無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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仮免試験編
第75話:寮生活


 

 

「着いたぞお前等」

 

「ありがとう御座います」

「・・・ありがとう御座います」

 

 相澤の言葉で根津が配慮してくれた雄英の公用車から下り一騎達は校門前に立つ。

 

 神野の事件で一騎とユエは存在や個性の有用性でヴィランやマスコミに狙われるを危惧され根津の提案で相澤の護衛の元密かに登校していた。

 

 

「・・・はぁ~」

「どうしたんですかお兄様?乗車中も何度も溜め息をついて心此所に非ずでしたよ」

 

 

 寮に向かっている途中に何度も溜め息をつく一騎にユエは問いかける。

 

「なんか夢を見たんだよ」

「夢ですか?」

「そう。凄く楽しく幸せで懐かしい夢。でもどんな夢か覚えてないんだよ」

「珍しいですね。お兄様が夢を覚えてないのは」

「ね」

 

 一騎は見た夢は必ず覚えているタイプだが今回は夢は覚えてないためにモヤモヤする。話しを聞いたユエは悪夢じゃないだけましかと考えるも口に出さない。

 

 それからも二人は話しながら歩くとあらゆる人に奇妙な目を向けられるも二人は1-Aの寮がある場所に向かう。

 

「・・・っ!」

「お兄様?・・・!?」

 

 寮に着いた瞬間クラスメイト達の話姿が見え一騎は一瞬で近くの植木に身を隠してしまう。それに驚きユエが後を付けると一騎が右手で何度も胸を軽く叩いて「大丈夫」と繰り返すのを見て驚くが、直ぐに優しい笑みを浮かべ近寄ってその手を握る。

 

「お兄様、私も居ますから」

「ごめんな」

「謝らないで下さい。さぁ行きましょ」

「あぁ」

 

 ユエに右手を握られ覚悟を決めると一騎は歩きだす。

 

 

 

 

「不死黒さん!ユエさん!」

 

 皆が話している時に八百万が大声で二人の名を呼んだことで全員一騎達の方を見て雄英を辞めなかったことに喜ぶが、一騎の姿を見て絶句する。

 

「お、お前不死黒だよな?」

「そうだよ上鳴」

 

 テレビで見たがアレより更に酷くなっており一騎の髪は8割以上が色素が抜け落ちたかの様な白髪(はくはつ)になり、黒い瞳は赤黒い瞳へと変わっていた。

 

「一応不死黒一騎だよ」

「おまっ一応って」

「スワンプマンってやつだよ」

「すわん?」

「まぁいいや」

 

 首を傾げる上鳴を見て軽く頭を叩くと皆の方を見て微笑む。

 

「皆無事でよかったよ」

 

 その一言に全員の表情が歪む。皆無事だがその皆には(一騎)自身は入っていないのだから。

 

「不死黒」

「なに?」

「大丈夫なのか?その、髪の毛」

「大丈夫だよ」

 

 切島の質問に唯一残っている前髪の黒髪部分を手で弄りながら答えるとふいに手を止め切島をみる。

 

「あ、もし目障りだったら黒に染めようか?」

「いや!目障りとか思って無いから!!」

 

 慌てて否定する切島を見て一騎は悪戯ぽく笑い「冗談冗談」と言っていると近づいてくる緑谷に首を傾げる。

 

「?」

「不死黒君」

「どった緑谷」

 

 深刻な表情をしている緑谷を見て一騎は首を傾げていると緑谷は頭を下げる。

 

「ごめん」

「?なにが?」

「あの時僕はふしぐろ「なぁ緑谷」 な、なに?」

 

 緑谷がなんに謝っているのか あの時で分った一騎は話しを遮ると笑みを見せる。

 

「気にする必要ないよ」

「けど!僕はあの時なにもできなかった。ただ不死黒君の足手まといになっただけだった」

「俺も同じ気持ちだ」

「轟・・・に障子」

 

 気にする必要無いと言っても緑谷は気にしないなんてことできず、謝ると同じ気持ちだった轟と障子も来る。

 

「お前等もか。気にしなくて良いんだぞ?」

「しかし」

「・・・はぁ~」

 

 深く溜め息をつく。

 

「面倒くさい」

 

「・・・え」

 

 低く優しさを一切感じさせない声で呟かれた言葉に誰かが反応すると一騎は 右手で前髪をかき上げ 鋭い目付きを向ける。

 

