第64話:次の為に
~???~
「うっぅ・・・あ?ここ、は・・・」
何処か分らない自分を照らす小さな電球の光しか内場所で目覚める一騎。
「・・・あ?」
寝起きで朦朧とする頭を無理矢理働かせ一騎は現状把握に努めようとするも、ジャラリと音が鳴りそらに妙な感覚の違和感で自身の体を見下ろす。
(椅子に座らされてる?しかも手足には手錠をして動きを封じると来たか。・・・体の怪我が治ってる、治療系の個性か・・・ユエが怒るなぁ~・・・あ)
『お兄様!!手を!!!』
頭がハッキリとしてくると最初に思い出すのは自分に手を伸ばすユエの姿だった。そこから結局自分は誘拐され今は人質状態になってることを把握する。
「ユエ、それに皆も無事だといいな」
自分がヤバイ状況にあろうとやはり一騎はユエや重傷の緑谷に少しの間とは言え人質になってた青山に脳無に襲われた八百万に小大といった他の皆の心配をする。
が、そんなのとき・・・。
「おはよう、不死黒一騎君」
暗闇から声が聞こえる。
「ッぅ!!? ・・・あっ」
一切の気配も無く突如現れた体にへばり付くような悍ましい気配と声に一騎は咄嗟に声の発生源から距離を取ろうとするも椅子に拘束されてることを忘れていた為に激しい音と共に椅子ごと倒れ込む。
「そんなに怯えないでくれよぉ。そんな反応されると案外凹むんだぜ」
コツコツコツと靴音を響かせ電光に照らされたのは生命維持の為の医療チューブが何本も繋がれ顔が潰れ?のっぺらぼう状態の男、オールフォーワンだった。
「大丈夫かい?」
オールフォーワンは優しく一騎を椅子ごと起こさせると近くの場所から椅子を持って来て一騎の正面に座る。
「おっおまえ、一体誰だ? 人間であってるよな?」
体が僅かに震えるも一騎は何とか声を振り絞り問いかけるとオールフォーワンは小さく笑い答える。
「僕の名前はオール・フォー・ワン。エリクとは違い一応僕はまだ人間だよ」
「エリクを知ってるのか?(エリクとは違い?エリクは人間じゃ無い?・・・アレを人間の定義では収まらないかな)」
「あぁ。旧知の仲さ」
「・・・エリクはどちらかと言うと嫌いそうな人種に見えるけど」
「酷い言われようだねぇ~」
「違うのか?」
「違うよ?」
「そうなんだ」
「彼とは仲良しでね、何度も殺し合った仲さ」
「それ仲良しじゃねぇだろ!」
「鋭い指摘だね」
(なんで、なんで俺はこの男にこんな
思わず一騎は突っ込みを入れてしまいオールフォーワンはクツクツと小さく笑う。
だがその間も一騎はオールフォーワンから感じる感覚に体の震えが止らなかった。エリクの時は敵意は湧かず懐かしさを覚え全く怖く思わなかったのに。
「で、お前が継ぎ接ぎ男の言っていた俺を欲しがっている敵連合のスポンサーか?」
「そうだよ」
例え怖さを感じても感づかれないように一騎は強い姿勢を崩さなかった。
そしてなんてこと無いように返された事で一騎は睨む。
「なんで俺を誘拐した、何が目的だ、なにをさせたい!!」
「そんなに焦らなくてもまだ時間は少しあるから答えてあげるよ」
問い詰める一騎にオールフォーワンはまるで未知の探求から質問しまくる子供をあやす大人の様に笑みを浮かべ落ちつかせると語り出す。
「誘拐した理由はね、君の体が目的なんだ」
「(からだ?なんで体?健康体だからか?・・・もしかして)
体を乗っ取る系の個性か?」
