アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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十話 ネタばらし気味な放課後寮の裏

 

 

 下駄箱の中には一通の手紙。

「下駄箱の中にラブレターって、入れた人はいつの時代の人間かな?」

 苦笑しながら手紙を開く、と言うかまだラブレターと決まったわけでもないし、別に下駄箱にラブレターと入れるのが古風と言うわけでもないけれど、何となく言いたくなった。

「って…………ネギ先生から?」

 ネギ先生から私宛に来る手紙…………進路相談とかそんなのだったらいいなあ、などと軽く現実逃避しながら目を通す。

 

 宮崎のどかさま

 放課後、りょーの裏で

 まてます。

 ぼくのパートナーに

 なってください。  ねぎ

 

「………………………………」

 バタン、と下駄箱を閉める。取りあえず、手紙の焼却処分は決定として、ネギ先生に何をとち狂ったか問いただす必要がありそうだ。

 と、ふと疑問が過ぎる。

 あの奥手そうなネギ先生がこんなことするだろうか…………いや、それ以前に。

 ネギ先生は仮にも教師をするだけあって、学力のほうは目を見張るものがある。

 以前黒板に日本語も難なく書いていたし…………しかしだ、この手紙、良く見れば簡単な漢字しか使われていない。

「………………誰だか知らないけれど、行って見ましょうか」

 もしかすると、昨日学園内に侵入してきたという何者かが張った罠かもしれないが、自身を呼び出す辺り、もしかするとこちら側の話なのかもしれない。

 そんな思考から私は携帯の番号を押しながら寮へと向かった歩みを進めた。

 

 

 アルベール・カモミールはオコジョ妖精だ。

 五年前、ウェールズの山中でネギ・スプリングフィールドに助けられ、その縁を頼って昨日麻帆良にやってきた。

 目的はネギ・スプリングフィールドの助けとなること。

 そしてそのために一番の近道が。

「兄貴のパートナーを見つけることってわけだぜ」

 仕込みはすでに終わっている、寮の裏にネギのクラスの生徒を一人呼び出している。

 宮崎のどか…………それがカモが呼び出した生徒の名。

 ネギのクラス簿を見せてもらった時、一目でピンと来た。

 この子しかないと、そう思った。

「後は兄貴を寮の裏まで連れて行くだけだな」

 すでに契約の魔法陣は作ってある、後は二人を合わせるだけ。

 この後の出来事に心を弾ませながら、カモが走り出す。

 何故宮崎のどかを選んだのか…………結局、それが分かっていない時点で所詮失敗する定めなのだと、そう知る由も無く。

 

 

「宮崎さん、大丈夫ですか!!?」

 寮の裏にいると、ネギ先生が空から降りて近寄ってきた…………いえ、先生、離れた場所で降りたつもりでしょうけど、普通にバレバレです。

 意外だったのは本当にネギ先生が来たこと。いや、わざわざ名前を入れたということはネギ先生も呼び出すつもりだったのだろうか。もしかして、私とネギ先生を同時に片付けようとする人間がいるということだろうか?

「あ、あの不良のからあげはどこですか!?」

「……………………………………はい?」

 たっぷり数秒悩んだが、何を言っているのか分からず思わず問い返す。

 一体この先生はどんな勘違いをしながらここに来たのだろうか?

 ところでネギ先生の肩に乗っている白い毛玉のようなものはなんだろう?

 ネズミのようにも見えるが、どちらかと言うとイタチやフェレットのようだろうか?

 まあいい、取りあえず違うだろうけれどネギ先生に手紙のことを聞いておく。

「これを出したのはネギ先生ですか?」

 手紙に書かれた文字を見て、ネギ先生が驚き、肩に乗った毛玉を見る。

「どういうこと!? カモ君」

「す、すまねえ兄貴。手っ取り早くパートナー契約結んでもらうために一芝居打たせてもらいましたぜ」

 喋った……? 契約……パートナー…………もしやあれがオコジョ妖精とか言うのだろうか。

 名前で呼んでいるところを見ると、ネギ先生と知り合いらしい。

 けれど今日に至るまでオコジョ妖精がネギ先生の傍にいると言う情報は聞いたことが無い。

 と言うことは。

 

