無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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真に恐れるべきは有能な敵ではなく無能な味方である。


        
―ナポレオン・ボナポルト―








今回は無駄にもの凄く長いです!!!!


第62話:林間合宿襲撃・後編

 

 

「ねぇ洸太君、いきなりだけどどうしたい」

「え?」

「君はマスキュラーを殺して欲しい?」

 

 いきなりの問いに洸汰は驚き唖然としているとドスンと音が鳴りそちらに眼を向けると気絶したマスキュラーが横に倒れていた。

 それをみて一騎は片膝を着き洸汰の目線に合わせる。

 

「彼奴は君の親の仇だ、そして今は状況が状況なだけに凶悪ヴィランを殺してしまっても仕方無いで済ませられるし、君に犯罪の疑惑は絶対に行かない」

 

 悪魔の囁きの様な質問。両親の仇が目の前にいる、仇を討てる。

 

 よく世間は復讐は何も生まないと言うが、アレは嘘だ。復讐しなければ前に進めない人も少なくない。だから一騎は洸汰に問う、仇を討って欲しいかどうかを。

 

「・・・」

 

 洸汰は俯き小さく声を出す。

 

「パパとママは復讐をのぞむかな?」

「さぁ分らない。俺は君のご両親と会ったことが無いから」

「・・・」

 

 一切の間を置かず即答する一騎。

 言葉を聞いて洸汰はギュッと拭くの裾を掴み唇を噛み少しの沈黙の後に口を開く。

 

「・・・・いい」

「?」

 

 グッと顔を上げ涙を流し口角も下がりそうになるも洸汰は頑張って笑顔を作る。

 

「パパもママも復讐は望まないと思う、から」

「ッ! そっ、か。洸太君、きみは強い子だ」

 

 優しく洸汰を抱きしめ背中をさする。

 一騎は親の大事さを分らない。けどももしユエやミルコと大事な人達が殺されれば復讐に動く自身があった。故に素直に洸汰を称賛し立派な子だと言葉を贈る。

 

 

 

 

 

 

「お兄様!洸太君!」

 

 少ししてからユエが到着する。

 

「ユエ!無事か?」

「・・・はい。無傷です」

 

 少しの沈黙が疑問に思うも直ぐに意識を変え次の行動に移す。

 

「ユエは洸太君を連れて宿に戻ってくれ。その後にあそこの山火事の消火を、あの付近には大きめの湖があった」

「了解しました!」

「まっまって兄ちゃんは!?」

「俺はマンダレイに報告しにいって・・・かな」

 

 流石にあわよくばヴィランと戦闘とは言えず誤魔化す(誤魔化しきれてないが)。

 

「それじゃあまた後でユエ、洸太君」

「はい☆」

「・・・うん」

 

 優しく2人の頭を撫でると一騎は崖を飛び降りマンダレイ達の方に向かう。

 

「行こう洸太君」

 

 後ろ姿を見てからユエは洸汰に手を伸ばすと洸汰はその手を取ると不安げに問いかける。

 

「兄ちゃん大丈夫かな?」

「大丈夫ですよ、なんたってお兄様は最強ですから。さっ行きましょ」

「・・・うん!」

 

 ユエは洸汰を背負うと赤鱗躍動を使い走り出す。

 

(そう、お兄様大丈夫)

 

 胸の取れないざわめきを消し去るように自分に言い聞かせながら。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ハァハァ」

 

 一騎はマンダレイの元に急いで戻るために森の中を駆け巡っていた。

 

「不死黒!」

「!?」

 

 そんなとき不意に声を掛けられ声のした方を向くと相澤が自分の方に向かって来るのが見える。

 

「相澤先生!」

「今はどうなってる」

「ヴィランの目的は爆豪と物間です!俺とユエはマンダレイから戦闘および個性の許可を貰い動いてます!そして尾白、峰田、飯田、緑谷はマタタビ荘に戻って貰ってます

 戦闘に関してはハンターと遭遇、ユエが戦闘し撤退させました。俺はあの崖の所で血狂いマスキュラーと戦闘し戦闘不能にしました。今ユエには崖の所に居た洸太君を連れてマタタビ荘に戻って貰ってます」

 

 矢次囃子に言われ相澤は少し混乱するも自体を把握する。

 

「お前はこれからどうする気だ」

「俺はマンダレイの所に行きます」

 

 本当は直ぐに戻れと言おうとしたが、相澤は少し考える。

 

「不死黒、マスキュラーの拘束は」

「道具が無くしてません」

「わかった。なら俺はそっちに向かいマスキュラーを拘束する。そしてお前にはマンダレイへの伝言を頼む」

「伝言ですか?」

「あぁそれは――」

 

 

「先生それは」

「任せたぞ」

「了解しました!」

 

 2人は己の目的地の方を向き走り出す。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「いや~んちょっとしつこい!アイテム取らせてよ!」

(こやつ、我のキャットコンバットを容易く)

 

 虎の連撃をマグネは的確に捌き凌ぐも一騎の所為で落としたサポートアイテムを使えず膠着状態が続いていた。

 

「とっとと!粛清、されちまいなぁ!!」

「っ」

 

 スピナーの歪な大剣から振るわれる斬撃をマンダレイはギリギリで避けるがその時、足が滑り隙を晒す。

 振り下ろされる大剣を見てマンダレイは目を閉じ痛みに耐えようとすると陰がマンダレイを覆う。

 

「素人の大振りな剣が通じるのは素人が相手の時だけだぞ」

 

 振るわれた大剣の側面に手を当て軌道をずらすとヤクザキックでスピナーを蹴り飛ばし距離を取るとクルリとマンダレイに向き手を差し出す。

 

「不死黒君!!」

「マンダレイ、洸太君は無事ですよ」

 

 マンダレイの手を取り立ち上がらせると一騎は笑顔から真剣な表情へと変える。

 

「敵の目的は爆豪と物間の2人です」

「なんで爆豪君と物間君が!?」

「そして相澤先生からの伝言をテレパスお願いします。A組B組イレイザーヘッドの名の下に戦闘を許可すると」

 

 

 言われたとおり全員に伝言が響き渡ると一騎はスピナーへと向き直り構える。

 するとスピナーは大剣の切っ先を向け怒りの目で一騎を睨む。

 

「俺の目的はお前の粛清だ」

「・・・」

 

 保須市の事件以降ステインの信者は爆発的に増えたが、当然ながら纏める者が居なければ皆はバラバラに動く。

 そして信者達は一騎はステインに助けられながらステインを終わらせた悪と定めた者達と一騎はステインに認められた真のヒーローと定めた者達の二つに大きく分かれた。当然スピナーは前者だ。

 

 

「ハァアアアアア!!」

 

 スピナーは走り出し飛躍すると一騎に大剣を振り下ろす。

 

「はぁ~」

 

 しかし一騎は深く溜め息をつく。

 振るわれた大剣をしっかりと目で捕らえ素早い動きでハイキックを繰り出し大剣の側面につま先蹴りを叩き込むと大剣の切っ先を地面にぶつけ、てこの原理を使い大剣を壊し軸足を変え逆の足でスピナーの横っ面に踵を叩き込み地面に挟み踏みつける。

 

「不知火・改・・・擬き。 ステインはお前みたいに雑な戦闘はしねぇよ」

「うそ!スピナーちゃんがたった一撃で!?」

「・・・」ギロリ

 

 スピナーは異形型、故に耐久力は他の人より上なためにそれを立った一撃で沈めたことにマグネは驚く。

 最初顔だけをマグネに向け目が合うとクルリと体を回転させマグネへと向かって走り出す一騎。

 

「操流・水天ノ型 水燕」

「ちょ!なにこの子の技!?」

 

 虎のキャットコンバットを越える不規則なラッシュにマグネは捌ききる事が出来ず防御一辺倒となる。

 

「っ」

 

 が、一か八かの賭けで一騎の左手を握り攻撃を止め隙を作ると一騎の顔に向け逆の手の拳を放つ・・・・しかしマグネは力が抜けたかのように座り込んでしまい拳は一騎の顔の横を通り過ぎるだけになった。

 

「な、なに?」

「初見流合気道」

「・・・あ」

「叢雲・三連」

 

 中指一本拳で顔面の急所*1に一瞬で三発の拳撃を繰り出し一瞬で意識を刈り取る。

 

(容赦なく顔の弱点に攻撃を)

