「それじゃお前の強さも分ったし俺は行くよ。他に確かめたい奴いるし」
(他に確かめたい奴?)
それだけいうとハンターは音も無く一瞬で消える。残されたユエは血が滲む程唇を強く噛むが直ぐに大きく深呼吸を繰り返し木を落ち着かせゆっくりと立ち上がり一騎の走って行った方を向く。
「行かなきゃ、お兄様と洸太君の所に。・・・・大丈夫お兄様に置いて行かれないために私は努力した。何よりお兄様が勝手に居なくなることなんて無い・・・・・はず」
精神的な所為か肉体的疲労か足が重くなる。しかしそれを無視して無理矢理動かし歩きだす。
☆
「ビックリした。完全に油断したな」
崖に叩き疲れた一騎は何も無かったように起き上がり首を動かしボキボキと音を鳴らす。
その姿を見たマスキュラーは狂気の笑みを深め足に筋繊維と思しきものが溢れ出し纏う。
「ハハ!いいサンドバックじゃねぇかァ!!」
個性は『筋肉増強』。
自らの筋繊維を増幅したり、体の内外に纏う事で筋力を強化する増強系の個性。単に攻撃力や速度を高めるだけでなく、大量の筋肉で体表を覆えば肉壁にもなり攻防ともに優れていた。
笑いながらマスキュラーは一騎に急接近すると顔面を潰そうと前蹴りを繰り出す。しかし一騎は『流刃』✖『回し受け』で前蹴りを逸らし横に跳びマスキュラーから離れる。
はずだったが、マスキュラーは即座に体勢を変え横に跳んだ一騎に殴り掛かるも一騎はアクロバティックなバク転で後ろに下がり攻撃を避けていき、最後に大きく跳びマスキュラーから距離を取る。
「なんだよその動き!流石はエリート校生徒だなぁ、次はモット強く行くぞぉおお!!」
地面を踏み砕くほどの力で先ほどより速く走り出し瞬く間に一騎に接近し拳を振るう。それを一騎は簡単に『柳』で逸らそうとするが出来なかった。
「オッラァ!」
「っ!グッ」
伸びきった腕を振るい一騎を殴り地面に叩き付ける。
「あのガキを助けに来たんだろ!どうした!」
「あぁ助けるさ!瞬鉄・爆!」
跳ねるように起き上がると振り下ろされた拳を避け肘打ちで顎をカチ上げると着地と同時に体をクルリと回転さして回転の勢いを付けた拳を振るう。
「轆轤鹿伏鬼!!・・・チッ」
マスキュラーの腹を捕らえるもゴムタイヤを殴った様な感覚に一瞬舌打ちし次の攻撃を避ける。
そしてマスキュラーは上半身に筋繊維を纏い一騎に向かい走り出す。
「俺の個性は【筋肉増強】!!皮下に収まんねぇほどの筋線維で底上げされる速さ!!そして、力!!何が言いてぇかって!?自慢だよ!」
「速度とパワーが上がった」
両腕を交差して『不壊』と『
「これも耐えんのかぁ!!」
(芯は無く出鱈目に振るってるだけだから力は強いがエリクのに比べるとましだな)
狂気の笑い声を上げながら拳を振るうマスキュラーにたいし一騎は内心エリクの拳に比べるとましなことに気づき次の反撃を考えていたのだが、
「あ?」
マスキュラーの側頭部に石が投げつけられた。その事に一騎はマズイと表情を歪めマスキュラーは動きを止め石の飛んで来た方、洸汰に目を向け睨む。
睨まれた事で洸汰は怯えて肩を跳ね上がらせるも目に涙を浮かべ叫ぶ。
「……ウォーターホース……パパも……ママも……そんな風にいたぶって殺したのか……!」
洸汰の叫びにマスキュラーは更に笑みを深くし一騎に完全に背を向け洸汰の方を向く。
「……おいおいマジかよ。あのヒーローの子供かよ、運命的じゃねぇの…。お前の両親ってもしかしなくてもウォーターホースだろ?もちろん覚えてるぜ。忘れるわけねぇ。この俺の左目を義眼にした二人だ」
義眼を撫でながら答えるマスキュラーに洸汰は呟く。
「おまえのせいで……おまえみたいな奴のせいで!いつもいつもこんなことになるんだ!!」
「………ガキはそうやってすぐ責任転嫁する。よくないぜ?実際、俺はこの眼のこと恨んじゃいねぇ?俺は"殺すやりたいこと"をやって、あの二人はそれを止めたがった。お互いがやりてぇことをやりてぇようにやった結果さ悪いのは出来もしねぇでやりたいことをしようとした―――テメェのパパとママさ!! ッ!!?」
洸汰の言葉にそう言い返しマスキュラーは洸汰を殴ろうとしたその時、背後から感じた強烈な殺気に一瞬全身が硬直するもすかさず腕を振るう。
「・・・・なっ」
「悪いのは洸太君の両親だと?」
どんなモノでもへし折れると思っていたマスキュラーは腕を簡単に片手で受け止められた事に驚く。そして一騎はそんなマスキュラーに告げる。
「悪いのはお前だろ」
「――ッ!!」
受け止める際に伸ばしていた指を曲げ少し腕に触れる。その瞬間マスキュラーは自身の腕を握り潰される錯覚をし、一騎の手を振り払うと後ろに下がり一騎を睨む。ただその顔には冷や汗が流れていた。
「確かに事によっては殺さなくてはいけないときが有る。しかしお前は大義名分も無く自分の愉悦のためにしたんだろ、なら全部お前が悪い。――――人を殺したんだぁ~・・・殺される覚悟は出来てんだろうな」
「・・・・・は、ははは」
喉に鋭利な刃物の切っ先を当てられている様な殺気にマスキュラーは驚くも軽く笑い声を漏らすと構える。
「俺の防御を越えて殺せると思ってんのか!」
「あぁ」
「なら、やってみろォ!!!」
マスキュラーは一騎に迫り大振りに拳を振るう。
彼の個性筋肉増強は確かに強く使えば攻撃だけでは無く防御力も跳ね上がる。実際に一騎の『轆轤鹿伏鬼』の打撃を簡単に耐えたのだがら。――しかし!打撃は打撃でも大打撃を与える方法はある。
――バチィィィィィィィィィィィィ!!!!