「今更謝られたって意味ねぇんだよ。そもそもそう思うなら何でお前らあのとき頼んだのに逃げてくれなかった?お前等がいなかったら俺は楽に戦えたんだよ。

 両腕潰れて足手まとい以下のお前(クズ)と体格故の耐久度はあれどそれ止まりで脳無のパワーや俺の技術以下のお前(デカブツ)と出せば邪魔になる氷と森を燃やすだけの炎しか使えず接近戦糞雑魚のお前。巫山戯てんのか、テメェ等の尻拭いさせられる俺の身にもなれよ」

 

「「「っ」」」

 

「ふっ不死黒ちょ」

 

「特にお前だよ緑谷。お前ぶっ飛んできたとき障子や轟といたがなんで来たんだよ発射点に他に人が居なかったわけじゃ無いだろ?・・・あ~反応的にあれか?恐らく近くに麗日と蛙吹がいて麗日のゼログラビティで軽くして蛙吹の舌で投げて貰って障子が触腕で風の抵抗を微調整していた感じか?・・・反応的に正解か。巫山戯んなよ何でついて来たんだよ。ヴィランとの戦闘は仕方無いが、何でその後に避難しなかった?なんで来た?その結果あれだろ?ざけんなよ。

 USJの時は別にして保須では背後から来た脳無に気づかないしショッピングモールではいきなり出てきてエリクとの戦闘の邪魔するし今回のでは糞みたいな行動してさぁ。俺はお前の尻拭いの為に雄英に来たんじゃねぇんだよ」

 

「ご、ごめん」

 

「はぁぁ~正直面倒でダルいんだよ。自分の身すら自分で守れないくせに出しゃばってきて邪魔したりするゴミと戦う為の(個性)がある癖に俺より弱い雑魚を守るのは」

 

 一騎の言うことに緑谷、轟、障子は反論出来ず。場の空気が一気に死ぬ。

 

 緑谷の行動は論外として、轟も障子もあのとき『いいから行け!走れ!!頼むから!!! お願いだ!!!!!』と言われた時は動けず(動かず)『三人とも、今すぐ行け俺がどうにかするから』と言われた時は一騎の怪我と人数差を理由に指示に従わなかった。その結果、邪魔にしかなら無かった為に反論が一つも出来ない。

 しかも二人は事件後あの時指示に従えば一騎ならどうにかしたんじゃ無いかと考えていた。オールマイトなら絶対に勝ってくれるという信頼感があるように一騎もどうにかしてくれると、いままでの努力や成してきた実績でそう思えて仕方が無かった為に。

 

 

「お、おい!不死黒流石にいいす 「って!言えばいいかな?」 え」

 

 流石の物言いに切島が言おうとした時に一騎は手を叩いて朗らかに言う。

 いつもの声色に驚いて全員が顔を上げて一騎を見ると何時もの笑顔に申し訳なさを含んだ表情をしていた。

 

「俺がさ、こんな酷いこと言ってお前等の罪悪感が少しでもましになるならいくらでも言うさ。思ってること想った事。でも大事な友達にこんな事を言うのは正直嫌なんだ。それに俺はそんな感情を向けられてもどう対処すれば(なんていえば)いいのか分らない。

 雄英に入る前は俺なんかにも優しくしてくれた先輩と皆も知ってる発目の二人しか友達が居なかったんだ。だから罪悪感を向けられても分らない」

 

 一瞬一騎の顔から表情が消えるもまた直ぐに笑顔を浮かべて手を軽く叩く。

 

「だからさ、罪悪感を向けるぐらいなら気にせず何時もの様に接してよ。ショッピングモールの時にも言ったろ?誰も死んでない!ならそれで良いじゃん!気にすること無いよって。又こうして皆で集まれたことを今は楽しもうよ!!俺はそれがいいな~~。青山に常闇も、助けられたのに助けに行かなかったとか気負わずにさ!!」

「不死黒ぉ~お前は漢だ!」

「使い道あってるか?」

 

 二へらと笑う一騎に切島は涙を流しながら叫ぶと砂藤が突っ込んだことで死んだ空気が無くなる。

 

「不死黒君」

「所でみんな?いい加減前向かないと先生が怒るよ?」

「へ?」

 

「きゃぁあああ!!」

 

 緑谷がなにか言おうとした時一騎が指を差し注意を促すとみなが一斉に振り返り一切物音に気付かなかった耳朗が思わず叫んでしまい一騎は笑う。

 

 

 そして笑いながら疑問が浮かぶ。

 

 

 

 

(あれ?なんで俺は皆と居る時間を面倒だと思ってるんだ???)