(す、すごい)

 

 自分たちが手こずったヴィラン2人を三分も立たずに制圧したことに2人は一騎の強さを再確認する。

 

「では俺は他の皆の救助に行きますね」

 

 さっきの様子とは打って変わり何時もの雰囲気に2人は一瞬呆気に取られるも直ぐに気持ちを切り替えて一騎を引き留める。

 

「まって!不死黒君はこのまま宿に戻って!」

「うむ、主もまた学生の身、安全を!」

「・・・――っ」

「不死黒君?」

 

 

 2人の声が聞こえてないのか反応せず2人の背後に怪訝な目を向ける。

 

「嘘だろ、この感覚、この気配・・・!」

 

 一騎の言葉にマンダレイ達は後ろを振り返ると森の中から10本の触手の足に触手の腕が特徴の黒い脳無*2が現れる。

 

 タコ脳無の出現にマンダレイと虎は拘束作業を中止し戦闘態勢をとる。

 

「お二人とも!此奴の相手は俺がします!」

「ダメよ!不死黒君は逃げなさい!!」

「こやつは我々が引き受ける!!」

 

 マンダレイ達は一騎を逃がすために覚悟を決め、逃げるように促す。その時、タコ脳無は右手をゆっくりとあげ先端がグワンと後ろに垂れ少し動きが止る。

 

「・・・!」

 

 突如と一騎は背中に氷柱を突っ込まれた様な感覚が襲い咄嗟に横に飛び退く。すると

 

 

 ――――ドッゴォオオオオオオオ!!!!!!

 

 

 轟音と共に地面が割れ木々がへし折られ激しい揺れが一騎達を襲う。

 

「・・・う、いや・・・・うそだろ・・・・」

 

 一騎は数秒前まで自分が居たところが大きく抉られしかも後ろの森に長く抉られているのが続いてるのを見て驚愕を隠せなかった。更に一騎を驚愕させるモノがあった。

 

(俺の目でも見えなかった)

 

 紐や鎖を介して行なわれる攻撃の先端の速度は眼を越え見ることが出来ない。だが!全ての攻撃の誘導は術者がおこなうもの、故に武器本体の起動は術者が教えてくれる。

 しかし、先ほどの攻撃は速度は当然で途中で腕が伸びたことで軌道が変わり一騎の眼でも完全に捕らえる事が出来なかった。

 

(この脳無、USJの時の脳無より断然強い)

 

 予想通り、このタコ脳無はUSJの時の脳無より強い、一騎に取っては、だが。

 

 タコ脳無はオーダーメイド、不死黒 一騎の相手を出来るようの専用脳無。一騎の相手を出来るように超再生、超パワー、超筋肉、伸縮触手と様々な個性が付与されている。

 

「はっははは。マンダレイさん虎さん、今の攻撃見えました?」

 

 引き攣った笑い声と表情で二人に問いかけるも二人は反応しない。いや、反応出来ない。

 二人は一騎と違い腕の動きどころか最初の初動すら捉えられていなかった。気が付いたときには轟音と共に地震の様な揺れが起き、一騎が居たところの地面が抉れ背後の木々がへし折られていた。

 

「・・・っ」

 

 ズルズルと伸びた腕が元の長さに戻っていくのを見て一騎は絶対に自分が狙い(の殺害)の為に来たと確信するのと同時にマンダレイ達は絶対に相手にならないことも理解する。

 

「付いてこいよ!脳無!!」

 

 踵を返し叫ぶと森の中に入っていく一騎。それに対しタコ脳無は両腕の先端が腕の中にめり込むほど極限にまで引き絞り限界に達すると銃弾の様に真っ直ぐ飛ばし逃げてる一騎の近くの木々に絡ませスリングショットの様に吹っ飛び一騎を追いかける。

 

 その姿にマンダレイと虎は悔しさで唇を噛み締める。タコ脳無のたった一撃で勝てないと悟り恐怖を感じてしまったこと、何より守るべき子供に気を使わせて脳無の相手をさせてしまったことに自身へ怒りを覚えた0。

 

「とりあえず、急いでこの者達の拘束、を・・・な!?」

「うそ!?」

 

 虎の言葉でいそいでスピナー達の拘束を再開しようとしたその時!スピナーとマグネの姿は何処にも無かった。ピクシーボブの姿も。

 

 

 

(お二人は返して頂きましたよ。そして念の為彼女はお借りします)

 

 

 森の中の暗闇に隠れ黒霧は静かにお辞儀する。

 

 

 ☆

 

 

 

「まじ、かよぉ!」

 

 背後からもの凄い勢いでバキボキと木々がへし折られる音が迫り目を向けるとタコ脳無が直ぐ近くまで迫ってるのが見える。その為に一騎は急停止するとタコ脳無を迎え打つ。

 

「金剛・火天ノ型! 瞬鉄・剛」

 

 軽くステップを踏んで進み肩*3からスーパー頭突きをするタコ脳無と激突する。

 瞬鉄・剛とスーパー頭突きが激突し衝撃で木々を揺らす。

 

「っ!・・・くっぅううう!」

「・・・」

「がっ!?」

 

 拮抗すると思われたが何と一騎の方が衝撃に耐えきれず吹き飛ばされたのだ。

 吹き飛ばされると一騎は体を捻り地面に手を着いて勢いを殺し側転の要領で体勢を整えタコ脳無を睨む。

 

(此奴、衝突の寸前に脳味噌を触手の様な何かで覆い守りやがった!!? もしかして知能があるのか!?)

 

 脳無は能が剥き出しで戦闘の際に守るといった行為はUSJのは勿論、保須市の脳無もしなかった。しかし!タコ脳無は激突の際に頭部から触手を出し能を保護したのだ。

 

(もし知能があるとすれば厄介すぎる・・・!?)

 

 そう思った瞬間、タコ脳無が両手を振り回しだす。

 また攻撃が来ると感じた一騎は守りに徹するよりも攻めることを選び力強く地面を蹴り瞬く間にタコ脳無との距離を詰める。腕を伸ばせば手が届く距離まで接近するとタコ脳無の右触手が無造作に振り下ろされた。

 

「うっ! おっっも!!」

 

 基本、鞭や槍といったものは術者の間合いより更に近ければ近いほど攻撃力は乗り切らなくなる。はずなのにタコ脳無の一撃が予想以上の威力に一騎は思わず声が漏れてしまう。

 

「けど懐に入れた!」

 

 触手を払いのけるとギチギチと音が鳴るぐらい力強く拳を握り全力でタコ脳無の胸に目掛け振るう。

 

「金剛ノ型・鉄砕ィ!!!」

 

 完璧なタイミングで完璧なポジション。普通の人間なら間違い無く胸骨を砕く一撃・・・・・・なのに。

 

(・・・効いてねぇ。てかなんだ今の、まるで分厚い水風船を殴った感覚、てか肋骨が無かった!!)

 

 タコ脳無は一騎対策の為に打撃を無効に出来る様に軟体動物と同じで骨が無い。なら何故立てているのかというと超筋肉のお陰。

 骨が無いお陰で打ち込まれた衝撃を満遍なく分散して無害にし、関節技をキメられることがない。

 

「ぐっぅうあああ!!?」

 

 タコ脳無の体質の考察をしている時に腹に途轍もない衝撃が襲い吹き飛ばされる。

 

(まじか!?威力の乗り切らないゼロ距離から無造作に振るっただけの腕で此所までの威力!!クソ肋骨1本持ってかれた!)

