無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第63話:林間合宿襲撃後

 

 

「あぁあぁああああああああああ!!!!!」

 

 ギリギリ手が届かず目の前で大好きな兄を攫われたユエは絶叫する。

 

「・・・」

 

 それを遥か上空、雲より高い位置でハンターが見下ろしていた。

 

「・・・どう言うことだ」

 

 ハンター達はこの襲撃を知っていたが、一騎の誘拐の件は知らなかった。エリクから聞かされていなかった。その為にハンターは確認する為にこめかみに人差し指と中指を当てる。

 

『ハンター?どうした?』

 

「どうしたもこうしたも無い。俺は聞いてないぞエリク」

 

『待て待てどう言う意味だ?』

 

 意味が分らず焦るエリクの声を聞いてハンターは怪訝な顔をして、ただ一言告げる。

 

「彼奴ら一騎にも手を出し誘拐したぞ」

『!?』

 

 エリクの反応でハンターは大体を察しAFOにしてやられたなと悟り次の指示を聞く。

 

「で、どうする?」

『お前は直ぐに彼奴らのbarの近くで待機しろ。指示次第即皆殺しに出来る様に』

「了解だ。 お前は?」

『俺は自力で死に損ないの方に向かう』

「分った」

 

 通信を終わりハンターは手をポッケにしまうと溜め息をつくと眼下で狂ったように叫び狂うユエを見て目を逸らすとその場から消える。

 

(そう言えばあのガキ何処かで見たこと有るような・・・)

 

 

 

 ~???~

 

 

「エリザベート、話しは聞いたな」

「えぇ」

「なら此所は任せる」

「分りましたわ」

 

 返事を聞いた瞬間に突風が吹き荒れエリクがその場から消える。

 それを見てエリザベートは深く溜め息をつく。

 

(してやられたわね。コレらも坊やを攫うための道具かしら)

 

 エリザベートが顔を上げよこを見ると大量の特殊作戦群がいた。

 

(しかも海外製)

 

 そう、この特殊作戦群は日本の部隊では無く海外の者達だ。

 数週間前にエリク達は海外の政府が変な動きをしているのに気づき調べた所、一騎とユエを誘拐しようとしてるのが分りその作戦日が林間合宿の時なのを知った。そしてこの三日間、エリクとエリザベートは日本に来たあらゆる国の特殊作戦群または犯罪組織を日本の政府に一切知られること無く皆殺しにしていた。

 

 

「了解。全軍作戦続行」

 

「「「「了解」」」」

 

 部隊員はエリクが消えたことに少し驚くが直ぐに作戦続行の指示が飛び意識を切り替えエリザベートに銃口を向ける。

 

あの子(トガ)からそんな話しは聞いていない。間違い無く知らないところでこっそりと進められたわね)

 

 しかしエリザベートは考え事をしているために反応はしない。

 

「撃て!!」

 

 隊長の指示で一斉に何万発もの銃弾をその身に受け一瞬で蜂の巣状態からミンチになる。

 

「鬱陶しい」

 

 しかし体がミンチに成るもエリザベートは生きており、何と肉体は瞬く間に元通りになり復活する。

 パン!と扇子を広げるとエリザベートの影が広がり中から大量の影で出来た狼と蝙蝠を出し扇子を閉じ特殊作戦群に向ける。すると影狼と影蝙蝠は特殊作戦群を襲う。

 

「な、なんだ此奴ら!?」

「うあぁああああ!!」

「この!っ!?銃が効かない!!」

「ギャァアアア!!」

「イダイダイダイい!!?」

 

 

 特殊作戦群は影狼や影蝙蝠に発砲するも弾丸は効果が無く特殊作戦群は噛みつかれ生きたまま喰われ始める。それに異形型の耐久度は関係無く全員が生きたまま喰われ周りには阿鼻叫喚が広がるもエリザベートは五月蠅いとごちり考える。

 

(此奴らはオールフォーワンの手先だったり?このために、私達を足止めするために送り込まれた?・・・まぁなんであれしてやられたわね)

 

 考えた後に鏖殺が終わった影狼と影蝙蝠が近くに戻ってきたのを見る。

 

「ユエは大丈夫かしら」

 

 そして手を振り影狼と影蝙蝠に周囲にいる特殊作戦群を皆殺しにしてこいと指示を出す。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「あああお兄様お兄様お兄様!!!」

 

 目の前でボロボロの一騎が誘拐されたのはユエの心を抉るのに十二分すぎるほのど威力があり、ユエの心は滅茶苦茶になっていた。

 涙と鼻水と涎で顔をグチャグチャにし髪を両手で掻きむしり絶叫しながら何度も頭を地面に叩き付けていた。

 

「いや、嫌です!!また一人になるのは嫌です!!また、たまたあの寒い世界に戻りたくない一人は嫌で。やだ、ヤダヤダヤダ!!!!

