第27地区   作:アハトラ

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PCを手に入れていつでも小説書けるようになりました(ただし経緯は訳あり)
銃の名称とか楽々入力なのでストレスフリーです。


2章 襲撃
2-1


「それでどうするわけ。この失態を埋める手立てとか考えているのかしら」

「ええ、考えてあります」

「聞かせてもらえるかしら」

 ドリーマーとエージェントはモニター越しで話し合っていた。彼女達は鉄血の中でもハイエンドで、その指揮権限もスペックに似合うモノだドリーマーは頬杖をつきながら、狂気じみた笑みを隠そうとし、一方のエージェントは頑なにその真面目な顔を崩すことはなく淡々と話していた。

 

「簡単な話です。付近にいるエクスキューショナーを利用します」

「簡単に言うけど、勝てる算段はあるわけ?」

 エージェントはドリーマーに自身が考えている作戦を打ち明けた。

「まず、グリフィンの基地の規模や戦力からして今回は負けるでしょう。しかし、目的はそこではありません」

「集めた情報を使い、再度戦力を整えてまた蹂躙すればいいのです」

 "蹂躙"その二言を聞いたドリーマーはニヤッと笑っていた。その笑顔の裡には、あるいは虐殺といった残酷な思惑が秘められていた。

「……何かおかしいことでも?」

「うんうん、全然違うの。あの蛆虫達を潰せると思うと気分が高まるわ」

 嬉しくなったドリーマーはクルクルと回っていた。そんな姿を見たエージェントは理解することを諦めたのか、

「そうですか」

 と冷たくあしらった。

「指揮は任せます。有象無象の集まりなので過度な期待はしてません。ただ期待に応えないような戦いをしたら…」

「分かってるわよ。まぁちょっとお高い偵察になるけど、情報収集くらいにはなるかしら」

「ええ、そこそこ戦力はあると思うので何かしらのアクションは出来るかと……それでは私はここで」

 エージェントが映し出された画面が真っ黒になる。1人取り残されたドリーマーは笑っていた。ヒヒッと引き笑いが部屋にこだまする。まるで、B級映画の魔女がそうするように。

「今夜はいいショーになるかしら……」

 楽しそうな独り言を呟き目を閉じる。彼女の玩具達が奏でるであろう破滅の音。それは彼女にとって大切な娯楽であり、唯一の暇潰しでもあった。

 

数時間後

 18:25。指揮官達の会議の後、暇を持て余したグローザは自分なりに時間を潰す方法を考えた。その結果、拠点内をぶらぶらと歩き回ることにした。幸いにも「空き部屋を好きに使ってもいい」と指揮官に言われたお陰で、早々に寝床を確保し仮眠をとることができた。更にこの基地のメンテナンスルームも使用することができたため、先程まで悲鳴を上げていた関節はまるで新品のように軽々しく動き、グローザは調子が良くなっていた。あとはこの暇になった時間を潰すことくらいだが、立場上どこかに勝手に入るのは難しかったため基地周辺をブラブラと散歩することにした。地下一階、無数のドアと無機質な壁が辺り一面に広がる。あまりにも面白みが無いので寝床に帰ってそのまま過ごすか、もう一度散歩するか迷い始めた。すると、いきなり右肩の上に手がぽんと置かれた。誰なのかと後ろを振り向き確認すると、グリズリーとSIG MUXが微笑みながら立っていた。

 

「グローザじゃん。どうしたの?」

 グリズリーは親しみやすく微笑みながら優しく話しかけてきた。

「えぇ、ちょっとグルグル回ってまして...」

「道に迷ったの?」

 SIG MUXが横槍を入れてくる。その目はとても輝いていた。

「えぇ……まぁそんな感じかしら……」

 グローザは思わず一歩下がり、引きつってた笑顔を見せていた。SIG MCXの熱意は一瞬で分かるほどの勢いだった。

「つまり、あたしの出番...!?」

 フンフンと鼻息が荒く風が服に当たる。興奮してるのは顔を見なくても分かる程だった。

「ねぇ、グローザが戸惑ってる」

「ごめ〜ん。久しぶりに道案内なんてしたからさ」

「分かるけどさ、落ち着いて」

2人はグローザのことを忘れ話し合い始めた。2人の話の輪に入れず困惑していると、SIG MUXがそれに気づき話しかける。

「……それでどこに行きたいのかな?」

「どこかオススメなところはあるのかしら?できれば時間を潰せるところとか無いかしら」

 SIG MCXは「ん〜」と唸り首を傾け目を瞑った。そして数秒後、再び輝いてる目を見せる。人差し指を立てて明後日の方を指した。

「まず、ここをまっすぐ歩いてすぐ右に曲がるとカフェ&バー’’ブォナ・ノッテ(おやすみなさい)"ね。時間帯的にはまだカフェだと思うよ。そしてカフェの道を直進して左折。また直線すると射撃演習場があるね。弾薬代とか無料だからストレスとかあるならオススメよ」