 

 不壊を使っていなかったとは言え簡単に肋骨1本折られた事に舌打ちし顔を歪める。

 いまの自分では勝てないと悟ると一騎は着地と同時にタコ脳無に背を向け走り出す。

 

「・・・」

 

 逃げる一騎の後ろ姿を見てタコ脳無は動くことはせず首を傾げると先ほどと同じスリングショットの要領で一騎を追いかける。

 

 

 

 

 ☆

 

 

「よぉ」

 

 時刻は少し遡り、ユエの見極めが終わったハンターはマタタビ荘に戻る途中の緑谷達の元に現れていた。

 

「な、なんで此所にもヴィランがいんだよ!!」

「っ!」

 

 峰田は叫び緑谷達は戦闘態勢を取る。

 

「あー名乗りって要るかなー?此奴らにしても意味ないしなぁ~・・・けど一応しとくか~?」

 

 緑谷達の気も知らないでハンターはそんな事を考えながら軽く頭を掻いてから深い溜め息を付いて口を開く。

 

「一応名乗るけど、俺の名はハンター、お前らもよく知ってるエリクの右腕な」

「なっ!!?」

「え、えええエリク!!」

 

 エリクの仲間というだけで驚きなのにその右腕と来た所為で緑谷達の顔には恐怖が大きく現れる。

 

「それじゃ、やるか」

 

 ダルそうにしていた表情からキリッとした表情に変わる。すると緑谷達は重力が増したかと思うほどのプレッシャーに潰されそうになるも何とか潰れず耐える。

 そしてどうしようと皆が悩んでいると緑谷がフルカウルを発動して前に立つ。

 

「僕が時間稼ぎするから皆は逃げて!」

「な!なにを言っているんだい!緑谷君!」

「僕達全員で挑んでも全滅するだけだよ!なら、誰かが残って少しでも時間を稼いだ方がいい!」

 

 確かに全員で挑んでも勝てる可能性は限りなく・・・否、完全に無い。でも僅かにでも時間稼ぎすることは出来る。緑谷はその役目を買って出た。

 

「無駄話が長い」

 

 ハンターが手を前に差し出すと緑谷は地面を蹴りハンターとの距離を詰め叫ぶ。

 

「大丈夫!隙があれば僕も逃げるから!行って!!」

 

 叫んでハンターを殴る緑谷の姿を見て飯田達は走り出す。

 

 その姿を横目で見て緑谷は出力を8%まで上げケツの穴をグッと絞め叫ぶ。

 

「SMASH!」

 

 拳はハンターの顔面を捉えるが、無慈悲にもハンターは微動だにせずただ一言。

 

「遅い上に軽いな」

「!」

 

 分っていた、効きはしないことは。だが、真っ正面から顔面を殴ったのに瞬きすらしないことに緑谷は驚く。

 そしてハンターは驚いている緑谷の顔面を片手で掴み持ち上げる。緑谷を投げ飛ばしす。

 

「その程度か?これだったら一騎の方が断然強いぞ!」

「ガッァアア!!」

 

 背中から木に叩きつけられた緑谷は悲鳴を上げ地面崩れ落ち背中への激痛で痛みにもだえる。

 そんな緑谷を見てハンターは非常に冷めた眼を向け言葉を投げかける。

 

「この程度でどうした?」

「くっ・・・お前達の目的は何なんだ!」

「バカか?そんなの聞かれて直ぐ応えるわけ無いだろ」

 

 

 ゆっくりと立ち上がる緑谷を見てハンターは首を軽く回す。

 

「なぁそれの実力はこの程度のカスじゃ無いだろ?これじゃぁ一騎の方が何百倍も強いぞ。もっと個性の実力魅せてみろよ」

「!?」

 

 自分ではなく個性と言った事で緑谷は驚く。もしかして自分の個性『ワン・フォー・オール』を知っているのではないかと。そしてそう思ったときハンターが声を掛ける『9代目』と。

 

 

「まさか!」

「個性のことを知っているのか、か? あぁ知ってるとも。その個性の起源、能力、歴代継承者、そして(まこと)の後継者もな」

「真の後継者?・・・・」

「いや、今はいいや」

 

 緑谷はワン・フォー・オールの成り立ちとかはオールマイトから聞いていたが、真の後継者は初耳で思わず聞き返すとハンターは明らかに余計な事を言ったと言う風に顔を顰める。

 話しを逸らすようにハンターは手を飯田達が逃げた先、合宿場へと向ける。

 

「や、やめろ!」

「なら止めてみせろヒーロー候補」

 

 ハンターの手の平に丸い火炎球が作られ初める。それはテニスボールほどの大きさにもかかわらず緑谷は途轍もなくヤバいと感じ駆け出す。

 

 

「へ~」

 

「デトロイト!! スマッシュ!!!!!」

 

 

 轟音が響き砂塵が舞い上がる。

 

 緑谷は反動で腕に壮大なダメージを負い蹈鞴を踏み後ろに下がるも前を向く。

 

「多少はマシな一撃だな」

 

 土煙の中で佇み手を振り土煙を払うハンターの姿を目撃する。

 

「!?(嘘だろ!!オールマイトの力だぞ!!)」

(まだエリクのパンチの方が痛いな。)

 

「・・・・・!」

 

 攻撃を受けた腕を撫でながらそんな事を思い緑谷に近づく。

 当然緑谷は警戒し、左腕を上げ防御体勢を取った瞬間!緑谷は左腕に途轍もない衝撃が走り耐えることも出来ず吹き飛ばされる。

 

「この程度か」

 

 そして残ったハンターは残念そうに呟き水平になるように上がっていた足を降ろし緑谷を見る。

 

「左腕は完全骨折だな」

 

 青紫色に変色している前腕を押さえて蹲る緑谷に冷たく吐き捨て見下ろす。

 

「どうした?もうギブか?一騎は腹に風穴を開けても俺に戦意を見せたぞ」

「!?」

「てか一騎はお前と違って腕を断ち切られても起き上がりエリクに攻撃を仕掛けてたろ?なのにお前は骨折程度で終わりか?違うだろ、越えろよプルスウルトラしろよ!」

 

 死を確信させる一撃、それは実物より大きく見せる。普通の人間なら恐怖で動けなくなるが、このとき緑谷の脳裏にはエリクや脳無といった強者と戦う一騎の姿だった。

 

(不死黒君なら、こんな窮地をどうにかしてみせる!!)

 

 勢いよく立ち上がり振り下ろされた拳に合わせ拳を振るう。

 すると二人の拳はぶつかり合い大きな音を響かせる。

 

(・・・力が弱い。痛みにひよったか・・・!これは――!!)

「うっぉおおおおおおおおお!!」

「力が上がってる!」

 

 いままでどれだけ傷ついても立ち上がり戦う男の姿を見て来た緑谷は痛み程度では止らない!

 

「デラウェア!!」

 

 拳を開きその反動でハンターの拳を大きく逸らすとまたグッと拳を握る。

 

「デトロイト!!」

 

 

『いいか緑谷、強力なパンチを繰り出すにはちゃんと左足を踏み込み、右足の回転、腰の回転、そして肩、腕を通して、拳へと威力を伝える! あとは雷を喰らい、雷を握り潰すように撃つべし』

 

 一騎に言われた事を思い浮かべ深く踏み込み全力で拳を放つ。

 

 

 

「スマッシュ!!!」

 

 

 轟音と衝撃、何かが爆発したと錯覚する程の威力にハンターは木々をへし折りながら十数メートル程吹き飛ばされる。

 

「ハァハァ」

 

 折れた腕で放った更に強い一撃に緑谷の右腕は赤黒く変色しするも、アドレナリンが大量分泌され痛みを大して感じていなかった。

 

『総員!イレイザーヘッドの名の下に戦闘を許可する!! そしてヴィランの目的は爆豪勝己と物間寧人!二人は戦わず逃げて!!』

 

 突如脳内にマンダレイの声が響き最初は驚くが、直後爆豪がヴィランに狙われていると知りつい「かっちゃん」と言葉が漏れる。

 

「あれらの目的が分ったみたいだな」

「!?・・・・・うそだろ」

 

 声の方を振り向くとハンターがまたしても何事も無かったかのようにう立っていた。しかも殴られた胸元を軽く叩き汚れを落としパチンと指を鳴らすと次の瞬間折れた木々が全て元通りに戻る。

 

「お前さ?一時期一騎に戦闘技術教わってたよな、なのに何で脳筋戦法?まぁいっか、帰るが鳴ったしか~えろ。んじゃぁねぇ~。お前もとっとと帰って手当しないとその手使い物にならなくなるぞ~」

 

 言いたい事を言ってからハンターふりふりと手を振って背を向け森の中に消える。

 残された緑谷は少しの静寂の後にマタタビ荘向かって歩きだそうとするが、出した足を戻し少し考え込む。

 

 

『これから委員長命令だ!全員、列からの離脱は絶対に許さん、速やかに戻れ!』

 

 

「ごめん、不死黒君」

 

 小さく呟くと緑谷は行く先を変えマタタビ荘とは別の方向に向かって走り出す。

 

 

 

 ☆

 

 

「くっ」

「おっおい!」

 

