無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第77話:必殺技

 

 

「休みの日に校舎入るってなんだかワクワクしますよね~」

 

 部屋王を決めた翌日A組は教室に向かっていた。

 

「ですね」

「そうなのか?」

 

 その道中ユエの言葉に八百万が反応すると一騎は休みの日に学校に行ったことが一度も無いために首を傾げる。

 

「不死黒さんは休みの日に忘れ物とかで学校に行ったことが無いのですか?」

「無いかな~部活とかもしてなかったし。っ・・・・・・」

「お兄様?」

「 !」

 

 何故か上履きに履き替えない一騎に疑問を持ちユエが声をかけると慌てて下駄箱の蓋を閉める一騎。

 

「ごめん、先に行っててくれ。忘れもんした」

「・・・・わかりました」

「ではまたのちほど」

「あぁ」

 

 一騎の姿に疑問を抱くもユエは軽く返事をして八百万は頭を下げて二人は先に教室に向かう。

 手を振り二人が見えなくなると顔から表情が消え、周囲に人が居ないか確認してもう一度蓋を開ける。

 

「・・・・はぁ~」

 

 下駄箱の中は泥や画鋲、ナイフの破片、泥等でグチャグチャになっており、更に上履きはズタボロに切り刻まれていた。

 

「・・・・犯罪者、ヴィラン、シネ、ね~・・・死ねない体なんだよ」

 

 中の落書きを呼んで自傷気味に笑うと一騎は購買の開店時間を考える。

 

「大丈夫だな。確か上履きも消毒液も売ってたな。10分で終わらせなきゃ」

 

 

 ☆

 

 

 

「あ!お兄様、何してたんですか?」

「ごめん、ちょっと物が見当たらなくてね」

「ん?」

 

 擦れ違いざまにユエの頭を撫で席に荷物を置く一騎。しかしそのときユエは一騎の手からした臭いに疑問を持つ。

 

(石けんで隠してるけど僅かに消毒液とゴム手袋の独特なにおい・・・)

「ユエさん?」

「ん?何でも無いよ」

「そう、ですか」

 

 動きを止めたユエに八百万は疑問を持ち声をかけるも普通に返され気のせいかと思い時計を見てそろそろ時間とおもい席に向かう。 

 

「おにい」

 

 キーンコーンカーンコーン。

 

 一騎に声をかけようとしたが、チャイムがなり諦め席に座る。

 

 

 

 ☆

 

 

 チャイムが鳴ると同時に入ってきた相澤が教台に立ち話し出す。

 

「昨日話した通り、まずは仮免の取得が当面の目標だ。ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然その取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその取得率は例年5割を切る」

「仮免でもそんなキツイのかよ」

 

 相澤の説明に峰田が呟く。

 

「そこで今日から君らには一人最低二つ……必殺技を作ってもらう」

 

 

「「「学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいのキタァア!!」」」

 

(必殺技作るのは学校ぽいのか?)

 

 みなの叫びに一騎は疑問に思うも決して口にはしない。

 そして疑問に思っていると教室にミッドナイト、エクトプラズム、セメントスの三名が入って来る。

 

「必殺!コレスナワチ、必勝ノ技・型ノコトナリ!」

「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

「元絶滅危惧種の俺・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・」

 

 ミッドナイトの言った絶滅危惧種と言う言葉に一騎は悲しげにぽつりと呟いた。その呟いた言葉はおもいの他教室に居る全員に聞えたらしくさっきまでの騒ぎが嘘のように消えミッドナイトも顔が引き攣る。

 

「あ、い、いやごめんなさい。忘れて下さい」

 

 静かになったことに気づいた一騎は慌てて訂正する。

 

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合だ」

 

 相澤が空気を変えようと説明の続きを話し、全員返事をしてから自分のコシュチュームを持ち更衣室に向かう。

 そして教師陣は先に体育館γへ向かうがその中ミッドナイトは・・・。

 

(あぁぁあああ!!!言う言葉を!使う言葉間違えたぁあぁあああああ!!!)

 

 内心大荒れだった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「体育館γ、通称トレーニングの台所ランド略してTDL!!!」

 

(((((それはマズいのでは!!?)))))