「へえ、結構そういう施設あるのね」

 グローザはそう感嘆し、それを聞いていたSIG MUXはうんうんと頷く。

「でしょ〜。元々ここはシェルター兼作戦室だったんだよね」

「なるほど、ここも”いわくつき”って訳ね」

「そうね。あたし達は慣れちゃったからなんとも思ってないけど普通そう思うよね」

 グリズリーはグローザ達の会話に参加した。

 

「シェルターってことは鉄血対策かしら?」

「まぁ、そういうこと。指揮官曰く『万が一前線基地が崩壊しても、ここで徹底抗戦をする』予定だったようね」

「相当苦戦していたのね」

「そういうこと。それで.......あたし達と一杯どう?」

 SIG MUXは食いつくようにグローザへ近づいてくる。彼女の柔らかく豊満な胸がグローザの体に近づく。胸が近づくすれすれだった。

「一緒にゲームとかでもいいんだよ?」

グローザがどう返すか対応に困ってると、SIG MUXの両肩にグリズリーの手が置かれた。

「近づきすぎ。グローザがまた困ってる」

 そう言うと、SIG MUXを引き離しそのまま数歩後ろへ下がらせた。その時SIG MUXは苦笑いを浮かべていた。

「張り切りすぎなんだってば。ステイ、ステイ」

 グリズリーは子供をあやすように優しくSIG MUXに話しかけ、肩に置いてある手をトントンとリズムよく叩いた。一連の流れを見てきたグローザはSIG MUXの顔を見つめ、そしてほほえみ返すとSIG MUXの手を握り返した。

「なら、1ゲームお願いできるかしら。もちろん勝ったら一杯奢ってもらえるかしら?」

 その言葉を聞いたSIG MUXは水を得た魚のように輝いていた。

「もちろんだよ。言っておくけどあたし、かなり強いよ」

「おぉ、あたしも混ぜてよ。それで何するの?」

 3人は一箇所に集まり談笑する。その微笑ましい光景は、戦場だとは思えないものだった。だから――その平穏な空気を打ち破る轟音と破壊が訪れようとは、思いもしなかったのである。

 

 突如、天井からくぐもった轟音が聞こえてきた。小刻みに建物が揺れる。それが長時間続く。揺れが弱くなることはなかった。怒号と振動は比例して激しくなる。天井が揺れるとホコリが舞い落ちる。そして揺れるたびにボーンと何か爆発する音が聞こえる。不思議な状況に緊迫したサイレンが響き渡り、赤いランプがせわしなく回転しさらに危機感を煽る。一瞬にしてカオスな空気へと変わった。

 そんな中、2人の顔に緊張が走る。

「ごめん、行かないと」

「ごめんね。ゲームはまた次回ってことで」

 2人はそう簡潔に一言話すと何処かへ行ってしまい、1人グローザだけが取り残された。辺りを忙しなく動き回る武装したグリフィン職員や軍の兵士たち、戦術人形の中からエンジニアと思われる身なりの職員を捕まえ、話しかける。

「どうなってるの。何故こんなにも忙しなく動き回ってるの?」

 男は緊迫した顔つきで、息を整えながら答えた。

「基地が襲撃されてる。鉄血が攻めてきやがった!」

 

 先程、ハンクと代表が話し合ってた部屋も臨戦態勢だった。オペレーター達はキーボードを素早く打ち込んでいた。ヘッドセットに付属しているマイクからは「状況報告」や「怪我人はいないか」、「被害について」など情報収集に躍起になっていた。

「クソッ!これはまずいな......」

 報告を聞いた指揮官は思わず悪態をついた。報告の内容は、正門の重タレットの配線が切断されてしまったこと。巡回していた人形及び職員が負傷、大破したこと。一部の建物が破壊されたこと。航空戦力が皆無なこと、そしてまともに使用できる防衛用の装甲車がごく僅かなことである。一部の装備は軍からの支給品のため、一旦軍に返し点検と改修を行なって再度貸し出される。そのため防衛戦力が手薄になってしまう日があるのだが、今回はそのタイミングが不幸にも重なってしまった。

