無個性でもヒーロー目指す!。   作:斬る斬るティー

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第78話:言葉

 

 

 

 仮免試験に向けての必殺技作りを初めて数日。

 

「ユエも八百万もいい技作れたな」

 

 2人の作った技を見て一騎は想像以上の出来に満足げな表情を浮かべる。

 

 八百万は元々、は体で償うと言っていたとき動揺していたとはいえ一騎にバレないように手錠をかける技量があった。その技量を更に磨き近接戦になれば相手にバレず一瞬で超合金重り等を付け動きを奪う技を身に付けた。

 そしてユエの周囲には水で出来た様々な魚が浮遊していた。

 

「彼女達も凄いな」

 

 生徒の成長を見に来ていたオールマイトは爆豪の次にユエと八百万をみて技を見てその有用性に関心の声を漏らす。

 

「オイ!上!!」

 

 そのとき爆豪の新技によって落ちた大きめの瓦礫が二つオールマイトに向かって落ちてくる。

 気づくのに遅れたオールマイトは即座に対処出来ず相澤は捕縛布を使おうとするもそれより先に頭上に影が通り動きを止める。

 

「SMASH!!」

「ハァ~・・・フッ!」

 

 フルカウルを使い緑谷は一つの瓦礫を蹴り壊す。もう一つの瓦礫は一騎が溜め息をつきながら鉄棒で僅かに斜めになるように下から突き粉々砕く。

 

「大丈夫でしたか!オールマイト」

「あぁ」

 

「蹴りで壊したの!」

「何、緑谷!?サラッとすげえ破壊力出したな!」

「お前、パンチャーだと思ってたのによ!」

 

 緑谷が蹴り壊すのを見ていた上鳴と切島が声をかけ話し出す。

 

「爆豪少年すまなかったね!」

「ケッ!…気ィつけろやオールマイト!!」

 

 オールマイトは上にいた爆豪に声をかける。爆豪は緑谷を一瞥すると技作りに戻る。

 

「不死黒少年も助けてくれてありがとう」

「こんなんじゃだめだ。・・・エリクならもっと上手くやる。もっと上手く、綺麗に素早くする・・・・・・足りない、まだまだ足りない」

 

「お、おい不死黒?」

「・・・どった?」

 

 オールマイトの声も聞えず何かブツブツ呟く一騎に上鳴が方に手を置き声をかけると一騎はキョトンとした顔で答える。

 

「雷電」

「・・・え」

 

 違う名で呼ばれたことで一瞬上鳴の動きが止まる。

 

「あ、いや何か緑谷みたいにブツブツ言ってたから」

「声出てた?」

「どうしました?お兄様」

「あぁユエ何でも無いよ」

 

 名前を間違えられても上鳴は指摘せず話し続ける。

 寮生活が始まってから最初はユエでそれからもいろんな人の名前の呼び間違いがあり、一騎はそれに気づいてなかった。それで皆は最初は困惑したがユエが皆に

 

「恐らくエリクの個性が入ったことで記憶転移的な物が起きて名前が混じってるのかも知れません」

 

 と言っていたために皆は違和感は残るもあだ名的に感じて訂正しないようにしていた。あとぶっちゃけ爆豪のあだ名に比べるとましと思う人もいた。

 

 

 

「そこまでだA組!!!今日は午後から我々がTDLを使わせてもらう予定だ!」

 

 大声が響き全員の視線がそちらに向く。ブラドの後ろにぞろぞろとB組生徒が

 

「イレイザー。さっさと退くがいい」

「まだ10分弱ある。時間の使い方がなってないな」

「いまの追い込み期間でそれにそんな威圧的でこちらのメンタルに支障が出ると考えないんですか?」

「いやそんなつもりは」

 

 思いもしなかったユエの返しの言葉にたじろぎながらも相澤と話しをする。教師同士で話し出しているときタキシードのようなコスチュームに身を包む物間が高笑いを上げて出てくる。

 

「ねえ知ってる!?仮免試験て半数が落ちるんだって!A組全員落ちてよ!!」

「そういうのを平然と本人達の前で言うのはヒーロー目指す者の前に人としてどうなんですか?人間性を疑いますよ」

「・・・」

「雄英と締結してる大学病院の精神科に行ったらどう?」

 

(((((((容赦ねぇぇ.......)))))))