耳を塞ぎたくなるほどの音が響く。
それにマスキュラーは何が起きたのか理解が出来ず動きが止り目線を下げると右足内太もものズボンだけでは無く筋繊維も大きく破れ更には皮膚も抉られたかのようにめくれ出血していた、その事に気づいた次の瞬間には全身を駆け巡る壮絶な耐えがたい痛みが走る。
「ガッ・・・・・・・――!?×♯□☆※#$%○¥▲※△&★※¥●□▲×#!!!!!!!!????????・・・・・・・・・!!!!!!!!!!」
いままで感じたことの無い痛みにマスキュラーは意識が飛ぶも直ぐに痛みで覚醒し内ももを押さえ蹲りのたうち回る。
一騎がしたのはとても簡単なこと。ただマスキュラーを叩いた、たったそれだけ。
打撃を繰り出す際、本来は力を籠めるべき部位で敢えて脱力し、振り子のように自然体で揺れ動くそれらの器官は徐々に重みを増していき、インパクトの瞬間にのみ圧倒的な加速で対象の肉体に打ち付ける。
それにより与えるのは拳による破壊力では無く、平手打ちによる圧倒的な痛みによる苦痛。その技の名は『鞭打』という。
「鞭打の味はどうだ」
筋肉ではなく、更に表面にある皮膚。そこを狙った攻撃を受け痛みでのたうち回るマスキュラーに冷めた眼を向け一騎は歩きながら洸汰の前に立つと未だに痛みで身悶えているマスキュラー言葉を掛ける。
すると、マスキュラーはゆっくりと立ち上がり瞳に正確な殺意を宿る。
「!さっきまで遊んでたんだがやめだ!ここまで手傷を負ったのは久しぶりだ。だから――本気の
そう言ってポケットからドス黒い瞳孔と血のように赤く染まった白目が特徴的なものを取り出す。
「知るか」
しかし一騎はその際にマスキュラーに急接近し、
「フッ!!」
「ッ!!!??!?!?」
思いっきり金的を蹴り上げた。
一騎がやったのは仮面の戦士や戦隊、少女戦士が変身する際に妨害する変身妨害に似た事だった。まぁ実際そんなのを待ってやる意味も理由も一騎には無いために仕方が無かった・・・多分?
金的蹴りを喰らったマスキュラーは顔を歪め本気の義眼だとかいってた余裕すら無くなり出鱈目に一騎に拳を振るうが、一騎は簡単に避け『幽歩』を使い死角に周り腕を振るった事で無防備になったマスキュラーの横腹に手の平を当てる。
「あとお前にダメージを当てれるのはなにも鞭打だけじゃ無い。簡単に内臓にダメージを当て得れる
「っ!て、てめぇ!!」
「魔弾」
一騎の言葉の後にマスキュラーは止めようとするも虚しく一騎の呟きのあとに体からカチッという金属のような独特の起動音が鳴った瞬間マスキュラーは軽く数メートルは吹っ飛び崖に叩きつけられる。しかも体の内部にまで直に届く衝撃により大きなダメージを負い、呼吸困難に近い症状が起きる。
身体の表面の皮膚を襲う痛み『鞭打』、体内に響き内臓を襲う痛み『魔弾』。外と内の2箇所に強烈な痛みにマスキュラーは動こうにももう動けない。なんならいままで味わったことのない痛みで心が折れ筋肉増強も維持できない。
「二虎流」
殺さないように手加減をしても
「金剛・火天ノ型」
容赦は一切しない。
「や、やめ!」
「瞬鉄・脚!!!」
強い踏み込みから走り出し助走を付けた途轍もない跳び蹴りをマスキュラーの顔面に叩き込む。この際、マスキュラーの顔を崖とサンドする事で更にダメージを与えた。
マスキュラーはやめろと叫ぼうとするも呼吸困難から碌に声が出ず、更には腕を動かせなかったことでモロに顔面に喰らいトラウマを植え付けられたまま気絶した。しかも顔が崖に食込んだ状態で。
「ふぅ~」
ゆっくりと息を吐き足を抜いて洸汰の元まで歩く。
その姿を見て洸汰は困惑をしていた。
(なにも知らないくせに何で・・・・・・・・なんでそこまで)
散々酷いことを言ったのに助けてくれるのかと。
一騎とハンター強過ぎん?
次回「林間合宿襲撃・後編」
それでは、期待せずにお待ち下さい。
よろしければ評価やコメントの方お願いします!優しいコメントが嬉しいな~。