 お兄様!何処ですかお兄様!!!一人は・・・独りぼっちは寂しいです!もう置いて行かないで!! いなくならないで! 側にいて下さいお兄様・・・・・・

 

 

 

 お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様お兄様」

 

 

 

 

 ユエの狂った姿に誰も近づけなくなっていた。それどころが次第に地面が揺れ立っているのもやっとの程の地震がおきる。

 

「な、なに!地震!?」

 

「お前ら!!」

 

 そんなとき相澤が森から現れる。

 彼は現状を見てユエの乱れようにお兄様と連呼しているのを見て一騎が目の前で誘拐されたと分かり苦虫を噛み潰した様な顔をし何時も間に合わない自分に怒りを覚えるも今はそれをおいて転びそうに成りながらもユエに駆け寄る。

 

「ユエ!」

 

「お兄様お兄様お兄様」

 

「おい!!しっかりしろ!!!!」

 

 声をかけるも無意味。てかそれよりも地震が五月蠅く声が聞こえてるのかも分らない。

 

(クソ!!何だ今の状況は!!これだと・・・・・は?)

 

 この地震が攻撃なのか自然現象なのか分らないでいたところ突如離れた所の地面が割れ大量の水柱が天高く上がるのを見て相澤は驚愕するも理解した、この地震はユエが起こしていると。

 そして直ぐにユエに抹消を使うと水柱は消え地震が収まる。

 

 ユエが影響を及ぼしていたのは地下にある水脈。しかも影響を及ぼした水脈は不圧帯水層(浅い水脈)では無く更に深い被圧帯水層(深い水脈)だ。

 そして遥か遠くに離れた所に水柱がいくつもたったのは今のユエの精神が乱れ個性が暴走し周囲の液体に影響を及ぼし操作範囲の2.5キロ外にまで及んだ。そして地下深くの水が噴き出す時に地層を壊したことで森林は地割れが起き地盤は起伏が激しくなり地面から水脈の水が吹き出した。

 ユエの近くに居た相澤達はマジで奇跡的に助かっただけ。

 

「お兄様!!!」

「すまん」

「!・・・」

 

 原因が分れば直ぐさま抹消でユエの個性を消す。地震の音が無くなった場所では未だにユエの悲痛な叫びと錯乱による音だけが響き渡っていたことで相澤はユエの心が完全に壊れると悟り首筋に手刀をし、意識を刈り取る。

 そして気絶したユエを背負うとマンダレイ達の元に行き少し話し皆でマタタビ荘に向かい始める。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 敵連合が去った15分後に救急や消防、雄英のヒーロー達が到着し一騎と爆豪の二人が誘拐された真実は直ぐに全員が知ることになる。

 

 そして一騎は洸汰、マンダレイ、八百万、小大、障子の説明の統合で洸汰を助けるために血狂いマスキュラーの戦闘後に自分対策の黒脳無を相手にし更に八百万と泡瀬の為にもう一体脳無を引きつけ小大を守り肩を少しとは言え抉られ最後に人質になった青山とピクシーボブを助けるために取引に応じる。その際に連合を出し抜き常闇も取り返すもその際に蒼炎を至近距離でモロに受け上半身の右半分に火傷を負い右腕は酷く焼け爛れそのまま誘拐された。

 

「うっ・・・うぅ」

「無茶すんなって言ったのに・・・!」

 

 全員その話しを聞いて驚き、命を助けられた結果一騎が大怪我を負う目の前で見た小大は両手で顔を覆い涙を流す。そんな彼女にB組女子は駆け寄るなか、拳藤も駆け寄るが血が出るほど強く唇を噛む。

 泡瀬はその場に立ち尽くし爪が皮膚に食込むほど拳を握り絞める。

 

 

「そん、な・・・・・不死黒さんが」

 