 

 物間の言葉に容赦無くユエが返したことで物間は動きが止まり、皆はその言葉に思わず引いてしまった。しかし、最初の第一印象がクソ過ぎた為に仕方無い。ユエに取っては物間と爆豪は同列でゴミ評価だった。

 

「しかし……もっともだ。同じ試験である以上俺たちは蟲毒……潰し合う運命にある」

「だから、A組とB組は別会場で申し込みしてあるぞ」

 

 常闇が物間の言葉の一部に同意すると相澤の後にブラドが説明を始める。

 

「ヒーロー資格試験は毎年6月と9月に全国三か所で一律に行われる。同校生徒での潰し合いを避けるため、どの学校でも時期や場所を分けて受験させるのがセオリーになっている」

「ホッ・・・・直接手を下せないのが残念だ!!」

 

「いまあきらかホッついたな」

「なんか病名ある精神状態なんじゃないかな」

 

 切島くんと上鳴くんも物間くんの態度に物申した。

 

「1年の時点で仮免を取るのは全国でも少数派だ。つまり、君たちより訓練期間の長い者、未知の"個性"を持ち洗練した者が集うワケだ。試験内容は不明だが、明確な逆境であるのは間違いない。意識しすぎるのも良くないが、忘れないように」

 

 相澤が閉めるようにそう言うと全員が元気に返事を返しその日のTDL使用時間は終わった。

 

「・・・・・・ハァ」

 

 

 ☆

 

 

 ザァーー

 

「・・・・・・はぁ」

 

 雄英校舎にある基本誰も使わない校舎端に男子トイレ。そこにある手洗い場の一つの水を出しっぱなし、一騎は溜め息をつく。

 

「疲れた・・・」

 

 言葉通り一騎の顔は酷い疲労感が滲み出ていた。

 この必殺技作り期間一騎ユエ八百万以外のクラスメイトからもアドバイスを求められていたり、弟子の鍛練のメニュー作りが関係していた。しかし、一番の理由が。

 

「・・・ダメだ泣くな」

 

 人間関係だった。

 

 クラスメイトとかは今まで通りだが2.3年生が理由だった。雄英生徒のヒーロー科に入れず時が経った人達は無個性でありながらヒーロー科に首席で入り雄英体育祭優勝、そしてラビットヒーローミルコに目をかけられているのを良く思わない生徒が多数いた。

 そして神野事件での洗脳されていたとは言え一騎のした行為で元々良く思っていなかった生徒の感情が爆発した。

 雄英が襲撃されたのもオールマイトが引退したのも一騎の所為だと決めつけ虐めが始まった。

 

 毎日上履きは買い換えなければいけないほどボロボロにされ、1人で歩いてると擦れ違いざまに

 

「死ね」「ヴィラン」「犯罪者」「雄英から出てけ」「お前がいた所為で」「お前なんて生まれてこなければ良かった」

 

 等を言われてきた。一騎は悪くないけれどそんなの虐めをする側は関係無く叩けないオール・フォー・ワンより叩いてもやり返さない一騎を標的にした。

 そして此所に来るまでもすれ違う上級生に先の言葉やそれ以上のものを言われてきた。

 

「・・・・・ ううっ・・・・・・・・はぁ、おかしいな」

 

 ぽろぽろ涙を流しながら右手を胸に当ててから強く握る。

 

「いま、まではなんとも・・・・・・思わなかったのに・・・・・・・・・」

 

 鏡を見るとそこには酷く苦痛に歪んだ顔をしていた。

 

