無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第70話:後悔

 

 

「うぅ・・・・うっ・・・」

 

 病室で一騎は目を覚ます。知らない天井を数秒間見つめてから体を起こしカチッカチッカチッと秒針の刻む音のする壁時計に目を向け、時刻は9時48分を指し示していた。

 壁時計から自身の両手へ視線を下ろす。

 

「・・・ゴクリ」

 

 手が僅かに震えながらも一騎は手を重ね自身の胸の中央から少し左寄りの位置・・・心臓のある位置に手をあてると

 

 ――ドンッ!

 

 心臓に衝撃を与えるように強く胸を叩く。

 一度ドクンっと心臓は大きく跳ね、瞬く間に鼓動は小さくなり遂には完全に停止する。

 

 

 なんの躊躇も無く一騎は自殺した。

 

 

 

 しかし僅かな静寂の後、一騎の体がピクッと動き瞼を開け目を覚ます。

 

「――・・・あぁ」

 

 今の一騎は個性(不老不死)の効果で生き返る。

 生き返った一騎はまた壁時計を見ると時刻は9時49分。あれから1分、いや1分も経たず生き返った。

 

「・・・ッ!!」

 

 壁時計から視線を下ろしまた自身の手を見た時、一瞬ノイズが走り自身の手が血塗れに見える。

 

 

 

「・・・・・・・・あぁ」

 

 

 

 

 洗脳には大きくわけて三種類ある。

 

 一つ目は、よくある洗脳されている間の記憶は一切無いタイプ。

 

 二つ目は、心橾人使の個性(洗脳)のように洗脳状態になると頭にもやが掛かったような状態になり、意識が曖昧になり洗脳時の記憶が個人差によるが薄らと残るタイプ。

 

 三つ目は、オール・フォー・ワンのように・・・洗脳時の光景、臭い、触覚、そして感情などその時に見て、感じて、思ったこと(感情・考え)がしっかりと残るタイプ。

 

 

 

「あぁあぁ・・・」

 

 

 なにが言いたいかと言うと一騎は、神野事件の時

 

 

 

『死柄木一騎。以後、お見知りおきを』『残念だったなぁヒーロー』『テメェーは蛇かよ。俺を絞め落としたかったかぁ?ゾッとしねぇな』『不老不死は!!!!!!!』

 

 

 人に自分の武を使い人を傷付ける快楽(快感)を、

 

 

『死ねよォ!オォールマイトォォオ!!!』『あぁあああ!!イラつくなぁ!姉を名乗るバニー姿のクソ兎に妹を名乗るガキ・・・・』『クッソ兎がぁ』『ジャスト7分。俺相手によく持った方だよクソ兎』『いまのは死ねよ人として、死んどけよ人間として!!』『あぁあ”あ”あ”!!!何なんだよ!次から次に邪魔しやがってアマ共ガァ!』『いい加減死ねよ!!!』

 

 

 ユエ達に対する憎悪と殺意を、

 

 

 

 

『大丈夫だ一騎・・・ハァハァゲホッ! わた、私がどうにかするから。洗脳を解いて彼奴を蹴っ飛ばす。わたしが全部どうにかするから。だ、からそんなゲホッゲホッ・・・か、おするな』

『全部、姉ちゃんに任せろ一騎』

 

『は! 世界一格好良く!世界一素敵なお兄様(あなた)の妹! 水無月ユエ! 水無月の苗字は嫌いなのでユエと呼んで下さい、お兄様♪』

『お兄様!! 帰ってきてェえぇえええ!!』

 

 

 その時聞いた言葉を、光景を、臭いを、感覚を、痛みの全てを思い出した。

 

 

 両手で顔を覆う。

 

 

「あァあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 一騎が目を覚ます1時間ほど前、病院の共有スペースにある手洗い場で水の流れる音だけが響く。

 

「・・・」

「大丈夫か?ユエ」

「・・・え、何がですか?ミルコさん」

「ん」

「え?・・・わっぁ!」

 

 手洗い場で見舞いの花の交換のために瓶の水を入れ替えていたが、考え事で心ここにあらずの状態で水が溢れているのにも気づいていないユエにミルコが指摘するとユエは慌てて水を止める。

 

「はぁ」

「・・・大丈夫か」

「え、えぇ大丈夫ですよ」

 

