アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

10 / 38
ギリギリ間に合った。一日一話投稿、まだ記録は続く。


九話 殺意溢れる第二戦

 朝からネギ先生の様子がおかしい。

 それはクラスメート全員の共通の認識だった。

 まあ知る人は少ないが、昨日の夜に死にかけたことを思うと、ある意味当然と言えるのかもしれない。

 教師、と言ってもまだ数え年で十歳なのだから。

 まる一日、顔面蒼白なネギ先生を心配して、クラスメートたちが何か画策しているのもまた当然なのだったのかもしれない。

 

「帰るのか?」

 放課後、一足先に教室を出ようとする私に千雨さんが尋ねてくるので頷く。残念ながら放課後のイベントには私は不参加だ。

「学校で話かけてくるのは珍しいですね」

「…………まあな」

 気にするな、とだけ言って教室に戻っていく千雨さんの後ろ姿を見送り、私は学校から寮への帰り道を歩いていく。

 

 と、その時。

 

「ん…………お前は」

 下を見ていた顔を上げると、そこにいたのはマクダウェルさんと茶々丸さん。

 茶々丸さんはいつも通りだが、マクダウェルさんは私を見て明らかに顔を歪める。

「宮崎のどか…………」

「はい、どうかしましたか、マクダウェルさん?」

 白々しい、とマクダウェルさんが口にするのを笑顔で流すと、その視線が一瞬殺気を帯び、それと同時、何かが飛んでくるので“Bad apple”で掴み取る。

「…………糸?」

「やはり只者ではないな」

 人形使い、と言う彼女の肩書きを思い出すと同時に、試されていたのか、と理解する。

 

「……………………宮崎のどか、お前は何者だ?」

「何者…………ですか? 麻帆良学園中等部の三年生です」

 まあ決して()()()、だなんて言わないけれど。

 嘘は言っていない。ただし本当のことも言っていないが。

「お前は、魔法使いなのか?」

 答えはノー。ただし本当のことをわざわざ言う必要もないわけで。

「その質問に答える意味はありますか?」

 私のそんな返しに、マクダウェルさんが忌々しい、と言った表情でこちらを睨む。

 と言っても外見は初等部と言っても良いほど可愛らしい少女なので、まるで迫力も無いが。

「だいたい私の答えにマクダウェルさんが納得できますか?」

 例え先ほどの質問にイエスと答えて、ノーと答えても、マクダウェルさんからすればそれを確かめる術も無い。

 結局、何を答えても信用出来無いのだから無意味な質問だ。

 

「…………そうだな、今のは無駄だったな。それにしてもお前、随分と教室と態度が違うな」

 私も騙されたよ、とどこか呆れたような顔でそう呟くマクダウェルさん。

「別に騙しているつもりはないんですけどね」

 しいて言うなら、あっちが素で今がお仕事用です。そんな私の言葉でハッとしたマクダウェルさん。

「おっと、そう言えば仕事中だったな…………そろそろ行かねば」

 そう言って、茶々丸さんを一度見て、それから私に視線を戻す。

「最後に一つ聞いておく。お前はまた私の邪魔をするか?」

 さきほどとは比べ物にならないほどの殺意。

 

「はい」

 

 答えは短く。けれどだからこそはっきりとした意思がそこに込めた。

 もしマクダウェルさんがこれからもネギ先生を狙うのなら、私はそれを邪魔する。

 それだけは決まっていた。

「そこまでして坊やに肩入れするのは何故だ? もしや惚れたか?」

 惚れたか、と言われて少し考えてみる。そして出た答えは…………。

「今後に期待、ですかね?」

 そう言って苦笑すると、マクダウェルさんがまた呆れたような溜め息を付く。

「まあいい…………お前のその力がどういったものかは分からんが、今度また邪魔をするならお前も叩きのめすだけだ」

 そう言い残して、マクダウェルさんと茶々丸さんが去っていく。

 

 

 

「さて…………私も帰ろう、ってあれ?」

 ふと自身の携帯が振動していることに気づき、鞄の中から取り出す。

 着信名を見ると高畑先生から。

「はい、もしもし、宮崎ですけど? 今ですか? 帰り道ですけど…………はあ、外から、ですか? ええ、分かりました。それで、何を探せば? 不明って、それだけで分かるわけ…………もしかしてさっきマクダウェルさんたちがいたのは、ええそうですね、はい、分かりました」

 

 要約すると。麻帆良を覆う結界を外から誰かが越えたから探すの手伝ってくれ。と言うことらしい。

 ただ、越えた誰かが誰なのかすら分からないと言う。

 さきほどマクダウェルさんが仕事中、と言ったのはこのことのようだった。

「…………仕方ない」

 情報が少なすぎる…………他の人たちがどうやって探しているのかは知らないが、私が取り得る手段は少ない。

「“Bad apple”」

 自身がスタンドの名を呼び、先行させる。

「さて…………私は帰ろうか」

 “Bad apple”の射程範囲は非常に広い。元々遠隔操作型のスタンドだけあって、本体からかなりの距離を離れても動くことができる。

 女子寮の自身の部屋からなら中等部の校舎辺りまでカバーできる…………と言っても、戦闘することは不可能に近いが。そこまで本体から離れてしまっては、スタンドも並の人間より弱くなる。

 戦っても相手からすればただの的でしかないが、偵察くらいなら容易だ。

「一体誰が入ってきたんだろう?」

 聞いた話によると、麻帆良への侵入者と言うのはけっこう多いらしいので、気にはしても気に病むことは無い。

 その全てを排除してきた麻帆良の魔法使いは、相当に優秀なのだから。

 

 だいたい…………。

 

「私の領分じゃないですしね」

 

 つまり、そう言う事だった。

 

 

 




今回ちょっと短かったですかね?
ただカモ登場まで繋げると長くなるので、一回ここで切りました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。