「言葉ってっ、・・・・・・こんなに痛いものだった・・・・・・・・・・・かなぁ」

 

 昔の一騎は暴言を言われるのが当たり前だった。その為に言われてもなんとも思わなかったが、いまは違う。雄英に来て普通の人の様に接して貰ったことで言葉の暴力への耐性が落ちた。

 よく言えば人間らしくなった。悪く言えば弱くなった。

 

「はぁぁ・・・・・泣くな、わらえ。・・・・・・・・いつもように、いままでっ・・・・のように・・・・・・・・はは、汚い笑顔」

 

 無理矢理笑みを作るも歪すぎるそれに一騎は歪な笑顔を辞め久擦れるように座り込む。

 

「俺は、不死黒一騎はいままでどう笑っていたっけ」

 

 いつも自分がどんな笑顔を浮かべていたかなど、いざ意識すると分らない。

 笑えない何時もの様な笑顔を、うまく笑えない。

 

「でもダメだ、笑わないと皆に心配かける・・・・・・・・・・・・・苦しい」

 

 辛く繰りしくとも自分で進むと決めたから進むのを止められない。助けを求めることも出来ない、いや助けの求め方が分らない。だから我慢して1人で溜め込み傷つ。

 

「うぅぅ・・・・・・」

 

 そして殆ど使われない隅で弱音を漏らす。

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・不死黒」

 

 

 ただ、殆ど使われないだけでごくたまに人が来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後。

 

 

「書類は全部揃えた。あとは明日」

 

 明日のために必要な書類を全て揃えた一騎は書類を再確認してまた歩きだす。

 

「不死黒くん!!」

「やっほ~」

「・・・あ!」

 

 一騎は考えていて気づかなかったが正面から波動と甲矢の2人が向かって来ていた。

 

「こんにちは。波動先輩、甲矢先輩」

「全く気づいてなかったね」

 

 と甲矢は言うが、甲矢と波動も最初一騎の髪色が変わりすぎていて最初誰か分って折らず顔の傷が見えて一騎だと認識した。

 

「あはは・・・まあちょっといろいろと」

「?」

「あ、いま一年生は仮免に向けての必殺技作りか」

 

 手をポンと叩いて納得したように甲矢が言う。

 

「はい。林間合宿で出来なかったことをいま詰め込んでやってるんです」

「なるほど」

「ねえねえ何か必殺技作れた?」

「・・・俺の場合は新しい型ですかね」

 

 笑顔を絶やさず話す一騎はちゃんと笑えているか不死黒一騎がする笑顔を出来ているかと内心不安に成りながら話す。

 

「そういえば不死黒くんの個性って凄いよね!」

 

「・・・・・・は」

 

 しかし波動のその一言で一騎の顔から一瞬で笑みが消える。それに気づかず波動は更に何時もの様に疑問を投げかける。

 

「不老不死!不老ってことは体の成長止まったの?筋トレしても筋肉付かないの?死ぬってどんな感覚なの?死んでる間は寝てるみたいな感じ?不思議~。不死黒くんの個性は不思議がいっぱい!」

 

「黙れェ!!!!!!」

 

「え、グッ!?!?」

 

 不死黒君の個性。そう言われた瞬間一騎は叫ぶと波動の胸ぐらを掴み壁に叩きつける。

 突然のことで受け身も取れず背中を強打し、痛みで苦しむが一騎の怒りの表情を見て固まる

 

「これは俺の個性じゃ無い!エリクの個性だ!!俺は!・・・・おれは、・・・・・・・・・無個性だ、無個性者だ!!」

「・・・ちょ!待って不死黒君!!」

「っ!」

「ケホッ ケホッ!」

 

 見たこと無い一騎の反応に驚くも我に帰った甲矢は急いで止めに入る。一騎は慌てて手を話すと後ずさり自分の手を見てから座り込んで咳き込む波動を見る。

 