 ヴィラン襲撃で突如居なくなった青山を探してる最中、B組の泡瀬と合流した八百万は体中から複数の腕を生やした脳無に襲撃を受けていた。

 現れた脳無は腕の先に付いたチェーンソーで八百万と泡瀬に攻撃するも八百万が咄嗟にポリカーボネートシールドを創造し攻撃を受け流す。しかし複数の腕があるために更に攻撃は続く。

 

(なんとか初撃は回避出来ましたが、このままではいずれ)

 

 一騎との鍛練のお陰でなんとか脳無の攻撃を防ぐことはできているも手数が多すぎる上に一撃が重い所為でいずれやられると悟る。

 

「泡瀬さん!此所は私が耐えますわ、ですからお逃げ下さい!!」

「何言ってんだ!女を置いていけるわけないだろ!」

「自分を守るので精一杯なんです!もし泡瀬さんが狙われれば守れませんわ!ですからどう――あ!」

 

 逃げてと言おうとした瞬間、盾が弾き飛ばされその反動で次の盾を創造するのが僅かに遅れた。

 

(・・・・・あ、あの時と同じですわ)

 

 USJで脳無に襲われ死を確信したとき周りがスローに見えた時と同じまたゆっくりと動いているように見えた。

 

『八百万、攻撃を裁けない防げないとなったら最大限軽傷になるように受けろ』

 

 死が間近に来て思い出すのは鍛練の時に言われた言葉。そしてくらうのなら最小限になるように動こうとしたそのとき!

 

「うっおおおおお!金剛ノ型!!」

「この声は!?」

 

 強く、格好良く、もの凄く頼れる男の・・・不死黒一騎の声が聞こえるのと共に姿が現れる。

 

「飛斧脚!!!」

 

 猛スピードで現れた一騎は跳び蹴りで八百万に振るわれたチェーンソーの側面から蹴り砕き勢いを保ちながら脳無の横っ面を捉え蹴り飛ばした。

 一騎は八百万達が見えた時に丁度来たタコ脳無のスーパー頭突きの威力を使い工具腕脳無の元まで吹き飛んできたのだ。木に当たらなかったのは賭け。

 

「不死黒さん!?」

「八百万! 刀!」

 

 着地と同時に振り替えり手を伸ばす姿に八百万は少し見惚れてしまうが直ぐに返事を返し伸ばされた手を握る。

 二人が手を握ると滑るように手は離れ一騎の手には刀の柄が握られていた。そこから勢いよく腕を横に払うと一騎の手にはキラリと月明かりで輝く日本刀が握られていた。

 

「不死黒さん、鞘です!」

「サンキュー」

 

 投げ渡された鞘を掴み即座に納刀をすると自分が通った道を向き抜刀の構えを取る。

 

「天童式抜刀術・3の型8番」

 

 木々をへし折り森から高速で現れる2本の触手。

 

雲嶺毘却雄星(うねびこゆうせい)!」

 

 2本の触手が間合いに張った次の瞬間、剣閃が無数に走り触手をステーキサイコロ状に切り刻む。

 

「まだまだ!1の型8番・無影無踪!!」

 

 呼吸を即座に整え遠心力を使い刀を力強く振るい触手が飛んで来た方に 鋭い切れ味の斬撃を飛ばす。すると直ぐにザシュッと木では無く何かを切り裂く音が響く。

 

(クソ。やはり斬撃を飛ばすと腕と肩への負担が絶大だな。筋肉が痛い、失敗した)

 

 刀を鞘に収め痛みが走り震える右腕と手を見て内心舌打ちする。

 そして八百万達は振るわれた刃どころか切り刻んだ物すら見れておらず一騎が何したのか理解出来なかった。

 

「不死黒さん、たす「しっ!」 んっ」

 

 工具腕脳無から助けて貰ったお礼を言おうとするも唇に指を当てられ喋るのを止められて驚き一騎を見ると険しい顔をする一騎の表情が眼に入る。

 

「・・・だよな~」

「?・・・!?」

 

 一騎が手を退けると八百万は険しい視線の先を見て鎌鼬により切り刻まれた腕を再生させている脳無を捉える。

 先ほどの脳無と違いUSJの脳無と同じ黒くそして超再生を持っている脳無が現れUSJの恐怖がフラッシュバックし一騎の手を強く握り絞める八百万。

 

「・・・大丈夫だよ八百万。俺が守るから」

 

 手の震えに気づいた一騎は刀を腰に挿し八百万の頭を撫でて優しい表情で声を掛けると視界の端に起き上がる工具腕脳無が起き上がるのを見て内心驚く。

 

(まじか、かなり良い一撃入ったはずなのに。チェーンソーを挟んだ所為で威力が落ちたか?でも選択はあれでいい、もしチェーンソーを壊してなかったら八百万が怪我してた)

 

「・・・さて、逃げろ二人ともこの脳無の相手も俺がする」

「ダメです不死黒さんも一緒に逃げましょう」

「ダメだ」

「なんでですか!」

「あの脳無は俺対策で作られてるから俺を追いかけてくるんだ」

「そんな・・・・」

「しかも骨が無いのか二虎流ってか打撃と関節技が一切通じない」

「・・・」

 

 最早絶望と言えるほど八百万の表情はヤバかった。まぁ一騎の本気の打撃や関節技が通じないなど一騎の強さを知ってる八百万からしたら悪夢のような話し。

 だから更に手に力を込めて懇願するような目を向ける。

 

「なら尚更――」

 

 一緒に逃げようと言おうとするもあの脳無は一騎を追いかける、ならば自分たちは邪魔になり逆に一騎の身を危険にさらすと思った。

 

「大丈夫、今はお前が作ってくれたこいつ(日本刀)がある。だからな、お前等は避難しろ」

「・・・い、嫌ですわ!不死黒さんも一緒に、だっだってUSJの時の様な事が有れば、わ・・・・私は・・・・」

「・・・」

「おねがい、します・・・から」

 

 更に手の震えが増し握ってくれている一騎の手を両手で握り胸元に引き寄せる。

 弱々しい姿に一騎は決断が揺らぐもタコ脳無が完全に再生し攻撃態勢に入ろうとしているのを見て心を鬼にする。

 

「ごめん、それは出来ない。手を放してくれ」

「・・・」

「八百万 百」

「っ・・・は、はい。わ、わかり・・・ました」

 

 腹の底に響くような低い声で名を呼ばれたことで八百万は一瞬肩をビクッと跳ね上がらせ、おずおずと手を離し離れる。

 

 本当は一緒に避難したい、でもそうするだけの力は無く知略も無い。だからって一騎の言うことを無視してもUSJの二の舞になる愚策。だから八百万は唇を強く噛み締め苦しげな表情で了承するしか無かった。

 逃げる了承はするも僅かにでも役に立とうと一つ創造する。

 

「では此方を」

「何これ、チップ?」

「発信器ですわ」

「なるほど、了解した。それじゃぁ行け!二人とも」

「・・・!」

 

 叫び脳無に突っ込む一騎。八百万は言葉を聞き後ろ髪を引かれる思いを残しながら泡瀬の手を掴み走り出す。そして泡瀬は一騎に声を投げかける。

 

「不死黒!絶対に無茶すんなよ!!」

 

 泡瀬の言葉を聞き一騎は少し笑い前を向き言葉を返す。

 

「当然!!・・・」

 

 只その顔は僅かに申し訳なさも滲み出ていた。

 

「無茶せず済むのなら無茶はしないさ。ごめんな」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「火天ノ型・烈火」

 

 一騎は瞬発力を生かしタコ脳無に急接近し、タコ脳無は脳を触手で覆い守り防御体勢を取る。

 

「橾流・火天ノ型 畝焔(・・・やっぱり、あの脳無は脳を守ってるときは攻撃はあまりしてこない。またはしても威力が落ちる)」

 

 骨一本折られたが・・・言わない方がいいか。

 

 トップスピードを保ったまま工具腕脳無に上半身を一気に傾け進路を変え工具腕脳無に一瞬で迫ると半身になって腕を振り上げたような体勢を取る。

 

「0の型3番・阿魏悪双頭剣(あぎおそうとうけん)!!」

 

 一瞬で2発の斬撃を繰り出す。しかも2撃目は音速を超え、立った2太刀で工具腕脳無の腕を全て切り落とし更に振るった遠心力を使い体を回転し脳無の腹に強烈な蹴りを放つ。

 

「鉄砕・蹴!!・・・?」

 

 工具腕脳無を蹴り飛ばしたときに足に来た感覚に一騎は少し困惑を表す。

 

(いま確かに彼奴の腹を蹴ったが腹の中に何かある?もののような、人の様な・・・もしかしてまだ脳無を隠してる?・・・!)