 

 

 ほぼ全員がそう思った中、説明が始まる。

 

「ここは俺考案の施設、生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

 

 そう言いながらセメントスは個性で地面のコンクリートを操り、それぞれの修行に用いるステージを構築していく。

 

「なーる」

「質問をお許しください!」

 

 飯田が手を挙げて質問する。

 

「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」 

 

「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災・・・あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。仮免試験では当然その適正を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力・他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適正を毎年違う試験内容で試される」

 

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する。状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」

 

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ飯田クンノ【レシプロバースト】。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」

「アレが必殺技でいいのか……」

「更にユエちゃんはいい例ね」

「私?」

「拘束の赤縛・身体能力強化の赤鱗躍動・穿血を初めとした多数の攻撃手段。現役のヒーローでも攻撃のみならず拘束に身体強化の必殺技を多数持つ者は少ないわ」

 

「ユエさん大絶賛ですわね」

「えっへん!」

 

「中断されてしまったが、林間合宿での個性を伸ばす訓練は、必殺技を作り上げるためのプロセスだった。つまり、これから後期始業まで十日余りの夏休みは、個性を伸ばしつつ、必殺技を編み出す圧縮訓練となる。なお、個性の伸びや技の性質に合わせてコスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

 

「「「はい!」」」

 

 

 ☆

 

 

 

 

 生徒1人1人にエクトプラズムが付きそれぞれ必殺技作りに入る。そんななかユエと八百万は一騎の元に向かう。

 

「お兄様!新たな必殺技のアドバイス下さい!!」

「アドバイスね~。ユエは既存の技の洗練しないの?」

「しおうと思ったんですけど一つぐらい作ろうかな~と」

「なるほど。なら拘束技がいいかもね」

「例えば?」

「そうだな~、血を使った拘束技は有るから次は水かな。拘束技と思わせないところから瞬時に拘束出来る技とか」

「・・・っ!そっか!ありがとう御座います!」

「うん」

 

 元気に返事をして必殺技開発に向かうユエを見て次に八百万に目を向ける。

 

「不死黒さん、私はどういった必殺技を作ればよいと思いますか?」

「先ずはどういった方向性の必殺技を作るかだな」

「方向性ですか?」

「八百万は出来る事が多い。必殺技とひとえに言っても攻撃・拘束・身体強化と他にもある。でもそうだな~・・・先ずは激しく動きながら複数創造出来る様にならないと」

 

「と仰いますと?」

「エクトプラズム先生と組手をしながら3個か4個を同時に創造しながら戦うこと。それで~・・・もし必殺技を作るのならユエと同じく拘束技をメインに考えたらいいかも。八百万はユエほどでは無いけど、近・中・遠全てで戦えるスペックを持っている。でもまだ接近戦は弱いからパワー系個性持ちに接近された時に肉弾戦で戦いながら相手を拘束できるようになるといいな」

 

「! ありがとう御座いますわ!」

 

 パァーと明るい表情になって八百万も自身の訓練する場所に向かう。

 

 みんなが必殺技作りをしているのを見て一騎はその場に座り込み頭を悩ませる。

 

「さてさてさ~て~俺はどうしよ」

 

 必殺技、それは詰まり個性関連の技だ。けど一騎は自分の持つこの個性は自分のでは無くエリクの個性の為に絶対に自分のだと認めたくない。そう思っているために必殺技を作れないし、そもそも『不老不死』の能力など言い方は悪いがただ死なないだけ。

 他には生き返る際に怪我も病気も全て直り、万全の状態になるだけだ。これでどう必殺技を作れと?素材一つだけ、それ以外を一切使わず絶品スイーツを作れと言ってるような物だ。

 

「あら、不死黒君はやらないの?」

 

 座り込んで考え込む一騎にミッドナイトが近づいて声をかけるが、一騎はそちらを見ずに答える。

 

「なにをどうやるんですか?」

「え?」

「必殺技はその個性に合わせた技ですよね?この個性は俺のじゃありません、エリクのです」

「そっ・・・そうよね」

 

 冷たく言い換えされた言葉にミッドナイトは何も言えなくなった。もし此所で「それは貴方の個性よ」などと言おうものなら間違い無く殴られてる。

 

「あ」

 

 悲しげなミッドナイトの声を聞いて一騎はやってしまったと気づき「先生は俺を気にして言ってくれたのに」と思い立ち上がり頭を下げる。

 