「あっ・・・ち、ちが・・・お、おおれこんなこと。違う、俺じゃぁ・・・・・」

 

 自分が何をやったことを理解出来ず、呼吸が乱れ過呼吸気味になり胸を押さえ俯く。

 

「不死黒くん・・・」

「! あ・・・ご、ごめん・・・ごめんなさい!」

「待って!! っ」

「ねじれ!」

 

 名呼ばれて顔を上げると心配そうな顔をする波動を見て謝ると走り出し急いでその場から去る。

 去ろうとする一騎を引き留めようと手を伸ばし一騎の腕を掴もうとするが、掴めず空をきる。そして走り去る一騎を追いかけようと立ち上がるが足がもつれ倒れそうになったところを甲矢に支えられる。

 

「私、不死黒くんを怒らせた・・・」

 

 波動に悪気など一切無かった。好奇心旺盛で気になることは直ぐに聞いてしまう癖を持っていた。それに対し一騎はどんな質問をされても嫌な顔一つせず丁寧に教えてくれた。

 だから今回もいつものように不思議なことを質問気味に言った。・・・そして怒らせた。

 

「そんな、つもりは無かったのに」

 

「ねじれ・・・・!」

 

 涙声で後悔を呟く波動を甲矢は優しく抱きしめる。

 

「大丈夫。今度一緒に謝ろ」

「・・・うん」

 

 ゆっくりと頷く波動をみて抱きしめる力を強くする。

 

 

 

「大丈夫?ねじれ」

「・・・あ、三実」

 

 心配して声をかけてきたのは3年のサポート科に所属の生徒だった。彼女は心配そうに波動達を見ると一騎の走って行った方を睨む。

 

「ねぇ2人とも、あんな犯罪者(ヴィラン)に関わるの止めなよ」

 

「「はあ?」」

 

 

 ☆

 

 

 

「やってしまった。・・・どうしよ」

 

 急いで部屋に戻った一騎はベットに寝そべり両手で顔を押さえ呻く。

 

 prrrrrrr

 

「電話?」

 

 そんなおりスマホが鳴り手に取り通話ボタンを押す。

 

『もしもし一騎君?』

「っ! 才先輩!どうしたんですか?」

 

 通話相手の名前を見てなかったが為に驚いて飛び起き落としそうになったスマホをしっかりと持つ。

 

『あら、用がなければか・・・彼氏に電話したらダメなの?』

「まさか!」

『ふふ。冗談よ』

 

 慌てる一騎の声に才子は小さく笑う。けど顔を見られていないからで、本当は彼氏と言った時から顔を真っ赤にして口角をにやつきが止まらなかった。

 

『明日ね、仮免試験』

「そうですね」

『一騎君の試験会場は何処か分ったの?』

「いえ、着いてからみたいです。才先輩の所は何処なんですか?」

『国立多古場競技場よ』

「おぉ~・・・お?」

『何処にあるのか知らないのね』

「・・・そ、それより才先輩個性が覚醒したんですよね」

 

『ええ、内容は内緒ですけれども(分りやすく話しを変えたわね。可愛い)』

 

 久しぶりの会話に2人は楽しむ。

 

『ねえ一騎君。聞きたいことがあるけどいいかしら?』

「ん? はい」

 

 明るい声が真剣なものに変わったことで疑問に思いながらも次の言葉を待つ。

 

学校(雄英)は楽しい?』

「楽しいですよ」

 

『皆とうまくやっていけてる?』

「みんな優しいですから」

 

『虐めに、あってない?』

「あってませんよ」

 

『そう、よかったわ。 それで最後に、何困った事あった?』

「・・・ありませんよ」

『嘘ね』

「っ」

『嘘は当たりね』

「なんでわかったんですか」

『女の勘よ』

「でた!個性じゃ無い特殊能力」

『え?』

 

 女の勘の恐ろしさを知ってる一騎はつい言葉が零れる。

 