 

 もしかしてまだ手段として脳無が居るのかと思いいっそ纏めて切り刻んでしまおうかと考えるもそれは辞めた方が良いと何故か思い攻撃を辞める。

 代わりに背後を向き、刃が上になるように刀を水平にし掲げるとスパッと振り下ろされたタコ脳無の腕を切り落とした。

 

 タコ脳無は骨が無く打撃も関節技も効かないが、斬撃は大いにきく。ただ超筋肉の所為で普通の斬撃で効かないが、今回は脳無の振るった力で斬ることが出来た。・・・まぁ一騎の剣術の腕なら普通に斬れるが。

 

阿魏悪双頭剣(あぎおそうとうけん)

 

 一撃目に10本の触手足を全て斬り2撃目に腰に左薙ぎの二つを一瞬で行ない刀を地面に刺し上半身に円を描くように両手の平を当てる。

 

「火天・水天ノ型 絶壊ィ!!」

 

 強烈な踏み込みで掌打を打ち込み上半身を森の中へと吹き飛ばすと刀を掴み背後から襲い来る工具腕脳無のチェーンソーの攻撃を全てを受け流し躱す。

 

「再生した!?いや、超再生は黒い脳無しか持ってないとエリクは言っていた。詰まりは生えたとかか?甲殻類のように。・・・いや考える必要は無い。俺はこの脳無達を引きつけることだけを考えればいい」

 

 自身の成すべきことを再認識すると深く深呼吸し呼吸を整え六方向から来るチェーンソー全てを瞬く間に弾き即座に鞘を腰から抜き脳無の喉元に強烈な一突きを叩き込み距離を開けると一瞬で納刀し抜刀の構えを取る。

 

「天童式抜刀術 1の型1番! て・・・え?・・・・・・・・逃げた?」

 

 雷の如くの抜刀を放とうとしたそのとき、工具腕脳無は一騎に背を向け逃げ出した。しかもおそらくは全力疾走でだ。

 その姿に一騎はまさか脳無が逃げ出すなんて思いもよらずおもわずぽかんとしてしまうも即座に意識を戻しチラリと後ろに目線を向けるとタコ脳無は既に完全回復していた。

 

「スゥ~・・・よし!挟み撃ちするか!」

 

 脳天気そうに言うがその瞳と手は僅かに震えていたが、その事に一騎は気づかず工具腕脳無を追いかける。当然一騎が逃げればタコ脳無は後を追う。

 

 

 

 

 逃げる工具腕脳無は木々を斬り一騎の妨害をし、タコ脳無は後方から触手腕を伸ばし攻撃をする。それに対し一騎は降り注ぐ木々は大きく邪魔になる物は斬り伏せ背後から来る触手腕は目で捉えられないから自身の第六感である危機感知能力に全頼りにし対処する。

 

 しかもこの時、全力で逃げてもタコ脳無は絶対に追いかけてくると思っていたが、工具腕脳無が逃げたことでこの考えは間違えているかもと認識を変え、工具腕脳無を見失わないように気を着けながらタコ脳無に近すぎず離れすぎない距離を保ち二体の脳無に挟み撃ちされている形を自ら取っていた。

 

「これ予想以上にしんどすぎる!」

 

 木を切り即座に目に入りそうな大量の汗を拭い叫んだ。

 前後に気を張り巡らせないと行けない状況に一騎は予想以上に体力より精神を持って行かれ早く疲れを感じていた。

 

「なっ!あれは小大!?しかも塩崎に骨抜も!!?」

 

 そんな時に整備された道に出て遥か前方に小大が塩崎と骨抜の二人を介抱しているのが見えてしまう。しかもその小大に工具腕脳無が斬りかかろうとしているのだ。

 

「何してんだテメェ!!」

 

 その姿をみて鬼の形相を浮かべ地面を踏み砕く程強く震脚をすると本気で走り出し跳び上がる。

 

「金剛・火天ノ型 瞬鉄・脚!!」

 

 工具腕脳無の後頭部に強烈な跳び蹴りを叩き込み吹き飛ばす。

 しかしやはり脳無、普通の人以上に丈夫な上に逃げている相手に後ろからした所為で威力が乗り切らず分散し、脳を潰しきる事が出来ずただ普通に蹴り飛ばすだけだった。

 

「んっ!」

 

 小大は来るだろう痛みで目を強く瞑るも痛みは来なかった。チェーンソーは一騎の蹴りのお陰で軌道がずれ前髪が僅かに斬れる程度で済んだ。そして誰かが近くに立つ気配を感じ目を開けると一騎の大きな背中が目に入る。視界の端にはゴロゴロと地面を勢いよく転がる工具腕脳無が写る。

 

 

「スー・・・っ!正面から突っ切るような音、突きか!! 小大ごめん!」

「っ!!」

 

 タコ脳無が居る方から一直線に前方から木を折る音が聞こえ突きと判断すると行動に移す。

 右手で小大を押し倒し覆い被さりタコ脳無の触腕の攻撃を避ける――ハズだった。

 

「クッソ」

 

 自分一人なら避けきれたが小大を守った為に避けるタイミングが一拍遅れ左肩の肉が少し抉られ表情が歪む。それを目の前で見た小大は目を大きく上げ顔が青ざめる。

 

(肉を抉られた。けど腕は動く、ならば無傷と同じ)

 

 起き上がりと同時に抜刀し伸びてる触手腕を切り捨てる。

 

「不死黒君!!」

「大丈夫。それよりこれ」

 

 起き上がろうとする小大を制止し、直ぐさまジャージを投げ渡し背を向ける。

 

「身を隠せるぐらい大きくして隠れろ!この闇夜だと多分隠れられる」

 

 一騎が着ていた服は動きやすい鍛練用ジャージ、色は黒の為に小大が姿を覆えるほど大きくすればこの闇夜に紛れ脳無の目を欺けると判断した。

 ただ投げ渡した時にジャージに染み付いた血で小大が少し汚れてしまったことを申し訳なく思う。

 

「汚い物でごめん、それに巻きこんで」

「待って!」

 

 走り出す一騎に声を掛け手を伸ばすも既に声も手も届かない距離まで走っていったことで小大は伸ばした手を下ろし渡されたジャージを強く握りしめていると、触手腕が伸びてきた方から物後が聞こえ小大はいそいでジャージを自分たちが隠れれる大きさにし姿を隠すと息を殺す。

 

「!」

 

 ジャージの隙間から月明かりに照らされたタコ脳無をみて小大は両手で声の出そうになった口を抑える。この時、見て分るヤバさに小大は恐怖で体が震えていた。

 

 

 ☆

 

 

 一騎が二体の脳無を相手をしだして直ぐの頃、マタタビ荘はヴィランの襲撃を受けていた。

 

「させぬは!」

 

 だが即座に動いたブラドが現れたヴィランを捉える。

 

「見てろ、極々少数の俺達がお前らをじわじわと追い詰めていくんだ」

「貴様!!」

 

 ヴィランの言葉を聞き、ブラドは殴ろうとするもその前にヴィランの体から蒼炎が吹き出し部屋を覆うと思われたその時、窓から大量の水が押し寄せヴィランを蒼炎諸共飲み込み完全に鎮火し、水は外へ出て行く。

 

「水?よくわかんねぇが拘束は解けた。これで!」

 

 ブラドの個性は『橾血』自身の血を操る個性であるが為に水で血球の細胞膜が破れ血液が薄まれば制御下から外れ操れなくなり、ヴィランの拘束が溶ける。

 しかもブラド本人は大量の水が来たことで咄嗟に生徒を守る為に後方に跳んだことでヴィランがフリー状態になり、また両手から蒼炎があがる。

 

「しまった!」

「それじぁさよなら「鉄砕!」ガッァアア!!?」

 

 完全なる意識外からの強烈な拳撃にヴィランは抵抗も出来ず吹き飛ばされ壁に激突する。

 助けたのは腕を振り切ったユエの姿だった。皆は驚いて名を呼ぶがユエは立ち上がり殴られた箇所を抑えるヴィランを睨む。

 