 水を減らし花を入れるユエにミルコは悩みながらも問いかけるも、ユエは無理矢理笑みを作り答えるもミルコは全然大丈夫に見えていなかった。

 

 見えていなくて仕方ない。ユエも知ってるのだから。一騎が虐待されている動画がネットに投稿されたことを。

 動画の中には幼きユエの姿も映りボロボロと泣きながら「お兄様死なないでぇ」と泣きながら治癒を施している姿も有った。知られたく無い過去、それを勝手に世間にバラされた上に一般人に扮したマスコミに追われるなどして精神的に疲弊していた。

 

 

「その、だな・・・」

「?」

「あまり無理するなよ」

「・・・善処します」

 

 ミルコの横を通り過ぎる際に答えるユエ。ミルコは振り返りユエの後ろ姿に悲痛な眼差しを向ける。だって今のユエの背中は簡単に壊れそうなぐらい小さく弱々しく見えるから。

 

「・・・?どうした・・・っ」

 

 一騎が入院している部屋に戻る道中ユエが足を止め窓の外をみる。

 気になりユエの側まで行き外を見るとそこには大量のマスコミが一騎の関係者であるユエやミルコの出待ちをしていた。いや、あわよくば一騎を撮ろうとしているのだ。

 

「ユエ」

「・・・なんでしょうか?」

 

 声をかけられてもユエは振り返ることなく聞き返す。

 

「その、ほとぼりが冷めるまでは出掛けるときは誰かと行動しろよ。私でも良いし、メトリ姉でもトウシさんでもいいから大人と・・・」

 

 本来は警察やヒーローの警護が付くがユエはそれを断っていた。警察は嫌いではないが実力不足でいざと言う時は邪魔。ヒーローはミルコ以外のヒーローを信じてないし敵が多い為に要らない。その結果ユエは1人で行動している。

 では何故ミルコや警察、ましてやヒーローではないメトリとトウシを頼らないのかというと。

 

「それは大丈夫です。・・・ミルコさん達にはこれ以上迷惑をかけられません」

「っ! かけろよ!」

「!? ・・・え? えっ?」

 

 返された言葉にミルコは僅かにイラつきユエの肩を掴むと自分に向き直らせ両肩をしっかりと掴み目線を合わせる。

 

「迷惑ぐらいかけろよ! なに子供(ガキ)がこれ以上迷惑をかけられませんなんて大人びたこといってんだ! お前も一騎もまだ子供(ガキ)だ! 子供(ガキ)子供(ガキ)らしく大人(私等)に迷惑かけろ!!」

「・・・あっ・・・・えっ?」

 

 ミルコの見たことのない必死さにユエは驚きぱちくりと数度瞬きして開いた口が塞がらなくなったが、だんだん表情は悲しげなモノになり俯く。

 何故そんな表情をするのか分らずミルコが尋ねるとユエはポツポツと話し出す。

 

「ミルコさんはなんでお兄様がヒーローを目指すかわかりますか?」

「それは、この他の無個性の奴らが差別されず笑って暮らせるため。なによりお前の誇れる兄になるためだろ?」

「はい・・・でも私の質問の本質はそこじゃありません」

「どういういみだ?」

 

「なぜ私が誇れる兄になるためでヒーローを選んだかです」

 

 言われて疑問に思う。確かに妹の誇る兄になるのなら別にヒーロー以外にもある。では何故それにヒーローを選択したかだが・・・確かにミルコは理由が分らない。

 

「お兄様がヒーローを目指したのは私の所為、幼少時の私との約束の為」

「約束?」

 

「純粋で、無垢で・・・無知でバカで愚かな・・・汚いものを何も知らず綺麗なものしか見ていなかった愚鈍な小娘が口にした『一緒にヒーローに成りましょう』そんな言葉がお兄様の人生をヒーローへと歩ました!!