 八百万は力が抜けた様に膝を着き俯くが、直ぐに顔を上げ立ち上がると歩きだす。

 その先に居るのは一騎が洸汰吸湿の際に外した重りを抱え壁にもたれ座り込み俯き死んだ目で動かず、救護の人も先生の声に一切反応せず屍のように動かないユエ。

 

「ユエさん」

「・・・」

「ユエさん!」

「・・・・・・」

「ユエさっ・・・!!!?」

 

 八百万がどれだけ声を掛けようがユエは反応しない。だから正面から肩を掴み少し無理矢理にでも顔を上げさせユエの表情を見て驚愕した。目に光は無く焦点も合っていないまるでタダの抜け殻。それを見て八百万は驚きつい手を放して後退ってしまう、その結果ユエは少しふらつくとまた俯く。

 そしてやってしまったと思い八百万はいそいでユエに駆け寄り一度深呼吸して気を引き締める。

 

「ユエさん!不死黒さんなら絶対に大丈夫ですわ!!」

「っ」ピク

「そ、そうだよ!」

「不死黒君は強いんだからだ!絶対に大丈夫だよ!!」

「大丈夫って言っていたんでしょ?なら大丈夫だよ!!」

 

 皆ユエを気遣うが、今のユエに一騎が大丈夫と言う言葉は1番言ってはいけない。

 

「・・・さい」

「? ゆ、ゆえ「うるさい!!」 え、え?・・・・・・ヒッ!!?」

 

 伸ばされた八百万の手を振り払うと力いっぱい突き飛ばす。

 

 突然の出来事に全員が唖然とし八百万も何起きたのか理解出来ず頭の中が真っ白のまま顔を上げると前に垂れた髪の間から見えるユエの紅い瞳と目が合い小さな悲鳴を上げる。

 

「何も知らないくせに!!」

「ユエ、さん・・・」

 

 ユエが顔を上げると両眼に涙を溜め怒りの表情が現れていた。

 

「何も知らないくせに!何も知らないくせに!! お兄様は強いから大丈夫?お兄様が大丈夫と言ったから大丈夫? そんな訳無いでしょ!!

 お兄様が、お兄様が私にお兄ちゃんは大丈夫って言うときは!! 大丈夫じゃ無いときなんです!! 痛くて、辛くて、苦しくても、私に心配掛けないようにするときの言葉(口癖)が!お兄ちゃんは大丈夫って言葉なんです!!

 お兄様のお兄ちゃんは大丈夫は心も体も追い詰められて全然大丈夫じゃ無いときなんです!! 何もしらない癖に好き勝手言わないで!!」

 

 静寂の中に荒れたユエの吐息だけが聞こえる。

 皆ユエを気遣って言ったのだがユエに取ってはその言葉のどれもが無責任でイラつく言葉だった。

 

「・・・」

「ま、待って!ゆ――」

 

 ――最低ね、この事件の原因を作ったのは貴女よ、八百万 百。

 

「っ!・・・うっうぅ」

 

 涙を流しながら立ち去るユエを引き留めようと八百万は手を伸ばすが、その手はユエの手を握る前に動きがふらふらと落ち八百万は口を震わせ名を呼ぶことすら出来なかった。

 

「・・・・・・ご、ごめんなさい」

 

 口を押さえ涙を流す八百万にその場にいる()()()誰も声を掛けることが出来なかった。

 

 ――誰に対する謝罪でして?貴女がいなければUSJの時に死柄木弔が捕まりあの御方が誘拐されることは無かったのにね、疫病神。

 

 

 

 

 

 

 

「直ぐに帰れるように準備してお兄様を助ける計画も考えないと」

 

 ユエはマタタビ荘に戻ると直ぐに自分の荷物を纏め男子部屋にある一騎の荷物も纏めながら一騎を助け出す為の作戦も考える。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 一騎と爆豪が誘拐されてから1時間ほど、とある研究所にある手術室の手術台の上に一騎は寝かされていた。

 

 

「これは凄いぞ!!まさか入れられる個数が決っているタイプでは無く、与える個性によって入れられる数が変わるストレージタイプとは!しかも元より10個は余裕で入るぞ! マキアを越える逸材、このタイプを見るの80年ぶりじゃ!」

「興奮しているねドクター」

 

 一騎の近くでドクターと呼ばれた小太りな爺、殻木球大とAFOの二人は一騎の体内に入る個性の数に驚き興奮していた。

 同じ体質の人間は長生きしている二人も滅多に出会うことは無かった。いたとしても4.5個で限界が来る雑魚ばかりだった。因みにあのタコ脳無もこのタイプだった。

 

「しかしこの大火傷で脈拍は安定しておるとはいやはや最近の若者は末恐ろしいもんじゃ」

「そうだね■■とは違い途轍もなく丈夫な健康体みたいだ。これだと良い器になるね」

 

 優しげな声とは裏腹にその言葉には途轍もなく邪悪さが滲み出ていた。しかし一騎の火傷をしていない方の顔を撫でるとAFOのその姿からはとても想像出来ないほどの優しい雰囲気になっていた。

 

(口元は強香共々そっくりだね)

 

 ――ドゴーン!!