 しかし実際才子は一騎の声のトーンだけで嘘だと把握した。最初の学校は楽しいか、皆とうまくやれてるか、虐めにあってないかは全部嘘を付いてなかった。ただ、虐めに関しては一騎が虐めと認識してないために嘘は言ってない。

 

『それでどうしたの?』

「それは・・・」

『一応、1年とはいえ一騎君より永く生きてる。相談ぐらいには乗れるわよ』

「・・・実は」

 

 ごまかせないと悟りゆっくりと先ほどあったことを話す。

 

 

 

 

『なるほど』

 

 全てを聞き終えた才子は大きく息を吐くと諭すように話す。

 

『確かに一騎君のした事は良くないわ。一時の感情に身を任せた、見方に寄っては暴力行為よ』

「・・・ですよね」

『でもその人も悪いわ。相手の気持ちも考えず何でもかんでも聞いて、キツく言えば無神経ね』

「それは!」

『違う、でしょ?』

「はい」

『仲直りしたい?』

「はい」

『なら謝らないと』

「ですよね!」

 

 才子の言葉に吹っ切れて明るい表情で立ち上がる。

 

『それと謝罪に行くなら手土産が必要よ。今回は相手の好きな食べ物とかね』

「わかりました!ありがとう御座います!!」

『たいしたことしてないわ。・・・頑張ってね』

「はい!」

 

 元気に返事を返すと電話を切り急いでエプロンを着る。

 

「確かまだジャスミン茶葉残ってたな・・・・・よし!」

 

 頭の中で今有る食材で何を作るか考え準備を始める。その顔は何時も自分に過酷な鍛練を貸すときと同じ表情をしていた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「確かこの寮だよな?」

 

 3年A組の寮に来た一騎は前に波動とクラスの話しをしたのを思い出しクラスを間違えて無いことを確認するとインターフォンを押す。

 

「はーいどちらさ、ま・・・・」

「ねえ誰が来たの~って。 不死黒一騎」

 

 最初に出てきた人が、一騎の顔を見て言葉を途切れ動かなくなったことで気になった他のクラスメイトが興味本位で来ると一騎を見て動きを止める。

 

「あ、不死黒君」

「さっきぶりです。甲矢先輩」

「さっきぶり。・・・不死黒君、ねじれのことなんだけどね」

「すみません、波動先輩居ますか?」

「うん呼んでくるね」

 

 急いで波動の部屋に向かう甲矢を見て一騎は他の3年に一度頭を下げると外に設置してあるベンチに座って待つ。

 

 

 ☆

 

 

 

「不死黒くん」

「! 波動先輩」

 

 声をかけられ振り返ると目元が赤くなってる波動が立っていた。その顔をみて一騎は自分がやったことの愚かさを再確認するのと同時に覚悟を決める。

 

「あ、あのね不死黒くん、私ね「ごめんなさ」 え?」

 

 俯き躊躇しながらも話すも、言葉を遮り謝られたことに波動は驚き顔を上げると深々と頭を下げる一騎を波動は目を見開く。

 

「なっ!なんで不死黒くんが謝るの!?私が酷いこと言ったのに!」

「違います。あれは感情に身を任せた行為でした」

「やめてよ!頭を上げてよ!」

「・・・はい」

 

 肩を掴まれ頭を上げるように言われ一騎はゆっくりと上げる。

 

「わっ私ね・・・。昔から気になることは何でも聞いちゃうの」

 

 一騎の顔を見て波動はベンチに座ると涙声ながらも話し出す。すると一騎も横に座りしっかりと聞く。

 

「・・・けっけど、相手のこと知りたいと思うほど皆離れて行っちゃうの。でも、雄英に来てからはち、違ったっ・・・。みんな優しくしてくれた。不死黒君も・・・・っ。

 うぅっ・・・聞いたこと、なんでも優しく教えてくれてっう、嬉しかったの」

 