 あれはお兄様との約束ではなく、お兄様を苦しめる呪いだった! ・・・私がヒーローを、ヒーローなんかに憧れたから!お兄様が辛い思いしてるのは全部私の所為、私の責任。私がお兄様の人生を狂わした(壊した)

 

 考えないようにしていたユエの悩み(苦しみ)。何度も後悔して考えた、あの日あんな約束しなければ愛しの兄はヒーローを目指さずただずっと安全に無個性差別はあれどそれ以外で傷つくことなく生きられたのでは、と。

 なんならユエは共に人の居ない田舎とかに行けば傷つくことなく安全に平和で暮らせたのではとUSJ以降考えるようになっていた。

 

「全部全部私の責任・・・」

「違う」

 

 いま一騎が苦しんでるのはその道に行かせた自分の所為だとユエは自分を責めるがそれをミルコは否定する。

 

「子供のお前らが背負うべき責任なんてねぇ。お前のそれは私等、大人(ヒーロー)が背負うべき責任だ」

「っ!?」

 

 昔から周りに信じられない大人しかおらず嘘つきを見分けることが出来る様になったユエの目がミルコは一切の嘘を言っていないと告げる。

 

 ミルコは本当にユエの自白を聞いてもその責任は自分たちにあると思っている。

 だってユエはただヒーローに憧れただけ。この世に無個性差別がなくならないのもヒーローで大人なくせに助けを求める者を見捨てその者が辛い思いをするのも大人の責任だ。

 

「は、はは。 ミルコさんキャラ違い過ぎますよ?」

 

 困惑しながらユエが言うとミルコはニカッと笑みを見せ告げる。

 

「当たり前だ。いまの私はヒーロー(ミルコ)では無く、お前等の姉貴(兎山ルミ)だからな」

「・・・頼りになるお姉様ですね」

 

 ここまで言われればユエも嬉しくなり笑顔を浮かべる。

 表情が明るいものに変わったことでミルコは一安心してユエの頭をガシガシと撫でる。

 

「おう、思う存分頼りにしとけ」

「頼りになるのはお兄様の次ですよお姉様」

「言っとけ。・・・ほら、早く戻るぞ。彼奴が、目ェ覚ましたとき誰も居なかったら悲しいからな」

「はい、そうで、・・・・!」

「どうした?」

 

 何かを感じ取ったのかいきなり振り返るユエにミルコは声をかけるもユエは反応がない。それどころか段々表情が険しくなっていく。

 

「嫌な感じがします。急ぎます」

 

 そう言うとユエは走り出す。

 

 

 ミルコのお陰でユエは心が救われ軽くなった。だが、だからってなんでも良い方向に行くわけではない。ときには幸せになった途端に一気に絶望に叩き落とされたりする。

 

 

 

「あ”ぁあぁああああああああ!!!!!」

 

 

「お兄様!?」

「一騎!!」

 

 部屋まで戻ると一騎は頭を抱え発狂し叫んでいた。それを見てユエは持っていた花瓶を落とし足下で割れ水が飛び散るがそんなこと気似せている暇なく、急いで一騎に近寄る。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「おれが・・・・俺ガァ!!」

 

 死から蘇りあの出来事が全て現実だと確信した。・・・いや、一騎にしてみれば現実だと確信してしまった だろうか。

 

「なんてっことおォ!!」

 

 両手で顔を押さえ叫ぶ。

 

「おれは・・・無関係の人を!他人を!!ミルコさんを、ユエを!!!傷付けた、この手で!! なんで、なんでェ!!俺は!なんてことを!! あっあぁあぁああああああああああ!!!!!」

 

「お兄様!?」

「一騎!!」

 

 発狂する一騎の元にユエとミルコが現れる。本来なら気を落ち着かせる為に2人の方が良い、だが今の一騎にそれはいけなかった。

 

「あっ・・・」

 

 2人を目視した瞬間一騎の脳裏に2人を傷付け血塗れのユエとミルコの姿が浮かび上がる。

 

 

「お、お兄様!」

 

「・・・・・い」

 

「お兄様?」

 

「・め・・・い」

 

「しっかりしろ一騎」

 

 2人は一騎が何かを呟いてるのが聞こえ安心させようと一歩近づいた次の瞬間――

 

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「「!?」」

 

 一騎は常にユエを悲しませたり心配させないように何時も苦しくとも笑うが今回はもうそれが出来なかった。

 壊れたおしゃべり人形の様にただ「ごめんなさい」と繰り返し謝罪するだけだった。

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「落ち着いて下さいお兄様!誰も怒ってなんていません!」

「そうだとりあえず落ち着け一騎」

 

 頭をかかえ蹲る一騎にユエ達は声をかけるが一切一騎の耳には届かない。

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「お兄様お願いです落ち着いて、くだ・・・い」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

「おに、いさま うっ・・・ヒック」

 