一騎は推測から呟くとそれが聞こえたオールフォーワン嬉しそうに口を元を歪ませる。
「正解不正解だよ」
「半分か」
「僕の個性はね使い方次第で体を乗っ取ることは出来るが、それには時間がいるんだ」
「あっそ。じゃぁあなんで俺を?」
「君は、
■の器にしようと思ってね」
「・・・はぁ?」
☆
「敵の襲撃に備える為の合宿中での襲来…恥を承知でのたまおう。"敵活性化の恐れ"…という我々の認識が甘すぎた…奴らは既に戦争を始めている。ヒーロー社会を壊す戦争をさ」
根津が真剣な表情で告げる。
林間合宿の翌日、雄英は緊急の職員会議を開き今回の襲撃のことを話していた。
そしてその面々の中には早々に事情聴取を終わらした相澤とブラドや、今回協力したヒーロープッシーキャッツの一人虎、更には警察側から塚内も来ていた。
「己の不甲斐なさに心底腹が立つ…彼らが必死で戦っていた頃、私は呑気に半身浴に興じていた…!!」
オールマイトは襲撃の詳細を聞き自身への怒りに満ちていた。
そんなオールマイトを横目にスナイプが話す。
「襲撃直後に体育祭を行うなどの『屈さぬ姿勢』はもう使えません。生徒の拉致…雄英最大の失態だ。奴らは2人の拉致と同時にヒーローの信頼も一緒に奪い取ったんだ」
「現にメディアは雄英の非難で持ちきりさ。爆豪君を狙ったのは体育祭で少なからず彼の粗暴な面が周知されていたに他ならない」
「実はそれについて一つ気になっている事が」
「どうしたのかな?」
「爆豪が攫われた事については概ね根津校長が言ったことで間違いは無いでしょう。ですが不死黒が攫われた理由や物間が狙われた理由はいまいち判明しません」
みんな爆豪が狙われたのは大体予想付く。言動が粗暴で強い個性を持ってるからヴィランに引き込みやすいと考えたのだろうと。
しかし物間も狙われ一騎が誘拐された理由が誰もわから無かった。だがここで虎が手を上げる。
「物間は分らぬが不死黒なら全部ではないがまだ分る」
「話してくれるかい」
「・・・継ぎ接ぎの男は不死黒をスポンサーが欲しがっていると言っていた」
一騎は敵連合では無くそれを裏で操る人物が欲しがっていた。その事を聞いたオールマイトは椅子を吹き飛ばす勢いで立ち上がる。
彼の脳裏には狡猾な悪の権化とも思える一人の巨悪がちらつく。
「とっ俊典?」
急に立ち上がったオールマイトに驚き塚内が声を掛けると彼はハッとし一言謝り座るとミッドナイトが疑問に思っていたことを口にする。
「じゃぁなんで不死黒君は自分が誘拐対象だと知らなかったんでしょう?」
「いや、彼なら狙われても自分一人ならどうとでも対処出来ると思い言わなかったとかは?」
「それはないと思う。本当に不死黒君は自身も誘拐対象だと知らなかったんだと思います」
「何故だい?」
「捕らえたヴィランの一人マスタードからの事情聴取によると、不死黒君に情報を漏らしたマスキュラーは話しをちゃんと聞いておらずただ彼生徒を殺すことばかり考えていたみたいだ」
塚内からの説明を聞き皆マスキュラーがイカレてることを知っているために納得してしまう。そしてそれが原因で一騎は自分が殺害対象であることは知っていても誘拐対象になってる事は知らなかったと予想する。
「……さて、色々話したけど、攫われた爆豪君、不死黒君が敵に懐柔でもされようものなら教育機関としての雄英の信頼は地に――」
――ドンッ!!!
