アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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ネギま! 書きてえ…………と思い。
スタンド書きてえ…………と思った結果がこれだよ……。


零話 生きることは競争だ。

 宮崎のどかと言う少女を他人に語らせれば引っ込み思案のおとなしい少女、と言う印象がまず出る。

 前髪を伸ばし、自身の顔を隠す気弱でおとなしい少女。それが大多数にとっての意見。

 けれど親しい人間からすると、その印象が一変する。

 自身の意思を絶対に曲げない頑固者。それが親しい人間にとっての彼女の印象だった。

 

 何が正しいのか?

 正解は。

 全部正しくて、全部間違っている。

 宮崎のどかを知る人間全てが彼女の一端を理解し。

 宮崎のどかを知る人間全てが彼女の全てを理解していない。

 

 

 

 宮崎のどかの周囲には非常に個性的な人間が多い。

 

 例えば綾瀬夕映。口喧嘩では負け無し、そしてその聡明な頭脳から豊富な知識を持つ彼女。情報の分析能力や、ずば抜けた推測力など同年代どころか大人と比べても負けていないほどの頭脳を持つ。

 

 例えば早乙女ハルナ。その画力と速筆の凄まじさは、アシスタントとして共に作業をしたからこそ分かる。その才能はこの麻帆良においても有数のものだろう。

 

 例えば近衛木乃香。麻帆良学園の学園長の孫と言う立場もさることながら、成績優秀、家事全般を得意とし、誰からも好かれる性格により彼女を慕う人間も多い。

 

 彼女らは宮崎のどかを覆う人間の一例であり、この麻帆良と言う地においてその他にも優秀なものが多い。

 

 それに比べ。

 

 宮崎のどかと言う少女はあまりにも平凡だった。

 読書好きが高じて学業の成績は良いが、それが飛びぬけて良いわけでもない。

 運動は苦手、人と話すのが苦手…………他にも欠点を上げようとすればいとまが無い。

 眩しいくらいに才覚を放つ少女たちと共に居り、彼女たちに置いて行かれまいと努力したこともある。

 けれどそれでは追いつけないことに子供心ながらに気づいた。

 生まれ持ったものの違い。圧倒的な才覚の違いに気づかされた。

 

 けれど。

 

 絶望はしない。ただ、置いていかれたくないと、それだけを思った。

 けれどその思いは追いつきたいという一つの競争心で。

 そんな想いを思って、思って、思い続けて…………。

 そして、それが生まれた。

 

 

 

 

「けほ………………けほ、けほ」

 激しく咳き込み、床でのた打ち回る。

 

 イタイ、イタイ、イタイ。

 

 全身を襲う激しい痛み。気が狂いそうなくらいの痛みに立っていることすら覚束ない。

「あ…………あが…………く、ああ…………」

 

 痛い……痛い痛い痛い…………イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ。

 

 いつからだっただろうか。

 朝起きた瞬間から、夜痛みで気絶するまで。

 常時全身に激痛が走る。

 首を動かすだけで、腕を上げるだけで、一歩歩くだけで。

 家でご飯を食べている時も、学校で勉強している時も、放課後友達と寄り道している時も、夜ベッドに入った時も。

 

 いつも、いつも、いつも、いつも、いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも。

 

 止まらない痛み。最初こそ悲鳴を上げていたが、すぐにそれにも慣れる。子供ながらの順応性だろうか、それとも別の要因かは知らないが。

 両親に心配させまいと、笑った。友達に気づかれまいと、笑った。朝起きて家族へ向けて、学校へ行き友達に向けて、笑って、笑って、笑って。

 いつからかそれが自身の表情になった。

 

 

 

 

 笑顔とは本来攻撃的なものである。

 そんな言葉を本で見たことがある。

 あいも変わらず、痛みで起き、痛みで気絶して眠る日々が続く。

 

 けれどそれをおくびにも出さず、笑顔を絶やさない自分。

 一体いつまで続くのだろうか、そんなことを考えたこともある。

 病院に行って検査したこともあったが、結果は異常無し。

 

「どうすればいいんだろうね」

 今現在ですら激痛が身を攻め、ふと気を抜けば叫び出したいくらいに痛い。

 が、もうこの程度の痛みには慣れた。朝から晩まで絶えず苛まれていれば少しくらい慣れもする。

 

「早く帰らないとね」

 一人呟き、日の沈んでしまった空を見上げで帰りの足を急がせる。

 図書館島と言う本好きの自分にとっては楽園のような場所を見つけたのはついこの間。

 そのせいで、最近はどうにも帰りが遅くなっている。

 

 あまり両親に心配をかけるのも良くないとは分かっているが、本を読んでいる間だけはこの痛みも少しは紛れるような気がして、どうにも止められない。

 帰ったらまず両親に遅くなったことを詫びよう。そんなことを考えていたその時。

 