「ごめんなさい。気遣って声をかけてくれたのに」

「いやいいのよ。私が無神経だったわ・・・それより」

「そうですね。そのままじっとしててもアレなので隅の方で体外離脱で鍛練でもして来ます。エリクなら何か新しい武術教えてくれそうですし」

 

 体外離脱とは脳内で現実と同じ環境を作り、対戦相手のイメージと戦闘をすることで反復学習と戦闘経験を積むことができる、睡眠中に行なうイメージトレーニング。

 

「待て」

「?」

 

 隅っこに向かう一騎に相澤が待ったをかける。

 

「なんですか?」

「お前の鍛練は知ってるが流石に」

 

 相澤達も一応体外離脱がどう言う物か知ってるが、端から見たら寝てるだけな為に流石に止めなければならない。

 

「じゃぁあお前等が教えるか? 武術の武の字も知らない雑魚が」

 

「「「「ッ!!」」」」

 

 右手で前髪をかき上げながら振り向く一騎に相澤は咄嗟に戦闘態勢を取ってしまう。

 何故なら今、目の前にいるのは一騎だがその目の色も気配も目付きも全くの別人。

 

「誰だお前は」

「誰だと思う?」

「エリク・・・」

「正解だミッドナイト。スナイプは生きてるか」

「クッ」

 

 問われた言葉にミッドナイトは憎しみげに答えると一騎(エリク)はニヤリと笑い、小馬鹿にした様にUSJ事件以降にしたことを問いかける。

 

「さてまぁそんな下らないことは置いといて。で?個性だよりの戦闘しか出来ない二流に一体どんなことを教えれるんだ?・・・お前等は勉強ぐらいだろ」

 

 小馬鹿にした表情で言われた事に誰も言い返せない。

 正直、必殺技は個性に伴っての技のために出来ない。なら戦い方?と思うもそもそも相澤達では素手所か個性を使った戦闘でも一騎に勝てない。それどころかここはこうしたらいいとアドバイスを貰ってしまう始末。ぶっちゃけ相澤達では武術の成長に一切役に立てない。

 

「わかったか?それじゃ」

 

 なにも言わなく・・・否、言えなくなった相澤達をみて一騎(エリク)は冷めた眼を向けてから目を瞑る。そして次に目を開けると瞳の色は赤から赤黒い色に戻り気配や目付きもいつもの一騎に戻っていた。

 

「? どうしました先生」

「・・・いや、そうだな。お前は自分で鍛練した方がいいだろ」

「?・・・はい。では」

 

 一騎は体をエリクに乗っ取られている間の記憶が一切無い。そのために相澤達の反応が可笑しいと思うもそれ以上の疑問を一切持たなかった。

 

「イレイザー」

「わかってます。放課後校長に報告に行きますよ」

 

 隅っこの壁にもたれ寝始める一騎を見て告げる相澤。

 この後、少ししてオールマイトがアドバイスしに来るも不死黒を見ていると相澤に「間違っても声をかけるなんてことしないで下さいよ」と釘を刺されていた。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「オッラ!!」

「あまい!」

「ウッ!・・・オエェ!!」

 

 複数の拳撃に混ぜた本命の一撃をぬるりと蛇のような柔軟な動きで避け横腹に拳をめり込ませるエリク。

 その一撃に一騎は目を見開き被弾箇所を抑え座り込む。

 

「イッてぇ~」

「俺に勝とうなど100年早いな」

「うっせ」

「そろそろ500敗目かぁ~黒星がねぇのも味けねぇ~なぁ~」

 

 にやにやと笑みを浮かべて告げるエリクを一騎は睨むも直ぐに辞めその場に寝そべる。

 

 体外離脱で戦闘してすでに五戦目。全敗、けれども新たな技を一つ作ることはできた。

 

「橾流・水天ノ型『水燕』の対にできる技。スピードとパワー重視の火天・金剛ノ型『火鉢』。良く作れてるよ」

 

 軽く拳を握り、不規則な軌道で拳を繰り出す『水燕』とは違い、火天ノ型の足捌きで即座にベストな位置に足を運んで体勢を作り一発一発の拳を鉄砕で繰り出す『火鉢』。

 動きは単調だが、その分の速さと威力は上がりエリクの様な強者では無い限り完全に捌ききる者はいないだろう。

 