「まず、負傷者と大破した人形を救助しろ。戦える者は臨戦態勢をとれ」

「軍には’’襲撃された’’と報告しろ。増援要請もしてくれ」

 ハンクはテキパキと各職員へ指示を出す。先程までの怠惰なハンクは、もう居なかったタイピングしていた職員の一人が振り向き、頭を前に突き出す。

「救助班、準備よし!いつでも出せます!」

 

 救助班はHS2000、M1918、XM8、4式、PM-6と数名の軍人がチームを組み、地上へ上がることになった。兵士の装備は通常の防具の他、ガスマスクや対戦車携行火器といったあらゆることへ対応する準備をしていた。地上へのエレベーターは運良く生きており、砲撃があったのにもかかわらず通常どおり動いていた。揺られること数秒。その時間は短いものであったが、外の風景が全くわからず明かりはついていなかったためか、はたまたこの状況のせいなのか、長く感じてしまう程だった。エレベーターのドアが開くと生暖かい空気が全身に張り付く。いつもならひんやりとしている司令部なのにこのときは違った。一同は司令部入口まで急いだ。重装備なのにも関わらず足取りは軽かった。

「全くここに攻めてくる馬鹿は何処のどいつだ」

「鉄血しかいないでしょ。早く倒さないとマズイよ」

「えぇ。それに負傷者を運ばないと。砲撃なら尚更です」

 XM-8とPM-6、HS2000は端的に会話し合う。平時なら仲良くワイワイと会話する人形達も、この異常事態に対応するため神経をすり減らしていた。先程までの振動や轟音は止み、不気味なほどにまで静まり返っていた。更には先が見えにくい程暗い非常灯が危機感を煽る。駆け足で駆ける足音が反響していた。入り口まで移動するとグリーンのヘルメットを装備しているグリフィン職員と巡回兵がいた。また入り口のコンソールをいじっている兵士は軍医(メディック)だった。右二の腕に赤色の十字マークのワッペンをしている。XM-8はコンソールを弄ってる軍医に話しかけた。

「ドク!状況はどうなの!」

 ドクと呼ばれた軍医はXM-8の方へ振り向き話し始めた。

「ここで作業してたら砲撃が始まってな。外の状況が全く分からないんだ」

「了解。で、これ開くの?」

 XM-8は降りたシャッターを叩く。固くびくともしないため曇った打撃音が鳴る。ドクは再びコンソールを見つめて操作していた。

「メイン電源がイカレてやがる。今予備電源を起動させてるから待っててくれ」

 ドクはコンソールの画面をタイピングしている。電子音が響き渡る。その間一切の物音がしなかった。数分後、ピピッ!と音を立て駆動音がなり始める。

「よし、もうすぐ開くぞ」

 そういったドクは地面に置いてあったMP-5を拾い構えた。それを見た救助班も銃を構え始めた。シャッターは唸りを上げ外の世界へ繋がる道を作り始めた。

 

「クソが......酷すぎる」

 外の世界を見た救助隊の一人が呟いた。そこに広がるのは地獄の光景だった。車両はガソリンのせいか天高く勢いよく燃えていた。地面は黒く焼け焦げ、砲撃の生々しい跡が至るところにある。被害はそれだけでは無かった。目に映るのは兵舎や検問所の瓦礫が大小散らばっていた。次に入り口近くに下半身がなくなったM1ガーランドの亡骸があった、おそらくダミーリンクだろう。そして巡回兵が装備しているヘルメットが転がっていた。炎の生暖かい風がシャッターを開けた瞬間入り込む。それはまとわり付くように吹き荒れていた。耳をすませば悲鳴と怒号が聞こえてくる。

「メディック!!助けてくれ!!!」

「誰か!M1ガーランドを運んでくれ!」

 その声を聞いて動いたのはHS2000とドクだった。HS2000はM1ガーランドのそばに向かった。

「これは......酷い」

 M1ガーランドの左腕は吹き飛んでいた。切り口からは赤茶色の人口血液がダラダラと流れ地面に小さな赤黒い血溜まりができていた。配線などのケーブルは切れており、焼け焦げた跡が見えていた。

