無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第68話:2つの覚醒

 

 

「ウッ!」

 

 突き出された剣先が人肉を貫きグチュリと嫌な音を立てた直後に血が噴き出し鉄の臭いが広がる。

 

「そ、そんな・・・」

 

「どこまで・・・」

 

 オールマイトは起きた事を受け入れられず、一騎は表情を歪める。

 

「邪魔をする」

「な、んで」

 

 貫かれたのはユエではなく

 

 

 

「クソ兎がァア!!!」

 

 

 

 ミルコだった。

 

 

 

「ガハッ! ハァ ハァ・・・はは」

 

 鳩尾を貫かれたにも関わらずミルコは小さく笑うと前に進む。

 

「ッ」

 

 動いた事で刃が肉を裂き灼熱感と共に激痛が走るがそれでもミルコは動き刀を握る一騎の手を包み込むようにして握り、何時もの様な勝ち気の笑みではなく子供をあやすように優しい笑みを浮かべ優しく話しかける。

 

「大丈夫だ一騎・・・ハァハァゲホッ! わた、私がどうにかするから。洗脳を解いて彼奴を蹴っ飛ばす。わたしが全部どうにかするから。

 だ、からそんなゲホッゲホッ・・・か、おするな」

 

 全身打撲に内臓損傷、多数複雑骨折。極めつきに鳩尾貫通で何時死んでも可笑しくない状態だが、それでも一騎の為に力を振り話す。

 

『ルミちゃん、全部お姉ちゃんにまっかせなさ~い! どうにかしてみせるから♪』

 

 不意に子供の頃に強佳に言われた言葉と笑みを思い出し小さく笑うと精一杯な笑みを浮かべ右手を伸ばし一騎の頬に優しく触れる。

 

「全部、姉ちゃんに任せろ一騎」

 

「!!」

 

 夜にもかかわらずミルコの微笑みは眩しく見え一騎は目を見開き驚く。

 

「うっゴホっ・・・・・」

「ミルコさん!!」

 

 こみ上げてきた血で咳き込み吐血すると体の限界が訪れガクッと脚から力が抜け後ろ向きに倒れる。

 後ろに居たユエはミルコを受け止めると重傷に表情を歪め直ぐに完治は出来ないと判断するも急いで治癒を行なう。

 

(全身打撲、多数骨折に複雑骨折。内臓損傷に肝臓破裂。内出血も酷いし極めつけは鳩尾の人体貫通で倒れる際に刃が擦れ脊髄損傷・・・速く治さないと)

 

 

 

 

「ハァハァ」

 

 ミルコが吐血した際に顔に付いた血を触り目の前で倒れたミルコを見た一騎は瞳孔が開き呼吸が乱れ明らかに動揺を見せる。

 

「あ、ああ」

 

「お兄様?」

 

「ア”ァア”ァアアアアアアアアア!!!」

 

「!?」

 

 なかば半狂乱となり刀を振り上げユエ諸共ミルコに振り下ろす。

 

「!」

 

 当然ユエはミルコを守る為に動こうとするも出来なかった。いま防御に移れば治癒の個性が途切れミルコが死ぬ。だが止めなければ一騎の振るう刃で死ぬ。 どちらを選んでも一騎が人殺しになる。

 八方塞がり、オールマイトは戦えず駆け付けられるヒーローも警察も居ない。板としても間に合わない誰も頼れない。

 

(なんで、なんで! 私は!轟さんのように個性を同時に使えないの!!!)

 

 轟然りオール・フォー・ワン然り、本来個性複数持ちは個性を同時に使用出来るが今のユエは出来ない。それに苛立ち心の中で叫んだそのとき、声が聞こえる。

 

 

〈違うよ、貴女は〉〈同時に使えないんじゃなく使わないの〉

 

 

 

「え?」

 

 不意に聞こえた妙に聞き慣れた声に驚くと共にユエの目に映る全ての動きが止まる。比喩ではなく完全に、一騎の動きもミルコの出血も舞う土煙も人の声、物音1つまで全てが止まる。

 

「どうして・・・・え!」

 

 

 ☆

 

 

 理由が変わらない。不可思議な現象に驚き瞬きした瞬間に風景は変わりユエは更に驚き立ち上がる。

 

 立ち上がれたのだ。支えていたミルコは居ないだけじゃなく、一騎もオールマイトもオール・フォー・ワンも全員消えていた。

 

「何処?此所」

 

 ユエの視界に広がる空間はあり得ない物だった。

 地面は水面となりまるで鏡の様に全反射していた。そして天気は中央で2つに別れ片方は晴天に太陽がキラキラ輝き片方は満点の星空のなかで満月が美しく輝く、というあり得ない昼と夜が共存している不思議な空間だった。

 

 

〈〈こっちだよ〉〉

 

「え?」

 

 先ほどの聞き慣れた声にユエは驚いたがそれは当然だった。だって声の主は・・・

 

「わ、私?・・・・・・・・・・私!?!?」

 

 2人のユエなのだから。

 只違うのは片方は真っ白な髪に青い瞳、片方は血の様に紅い髪と瞳だった。

 

 

〈私達は貴女で〉〈貴女は私達〉

 

 息が合ったように交互に喋るユエ?達の言葉を聞きユエ本体は言葉の意味を考えエリクの言葉を思い出し1つの答えを思いつく。

 

「貴女たちは私の治癒と液体操作の個性なの?」

 

 ユエの答えに2人は満足したかのように頷く。

 