「名付けるならオラオララッシュだな」

「火鉢だぞ」

「知ってる」

 

 近くに座り腕を組みながら変なことを言うエリクに一応訂正を入れる一騎。

 

「けどお前のそのコスチューム(ロングコート)とは流石に相性悪いな」

「だよな~少し動きづらかった」

「そもそも冬用だろ?今の季節では脱いだ方がいいぞ」

「そうだな。これ脱いで何かいい物あるか相談してみよ」

「おうそれがいいそれがいい」

「・・・じゃぁ」

 

 

 ☆

 

 

 

「うっ・・・これら脱いで上はぴちっと体のラインが出るトレーニングウェアにするかな~」

 

 目が覚めた一騎は夏は動きやすさと涼しさ重視でコスチューム考えるかと考えズボンの方も夏しようにしようか考えながら歩きだす。

 

「どうした不死黒」

「・・・あ、少しコスチューム変更して来ます」

「わかった」

 

 簡素な会話をして発目がいる場所に向かおうと一歩踏み出そうとしたそのとき相澤に声をかけられる。

 

「なにか技は作れたのか」

「? えぇ一応一つ作れましたがエリクみたいな格上が相手だと効かないですね」

「・・・そうか」

「?」

 

 相澤の変な反応に一騎は疑問に思ったが気にするのを辞めて発目の元に向かう。

 

(一時間余りで新たな技を一つ)

 

 一騎の才能を相澤もわかっていた、そして自分では・・・いや、雄英にいる教師全員その才能を育てることは出来ないことも。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「発目の開発ラボ?に来るのも久しぶりだな~」

 

 前に来たのは夏休みになる前か~と考えながら重厚な鉄の扉の取っ手に手を伸ばす。

 

「不死黒君!」

「っ・・・どうした緑谷」

 

 扉を開ける直前に名を呼ばれ振り返ると緑谷が立っていたことに一瞬目付きが鋭くなるが慌てて笑顔を作る。

 

「僕は少しコスチューム改良に」

「そっか。俺も同じだよ」

 

「あ、おーいデクくん!不死黒くん!」

「こら!廊下は走るべからずだぞ!」

 

 2人が話しているところに麗日と飯田がやってくる。

 

「あ、麗日さん」

「どう・・・っ!」

「え?」

 

 振り返り声をかけようとした瞬間、一騎は何かを感じ咄嗟に緑谷を蹴り飛ばし勢いよく扉を開いた次の瞬間。

 

 

 ――ドカァーン!!

 

 なにかが爆発した。

 

「「「不死黒君!!?」」」

 

 吹き飛ばされ爆煙に包まれた一騎に心配の声を上げ走って近づく3人。

 

「焦った~。流石は我が危機感知」

 

 けど聞えたのは一騎の呑気な声。いままでに何度も発目の失敗による爆破に巻き込まれたことがあるために爆発の才にそういった勘が働くようになっていた。

 

「おや不死黒さん」

 

 一騎はドアを開けた瞬間に爆風と一緒に飛んで来た発目を受け止め後方に軽く跳び衝撃を逃がし、自分が下敷きになるようにして守った。

 

「発目~。また爆発させたな」

「移動サポートのジェット噴射の出力調整をミスったようですね」

「危なすぎないか?」

「いつものことですよ」

「それもそうか」

 

 一騎と発目は大した怪我が無かったようで軽く話し出す。

 ただこのとき、一騎が発目を受け止めた状態。 仰向けで倒れてる一騎の上にうつ伏せでいる発目。更に一騎の右手は発目の頭に左手を腰より上側に回している状態。

 

 誤解しか生まれない状態。

 

「ふふふふふふふしぐろろろくん!!?」

 

「ん?どうしたそんなに慌てて」

「君達は何時まで抱きついているんだい?」

 

 慌てる飯田に一騎は意味わからないとでも言いたげな目を向けていると、パワーローダーに言われ目線を発目に向けると視線を上げて自分を見る発目と目があう。

 

「あぁごめん。怪我無いか?」

「えぇおかげさまで」

 

 手を放すと発目は起き上がりお礼を言う。

 