 

 

 いままで感じたことの無い自分の感情に。

 

 ☆

 

 

 

 

 

「とりあえず1年A組。無事にまた集まれて何よりだ」

 

 全員が聞く姿勢になったことで話しだす相澤。

 

「みんな許可降りたんだな」

「私は苦戦したよ〜…」

「まあ仕方ないよね」

「二人はガスを食らったからな……」

 

「でも不死黒はよく許可下りたよな」

「まぁ俺を引き取ってくれた人は雄英に残るも辞めるも好きな道を行っていいと言われたからね。どっちかていうとユエが、ね」

「ユエさん?」

「私としては雄英を辞めて一緒に静かな所で暮らして欲しかったんですけどね」

「・・・」

 

「で、でも無事に集まれたのは先生もよ。会見を見た時は居なくなってしまうのかと思って悲しかったの」

「…俺もびっくりさ。まぁ、色々あんだろうよ」

 

 全員が許可が下りたことに安心して瀬呂の発言に皆少し賑やかになって、各々の家族がどう言う反応だったか話し出す。そして一騎の方にも話しが行くがユエがどう思っていたのかを知り少し空気が暗くなるが蛙吹が話しを先生に振り雰囲気を変える。

 

「当面は合宿で取る予定だった、"仮免"取得に向けて動いていく」

 

 仮免の話しで何人かはその事を思い出し話すが相澤は話しを続ける。

 

「さて、これから寮について軽く説明するが、その前に一つ話がある。大事な話だ、いいか。轟、切島、緑谷、八百万、飯田。この5人は、あの晩あの場所に2人の救出に赴いた」

 

 あの晩、生放送で八百万が赴いていたのは知っていた。そのため緑谷達も行っていただろうと行かなかった者達は思っていた。そして相澤の言葉で確定した。

 

「…その様子だと行く素振りは皆も把握していたワケだ。全てを棚上げした上で言わせてもらうよ。オールマイトの引退や連合の逃亡が無ければ俺は、不死黒、爆豪、入院していた耳朗、葉隠、そしてユエ以外の全員を除籍処分にしている」

 

 相澤の放った言葉に皆がグッと息を呑む。

 救出に出向いた中で唯一ユエだけ除籍を免れているのは贔屓とかでは無くミルコからの許可を得て動いたためにだ。

 

「彼の引退によってしばらく混乱は続く……ヴィラン連合の出方が読めない以上、今雄英から人を追い出すわけにはいかないんだ。行った5人はもちろん、把握しながら止められなかった奴も……理由はどうあれ俺たちの信頼を裏切ったことには変わりない。正規の手続きを踏み、正規の活躍をして、信頼を取り戻してくれるとありがたい」

 

 全員暗く俯く。相澤の言っているのは正しい。しかもあのとき緑谷達は洗脳されていた一騎と遭遇している。下手をするとその時に殺されていたかも知れない。殺されること無く無事だったのはひとえに弱かったから(運が良かったから)見逃して貰えた。

 

「でも、あのときももちゃんが来てくれなかったら私はお兄様を取り返せなかった」

「・・・」

 

 暗い空気の中ユエがキッパリと言い返し一歩前に出る。

 

「ユエさん」

 

「お兄様が()を殺す前に来て助けてくれました。あの場には正規の活動が出来るヒーローが居るにもかかわらず、オールマイトを初め誰も役に立たなかった」

 

 ユエの言葉を相澤は遮らず全て受け止める。確かにあの場には多くのヒーローが居たが結果を見れば誰も人を殺す気の一騎を止める事は出来なかった。

 全員が全員、手加減している一騎の足止め程度にしかならず、殺す気の一騎を止めれたのはミルコ、ユエ、そして八百万だけだった。

 

「それに『信頼を取り戻してくれるとありがたい』と言いますけど、なんでいまも自分たちは十全の信頼をされてると思ってるんですか」

 

「ゆ、ユエ」

 

「・・・そうだな」

 

 相澤の目から一切目を逸らさずユエは言い切る。

 明らかにヤバイ雰囲気に一騎は心配そうにユエに声をかけると相澤は小さく溜め息をついてから先の言葉に付け足す。

 

「俺達雄英側もまたお前達(生徒)から信頼される様に勤めるから・・・まぁお互いに頑張ろう」

 

 その言葉に一騎は驚き相澤を見てユエは満足したのか頷く。

 

「さっ!話しは終わりだ中に入るぞ、元気に行こう」

 

 先ほどの雰囲気など知らんとばかりに相澤は少し元気に言って寮に向かって歩きだす。

 

 

(((いや待って無理です…行けないです…)))

 

 

 しかし生徒達は先ほどの雰囲気からそう簡単に気分を変えることが出来ずユエ以外誰も動けない。そんななか爆豪は上鳴に近づく。

 