地に落ちると根津が言おうとしたタイミングで会議室の扉が乱暴に開けられる。
驚いた全員が扉の方に眼を向け扉を蹴り開けた人物をみて更に驚く。
「み、ミルコ!!?」
「何故貴女が此所に!!」
皆がミルコが居ることに驚く。何故なら会議している日時を知ってるわけも無いし、何よりUAバリアーが反応してないことに驚いた。
「何故UAバリアーが発動しない!?」
「ンなのどうでも良い。・・・おい」
ブラドの問いを一蹴すると根津の前に立ち今にも蹴り殺しそうな眼を向け睨む。
今のミルコの雰囲気のヤバさに止めようとするが次のミルコの発言に全員動きを止められる。
「一騎がまだ帰って来てねぇんだが」
「不死黒君は僕達の不手際で――」
「帰って来てねって言ってんだ。どこに居る」
「不死黒君は、誘拐された」
「ッ!!」
誘拐された、その言葉でミルコは根津の胸ぐらを掴み持ち上げる。
いきなりの行為に全員驚きオールマイトは咄嗟にマッスルフォームになり根津を掴むミルコの腕を掴み根津を放させようとするが、それが出来なかった。
(な、なぜ!?私の力でもびくともしない!?)
「誘拐された?・・・巫山戯るな。お前あの時言ったよな、十全たる準備をしていると。
で、準備した結果がこれか?襲撃され誘拐された?・・・巫山戯んな!!」
ミルコの怒りの叫びを聞いて全員ビクッと肩を跳ね上がらせそしてオールマイトは理解した。マッスルフォームの今の自分の力でもミルコの腕を動かせないのは彼女が本気で怒ってるからだと。
「・・・巫山戯んなよ」
そして根津や相澤はミルコの怒りの理由を知っている。
林間合宿の一ヶ月以上前からミルコは根津の元を訪れていた。
今年は今までと違い雄英はUSJ事件では敵の襲撃を許したりした。しかも一騎に関しては大怪我をするし懸賞金かけられるしと色々有った、その為にミルコは自分を林間合宿の警備に入れろと根津に話した。
しかし根津は何処で情報が漏れるか分らず情報漏洩を危惧してミルコの提案を断わった。だが当然ミルコは引かず万が一襲撃されたらと言うも根津は信じて欲しいと言い頭を下げ説得し、その結果ミルコは渋々諦めた。
なのに林間合宿は襲撃され一騎は重傷を負い誘拐された・・・こんなもの怒らない方が可笑しい。今のミルコはラビットヒーロー『ミルコ』では無く自称ではあるが一騎達の保護者である『兎山ルミ』として来ている。
「・・・・・なんで襲撃された」
苛立ちから舌打ちをして根津を解放するとオールマイトの手を振り払い根津を睨み問いかけると根津は困った顔で返す。
「それがまだ分らないんだ」
「チッ」
根津の返答に感情のまま舌打ちをし、冷めた声色で一言告げる。
「雄英、なんなら生徒側に裏切り者でもいんじゃねぇのか」
「っ」
その一言に言い返せる者は居ない。マイクを初め同じ事を思っていた者も居るし、根津や塚内に関しては一騎からエリクが雄英に内通者が居ると言っていたのを知っているために黙り込む。
息苦しい不意陰気の中ミッドナイトが声を掛ける。
「ねぇなんで貴女はそこまで彼を気に掛けるの」
「・・・」
彼女の質問はこの場に居る全員が思っていたこと。今までのミルコは一匹狼でヒーローデビューをしても何処かのサイドキックをする事も無く誰とも組まず一人でやってきた。