「おや?そう言えば貴方達は・・・誰でしたっけ!」

「飯田天哉だ!体育祭トーナメントにて君が広告塔に利用した男だ!!」

「・・・あ、あぁ~そうでしたね!」

 

 本当に思いだしたのか怪し間だった。

 が、一騎はツッコむこともせず起き上がると服に付いた埃を叩いて払いながら話しかける。

 

「発目にコスチューム改良いら「話しを聞きましょう!!」 おっおう」

 

 一騎の目ですら捕らえる事は出来ず気が付けば発目が目と鼻の先にまで迫っていた。

 

「発目……寮生になって工房に入り浸るのはいいけど……これ以上荒らしっぱなしのままだと出禁にするぞ……くけけ……」

「え」

 

 パワーローダーの言葉に発目では無く一騎が反応して驚きながら中を見て絶句する。

 部屋の隅には天井に届きえるほどの作られたアイテムが転がっていた。

 

「I・アイランドに行く前に綺麗に片付けたのに・・・もうこんなに」

「あははは」

 

 申し訳も無く笑う発目に一騎もすこし笑いまた片付けるかと心の中で誓う。

 

「イレイザーヘッドから聞いてる。必殺技に伴うコス変だろ。3人もまとめて聞くから、入りな」

 

 

 

 ☆

 

 

「不死黒さんまた胸筋大きくなりました?」

「よく分かったな。少し大きくなったな」

 

 体をペタペタ触る発目にされるがままの一騎。

 

「でしたら此方はどうでしょう!」

「いや俺もの減らすためにき「スイッチオン!」 た・・・おぉリモコンで簡単に動くのか・・・・ん?んん??」

 

 着せられたパワードスーツはリモコン一つで自動で動く。動くのはいいが、一騎の腰をねじ切る程動いた。

 

「イ”タ”タ”タ”タ”タ”タ”ァアアア!!」

「不死黒君!!?」

「あ・・・スミマセン!可動域調整を間違えたようです!!」

「アアアアアアアアア フン!!」

「ベイビィイィイイ!!!」

 

 あっけらかんと話す発目に当てつけの様に一騎は気合いと共に腰を元の位置に捻りパワードスーツの可動域部分を破壊した。

 発目は叫んだ。

 

「発目さんそっちのしんぱいなん!?」

「不死黒君大丈夫!?」

「あ~大丈夫大丈夫。いつものことだから」

 

「「「いつものこと!?」」」

 

「それに身に着けた奴が爆発したのに比べたらましだよ」

(凄く遠い目だ!)

 

 遠い目で明後日の方を見る一騎を見て苦労を想像した。

 

 その後、飯田は発目に気づかれず要望を伝えるもいつのまにか背後に立っていた発目に腕にジェット噴射するブースターを付けられ天井に叩きつけられたりした。

 

「すまないね。彼女は病的なまでに自分本位でね」

「良く存じております」

「うん」

 

「ただまぁ、君らもヒーロー志望なら彼女との縁は大事にしておくべきだよ。アレを見てみな。あのゴミ山、不死黒君が夏休み前に片付けたのにもうあれさ。いままで多くのサポート科を見て来たけどやっぱり発目は特異だ」

 

 パワーローダーの話しに緑谷達は大量のサポートアイテムを見て驚く。

 

「常識とは18歳までに身に着けた偏見である。アインシュタインの言葉だ。彼女は失敗を恐れず、常に発想し思考している」

「何かを生み出すのに人に取って大事なものを持ってンだよ発目は」

「大事な物・・・?」

 

 とりあえず発目に緑谷達のサポートアイテムから自分のアイテムに意識が向くように誘導して大人しくさせてきた一騎が話しに入る。

 

「そう。発目のような物作りや俺のような武術。それに留まらず料理人とかもそうだけど新たな物を考えて作り続ける人はその道を孤独や荒野を歩くように思ったりするんだよ。・・・・・・でも彼奴はいつも笑顔で笑って楽しげに進む。

 一番大事な楽しむって物を常に持ち続けてる」

 

「楽しむ」

 

 

 一騎の言った言葉を緑谷は呟く。

 

「あ、てか緑谷と麗日はコスチュームの改良お願いしなくていいのか?」

 

「「あ」」

 

 自分たちの目的を思い出した緑谷と麗日はパワーローダーに要望をはなす。

 