 人の細胞には記憶が宿り個性には意思が宿ると言われているがそれは御伽噺だと思っていたユエは驚き信じられなかったが、実際に体験したために信じることしか出来なかった。

 

〈そして此所は貴女の〉〈心の中だよ〉

 

「心の中?」

 

〈または心象風景〉〈とか生得領域〉〈といった〉〈言い方があるよ〉

 

 ユエの言葉に個性因子のユエ達は頷き他の言い方もいう。

 そんな説明を聞いてユエは頭がこんががるも頭を横に振り切り替え1番聞きたいことを聞く

 

「それより私が個性を同時に使わないってどう言う意味?」

 

〈そのままの意味だよ〉〈貴女は私達を同時に使わないだけ〉

 

「うそ!私は何度もやろうとした! やろうと、したのに・・・・・出来なかった」

 

〈うんん〉〈やろうとしてない〉

 

 ユエの言葉を個性因子のユエ達は否定し2人はユエにそれぞれ逆の手を差し出す。

 

〈思い出して。昔は出来ていたのに〉〈なんで、今は出来なくなったのか〉

 

「・・・」

 

 ユエは2人の手を取り円を取る形になるとユエは目を瞑る。

 

 

 

『見てくださいお兄様!わたしここまでじょうずに水をあやつりケガを治すことができるようになりました!』

 

『・・・』

 

『あ、あのお兄様?』

 

『・・・あ、ごめんね。流石はユエだね!』

 

『・・・』

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 ばっと手を離し2人から離れるとユエは震える自身の手を見て顔を覆う。

 

〈思い出した?〉〈なんでできなくなったか〉

 

 動揺するユエ(本体)を見て個性因子のユエ達は少し申し訳なさそうな顔をして声をかける。

 

〈貴女はあの時知った〉〈自分が個性を使う度にお兄様が悲しそうな〉〈羨ましがるような顔をしていることを〉〈そして恐れた〉〈個性を使った結果お兄様に嫌われることを〉

 

「そうだ、私はあの時、お兄様に嫌われるのを恐れて個性を使うのが怖くなったんだ・・・!」

 

 持つ物(個性持ち)持たざる物(無個性)の目の前で持たない物(個性)を使えば自慢しているようにしか見えない。

 しかもあの頃のユエは一騎に個性を上手く使えたのを褒めてもらいそれが嬉しく毎日、毎日、毎日毎日毎日!一騎の元に訪れ個性を使って見せていた。

 

「そんなの最低な自慢行為」

 

 悪意無き行為ほどたちが悪いモノはない。

 

 ユエは個性を使う度に辛い表情をしていた一騎を知り個性を使うことを恐れ恐怖した。

 あの頃のユエに取って一騎が全てだった。優しいのも頼りになるのも、そして好きなのも全てが一騎。一騎と二人っきりで居る時間、空間こそがユエに取って至福の世界(楽園)だった。

 

〈そして貴女は無意識に決めたの〉〈同時に私達(個性)を使えないようにと〉

 

「それで結果が今のこれ?」

 

〈〈・・・うん〉〉

 

 個性同時使用が出来ないのは全部己の心の所為だったことを知りユエは黙り込む。

 

「ねえ」

 

 だがそれで諦めることは無い絶対に。

 

〈〈なに?〉〉

 

「貴女たちの力を貸して」

 

 顔を上げ真剣な眼差しで言ってくるユエ(本体)に個性因子のユエ達はその言葉の意味を理解し、お互いに顔を見合いユエ(本体)を見て口を開く。

 

〈いいの?〉〈私達を同時に使えば〉〈お兄様に〉〈嫌われるかもよ?〉

 

「ふふ」

 

 2人の言葉にユエは小さく笑い言葉を紡ぐ。

 

「それは無い。絶対に無いと断言できる」

 

〈〈なんで?〉〉

 

「貴女たち・・・いや、私達なら分るでしょ? お兄様はそんなことで私を嫌いにならないって」

 

 ユエ(本体)の言葉に個性因子のユエ達は驚き目をぱちくりすると直ぐに小さく笑い出す。

 

〈なんだ〉〈分ってるじゃん〉

 

「わかったんだよ」

 

〈うん〉〈いいよ〉〈私達は貴女で〉〈貴女は私達だから〉

 

「ありがと」

 

 個性因子のユエ達は手を繋ぎユエ(本体)の目をしっかりと見て話す。

 

〈〈ただ約束して〉〉

 

「約束?」

 

 

 

 

〈〈絶対に私達の大好きなお兄様を助けてね〉〉

 

 

 

 

「 !・・・・うん! まかせて!!」

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「アァアァアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

 「――障波水蓮!」

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 地面から水が吹き出し一騎の振り下ろす刃を受け止め更には押し返し一騎を後退させる。

 

「アァ?」

 

 突然現れた水壁に憎々しげな目を向け睨む。

 

 現れた水壁は左右に裂け中からユエが現れる。ただ先ほどまでとは違い、銀髪の前髪に赤メッシュがあったが今は至る所に赤のメッシュが入っていた。

 

 

〈貴女が望むのなら私はどれだけの数の人だろうが怪我だろうが貴女の思うやり方で治癒してあげる。〉

〈貴女が望むのなら私はどんな液体だろうと広範囲で精密に操ってあげる・・・だから〉

 

 

〈〈頑張って!!〉〉

 

 

 

「 うん!・・・・・・頑張る!!」

 

 

 