なのに!一騎だけは違った。彼女は職場体験の指名どころか自ら動き一騎の元を訪れスカウトした。しかも職場体験中はずっと一騎に将来ヒーローの仕事に必要なものを教え組手相手をし遠回し的にだが、自身の使える技も教えた。こんな者今までのミルコからは考えられない行為だった。
「・・・彼奴は・・・私に取って大事な女性、不死黒強佳の息子だからだ」
「!?」
思いもしなかった繋がりに全員驚いた。
だが、これでミルコが一騎を特別に思っている理由がわかった。大事な人の忘れ形見、それなら気に掛け大事にするのも納得だった。
「それより、居場所の情報は無いのか」
「いまはまだ・・・」
嘘だ、本当は既に分っている。塚内の情報でとあるビルに荼毘が入り浸っている姿が目撃情報の報告があり、更に八百万の咄嗟の判断で作り一騎が仕掛けた発信器が神野区で反応があった。
つまりこの二つをヒーロー側は襲撃しようとしている。だがこれをミルコに言う事は出来なかった。だって言えば即襲撃するのは火を見るより明らかだったから。
「チッ!」
苛立ちから舌打ちをして踵を返し部屋を出て行く。そんなミルコに申し訳なさと騙した罪悪感で根津は表情を歪める。
「クッソ!!」
部屋をでて少し歩いてからミルコは苛立ちで壁を殴る。
今のミルコは一騎の心配と焦りで苛立っていた。しかも追い打ちの様にヒーロー公安委員会から通達でミルコは不死黒一騎に肩入れしすぎで輪を乱す危険性があるという理由で雄英生救出メンバーから外された上に不用意なことをしないために自宅待機を言い渡されたのだ。
だが当然これはタダの建前で、ヒーロー公安委員会引いては政府は不死黒一騎が精神疾患を患う又は殺害されることを望んでいる為に出来る限り無傷の生存の可能性を下げたいのだ。
もし思い通りぶなれば『やはり無個性なんかがヒーローに成ることは出来ない』ということにできるために。
「――なにがあっても、私は・・・」
少しの沈黙の後に深く息を吐きその瞳に黒い炎を宿し幽鬼の様にゆらゆらと歩きだす。
prrrrrrr
「あ?・・・・っ!」
☆
「本当に良かったんですか」
「仕方無いのさ。普段の彼女ならなにか気づいたハズだが、それにも気づかない程に今の彼女には余裕が無い。そんな状況でまだ裏の取れていない情報を教え何かあれば一大事なのさ」
ミルコが出て行った後に呟いたミッドナイトの言葉に根津が応える。
「先にも言いましたが今は警察が全力で裏取りを行なっております。ですが、全てが作戦が決れば今回の救出・掃討作戦、みなさんの力を貸して下さい!」
「!」
塚内の言葉を聞きオールマイトはギチギチと音が鳴るほど手を握り力強く答える。
「当然だ! 今度奴らに会ったらこう言ってやるぜ・・・私が反撃に来たってね!!」
オールマイトの言葉に全員強く頷く。
(大丈夫だ。不死黒少年も爆豪少年も強い子だ!無事でいる!!)
『一騎がお前なんかに助けられたいと思うか?助けられたと知ったら自殺するかもよ?そしてそんなことで許してくれると思ってるのか?』
オールマイトは一騎と爆豪の無事を祈っているときにUSJでエリクに言われた事を思い出す。
(エリクよ・・・!私は何度でも言おう。例え許して貰えずとも私は何度でも助け、守り、そして導く!何故なら彼は私の大事な生徒の一人なのだから!!)