 

「ねぇ不死黒君」

「ん?」

 

 要望を放した緑谷は少し躊躇しながらも一騎に声をかける。

 

「その・・・」

「どうした?」

 

 気まずそうにする緑谷に一騎はもしかして話してくれると思い期待した。

 

「その僕腕に爆弾が出来て以前のように戦えなくなったんだ。それでオールマイトに君はまだ私に習おうとしているって言われてそれでもわからなくて何かアドバイスを貰いたいんだ」

「・・・」

 

 林間合宿でハンターとの戦いで両腕に爆弾が出来た。そこで悩んでいたときにオールマイトからのアドバイスを貰うも意味かわからずにいた。

 だから一騎にアドバイスを貰う為に声をかけた。

 

「・・・チッ そんなのほぼ答えだろ」

 

「え?」

「なにも。それオールマイトのアドバイスの意味がわからず俺にアドバイスのアドバイスを聞きに来たんだよな?」

「うん」

「戦い方はなにも一つじゃ無い。視野を広く持ち周りを見てみ。 そうすれば案外近くに答えがあるよ」

「違う戦い方、周りを見る。・・・・・・っ!」

 

 言われた通り周りを見渡す。 笑みを向けてくれている一騎、なんか導火線が着いた樽を持ち出す発目。それに驚き引いている麗日と飯田。

 

「飯田君・・・! そ、そうか!」

「わかったか。ならもう言う事無い。・・・発目!それ前に失敗して爆発したから絶対にダメ!」

「ム~」

「いやム~じゃない。この前廃棄したのに何処で・・・・」

 

 樽爆弾みたいな物を取り上る一騎に発目は頬を膨らませ不満を露わにするも一騎は無視して樽爆弾ポイ物を解体廃棄箱に入れる。そして横目で飯田に相談している緑谷を見る。

 

(期待してバカみたい。死ねよ・・・・・・死ねないけど)

 

 

 

 ☆

 

 

 

「よし!片付け終わり」

 

 緑谷達が帰りパワーローダーも帰った後一騎は一人で発目の作ったアイテムの整頓をしていた。

 

「私の子供達(ベイビー)が捨てられてしまいました」

「人聞き悪いなァ!」

 

 両手を突いて落ち込んでいる発目を見て悪く無いはずなのに一騎は罪悪感を抱いてしまう。

 

「でもかたづけないと出禁喰らうぞ」

「まぁ仕方無いですね!」

「かる・・・?」

 

 さっさと切り替えてまたアイテム開発にいそしむ発目に一騎は思わずそう呟き、細かな部品を整理しているときとある瓶が目に付く。

 茶色い瓶にリサイクルのラベルが貼ってある物だった。それを見て一騎は手に持ち電光で少しすかしてみると液体が入ってるのがわかった。

 

「なぁこれなんだ?」

「? あぁそれは水分が蒸発して濃硫酸になった希硫酸です。あとで精製水を足そうと置いておいたんです」

「希硫酸、精製水・・・・・・あぁ~バッテリーの液体か」

 

 バッテリーの液体は『硫酸』と『精製水』を混ぜた混合物の希硫酸である。しかし常温で置いていると精製水は常に蒸発していき、最後には濃硫酸だけが残る。・・・・そう下手すると死んでしまう濃硫酸。

 

 

「飲んだら死ねるかなぁ~」

 

「っ!」

「え?」

 

 笑みを浮かべてそんな事を一騎は口走ったその瞬間だった。発目は信じられない形相と動きで駆け出し一騎を押し倒しその際に持っていた濃硫酸入りの瓶を取り上げ馬乗りになり、割れないように遠くに瓶を投げ捨てる。

 

「は、発目?」

「ハァハァ・・・」

 

 部屋の中に瓶の落ちて転がる音と開発中のアイテムは地面に落下した音が響く。

 けれど発目はそちらに目を向けること無く激しく呼吸しながらも一騎を見る。

 

「二度と」

「え?」

「二度と期待した顔で死ねるかなど言わないで下さい!!」

「!?」

 

 胸ぐらを掴み発目は叫ぶ。

 

「神野事件のとき、テレビで不死黒さんが自殺するのを見てどれほど苦しかったと思ってるんですか!」

 