「おいちょい面貸せアホ面」

「え!?なに!?カツアゲ!?いやぁ」

 

 抵抗するも襟首を掴まれた切島は草陰に引きずられていく。

 全員が首を傾げると突如放電の様な物がその場で起き、出てきたのは

 

「うウェーイ」

「ぶふっ!!?」

 

 ウェーイ状態の上鳴だった。それがツボに入り耳朗は腹を抱え笑い出し他も釣られて笑い出す。

 

「おいクソ髪、ん」

「え!?5万円!!?なにカツアゲ!!?」

「違ぇ、俺が下ろした金だ!小遣い叩いたんだろ」

「あ……え!?おめーどこで俺が暗視鏡買ったの聞いて」

「いつまでもシミったれられっと、こっちも気分悪ィんだ!いつもみてーに馬鹿晒せや!」」

 

 寮に向かい歩いて行く爆豪を見て切島は「俺等を気遣って」と思い渡された金を握り絞める。

 

「皆!すまねぇ……!!詫びにもなんねぇけど……今夜はこの金で焼肉だ!!」

「マジか!?」

「ウェーーーい!」

 

「じゃぁ俺は!腕によりをかけてスイーツをデザートに出すよ!!」

 

「お兄様の!」「不死黒さんの!」

「腕によりをかけた!!!」

「「「「スイーツ!!!」」」

 

 切島と一騎の言葉に皆のテンションは元に戻り笑顔になる。

 それを少し立ち止まって見ていた相澤は考える。

 

(茶番・・・時には必要か)

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「1棟1クラス。向かって右が女子寮、左が男子寮と分かれている。ただし、一階は共同スペースだ。食堂や風呂、洗濯はここで行え」

 

 入室して相澤が説明を始めるが、恐らく全員真面に説明を聞いてないと思う。

 

「豪邸やないかい」

「麗日くん!?」

 

「中庭もあんじゃん」

「聞き間違いかな……?風呂、洗濯が共同スペース?夢か?」

「男女別だ……お前いい加減にしとけよ?」

「は、はい…」

 

 全員、寮生活ということでワクワクと興奮で中を見まくっていた。ただ峰田だけは何時もの調子でセクハラ発言をし相澤に睨まれ黙らされる。

 

「不死黒、いざという時はお前の判断次第で罰則を頼んだぞ」

「ん? 当然。やらかしたら鉄砕しますよ。・・・分ったか? み・ね・た」

「イエッサー!!」

 

 もの凄く気持ち悪いぐらいの優しい声で言われたことで峰田は瞬時に敬礼で返す。

 

 次に二回へと皆は上がり直ぐの部屋に入る。

 

「各自の部屋は二階からだ。1フロアに男女各4部屋の5階建て。1人1部屋で、エアコン、トイレ、冷蔵庫にクローゼット付きの贅沢空間だ」

「豪邸・・・豪邸や・・・・」

 

 部屋の中はシンプルだが一人暮らしするには十分すぎるほど設備が完備されていた。

 

「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね……」

「豪邸やないかい」

「麗日くん!?」

 

 

「各自、事前に送ってもらった荷物が部屋に入っているから、とりあえず今日は部屋でも作ってろ。明日また今後の動きを説明する。以上、解散」

 

 

 相澤の言葉に全員教えて貰った自分の部屋に向かう。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「俺の部屋は五階の隅」

「ですね~要望通りらしいですし」

「・・・あれ?ユエ?」

「はい」

 

 部屋の前で荷ほどき頑張るか!と意気込む一騎の横でユエもいくつかの荷物を持って立っていた。

 

「部屋は?」

「後でしますよ。でも私は基本お兄様の部屋で過ごしますので。その服とか日用品を持って来ました」

「いい、のか?それは」

「既に先生から許可を貰ってますよ」

「じゃぁ大丈夫か」

「はい」

 

 いや普通に大丈夫ではないというか、良くないと思うのだが何故か一騎は納得してしまった。

 そもそも相澤が許可したのはユエに

 

「寮生活でも一緒の部屋で過ごせれば私はお兄様の精神安定剤(メンタルケア)になって、私はお兄様と居られてハッピーです」

 

 と言われた上に最後に「二人の生徒の精神安定になって合理的でしょ」と言われた為に許可した。

 万が一の間違いは起きないと信じて。・・・・・・絶対に、多分、きっと・・・・・・・おそらく、そう信じて・・・るよね? 考えるの面倒くさかったとか無いよね?