 壊れてしまったかの様な一騎の姿に遂にユエは限界が来て涙を流す。

 

 只ひたすら同じ言葉を繰り返す一騎をどうすればいいのか分らず溢れ出る涙を両手で拭いながら言葉をかけるユエを見てミルコは表情が歪む。

 どうするかどうするればいいかミルコにもわからない。それにヒーロー活動をしていれば一般人が敵被害を受け精神に異常をきたし精神崩壊をする場面を少なからずミルコは見ていた。そしていま、一騎はその人達と同じ壊れる寸前の状態になっていた。

 

「一騎!」

 

 どうすればいいか分らない。だが!自分が何とかしなければとミルコは思い声をかけたそのとき。

 

「ガッゥ!?」

 

 一騎の体がビクンと電気を流されたかのように跳ね顔を上げながら苦しみの声が漏れる。

 

「お兄様?」

「一騎?」

 

 反応もなくうめき声だけを僅かに上げ天井を見上げる一騎の瞳の色はチカチカと黒から赤へと点滅し遂には完全に赤色に変わると苦しみの声は消える。

 

「・・・・・まったく」

 

 最後にそのような声を小さく漏らし気絶する。

 

 

 

 

「うっ・・・うぅうう」

 

 一騎が気絶した後にユエはその場に泣き崩れ「なんでお兄様がこんなに苦しまないといけないの」や「悪いことしてないのに。友達を守っただけなのに」などを呟く。

 ミルコは壁にもたれずるずると座り込み放心する。そして最後に一騎が呟いた言葉を個性由来で強化されていた聴覚はしっかりと聞き取っておりその喋り方と気配でミルコは一騎以外の一人の人物を思い浮かぶ。

 

「・・・エリ、ク」

 

 脳裏に浮かぶエリク。なんで、どうして、何故、あの男が、と思考が巡るが直ぐに辞め気絶した一騎に布団を掛けユエに近寄り抱きしめる。

 

「辛い、です」

「大丈夫だ。あたしがいるから」

「うぅうう」

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

「うっ・・・は!」

「・・・お、お兄様」

 

 一騎は気絶して30分ほど経ってからもう一度目を覚ました。

 体を起こし少しすると右から心配するユエの声が聞こえ振り向くと心配そうな顔をするユエが見える。

 

「・・・」ゴクリ

「一騎・・・」

 

 ユエとミルコはまた一騎が発狂するかも知れないと思い緊張感がます。

 更にミルコは一騎が気絶してから次に起きた時も精神異常で発狂するかも知れないと医者に言われいざと言うときの為に鎮痛剤の入った注射器を手渡されいた。その為に注射器を握る手に力がはいり手に汗握る。

 

 だが、当の一騎から帰った来た言葉に二人は驚愕する。

 

「迷惑かけてごめんなユエ、ミルコさん」

 

「「!?」」

 

 返って来たのは何時もの優しい声と表情だった。

 何時もの優しい声、何時もの優しい表情に今は申し訳なさを含んだ表情を向けていた。いつもすぎてユエ達は僅かな言い知れぬ恐怖を覚えた。

 

「お兄様・・・大丈夫ですか?」

 

 恐怖を覚えたが、ユエはそれを悟らせず問いかけると一騎はゆっくりと僅かに震えながらも手を伸ばしユエの頭を撫でる。

 

「大丈夫だよユエ」

「・・・っ!」

 

 一騎が本当に大丈夫じゃないときは「お兄ちゃんは大丈夫」というが今は言わなかった、詰まりは本当に大丈夫と言う事だ。だけど先程のアレがあり心配するが、今の頭を撫でる一騎の手はいつものように安心させるモノでついユエは涙が零れる。

 

「ごめんな、いっぱい傷付けて酷い事言って。ミルコさんもごめんなさい」

 

「私は大丈夫ですお兄様」

「私もだ。あんなのちょっといきすぎたガキの反抗期だろ」

「・・・ハハ」

 

 ミルコの返す言葉に笑みを零すと一騎は寝てる間に何が有ったのかを尋ねる。

 最初は戸惑うもミルコが幼少の一騎が虐待を受けてる動画とAFOと一騎の血筋と個性の件が公開されていることを話した。

 

「俺が虐待されている動画が世間に流れて父は捕まり更には俺とAFOの個性と繋がりが知られたと・・・」

 