 神野事件で一騎が自殺する姿はテレビで全国放送されていた。それを見たとき発目は親しい人を失う恐怖から過呼吸を引き起こした。

 それほどまでに一騎の死は精神的ストレスで、トラウマだった。もし一騎が目の前で死ぬようなことがあれば発目は自分の保てる自身が無かった。

 

「・・・(やってしまった)」

 

 ポロポロと涙を流し胸に顔を埋め「お願いですから」とかすれる声で言う発目に一騎はやってしまったと思った。

 発目がアイテム開発出来ない位心配してくれていたのは知っていた。だからもうそんな心配かけないように気を付けていた。八百万の件もあったからうかつなことは言わないようにと。だけどあの程度の言葉で此所までの反応するのは予想外だった。

 

「大事な人が死ぬの見たくないんです・・・・」

「ごめん。もうお前等の前でそんなこと言わない」

「・・・・約束ですよ」

「あぁ」

 

 

 ☆

 

 

「じゃぁ邪魔にならないように俺は帰るよ」

 

 少しの立ったあと、サポートアイテムを拾いまた作り始めた発目に一騎は話しかけ帰る。

 

「別に邪魔じゃ無いですよ」

「そう?」

「はい。なのでもう少しいて下さい」

「わかった」

 

 横目で椅子に座る一騎を見て発目は作業を再開する。

 

(サポートアイテムとコスチュームのライセンス取りますか)

 

 

 

 

 ――――――

 

 ――――

 

 ――

 

 

 

 

 

 

「今回も大量大量~♪」

 

 元の大きさからは想像出来ないほどパンパンに大きく膨らんだリュックを持ちほくほく顔で永身は歩く。

 

「あ!アレが東京・・・・なんとかツリーという奴か!!」

 

 高さ634mある電波塔を見上げ永身は子供らしい顔をしてはしゃぐが、直ぐに踵を返し歩きだす。

 

「よっと、流石に三日は家を空けすぎたから急いで帰らないと・・・・・・・・・・・・」

 

 近くの民家の上に素早くの飛び乗るとそのまま家の屋根ずたいに渡り道をショートカットして『中』を目指す。

 だが高速で移動しているなか、永身は大通りを通り過ぎるとき横目で大通りで繰り広げられているフル装備の警察を挟み二つの団体のぶつかり合いを。

 

 一つは超能力を持った集団。もう一つは超能力を持たない無能力者の集団。

 無能力者は能力を持った者達を危険だと言い、隔離しろという。しかし能力者達は人権を主張し、反発していた。

 

 特殊能力を持った人間が現れて早10年は経つ。それでも未だに人々は言い争っていたが。

 

「あほくさ。化け物って俺のように死んでも死なない人間だろ。それに比べたら彼奴らは人間だろ」

 

 永身はあほくさそうに見つめると走る速度を上げる。

 

 

 

「辞めてよ兄さん。もう人を殺すのは」

「ん?」

 

 中に近づくに連れ廃墟が多くなったころ、近くの建物から声が聞え立ち止まると声のほうへ歩く。

 

「?・・・っ!」

 

 猿並みの動きでビルを上がり声の正体の元に近づき、見たのは二人のボロボロの服を着た兄弟。

 二人を見た瞬間兄と思わしき人物が弟と思える人物を蹴り飛ばすのを見て永身は飛び出す。

 

「おい」

「!」

「・・・」

 

 永身の登場に弟の方は驚きで目を見開き、兄の方はただただ冷たい目を向けるだけだった。

 

「お前兄なんだろ?兄なら弟に暴力を振るうんじゃ無く守れよ」

 

 荷物を置き兄の方に歩く。

 

「ま、待って!」

「!」

 

 兄が手の平を向けたことで弟が止めようとするも兄は「死ね」と呟く、その瞬間、手の平からドリル状のイボのような物を放つ。

 

「あぶな」

 

 しかし永身は横を向くだけで避けるとアッパーカットで砕くと走り出す。

 

「お前いまの殺すきだっただな。なら殺される覚悟も出来てるよなぁ!!」

「ウッ!がぁ!!?」

 

 兄の腹に鋭い拳が突き刺さり吹き飛ばす。

 