 一回り成長したような表情をするユエを見て頭痛が強くなり痛む頭を抑え切っ先をユエに向ける。

 

「ウッ! 邪魔をするな、俺はソイツを殺せればいい!」

「させません。何が有っても、お兄様を人殺しになんかさせません!・・・・・・・・・あっん!」

 

 しっかりと言い返すと左手首を大きく噛み千切る。ブシュッと大量に血が噴き出し顔にかかるもユエは気にせず左手を掲げると吹き出した血は地面に落ちるどころか逆に上に登り宙に集まりだす。

 

「な、なんだ? 此奴の個性は治療系と水流操作じゃないのか。なんで血液も操れる? 個性を3つ所持?いやあり得ない個性を2つ持つ者はよく居るがそれ以上、三つ目はとなると先生か先生が関与しないとあり得ないはずだ。

 なら・・・・・そうか、そういうことか。 水と血の共通点は両方とも液体だ、詰まりこの女の個性は治療系統の治癒と液体操作の個性か・・・・・――!」

 

 思考から戻った一騎の目線の先には人間の致死量の血どころか人2、3人分の血液量を優に超える血液の球体が出来ていた。

 ユエの治癒の個性には増血の個性が福次効果が付与されている。そして今のユエは治癒と液体操作を同時に使用できることによりどれだけ血を使い無くなろうが途端に増血される。それによりユエは絶対に出血性ショックや貧血は起きない。

 

(お兄様が怪我をさせて仕舞ったのは人はヒーローと警察(特殊部隊)合わせて86人。その内二人*1は治癒完了。そしてこの作戦でいま助けられた一般人は589人、その内急いで手術が必要なのは265人。

 治すのは84人と救助された265人の計349人。・・・うん、大丈夫)

 

 必要な数と位置を液体操作の応用で体液を感知し把握する。

 

「量は十分。さぁやろう私達。最初の合技を」

 

 穏やかな笑みを浮かべ手首の傷口を一瞬で治しあや指と中指を合わせる。

 

「ブラッドヒーリング」

 

 パチンッと指を鳴らすと血の球体は弾け飛び周囲の急いで血用の必要な怪我人の元に跳んでいく。

 

「なっ何だこれは?」

「血?」

「う、うそ!?怪我が」

「癒えてく!?」

 

 いままでユエは治癒をする時は相手に触れていなければいけないために最大でも2人同時にしか治癒をかけることができなかった。しかも治癒する際は頭に流れてくる怪我の位置や度合いの情報を把握しマニュアルで治癒を施していた。

 しかしそれでは自分が一騎の側に居ないときは治癒が出来ないために試行錯誤をして血に治癒の効果を込めた一騎にしか効果が発動しない専用ポーションを作った。

 

 そして今は個性と向き合ったことで個性は覚醒し、液体操作範囲内であれば血を触媒とし遠隔治癒を出来る様となった。しかも治癒はマニュアルでは無くオートマ化にも出来る様になった。

 因みに『血の量=触媒に出来る時間』となり、ショットグラス一杯分で骨折・内臓損傷を治せる。

 

 

「なっぁ・・・!? お前ぇは・・・いったいなんなんだァ!!」

「・・・ふっ」

 

 聞かれたユエは小さく笑うと焔丸を作り横に薙ぎクルクル回転させると地面に突き刺し手を腰にあて胸を張り告げる。

 

「私は! 世界一格好良く!世界一素敵なお兄様(あなた)の妹! 水無月ユエ! 水無月の苗字は嫌いなのでユエと呼んで下さい、お兄様♪」

 

 朗らかな微笑みを作りカーテーシーお辞儀をする。

 

「ユエ?」

「はい♪」

「邪魔をするな!俺はオールマイトを殺せればいい!」

「させません絶対に」

「それじゃぁ!叩っ切る!!」

「赤血橾術、赤鱗躍動・載」

 

 ダッと走り出しユエに迫る。ユエも赤鱗躍動・載で身体能力を上げ焔丸を掴み構え間合いを計るが、とある仕草をした瞬間に一騎が目の前から消えた。

 

「・・・ここ!」

 

 視界から一騎が消えてもユエは焦らず瞬時に焔丸を左側に立てるように構え横なぎの一撃を受け止める。

 

「ッ!?」

「やっぱり」

 

 一騎は初手を読まれたことに驚き、ユエはミルコが時折一騎を見失ったような行動をする理由が分った。

 

(ショッピングモールでエリクがお兄様に使い、お兄様から聞いた特殊な歩法。孤影流・瞬!)

 

 孤影流・瞬。

 相手の瞬きを利用し、瞼が閉じた瞬間に死角に移動することであたかも消えたかのように錯覚させる歩法。

 

 これを使い一騎は最初のエンデヴァーでもミルコでも死角に移動し、消えたことで驚いた瞬間に攻撃をし追い詰めた。

 ただ今までの一騎では出来ず、いまの技術全て殺戮に使うのと体内にエリクの個性があることで使用出来るようになった。

 

「チィ!」

「ハァアア!」

 

 苛立ちから一騎が舌打ちをするとユエは直ぐさま刀を弾き少し距離を取る。

 

「舐めんな!」

「血鬼術・跋弧跳梁」

「・・・クソ」

 

 弾かれ距離を取られるも即座に追撃を仕掛けるもユエは血の斬撃の天蓋で向かい打つ。

 振り下ろした斬撃と血の天蓋がぶつかり合い火花が舞う。しかしそれも少しで脚に来た血の斬撃を見て一騎は後ろに跳び後退し、それに合わせユエは血の天蓋を解き数枚の手裏剣形に再形成する。