 

「な、なんじゃ!?」

 

 AFOが一騎のことに色々と思っているとき、突如建物全体が揺れ爆発音が響く。

 揺れた衝撃で殻木は尻餅を着きAFOはとある一点を見つめ「やはり来たか」と呟く。

 

「ドクター直ぐに帰ることを勧めるよ」

「な、何故じゃ?」

「彼が来た」

「!?エリクサーがか!!それじゃと早く帰らねばな。儂もまだまだしねん」

 

 まだまだやりたい事、やりたい人体実験が有る殻木はエリクが来る前にそそくさと一騎から採取した血、体液、口腔粘膜、体毛を纏めるとAFOに別れの言葉を継げ、口からヘドロの様な物を吐き出しそれが消えると殻木の姿は無くなっていた。

 そして殻木と入れ替わるかのように手術室の扉が吹き飛び煙の中からエリクが現れる。

 

「よぉーオールフォーワン。一騎を返して貰うぞ」

 

 輪郭が歪んだかと思える程の濃密な覇気と殺気を放つエリクにAFOは一筋の汗を流す。

 そしてエリクが一歩一歩脚を進める度に物はガタガタと震えガラスやビーカー等のガラス製品には罅が入ったり砕けたりしだす。

 

「随分速い到着だね。君の居た場所からここまで約102㎞を1時間半も経たないうちに来るとはね」

「御託はいい、とっとと一騎を返せ。・・・・・チッ」

「僕がようやく手に入れたこの子を手放すと思うかい?」

 

 真っ暗闇から複数の人型が現れる。

 

「脳無か」

 

 エリクの言うとおり脳無が現れるが、数体どころの話しでは無く、 ハイエンド3体、上位8体、中位15体、下位36体、合計62体の脳無が現れる。

 しかしエリクは一切臆することは無い。それどころか更に鬼の形相に成りAFOを睨む。

 

「・・・」

「オ前ツツ強イ?

「テ敵?ハイ排除ス――ガッアァア!!」

 

 

 一騎が相手したタコ脳無『オクト』フードを被ったような脳無『フードちゃん』脳無特有の異形さは無いが途轍もないな筋肉質が特徴の脳無『マッスルン』がエリクの前に出る。

 しかし次の瞬間、誰の眼にも止らずエリクの踵落としがマッスルンの脳天を捕らえ地面に組み伏せる。

 

 

「ナナニ何ガオオオ起キタ?ガァアアアアア」

「五月蠅い」

「!?」

「いまなぁ~お前らの飼い主とだぁ~いじな話しをしてんだわぁ。だから大人しくしろ、なぁ?」

 

 マッスルンは何が起きたのか分らず混乱するがエリクの言葉に目線を向けると全てを凍てつかせるような冷酷な目、そして殺気に恐怖する。

 USJの時の脳無は一騎が死んだと思ってもボロボロの状態で立ち上がったのを見て最初の死柄木の殺せと言う命令に反応しなかった。ならば一騎以上の濃密な殺気を放つエリクが意識があり知能が高いマッスルンに与えれば必然的に

 

「・・・・・・」

 

 恐怖により機能停止、詰まりは気絶する。

 

「はぁ~」

 

 殺気に他のハイエンドも後退るのを見てエリクは溜め息をつきAFOに睨むだけで殺せるような眼を向ける。

 

「で、この程度の戦力で俺をどうにか出来ると思っているのか?」

「無理だろうね。前にも言ったけど今戦えば最終的には君は無傷で僕達は全滅だろうね」

「ならば「けど」っ――」

「僕達が今此所で戦争を起こせば間違いなくこの子は死ぬよ」

「チッ」

 

 AFOの指摘にエリクは舌打ちをする。

 今一騎は左肩は軽く抉られ右半身大やけどに右腕は焼け爛れた状態*1。しかも完全に気を失っている為にもしエリクとAFO&大量の脳無が争えば確実に一騎は巻き込まれて死ぬ。