 知れ渡ったことの内容を考え一騎は溜め息をつくと考え込むように目を伏せる。

 

(今までのがバレた上に借金を背負ったヒーロー達を金で買い私兵にしていたと。そして諸々のことでタルタロスに入れられた? そしてユエは戸籍が俺を引き取ってくれた人の元に移動したと。余りにも不自然すぎるほどに都合が良すぎる)

 

 

 ☆

 

 

 

「ミルコさん、気づきましたか?」

「あぁ」

 

 一騎と少しの間会話したあとユエ達は一騎の頼みで根津と相澤に一騎が目を覚ましたことを報告してから一人にしてくれと言われ今は一人し、二人は外に出て歩き一騎との会話での疑問を思い浮かべていた。

 

「違和感、確かにお兄様はお兄様でした。でも何処か違う、それに両眼とも赤黒い色に」

「髪も白髪が交じり見た目から変わっていた」

「ミルコさんもみましたよね?お兄様が叫んでいたとき白髪の部分が広がり眼が僅かに光っていた」

「・・・一騎じゃない一騎になろうとしてるのか、ただ個性の影響で何らかの反応が出て肉体が変化してるのか。もしかするとストレスで白髪になっているのか・・・いやこれはないな。これだと瞳の色が変わった理由が分らない」

「だからエリクの個性・・・不老不死が影響している」

「だな」

 

 一度一騎が目覚め発狂して気絶したあとは混乱して気づかなかったが、落ち着いた今なら気づくようになった。

 そしてユエ達が持った1番の疑問は。

 

「彼奴、発狂していたときの記憶が無かったな」

「・・・はい」

 

 少しの話し合いのとき、神野事件で迷惑をかけたことの謝罪はしたがあの発狂していた時の記憶が無くミルコが何か覚えているか遠回しに問うたところ一騎は気まずそうに

 

『最初目を覚ましたとき・・・その~あれが夢じゃないか確かめるために自殺して直ぐに起きて、次に気が付いたときには横にユエとミルコさんがいた・・・よ?』

 

 と言っていた。

 

「ストレス性記憶障害でしょうか」

「だろうな」

「・・・」

「でもそれならそれで良い、あんなのは一騎には要らないことだ。これからは私等がまたあれが起きないように気を付ければ良い」

「はい」

 

 忘れているのならそのままにして無理矢理思い出させない方に決め、二人は張り詰めていた緊張をほぐすために屋上で休もうと移動する。

 

「・・・?」

「どうした?」

 

だがユエは足を止め別の場所を見つめる。それに気づきミルコが問いかけるもユエは何にもありませんと言ってミルコに着いて行く。

 

(いまのは・・・いや、気のせいかな。お兄様への面会は私が許可した人のみだしなんならお兄様が目覚めた事は根津校長以外に連絡していない。だから此所に居るはずない・・・・よね?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「やぁ不死黒君」

 

 少しして雄英からすっ飛んできた根津と相澤は一騎の落ち着いた姿に安堵するもユエから聞いた一騎が取り乱したことを思い出し注意しながら話す。

 

「体調はどうかな?」

「良いですよ。死ねば体は全快しますから」

「・・・」

 

 最初に振る話、いや言葉を間違えたと根津は思い相澤はMs.ジョークすら一瞬で表情が歪みそうな言葉に「ブラックジョーク過ぎるぞ」と言葉を漏らす。

 

 流石の一騎も二人の表情が一瞬で悲痛なモノに変わったのを見て申し訳なくなり謝るとベットの上で姿勢を正すと深々と頭を下げる。

 

「この度は多大なるご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」

「・・・お前が謝る必要はない」

「謝らなければいけないのは此方の方だよ」

 

 謝罪する一騎に二人は謝罪するのは自分たちだと告げるも一騎は左右に小さく首を振り否定する。

 

「違います。俺の所為です」

「なんでそう思うんだ」

「驕ってたんですよ俺は」

 

 意味が分らず二人は「なんに対して」と根津と相澤は思いお互い目配せすると次の言葉を待つ。

 

「・・・自分が死ぬ気で無茶すればどうにかなるって。皆を守れるって。自分は強いと思い上がって・・・皆を守れなかった」

「違うお前は皆を守った」

 