 

「赤血橾術・刈払」

 

 着地を狙って放たれた刈払はまだ態勢を整えていない一騎に迫るが次の瞬間には全てが切り刻まれる。

 

 態勢が悪いならそれを生かし体を大きく捻り片手で刀を持ちまるで演舞のような動きで全てを斬り伏せた。それを見てユエは驚きはするが想定内で左手を前に出し何を握り潰すように手を閉じる。

 

「血死沫」

 

 飛び散った血の一滴一滴が針状の形になり一騎の体中を目掛け飛来する。全方位からの回避不可避の技に為す術ないのが普通だが一騎は足を軽く上げると力強く振り下ろし地面を踏み締める。

 

「なっぁ!」

 

 踏み締められた地面は軽く亀裂が入り陥没する。そしてオール・フォー・ワンの攻撃で土が露わになっている地面は簡単に土煙が立ち上がる。

 当然、土煙が上がることで血は土煙に吸収されユエの液体操作の制御から離れる。さらに濃い土煙の所為で一騎の姿が消える。

 

「これは予想外・・・っ! しまっ!」

 

 土煙から黒い物体が高速で飛来し咄嗟に焔丸で弾くが、弾いた物を見た。

 

(これはさっきお兄様が自害で使った鉄筋! 持ってたの!?)

 

 飛来した鉄筋は一騎が使えると思い持っていた物だった。弾いた瞬間に判断を間違えたと悟た、何故なら悟ったのとほぼ同時に腹部に感覚が走り目の前に一騎が居たのだから。

 例え視界が潰れても液体操作で相手の位置は探知出来る。しかし出来ても体がその動きについて来れなければ意味が無い。

 

「退けよ!」

「がッァ!」

 

 腹を大きく割かれる。しかも刀を引いた一騎は体を回転させ両足両手を切断しユエの首を掴む。

 

「邪魔するからこうなる」

 

 両手足を切断され何より腹を切られ内臓が飛び出し零れ落ちるユエは明らかにエグい姿となるも一騎は気にせず首を掴む手に力を込める。

 

「言う事を聞いていれば傷つかずにすんだのに・・・」

「アハ」

「何を笑っていグァッ!?」

 

 瀕死にも関わらず笑みを浮かべるユエに問いかけようとした途端、横っ面を殴られ吹き飛ばされる。

 直ぐさま刀を地面に刺しブレーキをかけると顔を上げ見たのは・・・。

 

「・・・まじか」

 

 自身の足でちゃんと立つユエだった。しかも両足と右腕は既に引っ付いていた。

 そして未だに宙に浮く左腕を手に取ると怪我の断面に合わせ再生させ飛び出た内臓も逆再生のような動きで肌や服に付いた血と共に体内に戻り傷口が消える。

 

 あまりな光景に一騎は驚き開いた口が塞がらなかった。普通飛び出た内臓をそのまま中に戻すと感染症を引き起こすがユエは治癒をオートで使えるために気にしない。怪我だろうが病気だろうが感染症だろうが簡単に治癒してしまう。

 いまの洗脳され記憶の無い一騎はユエがそんな事できると思っていなかった為に驚愕した。

 

「なんなんだよ」

「ん?」

 

「いまのは死ねよ人として、死んどけよ人間として!!」

「拒否します。大好きなお兄様(あなた)を人殺しにしたくないので」

「意味が分んねぇ・・・・う"ぅ"ぅ"…頭が」

 

(オール・フォー・ワンが参戦しない今の戦況はほぼ五分。お兄様は身に着けた技術を全て殺戮に使いいつもの何百倍も強い。けどミルコさんの時から激しい頭痛で本来の力を使えていない。私は個性を同時に使えるようになり覚醒してくれたから強くは成ったと思う。けど今は破裂した水道管から溢れ出る水で瓦礫に生き埋めになってる生存者が水死しないように大量の水を操ってることでリソースを割かれている。・・・)

 

 客観的から見た評価でユエは冷や汗を流す。何故なら評価は五分だが実際は押されつつあるし、一騎を取り返すには決ったことがあるから。

 

「(さっきお兄様は死んで生き返ったけど洗脳は解けていなかった。詰まりは薬物や脳回路を弄ってでは無く本当に精神に干渉しての洗脳・・・心橾さんより遥かに凶悪。目覚めて貰うには凶悪な洗脳を破る強大な切っ掛けが要る・・・)

 大丈夫!私なら出来る!頑張れ私、頑張ろう私達!!私達との約束だもん!」

 

「なに1人で言ってやがる!」

 

 自分に気合いをいれ迫り振り下ろされる一撃を焔丸で受け止める。

 

 戦いは激化する。思いついた洗脳を解く切っ掛けを作るために距離の開いた戦いはできないと決め接近戦で戦うことにし、刀と血の太刀がぶつかり合う度に火花と血が舞う。

 さらに即死にさえ気を付ければ良いと自分の負傷の危惧を大幅に頭から消し去り腕を斬られようと腹を貫かれようと、何なら心臓が潰されても決して止まらず一騎と戦い続ける為に辺りは血の海へと変わっていた。

 

 只当然そんなのをオールマイトが許せるわけ無かった。

 

 

「もう、もう止めてくれ!」

「はぁ!?」

「全て私の所為だ!私の責任だ、だから、だからもう・・・・」

 

 オールマイトは限界だった。一騎への負い目があッたのに更にワン・フォー・オールが原因では無く自分が関わった所為で狙われて誘拐され、洗脳され、個性持ちにさせられ、そして多くの物を傷付け、1番大事にしていたユエを傷付けている。

 こんなのオールマイトに堪えられるわけが無かった。だから償うためなら殺されることを考えるが、それを分ったユエの返す言葉に驚く。

 

「うっせぇんですよ!!」

「!?」

 

「私が好きこのんで貴方を守ってるわけじゃねぇーんですよ!お兄様をグフッ!? ひ、人殺しにしないためにしてるんですよ!!死にたいなら勝手に死んで(自殺して)ろってんです!!