「なるほど…………昨日結界を越えてきたのはあなたですか」

 

 私の言葉に、オコジョがビクリと反応する。

「え……結界? 宮崎さん、何を言って」

 この先生もどこまで鈍感なのだろうか。

 気づいているのかと思ったら…………あの時のことを夢か何かだと思っていたのだろうか。

「一昨日の時点で分かりませんでしたか? ネギ先生」

 普通の人間が夜に屋根の上にいる、と言う時点で怪しむだろうに、普通。

 

「ネギ・スプリングフィールド…………イギリスのウェールズ出身。メルディアナ魔法学校を首席で卒業、最終課題で日本の学校の「先生」になることに。昨年度の三学期に麻帆良学園に赴任、教育実習生として女子中等部2-Aの担任となる。今年度に正式採用となり持ち上がりで3-A担任となる。父親のような立派な魔法使い(マギステル・マギ)になるのが夢」

 

 私の口から語られた言葉にネギ先生が驚愕の表情を浮かべる。

「父親の名前はナギ・スプリングフィールド。千の呪文を操る魔法使い(サウザンドマスター)

 その名前を出した途端にネギ先生の顔が一変する。

「なんでそれを…………!?」

「ここまで言ってまだ分かりませんか? 私も魔法使いの存在を知った存在、と言うことです」

「え…………えええええええええええええええええええええええええ!!!!?!!?」

 

 今日最大の声が響いた。

 

 

「宮崎さんが……え、魔法使い?」

「いえ、魔法使いでは無いです、ですがそう言った存在がいることは知っていますし、知り合いにいます」

 まだ驚きの抜けないネギ先生だったが、こちらとしてはそろそろ本題に入りたいので、疑問質問一切無視で話を進める。

「さて…………ネギ先生。昨日の授業中もパートナーがどうこうと言っていましたが、ネギ先生はパートナーを探しているんですか?」

 そこのオコジョ妖精はともかく、先生自身の意思を知っておきたい。

 そしてもし、先生が欲するのなら……………………。

「ボクは…………」

 言いよどむ先生に、オコジョ妖精が何か言おうとするが。

「“Bad apple”そこのオコジョを黙らせてください」

 先手を打ってオコジョを捕まえておく。

「カモ君!?」

 先生が驚きの声を上げるが、それも無視。

 答えを求める私の視線に俯く先生。

 そして数秒沈黙が場を支配し、やがて先生が顔を上げる。

 

「はい、ボクにはどうしてもパートナーが必要なんです」

 

 その答えに表情が険しくなるのが自分でも分かる。

 だってそれは、その答えが意味することは。

「その意味、分かってて言っていますか?」

「…………え? 意味?」

 パートナーは言葉通りの意味ではない。

 魔法使いのパートナーは危険を伴う、先生はその意味が分かっているのか。

「パートナーになってください、と言うのは…………一緒にマクダウェルさんと戦ってください、と言うのと同じ意味なのだと分かっているのかと聞いているんです」

 私の問いに、先生が愕然とした表情を浮かべる。

「この間のマクダウェルさんとの戦い、たしかにパートナーがいればまた話は違ったかもしれませんね…………でもだからと言って、パートナーを求めると言うことはその人にも自分の危険を負わせると言うことです。それを分かってて言っていますか?」

「ボクは…………ボクは…………」

 虚ろな目でうわ言のように一人呟くネギ先生を見てやりすぎたか、と反省する。

 

「なってあげましょうか? パートナー……魔法使いの従者(ミニステル・マギ)に」

 

 え? と驚きの声を上げるネギ先生。まあ今までの言葉からしてこの申し出は意外だっただろう。

 私も本当はこんなことするつもりは無かったのだが、この間にマクダウェルさんの戦闘を見て気が変わった。

 もし次先生が襲われたら、十中八九先生は負ける。

 だから、ちょっとだけハンデを上げることにする。

 ただし。

 

「ただし…………先生の覚悟を見せてもらえたら、ですけどね」

 

 そう言って、私はニコリと微笑んだ。

 




まだエヴァと決着つけないです。
色々と説明不足気味なのはいくらか次回で付け足すかと。

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