「…………あれ?」

 ふと気づく。周囲に誰もいない。さきほどまでは少ないながらも遅くまで残っていた生徒たちが帰る姿が見えたのに。

 そもそもこの学園の敷地内で人がいない場所を探すほうが難しいくらいいつでもどこかに人がいるものだ。

 なのに、まるでいない…………。

 それは明らかな異常事態。

 そして。

 

「なんや…………まだ人がおったんかい」

 

 物陰から現われる一人の男。明らかに学生ではない、けれど教師でもない。

 それは。

 むせかえりそうなくらいの…………血の臭い。

 そして男の足元に視線を移し、目を見開く。

 

 赤、赤、赤。そこに転がるのは赤にまみれた何か。

 

「…………あ、あああああ………きゃあああああああああああああああああああああ!!!」

 それが、バラバラに切断された人の死体だと気づいた時、全身が総毛立ち、あらん限りの悲鳴を上げた。

 

「うるさいで、嬢ちゃん」

 

 軽薄そうに笑う男が、表情とは対照的な冷たい視線で自身を見つめ、手をさっと一振りする。

 次の瞬間、ぐっ、と何かが自身の首を締め上げる。

「あ……がっ……」

 呼吸ができず、悶え苦しむ。なんとかしようと首を掻き毟り、それが糸だということに気づく。

「なんや……一般人かいな…………まあええ」

 そして、男がニィ、と嗤い。

 

「運が悪かったな、嬢ちゃん」

 

 自身が苦しむ様を見てそう言った。

 

 

 

 

 このままでは死ぬ。

 酸欠で朦朧とする意識の中、宮崎のどかはそう思った。

 このままでは男に殺される。

 けれど。

 死ねばこの痛みからも抜け出せるのだろうか。

 ふと、そんなことを考えてしまう。

 死んでしまえば、痛みで目が覚めることも、痛みで意識を失うことも無くなるのだろうか。

 我慢して笑顔を振りまくこともしなくて良いのだろうか。

 堪えて何事も無い振りをしなくでも良いのだろうか。

 そんなことを…………考えた。

 

 けれど。

 

 どうしてだろう。

 

 自身の手は必死になって首を絞める糸を外そうと踠く。

 自身の口はたった一呼吸を求めて開かれる。

 自身の体は全力を持って生き延びようとあがく。

 

 死にたい。

 

 そう思う。

 

 けれど。

 

 死にたくない。

 

 そうも思った。

 

 ああ、そうだ。まだあの本は全部読んでない。友達と明日の約束をしたままだし、両親にただいまって言えてない。

 まだ死にたくない。

 まだ死ねない。

 

 そう考えた瞬間。

 

 痛みが消えた。

 

 その直後、自身の意識は途切れた。

 

 

 

 宮崎のどかは知った。

 戦わなくては何も得られない。

 戦わなければ自身の命一つ守れない。

 死にたくないなら生き足掻け。

 何かを得たいなら戦って勝ち取れ。

 そうだ、元より自身はそうして生きてきた。

 

 生きることは競争だ。

 けれどそのスタート地点は不平等だ。

 だから足掻け。

 戦え。

 勝ち取れ。

 使えるものは何でも使え。

 

 足掻け、足掻け、そして競え。

 高みに上らねば、より上の強者に落とされる。

 落とされたくないなら、強者よりもさらに上に行かねばならない。

 けれど自身が上る速度は変わらない。変えられない。元より自身はここが限界だということを知っている。

 だから自分ではない、周りに待ってもらおう。周りを遅くすれば相対的に自身が早くなる。

 

 周囲の人間に置いて行かれたくない。

 

 宮崎のどかの渇望はそこに起源を発するのだから。

 そのための駒ならすでに得た。

 だからその名を呼ぼう。

 目を覚ませ、起き上がれ。

 今まさに戦わなければならない。

 自身を殺そうとするものがいるのだから。

 

 呼べ、自身の駒を。

 

 その名を、呼べ。

 

 

「“Bad apple”」

 

 

 呼びかけに答え現われたのは影。

 上から下まで影で覆われた人型。

 けれど男にはそれが見えない。

 それがこの力の大原則。

 好都合だ。

 自身の駒はそういうことに特化しているから。

 だから。

 

「さようなら」

 

 加速する。影が……男に向かって、加速していく。

 否、否、これは加速にあらず。

 影が加速しているのではない。

 

 周りが減速しているのだから。

 

 そして。

 何の抵抗も無く。

 男の、その首が落ちる。

 それを見、自身が生き残ったことを確信し…………。

 

 そして、意識は闇へと落ちた。

 

 

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