 声を詰まらせながらも話し、何度も涙を手で拭い波動は一騎に顔を向ける。

 

「だから、今日言ったのはいっ嫌味でも見下しでもないの・・・!」

「・・・・・わかってます」

「でも不死黒君を怒らせて傷付けた。・・・ごごめんね、 ごめんなさい」

 

 涙を流しながら深々と頭を下げる波動。

 

「謝らないでください。あれに悪意が無かったことは知ってます。なので怒ってません」

「ほんとに?」

「はい」

「うっぅ・・・ふしぐろくん」

 

 何時もの優しい笑顔を向けてくれる一騎を見て波動はとうとう我慢できず泣きだし抱きつく。

 抱きつかれても驚かず抱きしめ返し返し優しく背中をさする。

 

 

 

 ☆

 

 

「ごめんね迷惑かけちゃって」

「波動先輩のことで迷惑だなんて想った事一度も無いですよ」

 

 気持ちが落ち着いてスッキリした波動は一騎から離れ涙を拭い笑顔を見せ謝罪する。それに一騎はハンカチで波動の涙を拭い笑みを返して答えすと2人はお互いに笑い合う。

 

「所で甲矢先輩はいつまで其処でのぞき見してるつもりですか?」

「え?・・・あ!有弓!!」

「あは、バレちゃった」

 

 一騎の言葉に驚き波動は一騎の見ている方を振り向くと気まずそうに立ってる甲矢が居た。

 

「いつから居たの?」

「俺が謝ったタイミングで居ましたよ」

「えぇ!?」

「なんで分ったの?不死黒君」

「いや・・・・・・・・気配モロだしなんで」

 

 そんなんでは分るか!と甲矢は内心叫びたくなったがグッと堪えてる。

 

「あ、そうだった・・・波動先輩此方を」

「ん?なにこれ?」

「手作りで申し訳ないんですか、謝罪の印。ジャスミン茶葉を使ったクッキーです」

 

 渡された物を開くと大量のクッキーが入っていて波動と甲矢は一度顔を見合わせて一騎の器用さに感心する。

 

「本当にいいの!」

「はい」

 

 本当に貰って良いのかグイッと近づいてくる波動に一騎は優しく頭を撫でながら答える。

 2人の仲直りした姿を見て甲矢は良かったと無でをなで下ろし微笑むが、もう一つの心配事が出てくる。

 

 それは一騎が上級生から受けていることだった。甲矢はあのあと波動を部屋まで送ると一騎のことを犯罪者(ヴィラン)と言った女子に詰め寄り問い詰め、色々と知った。物を滅茶苦茶にすることや暴言を言ったり態とぶつかったり突き飛ばしたりしているのがあることを。しかもそれが自分の知ってる友達がしていたこと。

 確かに上級生にはヒーロー科に入れなかった者がヒーロー科に入った後輩に理不尽な逆恨みを持つ者がいる。甲矢自身もその対象になったことがあったが、それでも虐めがあったなんてことは聞いたことが無かった。

 

「ねえ不死黒君一つ聞いていい?」

「なんですか?」

「不死黒君・・・いじめ、とかにあってない?」

「え・・・有弓どういうこと?」

 

 甲矢の言う事に言葉に波動は驚き聞き返すが直ぐに一騎の方を向く。

 

「いじめ?あってませんが」

 

 意味が分らないとでも言う顔をして答える。その顔に甲矢どころか波動ですら違和感に気づいた。

 

「ほんとに?酷いこと言われたとか所有物を壊されたとか」

「・・・なにいってるんですか?」

「え?」

「その程度は虐めでは無く嫌がらせでしょ?」

「・・・は?」

「じゃぁ不死黒君の思う虐めってなに」

 

 言われたことに一騎は立ち上がり少し悩みながら歩き、立ち止まるとクルリと振り返り話す。

 