 

「にしても本当に個人用を取り付けてくれたんだ」

 

 部屋に入り辺りを見渡してから一つのドアを開け呟く

 他の人の部屋には無い一騎だけの部屋にある特別なもの。先にユエがいっていた要望。それは思いっきり足を伸ばして入れるお風呂。

 

「この大きさなら二人も余裕ですね」

「だな・・・よし!とっとと部屋作りするか!」

「はい!っと言いたいのですが私も部屋作りがありますので物だけ置いときますね」

「おう」

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「よし!クッキーシュー皮とレモンクリームの完成!あとは冷やすだけ~♪ 次は今夜のデザートの簡単濃厚ティラミスアイスを作るか」

 

 現在、2時間ほどで部屋作りを終わらせた一騎は、ユエと食べる為の3時のおやつを作り次に今夜の焼き肉の後に食べるティラミスアイスの製作に取りかかる。

 

「♪~~~」ワンオッドオリ~

 

 鼻歌で時折歌詞を口ずさみ必要な材料の準備を始める。

 

(クリームチーズ、バニラアイス、砂糖、ビスケット、お湯、コーヒー (インスタント)、ココアパウダー、ミント、後は冷蔵庫に入れておいたホイップクリームっは最後で良いか)

 

《マスター、ユエ様から電話です》

 

「ん?電話?繋いで」

 

《かしこまりました》

 

『お兄様!』

 

「どうした?そんなに急いで」

 

『大変です!今すぐももちゃんの部屋に来て下さい!!』

 

「あっおい!・・・?」

 

 いきなり電話が切れ少し首を傾げ考えるも、八百万の部屋は同じ階のほぼ目の前だからまぁ良いかと思い出したばかりの食材をしまい手を洗い向かう。

 

 

 

 

「わワーオ~」

 

 言われた通り八百万の部屋に向かい入室させてもらった一騎が見たのは。

 

「部屋の殆どがベット」

 

 天蓋付きの巨大ベットだった。

 

「どうしたのこれ?」

「私が使っていた家具なんですけど、お部屋の広さがこれだけとは思っておらず…」

「流石はお嬢様。・・・なるほどこれをどうしたら良いのかでユエは俺を呼んだのか。所でユエは何してるの?」

 

 自分が呼ばれたのは部屋の半分以上を占拠するベットのことでだとわかった。けどその呼んだ当のユエは八百万のベットに気持ちよさそうに寝転んでいた。

 

「ももちゃんのベットは人をダメにするクッション改め人をダメにするベットなんよ~~」

「へぇ~」

「よろしければ不死黒さん入ってみますか?」

「それじゃぁ。・・・おぉ~ 少し手を入れただけで直ぐに暖かくなる毛布にしっとり滑らかな絹100%のシルクシーツに最高のマット」

 

 ユエが毛布を少し開けて待ってくれているために手を滑り込ます。目を瞑り肌感覚を上げるとじんわりと温かくなる毛布。滑らかなシーツ。少し強く押せば手に優しく押し返すマットに思わず堪能してしまう。

 

「・・・って!この毛布の羽毛、究極の天然羽毛や羽毛の宝石と呼ばれるアイダーダックからとれるアイダーダウン!!?」

「お兄様もの凄く詳しいですねって、あぁ~そういえば才ちゃんの家は家具とかも取り扱ってましたね」

「そうそうって違う。俺が呼ばれたのはこのベットのことだよな」

 

 余りのベットの気持ちよさに思わず入り込みそうになるがなんとか耐え抜き話しを戻す。

 

「はいどうしましょ」

「どうってそもそもどうやって中に入れたんだ?ドアの大きさに不可能だろ?分解したとかか?」

 

「何言ってるんですかお兄様? この世界の現代科学は質量保存というか物理法則が曖昧な世界観なんですから」

「ユエさんメタイですわ」

「怪我したの?」

「それは痛いですね」

 

「そろそろ辞める」

「引退」

 

「ご飯に合う」

「明太子ですね」

 

「お赤飯作るとき」

「目出度い」

 

「私の個性」

「液体操作」

 

「ネタが尽きました」

「あはは」

 

 ユエのボケを交互に答えるもユエの方がネタが尽き八百万は苦笑いを浮かべながらベットに腰掛ける。そして膝の上に乗せてきたユエの頭を優しく撫でる。

 

「まぁそれでベットはなんとかなるかな」

「本当ですか?」

「あぁ」

 

 携帯を取り出しとある人物の連絡先を探しながら答えスマホを耳に当てる。

 

 

 ☆

 

 

「ってことで来てくれてありがと小大」

「ん」

 

 呼んだ助っ人はB組の小大唯だった。

 彼女は一騎に呼ばれた瞬間一も二もなく行くと答えやってきた。そして。

 