 既に怪我は治してあげたでしょ!自殺も出来るでしょ? それアガッ! 出来ないのなら、ミルコさん連れて逃げて下さい!足手まといなんです!! かはっ」

 

 戦いながら叫び何度切られようと言い続けるユエ。だがそのような不必要な行為は徹底的な隙を晒すことになる。

 

「あっ」

 

 刺突を避けるのを失敗し勁髄を僅かに切られ体に力が入らなくなり次の攻撃を避けることが出来なくなった。

 

(まずい!唐竹割り!?)

 

 跋弧跳梁で防御を図るもオールマイトとの話しで防御がワンテンポ(一瞬判断が)遅れた所為で防御の前に攻撃を受ける、そうなれば脳が損傷し液体操作が上手く出来ないと悟り焦る。

 

 ――バン!

 

「ハァッ!」

「え?」

 

 突如の銃声に一騎は信じられない超反応を見せ弾丸を斬り後方に跳ぶ。そしてユエは思わず尻餅を着いて仕舞うも一騎が見た方に目を向け理解出来なかった。だって目線の先に立っていたのは銃を構える

 

 

「八百万少女!?」

「も、ももちゃん!!?!?!?」

 

 八百万 百、その人だったのだから。

 

「ユエさん!!」

「なんで」

 

 走り寄り前に立つ八百万をみてユエは困惑が隠しきれなかった。いや、恐らく離れた所に居るオールマイトもだ。

 

「居るの?・・・」

「あの狐人が不死黒さんと同じ動き方をするのを見て戻って来ました」

 

 あのとき、八百万は轟と共に爆豪救出するのを見て避難したが、あの出会ったときに親近感のある動きが頭に引っかかり大通りに出た頃に大型モニターに狐人がオールマイトの振るった腕の力を利用し関節を外すのを見て狐人が一騎だと確信した。

 そして轟に一言告げ別れると人波に逆らいながらこの場に戻って来たのだ。

 

「なんで・・・ヒーロー科除籍に、いや犯罪になるよ」

「大事な友を見捨てヒーローになるぐらいなら、大事な友を助けヴィランに成りますわ!」

「!?」

「ユエさんと同じです」

 

 優しい笑顔で手を差し出す。すこし困惑してからもユエは八百万の手を取り立ち上がる。

 

「・・・ごめんね。そしてありがと」

「お気になさらないで下さい」

 

「あぁあ”あ”あ”!!!何なんだよ!次から次に邪魔しやがってアマ共ガァ!」

「そのような言葉は不死黒さんには似合いませんわよ」

 

 とうとう痛みが限界に達してきたのか目が血走り初め殺意を完全に向けてくる一騎に八百万は恐怖で足が竦むが、自分を奮い立たせユエに問いかける。

 

「ユエさん! 不死黒さんを取り戻す秘策は?」

「1つだけ。・・・でも賭けの要素が強く正直分らない」

「それをするにはどのくらい時間を稼げばよろしいですか?」

「・・・・・・・20秒」

「20!?あの不死黒さん相手に20秒の時間稼ぎ・・・」

 

 只でさえ重り有りの一騎にいつも瞬殺されるのに今の一騎は重り無しで殺しに来る、正直5秒持つかも不安だった。

 

「上等だ」

「!?」

「ミルコさん!!?」

 

 いつの間にか目覚めたミルコがまだ違和感のある鳩尾を押さえながらユエの背後から声をかける。

 不適な笑みを浮かべるミルコをみてユエは安心と共に心配する。だって生きてるの不思議な怪我をしたのだ、治癒したとは言え丸1日か2日は眠っていても可笑しくない。現にミルコより軽傷だったエンデヴァーとエッジショットは未だに目覚めず眠っているのだから。

 

「みっミルコさんはあん 「20秒で良いんだな?」 ・・・!」

 

 安静にして下さいと言おうとするも頭に手を置かれ遮られる。驚いてミルコの顔を目をみてこれは絶対に止まらないと分かり止めるのを諦める。

 

「はい、準備のために20秒です。それで必殺技を撃ち、その後に賭け要素の強いことをします」

「分った」

「わかりましたわ」

 

 2人は返事をしてユエの前に立ち一騎に向き直ると戦闘態勢を取る。

 

「おいキャバ嬢のお前」

「八百万百ですわ」

「八百万・・・一騎のクラスメイトか」

「はい」

「・・・八百万、全責任は私が取る、思う存分個性を使え」

「感謝しますわ」

「それじゃぁ・・・行くぞ!!!」

 

 脚に力を溜め合図と共に一騎に瞬く間に迫る。そして八百万はチェコのザブマシンガンVZ61を作り標準を一騎に合わせる。当然実弾では無くトリモチ弾。

 

 

 

 そしてミルコが合図をする前、ユエは赤鱗躍動・載を解除し目を瞑っていた。

 