 もし、エリクが一騎を抱えて逃げてもAFOや脳無の攻撃を避けながらとなると一騎への負担が大きいために結局身の危険、引いては命の危機に陥る。

 

「あんまやりたくないが、クソガキの居る建物の上空にハンターがいる。指示一つで殺せるぞ」

「それはこまるね。でももし弔が死ねばまた時間を掛けて新たな僕の器を作るさ」

「っ」

「君も分るだろ?この子がどれだけ僕に取って大事か」

 

(此奴にとって一騎は重要、けどいざとなれば必ず自分の手で一騎を殺すだろう)

 

 考える、一騎を連れて逃げるルートを。けどその全てが無意味、どうしようと()()()()()()()()使()()()()のが分っていたから。

 そうしなくてもハイエンドや他の脳無に邪魔されずに一瞬でAFOに肉薄し全力の拳を叩き込むことは出来るが恐らく、いや絶対に一撃では仕留めきれない。そしてそうなれば戦争となる為に詰まりは積みの状態だった。

 

「今は一騎が生きてることを最優先とするか」

 

 実に業腹だが、エリクは一騎の全てでは無く一騎の命を優先する。

 

「で、何の個性を入れるつもりだ」

「そうだね、とりあえず超再生、超パワー、筋力増強は確実かな。本当はコピーの個性も欲しかったが、君のお陰(所為)で手に入れることは出来なかったからね」

 

 一騎の為にAFOは物間のコピーを今年の雄英入学生名簿を見たときから狙っていた。そして体育祭での物間の失言で彼が退学になると確信したが、物間は退学にならなかった。その理由は一騎が物間を許したからとか軽い理由では無い。

 本当は雄英は物間を退学にするつもりだったが、それを何処で聞きつけたのかエリクが根津に電話を掛け物間を退学にすれば邪魔な存在になるから殺すと言い、そして一騎が許したのなら大の大人がギャーギャー騒がず一騎の顔を立てろと一方的に告げたのだ。しかもそうしなければ雄英生を1日に10人殺すとまで言ったのだ。

 

 結果このお陰で物間はAFOに個性を奪われることが無かった。

 

「知るか。あんな個性主義社会代表的な個性を一騎の中に入れさせて堪るか、他の個性もそうだ」

「ならどうする?」

 

 何の個性を一騎に入れる?最早AFOは一騎に個性を入れる事が前提、一騎に比べると死柄木弔の価値が無い為に人質にして個性を入れさせないと言う事も出来ない。

 そこでエリクは少しの沈黙の後に神妙な面立ちで答える。

 

「俺だ、俺の■■■■の個性を一騎に渡す」

「 !!・・・良いのかい」

「何処の馬の骨とも知らねぇ奴の個性を入れられるよりかはましだ」

 

 自身の個性を渡すとなれば自分は無個性になると言うことなのにエリクは一切迷わない。そしてとっととやれといった眼を向ける。

 

「本当は僕が欲しかったんだけどねぇ」

「ハッ!もし奪ってみろ、そうしたらお前の個性オールフォーワン以外全部消し去ってやる」

「フフッそれが比喩じゃ無いから怖いね。しかも脳無に持たせても他の人間に持たせてもほぼ没個性同然になる。君だからこそ、その真価を発揮でき――「なぁ御託は良いからとっととやれ」 連れないねぇ」

 

 何十年も賭けてようやくエリクを出し抜くことができたことが嬉しく口数が多くなった事でエリクに睨まれ肩をすくめるとゆっくりとエリクと一騎の額に手を伸ばす。

 

 そして少し経ってからAFOが手を放した事で終わったと判断したエリクは眼を開けると自分の中から何にかが抜けたことを知りその代わり直ぐ側に居る一騎から自分の抜けた何かが有ることを感じ取った。

 

「・・・一騎」

 

 少しして懐から赤い液体の入った試験管を取り出すと中身の液体を一騎に飲ませる。すると一騎の負っていた火傷や怪我は瞬く間に完治する。

 ゆっくりと一騎に手を伸ばし優しく頬を撫でる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ごめんな一騎)

 

 

*1
殻木の手当済み





地獄への第一歩、個性持ちにされる。
一騎は彼らとは違い他人の個性を与えられても嬉しくない。


次回「次の為に」


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