「・・・個性を使った暴力、階段から突き落とす、刺される切られる、タバコを押しつけられる・・・とかですかね。なので甲矢先輩が言ったのはただの嫌がらせですよ」

 

 話しを聞いた甲矢もそばで聞いていただけだった波動も何をいっているのか理解出来なかった。いや、理解したくなかった。

 そんなもの虐めの範疇を越えて殺人未遂まである。なのにそれを虐めと思って言い切った。

 

 けど確かにこんな酷い暴力を受けていたら体中にある酷い傷痕にも説明がつく。

 

「・・・なんでこんなこと聞いたのか分りませんが安心して下さい。虐めなんてないので」

 

 何時もの笑顔を向ける一騎。

 

 しかしその顔の殆どは影ができ見えなかった。

 

「あ、そろそろ門限があるので帰りますね!」

 

 お休みなさい!と言って頭を下げてから寮に向かって走り去る。その後ろ姿を波動も甲矢も黙って見ていることしか出来なかった。

 

「有弓、不死黒君に何かしてあげられることってないかな」

「先生への報告、している人達へのしないように説得。 かな」

「うん」

 

 2人はやるせない気持ちのまま寮に戻る。

 

 

 

 ☆

 

 

「そうだ。お礼言わなきゃ」

 

 走りながらスマホを取り出すと才子に電話をかける。

 

『もしもし』

「才先輩!」

『そのようすだと仲直り出来たのね』

「はい!才先輩のお陰です。ありがとう御座いました」

 

『一騎君の助けになれて良かったわ』

「本当にありがとう御座います」

『気にしなくて良いわ。私がやりたくてした事だもの』

 

 その言葉に一騎は少し微笑み自分の寮の前に着くと天を見上げる。

 

「お~」

『?どうしたの』

「今空見れますか?」

『えぇちょっとまって』

「星空が凄く綺麗ですよ」

『・・・わ~ほんとね。今日は雲も無いから一段とよく見えるわね』

「ですね。・・・・・・才先輩」

『なにかしら?』

 

「今夜は月が綺麗ですね (明日は満月かな)」

 

『グフ! ゲホゲホ・・・・!』

「才先輩!?どうしたんですか!?」

『どうしたって・・・・はぁぁ~~~・・・いえそうよね、相手は一騎君だものそんな意味知ってるわけ無いわよね。言葉通りの意味よ・・・だって一騎君だもの!!

「才先輩?」

『いえ、何でも無いわ。・・・でもね』

「ん?」

 

『月はずっと綺麗でしてよ』

 

「そうですね!」

 

『二ブチン女誑し』

「何か言いました?」

 

『いえなにも。それじゃ明日お互い早いですし寝ましょうか』

「はい。お休みなさい才先輩」

『えぇお休みなさい一騎君』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

「明日は一騎に取って重要になる日だな」

 

 月を見上げながらカイピロスカのグラスを傾け月に透かしてからエリクは静かに呟き、飲み干す。

 

「エリザベート、次はアラスカを頼む」

「もう5杯目よ」

「いいだろ?お前も飲も付き合え」

「分ったわ少し待ってて」

「・・・」

 

(今宵飲んだのはカイピロスカ、アラスカ、ニコラシカ、ハーバードクーラー。全部の酒言葉をバラして合わせると。

 

 決心、覚悟を決めて明日偽りの無い心の本心に期待・・・って所かしら。

 なら私はアメリカーノかしらね)

 

 

 アメリカーノの酒言葉は届かぬ想い。






虐めをしている奴らは自分たちの行いは虐めでは無く制裁と思い込んでいる。悪魔に成り下がったのを知らない、民意の正義を掲げて。


次回「仮免試験」


それでは、期待せずにお待ち下さい。
よろしければ評価やコメントの方お願いします!優しいコメントが嬉しいな~。
あとここすきも嬉しいです!


来週はお休みです!

緑谷が秘密を自分の意思で話すか選んで!

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