「おいおい、女のくせにえげつない一撃だな(・・・この体はもうダメか)」

「・・・このヴィランも」

 

 蒼炎のヴィランが泥と成り消えたことでユエは来る途中で洸汰を守りながら戦ったヴィランも骨を折った辺りで泥になったのを思いだすが直ぐに頭を振り皆の方を向く。

 

「先生、洸太君の保護をお願いします!」

「まて!お前は何処に行くつもりだ!」

「私は山火事の方に向かいます」

「危険だ」

「放っとく方が被害が広がり危険です! 私なら液体操作で即行で鎮火できます」

「むう・・・」

「待ってくれ!」

 

 ブラドが言い返せ無くなったのを見てユエが走り出そうとしたとき切島が待ったを掛け腕を硬化し拳をぶつける。

 

「俺達も行くぜ!!」

「ダメです」

「何故!?数が不明なら少しでも戦力が多い方が!」

 

 提案を即行で却下すると飯田が説得しようとするが、ユエは険しい顔になり犬歯を剥き出しにする。

 

「それはエリクが相手でも同じ事言えますか?」

「・・・」

「此所には、エリクの右腕であるハンターが来てます」

 

 

「「「「!?」」」」

 

 ユエの言葉を聞きブラドと補修組はあのエリクの右腕に驚き、既に会った飯田達は表情が歪む。それを見逃さなかったユエは既に会ったのだと理解し言葉を続ける。

 

「いいですか、皆さんは弱いんです」

「それは!「既に!!」ッ!」

「お兄様と私はハンターと戦闘し、お兄様は本気で硬めた腹筋を一撃で簡単に貫かれました。私なんて攻撃を碌に当てられず完敗しました」

 

「ッ!?」

「う、うそ」

「不死黒君とユエ君が、負け、た・・・」

 

「またあれほどの強者がいたら皆さんを守りながら戦うなんて芸当到底出来ません!」

 

 皆が一騎達が負けたことに驚き絶望の表情をしたのをみてユエは申し訳ないと思いながらも最後まで言うとユエは駆け出そうとするが飯田が「緑谷君がハンターと戦ってる」と言い、ユエは小さく舌打ちをするとそれもどうにかすると言う。

 

「皆さんは雄英側の安全地帯の此所を守って下さい」

 

 それだけ言うとユエは二回の窓から飛び降りる。

 

「赤鱗躍動!」

 

 着地と同時に赤鱗躍動を使い未だに激しく燃え盛る方へと走り出す。

 残った皆は窓から大量の水と温泉のお湯がユエを追いかけ、ユエが森の中に消えていくのを見届けるしか無かった。

 

 

 ☆

 

 

 

「この脳無何処に向かってやがる・・・!?」

 

 小大達から距離を稼ぐと工具腕脳無はまた森の中に入り出鱈目に動き回る。

 その姿に一騎はまたかと思い悪態を着いたその瞬間!工具腕脳無の前に暗闇より更に暗い物が広がり工具腕脳無を包むと工具腕脳無が消える。

 

「あれはもしかして黒霧のゲート!?まさ

 

――ドゴォオオ!!

 

 がッァアアア!」

 

 工具腕脳無が消えたことで一騎の動きが一瞬鈍った上にタコ脳無への意識がそれる。そこを狙ったかの様に後方から触腕による上からの叩き付けが来るがその一撃は寸での所で後ろに反れたが、その結果地面が爆発したかの様に抉れそれなりに大きい破片が一騎の背中を直撃した。

 

「(い、きが出来ない・・・) のがどうした!!無理矢理しろ!! はぁああ」

 

 一時的な呼吸困難が起きるも無理矢理大きく息を吸い呼吸を安定させると、すでに逃げられた工具腕脳無は考えない様にし、タコ脳無を引きつけながら逃げることを選択する。

 

「・・・は?」

 

 のだが、一騎は気付かず少し開けた場所に来ていた。

 

「あ?」

「誰だお前!久しぶりだな!」

「あぁあ//」

 

 開けた場所には二人の男と一人のJKが居た。

 マタタビ荘を襲った男と同じ火傷の後が大きな継ぎ接ぎ姿の男、荼毘。全身に黒と灰色を基調としたラバースーツを身に纏い、顔全体を覆うマスクを着用した男、トゥワイス。そして――。

 

「ヴィラン・・・ッ!お前は!?」

「覚えていてくれたんですね!嬉しいです!」

 

 女の子は一騎が職場体験でステインを倒した夜に会った子、トガヒミコだった。彼女は一騎を見ると恍惚とした笑みを浮かべると一騎の血塗れになってる左腕を見て狂気の笑みへと変わりナイフを取り出す。

 

 荼毘は一騎の姿を見て驚くも右手に蒼炎を灯し一騎に向けトゥワイスは左腕に着けているメジャーの様な物を取り出す。

 三人のヴィランが自分を殺そうとしている、これだけでも普通なら絶望なのに更に一騎の後ろからは猛スピードでタコ脳無が迫って来ている。

 

「はぁぁぁ~」

 

 一旦目を瞑り大量に酸素を取り込み呼吸を止め目を開ける。すると次の瞬間一騎の目に映る全ての光景がスローモーションに変わる。

 

 

 

 二虎流・第弐奥義『降魔』発動。

 

 

 左側からトガのステインのナイフ投げ技術に劣るとも勝らない技術で飛ばされた多数のナイフが迫り、正面全体からは荼毘の蒼炎が迫り、後方からはタコ脳無の触腕の突きが迫るのを捉え思考を巡らす。

 

(右回避はだめだ触手に貫かれる、左はナイフの壁、ジャンプは脚を潰される、正面は炎で焼かれる。どれかの攻撃を受ければ動きが鈍り的になる。・・・なら)

 

 降魔を解除すると即座に頭を地面に着けるほど四つん這いになり触腕を避けクラウチングスタートで『烈火』を使い駆け出し左からの投げナイフ全てを避け、低姿勢の突進で蒼炎も掻い潜る。

 

 この時一騎は考えた、どうしようと。そして思いついたのがもの凄く脳筋戦法、この場で脳無とヴィラン達を相手しようと言う事だった。

 間違い無くこのヴィラン達も敵連合の人物達と考え、ならここで戦えばタコ脳無は好き勝手な触腕攻撃が出来ないと考えたのだ。

 

「こっち来んな! もっと来いよ!」

 

 一騎が突き進んだ先に居たのはトゥワイス。何故彼を狙ったかというと一騎の第六感がこの男が危険!と訴えかけたために最初に潰すことにした。

 

 

「私トガ!トガヒミコです!!一騎君の血をまたチユチユさせて下さい!」

「お縄に付いてくれたらいくらでもなァ!」

 

 ナイフを投げた直後にトガは一騎の狙いを把握し進路上に即座に行き近づいてきた一騎にナイフを振り下ろす。だが一騎はそれを一瞬見るだけで『柳』を使い片手で腕ごとナイフを逸らし返す手で胸辺りに手を当て地面に叩き付けるように薙ぎ払う。

 

 しかしトガは猫のようにしなやかに動き地面に叩きつけられると受け身を取り即座に背を丸め勢いに逆らわず後転し勢いを殺すと倒立しをしてから体勢を整える。

 

「一騎君のエッチ//」

 

 着地するとトガは顔を少し赤らめ胸を押さえ小さく呟く。そしてリボンに付いた一騎の血に鼻を軽く付け大きく嗅ぎ、口が裂けそうな程に口角を上げ幸せそうに狂気に笑う。

 

「トガちゃん!」

 

「チッ」

 

 トゥワイスは一騎が来ると咄嗟に後方に下がり刀の間合いから出る。それを見て一騎はトガを相手にしたことで一拍遅れ二つほど間合いから出たことに舌打ちすると一か八かにでる。

 三位一体、三合拳の技の一つを応用し、地面をしっかりと蹴り順突きをくりだす。このとき刀を鞘に納めたまま人差し指と中指で摘まむように持ち(かしら)を手の平に当て突き出し射程内を無理矢理伸ばしトゥワイスの鳩尾を捉え少し吹き飛ばす。

 

「いってぇええ! きもtゴホッゴホッ!!」

 

 鳩尾に強烈な突きを喰らい咳き込むトゥワイスをみて仕留めきれなかった事に一騎は顔を顰めるも直ぐさま追撃を行なう。

 