「久しぶり、八百万、ユエちゃん」

 

 拳藤も着いてきた。只単純に小大が電話に出たとき直ぐ近くに拳藤がいただけだが。

 

「ん」

「ん、仕事早いな。ありがと」

「・・・ん♪」

 

 小大の両手には先ほどまでユエが気持ちよさそうに寝転んでいたベットがあった。まぁそもそも一騎が小大を呼んだのはベットを個性で小さくして貰う為だった。

 

 手の平サイズになったベットをテーブルの上に置き小大に礼を言う一騎。その姿を八百万はただじっと見つめる。

 

「なんで。私のことは使ってくれないのに・・・」ギリ

「ユエさん!変なアテレコしないで下さい!」

 

 背後で変な効果音まで付けてまでアテレコするユエの肩を掴み大きく揺さぶり八百万。ユエは笑って揺すられ続けるも口を開く。

 

「でも近いことは思ったでしょ?」

「・・・そんなこと」

「ないって言えるの?」

「うっ」

「無いの?絶対に」

「・・・思いましたわ・・・その少しだけ・・・頼られて羨ましいと嫉妬・・・しました」

「・・・ももちゃんかっわいい~」

「ムッ~~」

 

 揺さぶる動きを止め顔を紅くして消え入りそうな声で答える八百万を見て一瞬キョトンとした顔をするも思わず可愛く見え抱きつき頬ずりする。何時もなら八百万は優しく撫でるが今回はプク~と頬を膨らませるが、それが帰って可愛く見え更に力を強め抱きつく。

 

 

「何してるの?二人とも」

「いえ別に」

「そう? それじゃぁ八百万、後はベットを創造で作れるはずだよ」

「あはい。小大さんありがとう御座いますわ」

「ん」

「じゃぁももちゃん一緒にベット考えよ!」

「はい」

 

 

「小大、拳藤二人は少し時間ある?」

「ん」

「私も時間あるよ」

「なら良かった」

「「ん?」」

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ん!」

「へ~此所が不死黒の部屋・・・デカくない?」

「ん!ん!」

「うわ唯のテンションが高いって!お風呂もあんの!?」

 

 部屋に案内され一騎の部屋を見た二人は部屋の大きさや風呂付きなことに驚きながらも部屋の中を見る。

 二人の靴の向きを整えたあと手を洗い冷蔵庫から冷やしておいたクッキーシュー皮とレモンクリームを取り出す。

 

「うん。寮の説明に先生達が来たときに個人用の風呂を頼んだら本当に付けてくれたんだ~」

「へ~・・・ん?でも大浴場があるじゃん」

「ん」

「いや俺の体ってさ傷だらけで汚いじゃん?だから皆と風呂に入るの嫌だしだからといって時間ずらして入るのも落ち着いて入れないからさ」

「・・・ん」

「ごめん思った以上にデリケートな話しだった」

「気にしないでよ。それで、まぁそんな理由で風呂を取り付けるために部屋もデカくなったとか。・・・よし!我ながら綺麗に出来た」

 

 シュー皮の底に小さな穴を開けて絞り袋に入れていたレモンクリームを入れながら一騎は話し完成したレモンクリームのクッキーシューに自画自賛を送る。

 思った以上に触れてはいけない内容に二人は気まずそうにして座るが一騎はその姿に言い方ミスったと内心呟くも顔には出さず二人の下に行く。

 

「そんな事より、どうぞ。レモンクリームのクッキーシューとアールグレイのケーキセットです」

「おぉ~!!」

「んっ!!?」

 

 目の前に出された物を見て二人は目をキラキラさせ食べ始める。

 美味しそうに食べてくれる二人を見てアールグレイの柑橘系の香りを楽しみ一口飲み頬を緩ませる。

 

「美味し~。不死黒って林間合宿のご飯の時も持ったけどほんと女子力高いよね」

「ね」

「いや女子力って女子に使う言葉だろ」

「まぁそうなんだけど」

 

 そうなんだけど違う!と拳藤は言いたがったがそれよりも先に目の前に出されたお替わりを楽しむ。

 

(女子力って可愛いとかだろ?確か・・・拳藤可愛いんだから女子力あると思うけどな~。・・・にしても小大はリスかハムスター見たいに食べるな、以外だ)

 

 

 ☆

 

 

 

「ご馳走様」

「ん!」

「お粗末様」

 

 出されたレモンクリームのクッキーシューを3つも食べて幸せそうな顔をする二人*1。それを見て一騎は朗らかな笑みを見せ食器をかたづける。

 