「違う、守れてなんかない。 敵の気配に気づかずピクシーボブが攻撃されるのをみすみす見逃した。八百万と会った時に青山がいないことに気づかなかった。気絶していた骨抜達を看病していた小大を脳無との戦闘に巻き込んで危険にさらした。

 敵連合を仕留めきれず、最後には爆豪を取り返すことも出来なかった! 全部、自分が弱かったから」

 

 自分が弱かったから皆が危険にさらされたという、一騎に根津と相澤はそれを否定する。

 

「違うよ不死黒君。君にはなんの責任もない、全ては僕達の慢心でこうなった。敵の襲撃されない様に手立てをしても襲撃された時の事を考えていなかった」

「お前は一切悪くない。だから自分をそう責めるな」

「・・・じゃぁなんでこうなったんですか」

 

 自分を気遣う二人にぽつりと言葉を返す。するとダムが決壊してあふれ出す水の如く言葉が吐き出されていく。

 

「なんで俺は1番守りたくて1番大事なユエを傷付けた!切り刻んだ! なんで俺は、俺なんかに優しくしてくれたミルコさんを傷付けた!他のヒーローも警察も!沢山の人を傷付けた!」

 

 頭を抱え掻きむしり出す一騎を見て相澤は急いで止めようとする。

 

「不死黒」

「・・・どこで、何処で間違えたんでしょう」

 

 ピタリと動きが止まった一騎に言われたことに相澤も根津も答えられない。

 

「俺が悪くないのならなんでこうなった・・・。なんでユエ達を傷付けた! 全部全部、俺の選択ミスの所為だ。でも、どの選択を間違えたのかが分らない。先生、俺は何処を間違えました?どの選択はダメでした?青山を見捨てるべきでしたか?あの場にいた連合の奴らを殺すべきでしたか?脳無の素体になった人の人権無視してUSJの時の様に脳無を殺せば良かった?それかマンダレイや虎に押しつけとけばよかった?マンダレイに報告したら直ぐに荘に帰れば良かった?分らない、分らない分らない分らない分らない分らない分らない!!!!!」

 

 タコ脳無を相手にしてから誘拐されるまでの間を思い出し何処を間違えたのか考えるも答えが出ず、ずっと頭を抱えながら「分らない」を言い続けた一騎は急に動きを止めると相澤達の方を向く。

 

「先生教えて下さい、俺は何処を間違えました。何処をどうするべきでした? 教えて下さい」

 

 だらんと腕を下ろし四つん這いの様な態勢で相澤の目をみて叫ぶ(問いかける)

 

「先生!! 先生は物事を教える人でしょ!教えて下さい!俺はどうするべきでした!あのとき何処を間違えましたか? それとも無個性なんかが出しゃばったのが間違いでしたか?無個性が分不相応な夢を掲げて雄英に来たのが間違いでしたか?お願いします、教えて下さい」

 

「「・・・」」

 

 悲痛な顔で問いかけてる一騎に相澤も根津も何も答えてあげられなかった。

 答えたらそこを間違えたから一騎は今苦しんでいると言うようなもの。じゃぁ「お前は間違えてない」と言えばいいのかというとそれも違う、コレを言うと正しい行為をした結果がユエ達を傷付け今を苦しむものと言うようなもの。

 故に何も答えられない。しかしこのまま黙り込むわけにも行かず何か言おうと口を開く。

 

「不死ぐ「ごめんなさい」 え?」

 

 相澤が口を開くと一騎の謝罪で遮られる。

 

「こんなヒドイ事を言うつもりは無かったんです。だって、本当は分ってるんです。何処を間違えたなんて」

 

 両手で顔を押さえ座り込む一騎に二人は何がと言う事も出来ず黙って見ていることしか出来なかった。

 

「あの時だ。・・・USJ襲撃時が1番判断を間違えた!」

 

「!?」

「そ、れは・・・」

 

「あのとき俺は・・・俺は、八百万を・・・・アイツを!無視して死柄木弔を潰せば良かった!!八百万を無視して死柄木弔を潰しておけばタルタロスにぶち込めた!そうすれば保須市で脳無が暴れることも林間合宿が襲撃されなかった!皆が危険な目にあうこともなかった! 俺がユエをミルコさんを他の人達を傷付けることもなかったぁ!!全部、全部全部!あそこの判断を間違えたからだ。