「私の身体強化での到達点。」

 

 

 

 そう呟いてユエは目を開けると顔にではなく

 

 

 

「赤血橾術 赤鱗躍動・極」

 

 

 

 体中に赤い紋様が浮かび上がる*2

 『載』を身に着け、林間合宿の個性強化の期間で更に上があるのを感じ試そうとするもその負担に体と精神が出来ないと叫び出来ずにいたが、今!個性同時使用出来るユエには出来る技。

 

 

 そしてミルコの合図と共に両手を合わせ途轍もない加圧の百斂を行なう。

 

 

 

 残り19秒。

 

半月狩り(ルナハント)!」

「ガッァアアァア!!」

 

 

 強烈なハイキックに合わせ刀を振り下ろす。

 

「グッゥ! ウッウウウウゥ!!!!」

「!?」

 

 刀と蹴りが衝突して直ぐ刃が勁骨に食込み血が噴き出すもミルコは蹴り抜き勁骨に食込んだ刀を奪い取る。

 

「足もと狙え!!」

「はい!」

 

 

 残り14秒。

 

「邪魔なんだよォおおおお!!!」

 

 奪えたと思った瞬間に態勢を変えた一騎は柄を両手で握り無理矢理地面に振り下ろす。

 ミルコの脚を切断しそのまま地面に刀を振り落と土煙を立て八百万の視界から外れると困惑した八百万に迫る。

 

 

 残り12秒。

 

 

「少し痛いですわよ!」

 

 両方合わせて60発の弾丸が一斉発射されるも一騎はその全てを躱し八百万に肉薄しようとする。

 

「うそ・・・!?」

「クソアマガァ!」

「させるか!!」

「ッ!」

 

 

 残り6秒。

 

「邪魔だァ!」

 

 背後から頭部目掛けて踵落としをするも一騎はひらりと体を回転して避け振り向きざまに左薙ぎを放つ。

 

「私の戦闘に腕は要らねぇんだよ!」

 

 左薙ぎを両手で受け止めるも当然止めきれず右腕は切断し左腕は切断されてはいないが筋肉でギリ繋がった状態。そっして切っ先が腹を少し深めにはする。

 

「グフゥッ!」

 

 

 残り4秒。

 

「いい加減死ねよ!!!」

「こちとらいつ死んでも後悔ないよう毎日死ぬ気で息してンだよォ!!」

 

 サマーソルトキックで刀を上に弾き、一騎の脇を通り八百万を担ぐ形で抱え離脱する。

 

 

 残り0秒。

 

 

「最大威力ゥ!!」

 

「ッ!!」ゾクリ!

 

 時間稼ぎ成功。

 

 

 

 

「穿血!!!」

 

 

 音の壁を越えマッハ3.28に到達した穿血は誰の目にも捕らえることは出来ず、25メートル離れた一騎に一秒にも満たない間に到達する。

 

「アァアァアアアア!!!」

 

 なのに一騎は信じられない野生の感で発射される少し前に刀を振り下ろし穿血を迎え打った。

 

 ――パリーン!

 

「・・・!」

 

 だが当然マッハの威力に只の日本刀が絶えきれるわけが無い。それ何処かこの戦いで散々酷使して来たために普通の穿血でも耐えきれない。

 穿血を迎え打つもその反動で大きく仰け反ったとき、中折れした刀の先がクルクルと回転して落ちてきユエに重なる。

 

「はぁ?」

 

 破片が落ち次に見えたときは力強く拳を握り引き絞るユエが眼前に迫っていた。

 

 赤鱗躍動『極』は『載』を更に越える速度で血流を速くする。だが当然デミリットはあり、血管は血流に耐えきれず磨り減り何れすり切れる。これが末端や小さい血管なら良いが動脈や頚動脈と言った太い血管はもし小さい裂け目が出来ればそこから裂け目が広がり命に関わることになる。更に切れる血管が脳神経付近なら下手な影響が出て後遺症になりえる為に、今まで出来なかった。

 

 しかし今は治癒も同時に使えるようになり血管は血流ですり切れた途端に治癒される為に残るデミリットは使用中は絶え間なく激痛が体中を襲っていること。

 だがその代わり『極』は『載』の数倍の身体強化が可能となる。

 

「この距離は! 逃げ――られない!?」

 

 いきなり速くなった速度に対応出来ず、咄嗟に後方に跳ぼうとしたが足が動かなかった。

 

「これは・・・!?」

 

 靴の裏には強力な粘着力のある何かがくっついていた。くっついていたのは八百万が一騎の足下を狙ってまいたトリモチ弾。

 本来なら簡単に引き離せるのに今の状況では出来ない。しかもそれに気を取られた所為で致命的な隙になる。

 

「お兄様!!」

「ッ!?」

 

 ユエはしっかりと一騎の目を見て叫ぶ。

 

 

「帰ってきてェえぇえええ!!」

 

「ガッァア!」

 

 腕で防御するよりも速くユエの拳は一騎の顔面に届きしっかりと捕らえた。

 

 

 ――ドゴッ!