「ねぇ不死黒。あの本棚の本って全部武術に関する物?」

「そうだよ」

「ん、んん」

「だよね。私も前に興味を持って雄英図書館にある武術の本見たけど此所までの種類無かったよ・・・中国武術もある。・・・ん?」

 

 片側の壁一面にある武術の本に興味を持ち色々見ていると一部に武術では無く普通のノートの背表紙に不死黒一騎やユエや他の人の名前が書いてあるのが目にとまる。

 

(不死黒だけじゃなくユエちゃんに八百万、それにこの名前は体育祭の・・・)

「どった拳藤?」

「これみていい?」

「あぁ俺のやつだけな」

「ありがと・・・・・・っ!?」

 

 お礼を言って近くにあった№16と書かれたノートを手に取り開いた瞬間に衝撃に受けた。

 ページ1枚1枚にびっしりと型の構えや型から型に繋げる動きが事細かに書かれ、更に書いた時期の肉体に合わせた筋トレメニューが書き溜められていた。

 

「こっちは・・・!」

 

 次にオリジナルと書かれたノートを手に取り開くとまたしても衝撃に襲われる。

 オリジナルのノートには二虎流を初めいろんな武術の流派を元にその流派のオリジナル技や他の流派同士を掛け合わせたオリジナル技。更には特別な呼吸法に翠鈴との戦闘で身に着けた自身の(タオ)の意識のしかたが綺麗に纏められていた。

 

「・・・・なにこれやばすぎでしょ」

 

 ときに一流の美食家は一流の料理人が作ったスープを一口飲んだだけでその食材に手間暇を容易に想像することが出来ると言う。

 拳藤は一流とはまだ言えないがそれでも武術家。このノートを見ただけで一騎がどれほどの努力をして来たのかが分る。しかもノートの所々には血のようなものも着いておりそれが更に努力をわからせるのに拍車をかけていた。

 

(基本の型から足捌きに重心の位置と細かいことまで・・・どれもこれも事細かに書かれている)

 

 無個性でありながら個性持ちしか居ないこのヒーロー業界に挑む一騎の努力を少し位はわかっていると思っていた。しかし実際は、想像を遥かに超える努力量(全然わかっていなかった)

 

 このノートを見れば嫌でもわかる。一騎は確かに戦うための天賦の才がある、だがそれだけじゃなく数多の努力で才を磨いてきた。いうなれば未加工の宝石を美しく魅えるようにその宝石特有のカットをして完成させるようなもの。

 途方もない努力。

 

「どうした?」

「なぁ№は1~39、オリジナルは8まで。これいつから書いてるの?」

「小学生の頃からかな?確か小5の頃かな」

「・・・」

 

 一応一騎が無個性とわかる前から筋トレしたりして努力をしていたのを拳藤は聞いていた。しかしこんなにも事細かにメモをして改善点や反省点も意識しているのは知らなかった。

 

(よく生まれながらの天才が努力した凡人(主人公)に負けるお話しがある。けどもし天才がその才能に胡座をかかず汗や泥に塗れ高みに行くために長所を伸ばし短所を克服し全てを磨く努力をし続けていれば、努力する才能しか持たない(努力しか能の無い)主人公(人間)が勝つどころか追いつけるはずが無い)

 

 自分も目標に向かって努力して来たのに一騎の努力に比べると全然足りない。努力や頑張りは人と比べる物じゃないとわかってはいるがそれでも一騎の目に見える努力の証とも言えるこのノートを見てしまえば自分の努力などたいしたことないと知り、ギシリと音が鳴るほど奥歯を噛み締める。

 

「不死黒は報われないかも知れないのにここまで努力をするの辛くないの?」

「・・・何言ってんの?」

 

 問われたことに一騎は一瞬きょとんとした顔をしてから答える。

 

「報われるか報われないかなど関係無いよ。目指す目的があるならそれに見合う、又はそれ以上の努力をするのは当然だろ?」

「っ!?」

「目的がやりたい事がなしたいことがあるのなら例え血反吐を吐こうと汗や泥に塗れようと将来無駄なに終わろうと努力をし続ける。努力もしないで目的だけを追い求めるのは違う。

 ()()()()が言ってた、努力をしないのなら夢を見るだけで終わらせれば良い、夢を叶えたいのなら努力をし続けることだと」

 

「ジジイ?」

「ん?誰だろ?・・・・・てか俺そんなこと言われたこと無いよ、な?んん?」

 

 自分で言っといて知らない言葉に頭を捻り悩む一騎。

 

 そして拳藤は気になる言葉はとりあえず置いといて一騎の言っていた努力のことに感銘を受けた。

 

 