「フゥ~・・・あ、ヤベ殴り飛ばしちまった。・・・まぁいいか、大丈夫か?お前」

「え?あ、うん」

 

 弟の方に向き直り手を差し伸べる。

 先ほどの好戦的な表情とは違い温かな笑みに少年は答え手を取り立ち上がる。

 

「俺は不死黒永身だ」

「ぼ僕はよいち」

「よいち・・・『与える』の与と『一』で書いて与一かな?」

「多分?」

 

 空中に字を書くように指を動かす永身。それをみて与一は首を傾げるも一応肯定する。

 

「(この反応的に時が分らないのか)・・・よかったら俺と・・・っ!? どけ!!」

「え」

 

 危険を感知し咄嗟に与一を突き飛ばすと胸をナニカで貫かれる。

 

「ガッァ・・・ぁパイプゥだと」

 

 目線を下ろせば大きめのパイプで胸を貫かれていた。そして視線を後ろにすると先ほど吹き飛ばした兄が立て睨んでいた。

 

「さっきのが能力じゃ・・・・ガッ!!?」

 

「永身君!!」

「・・・」ギロ

 

 勢いよく壁に叩きつけられ永身の意識は消える。

 死んだのを見て兄は与一に近づき髪を掴み持ち上げる・

 

「お前は僕の「あ~痛ぇ~お~痛ぇ~」 っ!?」

「油断したなぁ~。パイプがひとりでに・・・お前アレかぁ~噂に聞く能力複数持ち者か。念動力って所か」

「何故・・・お前は死んだはず」

 

「アァ”・・・・そうかぁ~そうだなぁ~そうかもなァ~~!!」

「・・・そうか、決して死なない。『不死』それが君の能力か」

「正っ解!!」

 

「その能力・・・・欲しい!」

 

 こめかみを少し指で叩き兄の推測を肯定し猛獣のような笑みを永身は浮かべ、兄はその能力を欲し邪悪な笑みを浮かべる。

 

(欲しい、ね。・・・なるほど、能力を奪える能力か。幾つあるか分らない能力者なら先手必勝だな。)

 

 僅かに前屈みになったと思った瞬間『烈火』を使い一気に間合いを詰める。当然接近中に攻撃を受けるも特殊な足捌きで揺らめく焔のように体を動かし全ての攻撃を避け間合いに入る。

 

「能力だよりの戦闘しか出来ないのかド三流!!」

「何なんだお前は!」

「・・・瞬鉄・砕!!」

「ゴガァ!!」

 

 兄の顔面に拳が突き刺さり再度殴り飛ばす。

 地面を転がり壁を突き破り屋内に吹き飛ぶ兄を見てその強さを知っていた与一は驚いた顔を浮かべていると、いつの間にかリュックを背をったエリクが前に立ち手を差し出す。

 

「行こう与一」

「え?」

「贅沢な暮らしは出来ないけど楽しい暮らしは出来ると思うよ。行こうぜ!」

「うん!」

 

 与一が手を取ると永身は手を引っ張り走り出す。

 

「与一!跳ぶから掴まれよ!」

「へ?・・・いやぁぁああああああ!!」

 

 お姫様抱っこされた与一は一瞬ぽかんとした顔をするも直後に重力落下で臓物が浮き上がる感覚を感じ直ぐにはまた上昇する感覚。そして民家の屋根づたいに移動していく初めてのことに与一反射的に永身の首に腕を回し落ちないように抱きついて叫び声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 離ゆく弟を見て兄・・・いや、後のオール・フォー・ワンはその場に膝を着き顔を押さえると怨念の籠もった声で叫ぶ。

 

「ダメだ与一・・・お前は僕のだ!! 僕は・・・お前がいないとダメなんだぁ!!!!与一ィ!!!!!!!」

 

 






発目がしっとりしてきた。・・・でもああいうキャラが取り乱すのって何か良くない?

次回「言葉」


それでは、期待せずにお待ち下さい。
よろしければ評価やコメントの方お願いします!優しいコメントが嬉しいな~。
あとここすきも嬉しいです!

アンケートはどっちを選ぼうと最終的な展開は変わらないつもりで~す。それまでの2人の関係が気まずくなるだけなので。

緑谷が秘密を自分の意思で話すか選んで!

  • 話す!
  • 話さない!
  • 作者に任せる!!
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