 

 

「あっ・・・」

 

 

 

『お兄様~♪』

 

『見てください!お兄様のおかげで100点とりました! ほめてください♪』

 

『それ野良猫ですか?・・・・お兄様のひざの上は私のだ! フシャァアア!!』

 

『一緒にヒーローに成りましょうね』

 

『やっと気づいてくれましたか。 愛しの・・・お兄様♡』

 

『キスは親愛の証。 同じ血と肉を分かつ・・・鉄よりも固い絆で結ばれた兄妹がキスをするのは自然なこと。外国では挨拶程度ですよ。お兄様』

 

『私はリバーサクヒーラー・リキッド』

 

『今日はデートですね!』

 

『頑張りましょお兄様!』

 

『お兄様のタキシード姿格好いいです!』

 

『赤鱗躍動・載!密かに頑張って身に着けました』

 

『お兄様!手を!』

 

「『愛しています、お兄様』」

 

 

 溢れ出た記憶のユエと今のユエがピッタリと重なる。

 

 

 

 

「・・・・!」

 

 

「一騎?」

 

 

 殴られた一騎は倒れることも後退することも無い。ただ時間が停止した様にピクリと動かなくなる。そんな姿にオール・フォー・ワンは声をかけるも一騎は無反応。

 

「やれやれ。脳がショートしてしまったのかな?ならば死に戻り(リセット)だよ」

「っ!?・・・・・・・・・お兄様! グッ」

 

 右腕を肥大化させ手の平から稲妻の如く赤い線の入った黒く鋭利な触手のような物が出るとそれを一騎に向ける。

 悪寒が走ったユエはミルコがいる後方に大きく飛び退くも未だに動かない一騎を見て慌てて急停止し駆け寄ろうとするも赤鱗躍動・極の激痛で膝を着いてしまう。しかも赤鱗躍動・極も解除された。

 

「一瞬だよ一騎」

 

 言うやいなや放たれた鋲突は一騎に迫る。その速度はユエの放った穿血には遠く及ばないが、弾丸の速度に迫る程だった。

 

「・・・・・黙れ」

「!?」

 

 たかだか弾丸。しかもバカみたいに初動を見せていた。

 

「掴んだだと」

 

 そんなもの今の怒髪天を越えている一騎が対応出来ない訳がない。掴まれた鋲突は切っ先が一騎に届く少し前で停止した。

 弾丸の様に放たれた鋲突を掴んで止めるなど信じられない離れ業を見てオール・フォー・ワンは驚く。

 

 ――バキ!

 

 鋲突はまるで木の枝を折るかの如く簡単に握り折られた。

 

(洗脳が解かれた。たかだか年端もいかない子供の拳に私の洗脳が負けた?何故!・・・・ん?)

 

「よくも」

 

 顔を上げる一騎の顔には明らかな怒りと殺意が滲み出ていた。

 

「よくも俺に! ユエを!妹を! みんなを、殺させようとしたなァ!!」

 

「っ」

 

 怒声を上げると共に巨悪と呼ばれたオール・フォー・ワンが冷や汗を流す程の濃密な殺気を放つ。

 

(エリク・・・)

 

 いや正確には一騎の殺気の強さに冷や汗を流したのでは無く、その殺気がエリクと同じだったからだ。

 

「待って下さい!お兄様」

「――――」

 

「!」

 

 一歩進んだときユエが止めるも一騎にある言葉を言われ引き留めるのを止める。

 一騎がトリモチの付いた靴を脱ぎ裸足で地面を踏み締め腰を少し落とし戦闘態勢を取るとオール・フォー・ワンは何かを考えてから両手を広げ周囲に大量の泥ワープをだす。

 

「折角だ。処分する失敗作脳無を此所で使おうじゃ無いか」

 

 泥ワープからは全部で26体もの白脳無があふれ出す。

 

「雑魚か・・・!」

 

 一騎が一歩前に足を出した瞬間めの前に銀の鉄棒が落下して地面に突き刺さる。

 落ちてきた鉄棒はUSJの時にエリクが一騎に使ったものだった。

 

「っ!」

 

 鉄棒を掴むと鉄棒には2つの斬れ線が走り外れる。それは3つの棒を2つの鎖で一直線になるように繋がれている武器『三節棍』へと変わる。

 

「久々に見たね、三節棍に変わるの」

 

 オール・フォー・ワンはエリクが使っていた武器が鉄棒から三節棍に変わるのを自身が全盛期の殺し合いした時以来だと少し感傷に浸リながら白脳無に攻撃の指示を出す。

 

「・・・すうぅ…………はぁぁー……」

 

 三節棍を構え吸気呼気を繰り返す度に一騎の赤い瞳が呼応するように光る。そしてまた大きく息を吸ったタイミングで最初の白脳無が間合いに入り腕を振り上げたと同時に一騎は大きく右横なぎで振るうと白脳無の腕諸共に頭部を叩き潰す。

 

「ふぅっ!」

 

 振るった遠心力で体の周りを一周して来た端を左手で掴み最初に掴んでいた端を手放しもう一度右薙ぎで振るい二体目の白脳無の頭部を潰し帰って来た端を掴むと態勢を変え三体目の白脳無を唐竹割りの要領で頭部を潰す。

 

 三節棍など初めて使う武器どころか触ったことすら無いのに一騎はまるで昔から使っていたかのように手に馴染み使い方が分る。使い方が分るのなら後は楽だ。

 

「すうぅぅ・・・ふっ!」

 

 全速力でオール・フォー・ワンに向かい駆け抜ける。当然白脳無は妨害してくるが全てを三節棍を振り回すだけで叩き潰す。見た目はユエの使う跋扈跳梁、ただ血の天蓋では無く白銀の天蓋。

 

「まさかここまで個性因子が本体に影響を及ぼすとは」

 

 一騎の戦い方にエリクの戦う姿の面影を重ねて懐かしさを感じている間に一騎が白脳無の近くを通る度に白脳無は潰されていき1分程の間に白脳無は全滅させられる。

 