「今すぐ手当をします。痛くありませんか?」

 HS2000は傷口に止血帯のようなものを巻いた。これは冷却液や人口血液が漏れるのを防ぐために使用する。いわば人形版の止血帯である。

「かなり痛いです......メンタルが焼き切れそうです」

 人形には特定の信号を感じると’’痛み’’として出力される。これは人形が自身を損傷するような行動を抑制するための一種の警告システムとして組み込まれている。自身が設定出来るわけでは無いが、外部から専用の機器を用いて感度を調節できる。HS2000はM1ガーランドの首のソケットにコネクタを挿した。そして、メディカルショルダーバックからタブレットを取り出すと痛覚の項目をタップし、痛覚の感度の項目を下げる。

 

「今痛覚の感度を低くしています。これで感じにくいはずです。ストレッチャーを展開するので少し待っててください」

 そう言うとHS2000はM1ガーランドのそばを離れて背中に背負ってるストレッチャーを下ろした。背中にしょえるくらい小さく畳まれたストレッチャーを展開した。あっという間に1人分が寝れるくらいの大きさになった。付近を歩いていた救助隊の1人が近づいてきた。

「すいません、手伝ってもらえませんか」

「大丈夫だ。それよりも何処を運べばいいんだ?」

「胴体をお願いします。私は足を運ぶので」

 兵士とHS2000はM1ガーランドを手分けして運ぶことにした。ストレッチャーを地面に置き、HS2000はM1ガーランドの関節部分を持ち上げた。胴体にまわった兵士は背中辺りに手を添え持ち上げる。あまり高くはないがストレッチャーの上へ移動するのに十分だった。素早く持ち運びストレッチャーの上へ寝かせる。上下移動すると取手を握り腰辺りまで持ち上げた。そしてあまり揺らさないように運搬を開始した。

 

「救助隊からの報告。負傷者多数、幸いにも死傷者はいませんでした」 

 グリフィンの職員はそう告げるとハンクの方へ向いた。

『不幸中の幸いといったところか』

 大型のモニターから代表の人影が映し出されていた。電力は問題なく普段どおりの明るさを維持していた。電波の状態が悪いのかところどころ雑音と砂嵐が入り込んでいた。

「まあな。ただし鉄血がこれだけで済むとは思わないと思うけどな」

『それは確かだろう。問題は次のアクションに対してどう切り返すかだ』

 代表の言葉に、ハンクは胃の痛みを感じた。現状使えるカードはここにいる人形やグリフィン職員と軍の兵士たち。それと数台しか無いが運良く生きている装甲車。また司令部付近に建っている監視塔も健在であり、いつでも使用可能だった。ここまでなら選択肢が豊富なように思えるが、問題が3つあった。

 1つ目は航空支援が期待できないこと。ヘリポートに待機しているヘリやガンシップは砲撃で破壊されてスクラップになっていた。軍に改修に出した分は無傷だが、物理的に距離があるため今すぐ対地支援を行うのは不可能に近いのだ。

 2つ目はいつ来るのかわからない援軍だ。いくら鉄血に負けた軍とはいえ彼らは正規軍である。実際航空戦力はグリフィンも鉄血も軍にはかなり劣っていた。AC-130’’スプーキー(化け物)"A-10サンダーボルトをはじめとした対地攻撃機。ストライカー装甲車やBMP-T(ターミネーター)、ハンヴィーと言った装甲戦力など。もし彼らの助けがあれば小規模な襲撃隊なら容易に壊滅出来る筈だ。

 3つ目は防衛陣地の損傷。正門の重タレットが沈黙しているのが悩みの種だった。あのタレットは小口径な艦砲と同程度の破壊力を備えている。マンティコアでさえ喰らえば一撃でお陀仏になるほどの火力を備えていた。また、20mm対空機関砲とZSU-23-4シルカ対空自走砲を備えた対空陣地、20mmと120mm迫撃砲を備えた迫撃砲陣地、対空ミサイルなど様々な装備や施設を保有している。しかし、それら全ての被害の規模が不明であるため安心できない。

 

 考えを巡らせていると、レーダーに赤い点が映し出された。ポツリポツリと散らばっていたその点は、1秒ごとにだんだんと画面を侵食していった。レーダーに映し出された赤点が意味するのは1つしか無い。ハンクはホログラムテーブルの側に寄り演説するように言い放った。

「襲撃者は鉄血だ!それもかなりの量だ!」

 間を開けると先程とは比べものにならないほどの怒号を放った。

「奴らは......我々を滅ぼす気でいる!!総員、なんとしてでも守り抜け!」

 




次回ドンパチプレー。前回活動報告書で出した兵器たちも登場させる予定です、お楽しみに。
お陰様でUAが700超えました。読者様には感謝を。そしていつも添削していただきありがとうございます。
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