だが彼は覚悟が決っていた。
☆
「もしもし」
自室で何かをしていたユエはとある人物に電話をかけていた。
『どうした』
そして出たのは先ほどまで雄英教師と話し合っていたミルコだった。
「ミルコさんにお願いがあります」
『お願い?』
「はい。私はお兄様救出に向かいます」
『・・・』
「それでですね。ミルコさん、お兄様救出を手伝って下さい。恐らく公安か政府から勝手に動くなと言われているでしょうが関係ありません。手伝って下さい」
ユエの唐突な誘い。これはミルコに取っては人生を棒に振る可能性が有るが、それでもミルコは即答する。
『おう、いいぞ』
「!? いいんですか?」
迷うこと無く即了承したことにユエは自分から誘っておいて目を見開くぐらい驚いていた。
「お兄様はヒーロー公安や政府から危険視されてます。おそらくは死を望まれてるぐらいには。それを勝手に助けに行くと下手をするとタルタロスに入れられますよ」
『関係ねぇ。寧ろ私から誘うつもりだった』
「本当に良いんですね?」
『あぁ。私は勝手にお前や一騎を弟妹と思ってる。だからお前らを助けるのに邪魔する者がいんなら、蹴っ飛ばす。ヒーローの肩書きが邪魔なら捨てるさ』
「・・・なんでそこまで」
『姉が弟妹を助けるのに理由が要るかよ!』
「・・・・・・・・・・ふ、ふふ、あっはははははははははは!!!」
ミルコの言葉に驚き言葉を失うも少しして笑い始めるユエ。
電話越しで突如笑い始めるユエの声を聞いてミルコは一瞬ギョッとして驚き声を掛けようとするもその声が嬉しそうに聞こえユエが笑い終わるまで待つことにする。
「あ、ごめんなさい」
『大丈夫か?』
「はい。ただお兄様も同じ事をよく言いますので思わず笑ってしまって、すみません」
『ふ~ん」
ユエはミルコが言った言葉が一騎に重なってと言うがミルコ自身、この言葉はよく強佳が言っていた言葉の受け売りなのだ。しかし強佳が言っていたのと同じ様な言葉を一騎が言っていたと知りミルコも思わず笑みがこぼれてしまう。
『そっか・・・』
「ふふ、すみません話戻しますけど、お兄様救出に一緒に人生賭けてくれるんですね?」
『あぁ。ついでに爆豪って生意気なガキもな助け出す』
「えぇそうですね」
お互いの方針は決った。
『じゃぁ今からそっちに向かう。そっから作戦会議だ』
「はい!」
後は準備と計画を念入りにするだけ。
「あ、私の学生書は役に立ちましたか?」
「あぁ助かった。帰ってから返す」
・・・ミルコがUAバリアーに感知されず雄英に入れたのはユエが原因だった。・・・いやダメだろ。
☆
二日後、とある病院の部屋では動けるA組メンバーは緑谷のお見舞いに来て少し話しあっていた。
「オールマイトが言ってたんだ。手の届かない場所には救けに行けないって…だから手の届く範囲は必ず救け出すんだ…僕は…手の届く場所にいた。必ず救けなきゃいけなかった…僕の個性は…その為の個性なんだ…相澤先生の言った通りになった…体、動かなかった…! 不死黒君は・・・あんなにボロボロになって動いたのに、ぼ、僕は・・・・」
涙を流し自身の力不足で救えなかった後悔を吐き出す緑谷に切島がいつもとは違う覚悟の決めた表情で告げる。
「じゃぁ今度は助けよう!」
「へ?」
切島の言葉に八百万と轟以外の全員が驚く。
「おそらく不死黒さん達が居る可能性の高いところ知っていますわ」
静かに告げる八百万に全員が驚愕の眼を向ける。それに気づいた八百万は説明を始める。
「私は不死黒さんが二体の脳無を相手にする時に発信器を作り渡しました。そして受信機で調べた所、別の場所で反応がありました。
この場所は脳無の可能性も有りますがもしかすると不死黒さん達が居る可能性も有ります」
「発信器ってどうして仕掛けたと・・・」
「緑谷は覚えてねぇのか」
「え?」
少し困ってる反応を見せる緑谷に轟は八百万への伝言と言うと緑谷は思い出す。