「不死黒お願いがあるんだけど」

「あ・・・ん?」

 

 人が己だけで出来る努力には限界がある。

 

「私を・・・」

 

 だから拳藤は目的の為に一騎を頼る。

 

「弟子にして下さい」

 

 正座を正し深々と頭を下げる。

 

 拳藤一佳は不死黒一騎を同じヒーローを目指す仲間として自身の五体で戦う者同士として格闘家どうして尊敬し憧れていた。けれどこのノート(努力)を見た瞬間に一騎の歩んだ努力を進みたいと思った。

 憧れた一騎に追いつきたい為に、一騎本人に頼み込む。

 

「お断りします」

 

 だがその思いなど知らない一騎は頼みを断る。

 

「俺は人に教えるのは好きじゃない」

「それは知ってる。けど!「それに」・・・」

「お前の戦闘スタイルは中国武術をベースにしてるな。誰かに教わってるだろ?」

「お父さんに、護身術程度だったけど」

「やっぱり。でもな、俺の使う武とお前の使う武は違う。つまり俺から教わるってことはお前が教わった武術を捨てることになるぞ・・・それでもか」

 

 親から教わった武術を捨ててでも俺から教わりたいのか。そう問いかけられると拳藤はピクリと一瞬肩をふるわせるも顔を上げ一騎の目を見て答える。

 

「それでも不死黒から教わりたい」

「っ!? どうしてそこまで」

「憧れに追いつきたいから」

「その為に俺にか」

「うん。自分がどれだけ自分勝手なことを言ってるのかも理解してる」

 

 理解しているけどその上で、お願い。ともう一度頭を下げ頼み込む。

 

「・・・」

 

 自分が認めるまで拳藤は恐らく頭を下げ続けると悟り、一騎は溜め息をつく。

 

「良いよ弟子にしてあげる」

「っ! ほんと!!?」

「あぁ。ただし条件がある」

「条件?」

「もし、辛い、しんどい、休みたい、とかマイナス発言したらその瞬間に破門にする。いいな?」

「うん!!」

 

 もしかしたら俺押しに弱い?と内心呟きながら考えているとツンツンと肩をつつかれそちらを見ると小大が期待した目を向けているのを見てなんとなく察した。

 

「んっ ん!!」

「・・・あ~本気?」

「ん!」

 

 自分も!と言ってくる小大に思わず素で聞き返して仕舞う一騎。

 

「いいよ」

「んっ!」

「ちょ!不死黒!?私との対応違くない!!?」

「いやだって・・・」

 

 林間合宿の時に脳無との戦闘に巻き込んだ後ろめたさがあるから。 などとは言えず気まずそうに謝ることしか出来なかった。

 

 

 ☆

 

 

 

「それじゃぁ明日から宜しくね」

「ん」

「おう」

 

 少し話してから拳藤達は余ったレモンクリームのクッキーシューが沢山入ったタッパーを片手に自分たちの寮へと帰っていく。

 

 二人が見えなくなると一騎は少し神妙な顔付きで考え込む。

 

「弟子にするっていっちゃったな~。拳藤は中国武術やカンフーに重きを置いて教えるとして小大はどうしよう・・・。体を見た感じ動けはするだろうが・・・・個性は接近戦では強いがそのポテンシャルを行かせる動きを小大が出来るかどうか。

 あ~寮生活になって時間が作れるから拳藤小大だけじゃ無く八百万に彼奴の鍛練も考えないと。・・・頑張んないと、期待に応えないと・・・・・・・エリクが俺に武術を教えてくれるときこんなに悩んだりしてるのかな?」

 

 否、エリクはそんなに考えてない。『ん~次はこれにするか!彼奴なら多分身に着けられるっしょ!!』的なノリで教えている。まぁ実際に一騎はカラッカラのスポンジに水を吸わせるが如く武を吸収していくから細かに考える必要が無い。

 

「武を身に着けてる(イコール)教えるの上手って訳じゃ無いんだよな~・・・」

「不死黒?」

「およ轟?」

 

 部屋に戻ろうと中に入ると大荷物を持った轟とバッチリと目が合う。

 

「凄い荷重だな。畳に障子?」

「あぁ家は日本家屋でな、洋風の部屋は落ち着かねぇ」

「なるほど!じゃぁ手伝うよ」

 

 轟の持とうとした畳を全部持って歩きだす。

 

「いいのか?」

「おう!」

 

 どうせ部屋に戻るところだし、と笑顔で答える。

*1
女の最大の敵であるカロリーを無視して





これで一騎の弟子は六人か。


次回「部屋王?」


それでは、期待せずにお待ち下さい。
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