アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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十一話 決意と覚悟の番外戦

 

 

 

 

 三学期の途中、ネギ先生に一度だけ助けてもらったことがある。

 そう、スタンドの操作に気を取られ、階段から足を滑らせた時の話だ。

 あの時確かに貸し一、と言った。

 状況を考えるに、今をおいて借りを返す時は無いだろう。

 けれど、それと契約することは話が別だ。

 契約をするなら覚悟が必要だ。

 

 この先、ネギ先生の巻き込まれるトラブルに供に巻き込まれる覚悟が。

 マクダウェルさんはその一番最初であり、決して彼女が最後のわけが無い。

 魔法使いたちにおいて、スプリングフィールドのネームバリューはそれほどに重い。

 例え、マクダウェルさんとの戦いの後に契約を破棄しても、関係者として巻き込まれる事態も考えなければならないほどに。

 

 ネギ先生はそれが分かっていない。

 自身の立場が分かっていない。

 自身の言葉の意味が分かっていない。

 自身の状況が分かっていない。

 あまりにも無知で…………あまりにも弱い。

 

 だから。

 ネギ先生のパートナーになんて、本当はなるつもりは無かった。

 あの夜の…………マクダウェルさんたちが去った後の、その一言さえ無ければ。

 

 負けたくない。

 

 ネギ先生の心に火が付いていた。

 それは小さな小さな灯火。

 もう一度吹けば消えるようなか細い光で。

 一人うわ言のように、無意識にそれだけを繰り返す、その姿に。

 恐怖に塗れ、涙に濡れたその瞳の奥に宿る炎に。

 何となく、昔を思い出して。

 私にもそんな時があった。

 なんて、懐かしんだりして。

 

 そう、だから。

 もし…………もしも、覚悟があるのなら。

 

 その火は途絶えさせたくない。

 

 そう思った。

 

 

 

「覚悟…………ですか?」

 ネギ先生の問いに私は頷く。

「ネギ先生の求めるのは魔法を使う間守ってくれる前衛、ですよね?」

「…………はい」

 私の言葉にネギ先生が頷く。まあ魔法使いと言う存在を考えるにそれは当たり前のことではあったが。

「もしも先生が覚悟を見せてくれるなら、それを私が勤めます…………安心してください。少なくとも、魔力の封印されたマクダウェルさんや、茶々丸さんくらいなら足止めできますから。ですから、私のテストを、受けますか? 受けませんか?」

 受けないならそれで良い。手伝えることだけはして、後は本人に任せよう。

 けれどもし受けるのなら…………。

「お願いします!」

 ネギ先生の答えに口の端が吊りあがる。

 

 その目だ。

 

 後ろを振り返らない、前しか見ない。

 自身が歩いた道に何が転がっているのか見えていない。

 良くも悪くも純粋な…………そう。

 

 純粋に歪んでいるその精神。

 

 それこそが自身を強烈に惹きつけたのだ。

 

「受けますか…………やることは簡単です」

 

 さきほど学園長に電話して、昨日の一件でマクダウェルさんを呼び出させた。

 そう今茶々丸さんは一人。

 

 だから…………。

 

「今から行って、帰り道にいる茶々丸さんを倒して来てください」

 

 ネギ先生に向けて、そう言い放ち…………嗤った。

 

 

 

 

 ネギ・スプリングフィールドは戸惑っていた。

 それは、自身のクラスの生徒の一人、宮崎のどかから課された試験のために同じく、自身のクラスの生徒の絡繰茶々丸を見つけたことに端を発する。

 桜の咲く川沿いの道を歩いていた茶々丸だったが、道端で泣いている女の子を見つけると、その原因である木に引っかかった風船を背中のスラスタを噴かせ、取って来て女の子に返す。女の子がお礼を言うと茶々丸も一礼して先へと進む。

 さらに進むと歩道橋を登ろうとする杖を付いたお婆さんがいたので、茶々丸はお婆さんを背負い、歩道橋を渡る。

 川べりを歩いていると、ダンボールに入った子猫が川を流れていたので、川へと入り猫を拾ってやる。

 それから、それから、それから、それから…………。

 

「良い人だ」

 あのエヴァンジェリンの従者とは思えないほどの善人振りにさしものネギも戸惑う。

 今は野良猫たちに餌をやっており、立ち止まっている。さらには周囲に人影は無い。

 チャンスだ…………心中で呟く。奇襲するなら最大のチャンスだ、と。

 だが…………。

 茶々丸の前に躍り出ようと脳が命令しようと足は動かず、魔法を使おうと口を開くが言葉は出ず、挙句の果てに杖はだらしなく下がったままその頭を上げない。

 

「できないよ…………」

 漏れた言葉はそれだった。

 例え茶々丸を倒すことで宮崎のどかが自身のパートナーとなってくれるのだとしても。

 例え相手があのエヴァンジェリンの従者なのだとしても。

 それでも。

「茶々丸さんは…………ボクのクラスの生徒なのに」

 茶々丸の背中が遠ざかる。ふと時間を見れば宮崎のどかから言われた制限時間は残り僅か。

 今が最後の機会だ、これを逃せば自分はパートナーを見つけることなんて出来ないかもしれない。

 そう、分かっているのに。

 ここで茶々丸を逃しても後で自分の首を絞めるだけなのだと分かっているのに。

 

「例え宮崎さんがパートナーになってくれなくても良い…………覚悟はしています。例え後で二人がかりで戦われても良い…………覚悟ならあります。例え死ぬような目にあっても良い…………決意は固まりました。けど」

 

 そう、けれど。

 

 今ここで、茶々丸を討つ。

 

 その覚悟だけは、出来なかった。

 

 

 

 

「………………ふふ、合格です」

 そして、その様子を自身がスタンドを通して、宮崎のどかは見ていた。

 そう、合格だ。もしここで教師であることを放棄するなら、協力は有り得なかっただろう。

 試したのは覚悟でも決意でも無い、ネギ・スプリングフィールドの立場。

 もしも立派な魔法使いを目指す魔法使いなら、エヴァンジェリンは明確なる悪だ、その従者を討つことに躊躇いも無いだろう。

 けれど宮崎のどかが借りを返すのは、魔法使いのネギにスタンド使いののどかが、では無く、教師のネギに生徒ののどかが、だ。

 些細な違いだが、この関係性こそが信頼を築くための重要な一歩であることは自身が一番知っている。

 端的に言って。

 

 宮崎のどかは魔法使いと言う人種を信用していないのだから。

 

 




ネギ先生と本屋ちゃんのガチバトルでもやろうかと思ったけど、原作イベントと絡めてこっちにしてみました。
ちょっとずつ伏線とかばらしつつ、話は進んで次はいよいよエヴァンジェリンとの決戦です。

ところでアスナさん空気ですね…………彼女はネギ先生と仮契約するのでしょうか?
実は作者自身も知りません。
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