「オール・フォー・ワン!!」

「おっと」

 

 目の前まで一騎がやってくるのを見てオール・フォー・ワンは右手でバリアを出し振るわれた三節棍を防ぐ。

 防いだ途端に嵐の様な打撃の応酬が襲い瞬く間にバリアはひび割れ砕かれる。

 

「衝撃反転、 エアウォーク」

 

 振るわれた三節棍を弾き直ぐさま上空に避難して一騎の間合いの外に出た。

 

「よぉハゲ野郎!」

「っ!」

「空飛べンなら!こうするよなァ!」

「兎山ルミィ!!」

 

 しかし空に逃げたオール・フォー・ワンより更に上に治癒した足で跳んだミルコは犬歯を剥き出しにして猛獣の如くの表情を見せる。

 

踵半月輪(ルナアーク)!!」

「バリア+衝撃反転」

 

 振り落とされるは渾身の踵落とし。しかしオール・フォー・ワンは衝撃反転を付与させたバリアで防ぐ。

 

「グッ!・・・・・・だから、それがどおしたぁあああ!!」

「なに!?」

 

 全力の蹴りの威力が自分の足に跳ね返され肉が潰れ骨が砕けるもミルコは足を振り抜きオール・フォー・ワンを地面へ押し返し即座にユエの液体操作で回収される。

 

「グッゥ!」

 

 ミルコがオール・フォー・ワンを地面に叩き落とすとき、一騎は三節棍を鉄棒形状に戻し棒高飛びの様にして真上にとびオール・フォー・ワンの背中を蹴り上げる。

 

 背骨を折られるような衝撃にうめき声を上げるオール・フォー・ワン。

 一騎は蹴り上げた衝撃で着地すると足に力を溜め地面がひび割れる程の力で一気に跳躍しオール・フォー・ワンの上を取る。

 

「オール・フォー・ワン」

 

 地上から20メートル程、僅かの間2人は言葉を交わす。

 

「最後が君の手ならそれでも良いね」

「何言っている」

「?」

「トドメを刺すのは俺じゃ無い」

「なに」

 

 言葉を待たずに一騎は鉄棒を振るう。オール・フォー・ワンも衝撃反転で防ごうとするが、鉄棒がぶつかる間際、服1枚ほどの隙間で止まった。

 そのことに驚くも直ぐに強い威力で()()()()()()

 

 衝撃とは瞬間的に激しい力が加えられた際に起きるもの。又はものどうしがぶつかった際によるもの。

 ゆえに最初っから当てて押し出す行為では衝撃反転は上手く機能しなくなったりする。

 

「お前の相手はソイツだ」

 

 オール・フォー・ワンが飛ばされた先に居るのは、ユエに治癒して貰いこの戦いでの怪我が全治したことで僅かな間だけ完全なマッスルフォームを維持することが出来たオールマイト。

 

「邪魔しないでくれよぉオールマイト」

 

 体勢を整えオールマイトをただただ殴り殺すことだけに重きを置いた個性の掛け合わせで半身を越える程肥大化した右腕を振るう。

 

「うぉぉおおおおお!!」

 

 対してオールマイトは腰を入れた本気の右の拳を繰り出す。

 

 

 ――DOGOOOOOOOOOOOOM!!!!

 

 

 2人の拳がぶつかり合い、そこを中心に衝撃波が広がり突風が吹き荒れる。

 

 

「衝撃反転」

「っ!? グッゥウウウウ!」

 

 衝撃反転で力が右腕に跳ね返りミルコの時の様に骨は砕け筋繊維が断裂していく。だが!それでもオールマイトのマッスルフォームは解けず、吹き飛ばされず耐える。

 僅かな残り火、松明ほどもない残り火でオールマイトは耐える。その理由は

 

「水無月ユエ」

「水無月の苗字は嫌いです」

 

 ユエが常に治癒の触媒にする血をオールマイトに飛ばし、怪我した途端に治癒し治す。その結果残り火の維持に貢献していた。

 

「君はオールマイトが嫌いだろう?」

「嫌ですが公私混同は時と場を選びますよ!!」

 

 オールマイトは嫌い、大っ嫌い、そう言い続けれる程ユエはオールマイトが嫌い。だがそれでも手を貸す場所は選ぶ。

 

「これで終わりだ!オール・フォー・ワン!!」

「終わらないよ!僕の物語は!!」

「いや、終わらせる!!」

 

 右腕は潰れても直ぐ治り痛みは無い。そしてこの一撃で残りのワン・フォー・オールの残り火を全て使い切る覚悟は出来ている。

 

 ならば恐れることは無い!

 

「なっ!」

 

 衝撃反転を付与している拳を超絶脳筋技ではじき返し、拳を握り治す。

 

 

「UNITED STATES OF SMAAAAAASH!!!!」

 

 

 拳を弾かれ大きな隙を晒したオール・フォー・ワンの顔面にオールマイトの突き刺さり、振り切った。

 

 

「・・・」

 

 

 上昇気流の突風に従い報道ヘリと同じ高さぐらい空高く舞い上がった一騎は最後に左腕を掲げるオールマイトの姿を見て意識を手放す。

 

 

*1
エンデヴァーとエッジショット

*2
イメージはアカメの奥の手『役小角(えんのおづか)』の紋様






決着は一騎につけて貰うべきだったかな?



次回「これから」


それでは、期待せずにお待ち下さい。
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