『やお、万に!チップはゲッホゲホッ しかけた。あとはショーダウンと言ってくれ! がッハ!!』
喉が焼けて痛く苦しいにもかかわらず自分たちに託した伝言を思い出し緑谷はハッと気づく。
「でもチップって」
「不死黒さんに発信器を渡したときに最初に言った言葉がチップでした。そしてショーダウンとはポーカで使われる用語で勝敗を決めるために手札を見せる事ですわ。
そこから考え発信器は仕掛けて後は受信機で居場所を見て勝負、詰まりは反撃を、ということですわ」
八百万の説明を聞き緑谷は納得した時に飯田が声を上げる。
「何を言っている!!これはプロに任せるべき案件だ!俺達の出ていい舞台ではないんだ!馬鹿者!!」
飯田の感情剥き出しの言葉に切島も感情が爆発し叫ぶ。
「んなもん分かってるよ!でもさァ!何っも出来なかったんだ!ダチが狙われてるって聞いてさァ!なんっっも出来なかった!しなかった!ここで動けなきゃ俺ァヒーローでも男でもなくなっちまうんだよ!!」
「落ち着けって切島!気持ちは凄く分るが今回は・・・」
「飯田ちゃんの意見が正しいわ」
上鳴や蛙吹が落ち着かせようと言うがそれでも切島は止らない。
「なァ緑谷!!まだ手の届くんだよ! 掴んで助け出せるかも知れないんだ!!」
緑谷に手を差し出して切島は言い切る。
「敵は爆豪を殺さずに攫った。敵連合の中にアイツを指定してまで会おうとした奴がいる以上、すぐには殺されねぇが…殺されないとも言い切れねぇ。特に不死黒は。俺と切島、そして八百万は行く」
「ふっ・・・巫山戯るのもいい加減にしたまえ!!」
轟の言葉が飯田の火に油を注ぐ。
「飯田さん、轟さんも切島さんも一切巫山戯てませんわ。私達は覚悟を決めています」
「それが問題だと言っている!!」
「待て落ち着け切島の何も出来なかった悔しさも…轟の眼前で奪われた悔しさも分かる…俺だって悔しい…だがこれは感情で動いていい話じゃない」
障子が飯田の肩に手を置き落ち着かせた後に言うと青山も続ける。
「ぼ、僕は不死黒君に助けられた。人質に使われた僕を見捨てることもせず不死黒君は助けてくれた。僕だって助けに行きたい! でも、ここはオールマイト達にプロヒーローに任せようよ」
「青山の言うとおりだ…」
常闇が青山の言葉に賛同した後に蛙吹が告げる。
「皆、不死黒ちゃんと爆豪ちゃんが攫われてショックなのよ。でも冷静になりましょう。どれほど正当な感情であろうとも
その言葉で全員が黙っていると俯いた八百万がぽつぽつと語る。
「昔、ユエさんが学年を飛び級して少しした頃、元のクラスの方達がヴィランに襲われた際に個性を使いヴィランを拘束しました。その後は当然警察やヒーローの方々に咎められましたが、ユエさんは真っ直ぐな目で言い返しました『友を見捨ててヒーローに成るぐらいなら、友を助けてヴィランに成る!!』 と」
「だから行くの?」
「はい。ですが蛙吹さん、なにも戦闘するためではありません、誰にも見つからず助けに行きます」
「そんなの不可能だ!」
「やってみなければ分りませんわ」
「ま、待ってよ!そんな希望論ヤオモモらしくないよ!」
芦戸の言葉に八百万は深く深呼吸すると顔を上げる。
「ですが、“助けに行かない”と“助けに行けない”は違いますわ。私達は助けに行けます」
「だが八百万君!!」
「私は!助けに行かない理由を作るよりも 助けに行く理由を探しますわ!此所で動かなければ私は二度と胸を張ってあの方達のクラスメイトと友達と言えません」
「や、ヤオモモ・・・」
八百万の覚悟を聞いて誰も救出反対派は誰も喋ることは出来ず、医師が緑谷の診察にきてA組のお見舞いは終了した。
――気持ち悪い。こうなったのは
(・・・)
次回から遂に神野編だぁ!
次回「反撃の時」
それでは、期待せずにお待ち下さい。
よろしければ評価やコメントの方お願いします!優しいコメントが嬉しいな~。