「させるか」

「炎如きがどうした!」

 

 トゥワイスに接近すると遮るように荼毘の蒼炎の壁が現れるが、たかだか炎如きで止まれるほど一騎の精神は真面では無い。

 蒼炎の壁に近づくと刀を勢いよく全力で振るい蒼炎の壁をかき消す・・・ことは出来ないが進路上の蒼炎は揺らめき炎が薄くなったタイミングで突っ込みトゥワイスを視界に捉え左で刀を持ち力強く右拳を作る。

 

 

 

「瞬鉄・さ「「「うわあああああ!!!」」」 は?」

 

 あと一歩と言ったタイミングでトゥワイスとの間に四人の陰が落ち咄嗟に止まり後ろに下がり落ちてきた四人を見る。

 

「と、とと轟!?に、障子!? それにな、なんでお前が居るんだよ!緑谷ぁ!!!」

 

 仮面を着けたヴィラン、コンプレスと共に落ちてきたのは轟、障子、そして既に避難したと思った二人以上にボロボロになっている緑谷だった。

 

 つい一騎が緑谷に対して叫ぶと三人は一騎の存在に気づき驚く。その隙を見逃さずコンプレスに避けろと指示し荼毘が緑谷達に蒼炎を放つ。

 コンプレスは個性を使い ビー玉みたいな大きさになり轟達は横に跳んで避ける。そして一騎は走り轟達の前に立つ。

 

「緑谷!お前なんでいんだよ!!」

「そんな事より!!彼奴らにかっちゃんと常闇くんが攫われた!」

 

(そんな事じゃ無いだろその怪我は!!なんで避難してない!なんでヴィラン追ってんだよ!!)

 

 ただでさえ余裕が無かったのに緑谷達の登場で完全に余裕が無くなった。元々一騎の戦闘スタイルは一体多数で一人で戦うのを得意とする。

 なのに今は轟、障子、緑谷が居る。まだ轟と障子はいいが問題が緑谷だった、彼は両腕がやばく何故意識があるのか分らない状況で言い方は悪いが足手まといでしかなかった。

 

「まったく、ショーが滅茶苦茶だ」

 

 個性を加除して立ち上がり服に付いた汚れを叩きとしながら呟く。そしてコンプレスと荼毘が話しをしている時に障子が一騎達に耳打ちする。

 

(ショー?)

「3人とも聞いてくれ、爆豪達は取り返した」

「!ホントか障子」

「あぁだから合図と共に逃げるぞ」

「・・・どうやって取り返せたんだ障子」

「 ?あのヴィランがポケットに無造作に入れるのを見ていたからだ」

 

 一騎の疑問に障子はこんな時に何をと思うも聞かれた事を答えると一騎は目を鋭くしコンプレスを睨みつけ三人告げる。

 

「ならお前らが逃げろ、俺が殿をす「・・・」 ッ」

 

 ギロリと荼毘の目が一騎を捕らえる。その目をみて一騎はゾクッとした物を感じ表情を変え叫ぶ。

 

「逃げろ!走れお前ら!!」

 

「「「!!?」」」

 

「お友達を置いて行って良いのか?」

「え」

「いいから行け!走れ!!頼むから!!! お願いだ!!!!!」

 

「脳無」

「チィイ!!」

 

 一騎の焦った声と表情に轟達は驚き動くことが出来なかった。更に荼毘の言葉で轟達の意識は荼毘の方に向き更に動けずにいるのをみて一騎は舌打ちし刀を抜きヴィラン達を最悪殺することを決めるも荼毘の言葉で現れる脳無を見て攻めの姿勢から防御の姿勢に変える。

 

 

「の、脳無!?」

 

 脳無の出現に緑谷が驚愕の声を上げるのと同時に一騎の顔が更に険しくなる。

 

(最悪だ最悪だ最悪だ!どうするどうするどうする!!考えろ考えろ考えろ!!!思考を回せ!! 俺一人で緑谷達を守りながらヴィラン達の相手を出来るか・・・無理だ、絶対に無理だ。

 継ぎ接ぎ達だけならまだしもあの脳無が居たら無理だ。俺一人の身を守るだけでも大変だっだったのにそこに此奴ら、特に重傷の緑谷が居たら尚更だ。・・・エリクならミルコさんならどう対処する!!・・・

 

 

 

 

 

 

 

 無理だ・・・なんの打開策も思いつかない、最低でも一人は死ぬ。この脳無相手に緑谷達を守り切るなんて芸当到底出来ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 絶望が一騎の心を侵食していく。

 

 共に戦うのが自分と同等かそれ以上の実力者なら良い。しかし今の状況で轟達は共に戦う仲間ではなく守る対象となる。

 いざとなれば轟は自分で守れば良い、障子も一撃ぐらいならタコ脳無の攻撃に耐えれるだろう。だが緑谷を背負っていては無理だ、緑谷が足手まとい過ぎた。余談だがこれで緑谷が無理矢理付いてきてそれを麗日が後押ししたと知った暁には間違い無くブチ切れるだろう。

 

 

「コンプレス」

「それでは御賞味あれ、そちらが持ちます玉の中身は、なんと!」

 

 一騎の心情などつゆ知らず話しが進みパチンとコンプレスが指を鳴らすと障子の持っていた二つのビー玉はそこそこ大きい氷の欠片へと変わる。

 それに驚くも一騎はやっぱりと言った顔をする。

 

「何故だ!確かに俺はコートの右ポケットから」

「ミスディレクションだ」

「正解。そして本当は~・・・こちら」

 

 驚く障子を横目に呟いた一騎の言葉をコンプレスは肯定し、仮面を外すとベット舌を出す。そして出された舌の上には爆豪と常闇の入ったビー玉があった。

 

 緑谷達は驚いていたが一騎だけは分っていた、障子から軽く聞いた話だけでそれが偽物だと。

 理由はコンプレスが立ち上がる時に『ショー』と言った事と服装、そして目的の爆豪を奪取したにも関わらず簡単に取り替えされる。そしたら何かあると思うのが妥当。もし何も無く本当に取り返していたらそれはそれで良かったのだが。

 

 

「三人とも、今すぐ行け俺がどうにかするから」

「なに言ってんだよ不死黒君!」

「そうだ、そんな怪我で」

「痛みはあっても腕を動かすのに支障は無い。お前らを庇いながら戦うのに比べればマシだ」

「それでも数は多い方がいいだろ」

「ダメだ、ダメなんだ」

「なにをいって・・・!」

 

 なんでそこまで一人で戦うことに拘ると思い一騎の顔を見ると苦しげな後が無いとでも言うかのような表情をする一騎を見て三人は声が出なくなる。

 

「あの脳無は俺対策に作られてるから強すぎるんだ。何よりあの触手による攻撃が速すぎて俺の目でも捕らえきれないんだ」

 

「「「!?」」」

 

「俺一人でも真っ正面からでは辛いのにお前らを庇うことになると圧倒に不利になる」

 

 一騎が一人で戦うのに拘る理由は一人の方が楽だからだ。だが、味方がいるとどうしても味方を守る動きをしてしまう。その相手が自分より弱い者であればあるほど一騎はその者達を守る事を意識してしまう、。

 

「もうすぐで合図から五分経ちますよ」

 

 一騎達が悩んでいるとき荼毘の背後から闇よりも黒い漆黒のモヤが広がり、中央にギラリと双眼が不気味に光る。

 

 状況は更に悪くなる。

 

「まだ待て。目的の人間が目の前に居る」

「・・・」ギロリ

 

 待ったを掛け荼毘は一騎を見る。それに対し一騎は目を鋭くし睨み返す。

 

「貴方達!!」

「無事だったか!!」

 

 一騎と荼毘がにらみ合っていると一騎達の背後からマンダレイと虎が駆け寄る。

 そしてマンダレイ達は即座に今の現状を見て一騎達を庇うように前に出る、これで状況は好転した!・・・・わけでは無い何故なら。

 

「勝手に動くとこの女の顔が焼け爛れるぞ」

 

 荼毘の足もとには未だに気を失っているピクシーボブの姿が有った。

 

「取引をしようぜ、不死黒 一騎」

 

 人質を取られた事で動けなくなったのを見て荼毘は提案をすると一騎は目付きを鋭くし睨む。

 圧倒的な威圧を向けられても荼毘は一切怯むこと無く一騎を見据えるために一騎は威圧を納めマンダレイ達の前に立つ。

 