 八百万の言う言葉を正しいと思わなければ良かった!無視しとけば良かった!そうすれば、こんな事にはならなかった・・・こんな思いせずに済んだ」

 

「ち、ちが・・・」

 

 

 こうなるまでの最初の間違いがUSJの時だという一騎に相澤は違うと言おうとするも子供の様に泣きじゃくる一騎の姿に何も言えなくなる。

 

(いや違う、子供みたいじゃなく子供なんだ。此奴はただ・・・周りに頼れる大人が一人もいない上にユエを守らなければいけなかった。結果、無理に背伸びをして大人ぶって心技体を兼ね備えただけの只の子供なんだ)

 

 その事に気づいてももう遅い。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ごめんなさい。気持ちの悪い姿を見せました」

 

 10分ほど泣いた一騎は泣き止むと涙を拭い頭を下げ謝る。

 そんな一騎に根津は近づき気にしなくて良いと言いハンカチを渡す。受け取ったハンカチで涙をしっかりと拭くとしっかりと根津の目を見て問いかける。

 

「俺はこんな事をしでかしましたがそれでも退学にし無いんですか?」

「しないよ」

「俺は、雄英にいてももうヒーローを目指せなませんよ」

「どうしてかな?」

「もう、進むべき道が無いんです。道なき道を行くとかじゃなく本当に道がない。あるのは底なしの谷か絶対に越えられない壁だけ。もう、一歩も前に進めない」

 

 親の虐待に無個性差別での虐めある世界でも一騎が生きて来れたのはユエがいたから。無個性は一騎に取って誇りだった。なのに。

 この世で1番守りたいと思っていたユエを神野で1番傷付け、無個性を奪われ個性持ちにされた。それにより一騎はヒーローを目指すどころか生きるための心の支えを完全に失った。

 

 ユエが胸を張って自慢できる兄と無個性という二つのアイデンティティーを無くした。だがそれでも根津は一騎に言う。

 

「それでも、私は君にヒーローに成って欲しいと思っているのさ」

 

 残酷なことを。

 

「酷いことを言いますね」

「自覚しているよ。それでもね、私は期待しているのさ君が最高のヒーローになれるって」

「だから退学させないと?」

「うん」

「優しいですね、こんな犯罪者に」

 

「お前は犯罪者じゃないぞ不死黒」

 

 ここに来て黙っていた相澤が口を開く。

 

「何を根拠に?俺は多くの人を傷付けた」

「だがそれよりも多くの一般人を助けた」

「っ!」

 

 確かに一騎は神野でいろなヒーローと警察を傷付けたが、それ以上に神野での戦いの被害に遭った一般人を助けた。

 

「お前はあの時洗脳されてようと96人もの一般人を助け出した。中には直ぐに手当てしないと死亡する人も居た。・・・紛れもなくヒーローだ」

 

 真剣な眼差しで告げる相澤に面くらい一騎はほおけた顔をするも直ぐに破顔する。

 

「先生、キャラ違いますよ」

「五月蠅い」

 

 顔を逸らし言い返す。自分らしく無いのは相澤自身わかっているが一騎はA組の皆と共にヒーローに成るべきだと強く思っている。だから自分の事を犯罪者と卑下するのは許せなかった。

 

 根津はそんな相澤を微笑ましい目で見てからこれからの雄英の行動を話す。

 

「不死黒君、雄英は全寮制にしようと思っているんだ」

「全寮制ですか・・・(あれ?辞めるの有耶無耶にされた?)」

 

 全寮制になるにあたり各家庭に家庭訪問をしに行くことを伝え一騎の保護者の人とも話し合うことを伝え根津達は病室を後にする。

 一騎はヒーロー科どころか雄英を辞めることを丸っと有耶無耶にされた。

 

 

 

 ☆

 

 

「ん?」

「どうしました?根津校長・・・これは」

 

 部屋を出た根津達は扉の近くに見舞い用の花束が落ちていることに気づく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~翌日~

 

 

 

 

「なんのようだよオールマイト」

「・・・不死黒君、私は君に言わなくてはならないことがある」

 

 

 一騎の元にオールマイトが訪れていた。





水無月 水重は虐待に借金を抱えたヒーロー達を金で買い私兵にしていたことでタルタロスにぶち込まれた。異様な速さであっというまに。まるで・・・・・・



次回「私は貴女を愛しています」




それでは、期待せずにお待ち下さい。
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