「そこで止まれあと刀を渡せ」

 

 言われたとおり一騎は止まり刀を荼毘に投げ渡す。投げ渡された刀を掴みコンプレスに渡す荼毘を見て一騎が口を開く。

 

「で、取引って何だ?ピクシーボブを解放する代わりに俺に死ねとでも?」

「え!?」

「不死黒君!?」

「どう言うことだ!!」

 

「此奴らの目的に俺の殺害も有ったんです」

 

 敵連合の目的は爆豪と物間の誘拐だけだと思っていたから皆驚きなら何故逃げなかった等を言うがそれに対し一騎はただ一言

 

「俺一人だけだったら戦闘も身を守ることも撤退も余裕で出来たんです」

 

 その言葉で全員苦虫を噛み潰した様な表情になる。特に緑谷達は逃げろと言われたのに逃げなかった事で「お前ら足手まといが居たからこうなった」とでも言われたように思い更に表情が歪む。

 

「で、取引って?」

「此奴を解放する代わりにお前が付いてこい」

 

 殺さないのかと?と一騎は疑問に思うが、敵連合の一騎への対応は確保と殺害だった。これは結局殺せと言う事では無く確保メインにし出来なければ殺害ということ。

 だがマスキュラーは殺すことしか考えておらず話しを全く効かなかったために殺害リストと口にした。

 

「殺さないのか」

「スポンサーがお前を欲しがってんだ」

 

(スポンサー?やはり死柄木を支える者、または導く者が居るのか?)

 

「どうする」

「ピクシーボブはヒーローだ殺される覚悟もあるかもよ」

「だろうな。だから」

 

 一騎の言葉に荼毘は鼻で笑うと小さな縦笛を取り出す、それに皆は警戒するが荼毘は気にせず吹くも笛からの音は誰にも聞こえなかった。

 だがなんの前触れも無く荼毘の横に移動していたタコ脳無が腕を皆がいない方に伸ばすと「うわあ!!」と叫び声が聞こえ誰かが脳無の元まで引づられる。

 

「・・・青山」

 

 囚われた人物は青山だった。

 そして彼を見て全員驚くがその中で一騎は有ることに気づき更に表情が崩れる。

 

(あぁぁぁぁあああ!!そうだ!なんで気づかなかった!八百万のペアは青山なのに何であのとき青山がいないことに疑問を覚えなかった役立たずが!!

 脳無相手にする程度の事でなに視野を狭めてんだよバカが!!最悪だ!!!)

 

 内心自分への非難に荒れまくる一騎。その顔は変わらないがその内心を感じ取ったのか荼毘は手応えアリと捉え更に言葉を続ける。

 

「どうする、ヒーロー」

 

 その一言で一騎は悩むが即座に荼毘が右手に蒼炎を灯し青山の顔に近づけた事で選択権が無いことを知り一騎は諦める。

 

「わかった!言うとおりにする」

「何言ってるの!不死黒君!!」

「私達がどうにかするから!」

「無理ですよ」

「え・・・」

「二人も人質取られて、バカみたいに強い脳無相手にして、足手まといを守りながらどう戦うんですか?貴方達だって戦闘向きのヒーローじゃ無いでしょ、だから蜥蜴の男やオネエの人に手こずったんでしょ」

 

 ヴィランの元に歩きだす一騎にマンダレイと虎が引き留めようとするが、冷たく返された言葉で黙り込んでしまう。

 そしてヴィラン元で付くと振り返る。

 

「ミルコさんが居れば、いやミルコさんじゃなくとも戦闘特化のヒーローが居てくれれば。そういったヒーローが居ないだけでほぼ負け確だったんですよ、襲撃されない対策しても襲撃された後の対策はしてなかった・・・」

 

 自傷の笑みをする一騎の顔を・・・いや、目を見てマンダレイと虎は絶句する。その目は自分たちヒーローに一切期待していない目だった。

 そんな目を見てしまえばマンダレイ達は何もいえなくなり、タダ何かを言おうと口を動かすもただ息を吸ったり吐いたりすることしかできなかった。

 

「さあ青山を放せ」

「あぁ」

 

 約束通り荼毘はタコ脳無に指示を出し青山を解放すると一騎の頸を掴もうと手を伸ばす。

 

 

 ――パシンッ!

 

「!?」

「でも二人も帰して貰う」

「オッェエエエ」

 

 荼毘の手を振り払い油断しているコンプレスの腹に拳を叩き込む。その衝撃でコンプレスの仮面が衝撃で落ち口の中に隠していた爆豪と常闇の球も落ちる。

 それを見ると二つの球を蹴ろうとするが同時に荼毘が一騎に蒼炎を放つ。それにより一騎は上半身が蒼炎に包まれるも蹴り抜き球を緑谷の方に飛ばす。ただし一つだけ。

 

「見た目だけじゃ無く、ゲホ!しっかりと高火力かよゴッホゴッホ」

 

 蒼炎が消え緑谷達が見たのは、上着は焼け落ち右半分は火傷し右腕は顔を守る為に差し込んだために酷く焼け爛れた一騎を後ろから首を掴む荼毘の姿だった。

 

「やってくれたな」

「お互い、さまだ」

(・・・球を蹴り飛ばすと軸足を即座に入れ替え女も蹴り一瞬で助け出すか)

 

 表情は何処までも冷めているが内心荼毘は一騎のやったことを評価し流石はステインが認めた男だと認識する。

 

「コンプレス」

 

 名を呼ばれコンプレスは取り替えされた球の個性を解除すると球から常闇が現れコンプレスは「折角アドリブで頂いた子が」と呟きゲートを潜り続くようにトゥワイスもゲートを問いを潜る。

 そしてトガは一騎に近づき左手を取ると手に付いてる血を舐め恍惚とした笑みを浮かべると前腕に噛みつき血を吸う。

 

「お前も戻れイカレ女」

「ニャーなのれす」*4

「燃やすぞ」

「ぶ~・・・またね、一騎君」

 

 前腕から口を放すと一騎の血とトガの唾液が混ざった薄赤い端ができ重力に従い中心が垂れ途切れるとペロリと舌なめずりをしてトガは微笑みゲートの中へと消えていく。

 

「では貴方も」

「あぁ」

 

 際に残る荼毘の元にゲートは近づく。

 

「不死黒く「みいんなぁ!」!?」

「やお、万に!チップはゲッホゲホッ しかけた。あとはショーダウンと言ってくれ! がッハ!!」

 

 蒼炎で喉が少し焼け喋り難いにも関わらず叫んだことで血を吐くが言いたい事は言ったので少し満足した表情を浮かべる。

 だがそんな表情を見て緑谷が叫ぶ。

 

「逃げて不死黒君!!」

(無茶言うな。脳無相手で体力も精神も使いすぎたし、両腕動かないし、蒼炎で喉が焼けて喋るどころか息するのも辛いんだよ。血も足りないし・・・ハァ~何処で選択ミスったんだろ)

 

 一騎が自省の念にかられてる間にもゲートは進み荼毘を包み一騎ももうすぐで包みきる。

 

 

 

 

 

「お兄様!!」

 

 

「!?」

 

 その前にユエが森の中から現れる。

 

「お・・・にい・・・さま・・・!!」

 

 ボロボロの姿で首を掴まれて真後ろにゲートがある一騎の姿を見て全てを察しユエは一瞬で赤鱗躍動・載を発動し一騎に向かい走る。

 

「ユエ」「お兄様!!」

 

「お兄ちゃんは」

「手を!!」

お兄ちゃんは 大丈夫だから」

 

 ユエは必死に手を伸ばし掴む。

 

――ドス!

 

 ただし掴んだのは何も無い空中。

 

 

「!・・・あ」

 

 ユエの手はギリギリ届かずゲートは閉じユエは地面に倒れる。そして直ぐに起き上がり振り向くもゲートは無い。

 

「あぁああ」

 

 大事(大好き)な兄は目の前で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

誘拐された(居なくなった)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
下昆(顎)・人中(鼻の下)・烏兎(眉間)

*2
イメージは下半身は殺せんせー上半身はルナ・ドーパント

*3
正確には三角筋側

*4
腕咥えながら








次回「林間合宿襲撃後」



それでは、期待せずにお待ち下さい。
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ここすきめっちゃ増えてて嬉しスッ!あ、来週はお休みです!
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