アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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十四話 謀略ではなく知略です。

「一発です」

 対マクダウェルさん対策会議の第一声は私のそんな一言だった。

「ネギ先生とマクダウェルさんを比較して、ネギ先生が勝っているものなんて魔力だけだと言うことを自覚してください」

 その魔力すら、次にやる時はどうにかされている危険性すらあるのだが。

 一つくらい希望を出しておかないと、ネギ先生には酷なので黙っておく。

 

「技術、経験、魔法の種類…………とにかく魔力以外の全てにおいて、ネギ先生はマクダウェルさんに劣っている以上、まともにやっても勝てません、これは絶対です」

 この間は一見まともに戦えていたように見えて、あれはマクダウェルさんが遊んでいただけだ。

 本当に殺す気ならあの日ネギ先生は私が助けるより前に死んでいた。

「だから一発です。最初の一撃に全てを込めてください。駆け引きや小細工はこちらが全部請け負いますから、ネギ先生は自分の使える魔法の中で一番威力の高い魔法を撃ってくれればそれでいいです」

 技術も、経験も、使える魔法も…………たった一撃で勝敗を決めれば全て無効にできる。

 魔法に詠唱と言うものがある以上、ネギ先生が一度攻撃する間にマクダウェルさんが使える魔法は最大でも二つ、ないし三つ。

 だがマクダウェルさんの性格上、自身の力を誇示するために最初に一撃で倒しに来る、と言うのは考えにくい。

 

「と言っても確実ではない…………」

 魔力を封印された状態でどれだけ魔法が使えるのか分からないが、この間の戦闘で余裕を無くして最初から全力で来るかもしれない。

 だから布石は二重にも三重にも打って、確実性を高めたほうが良い。

 と、なると…………。

「あのオコジョも使いましょうか」

 カモ、とか言ったか、あのオコジョ妖精は何の因果かスタンド使いだ。

 だがそれで納得いった部分もある。

 何故あのオコジョが自身をネギ先生のパートナーに選んだか。

 どうやって決めたかは知らないが…………スタンド使い同士引かれ合った結果と言うことだろう。

 

 ああ…………決戦まであと何日かは知らないが。

 

 考えることは山積みのようだ。

 

 

 

 

「く…………くく……あははははははは」

 ネギ先生の攻撃が直撃し、全裸になったマクダウェルさんが腕を組んで笑う。

 全然効いてないよこの人、とか、服着ればいいのに、とか言うツッコミは置いておく。

「やられた、やられたよ…………だが、まだ勝負はついてないぞ」

 浮遊したその姿が少しばかりふらふらしているところを見ると、意外とダメージはあったらしいが、まだ決定的でもないらしい。

 まあ………………。

 

「予想通りですけど」

 

 瞬間、マクダウェルさんの背後から影が飛び出す。

「っな?!」

 咄嗟に振り返り、手を突き出すマクダウェルさん。

 恐らく、何か防御策を講じようとしているのだろうが。

「無駄です」

 それをあっさり突き破って、()()()()()のとび蹴りがマクダウェルさんに突き刺さり……………………。

 

「“Bad apple”」

 

 同時、一秒でマクダウェルさんに肉薄した自身がスタンドの拳がその背中に突き刺さる。

「っぁぁぁぁぁ!!!」

 表と裏、両側から同時に衝撃を受けたマクダウェルさんが橋の上に落ち。

「これで僕たちの勝ちです」

 いつの間にか接近していたネギ先生がその目の前に杖を突きつけた。

 

 

 

「納得いかん!!」

 と言うのは翌日のマクダウェルさんの言だ。

 拘束などはしていないので自由だが、すでに停電も解除されているので、ろくに魔法も使えない状態なので問題も無いだろう。

「何故あそこに神楽坂がいた? 何故やつは私の障壁を無視してこちらに攻撃できた? 結局、宮崎、お前の力はなんだ?」

 カフェテラスであまり大きな声を出されては困るので落ち着くように言うと、自身のいる場所を思い出し、少し声の大きさを下げたマクダウェルさんが追求してくる。

「あそこに神楽坂さんがいた理由ですか? 私が呼んだからです。マクダウェルさんの障壁を無視して攻撃できたのは…………高畑先生に聞いてください、私から言うことではないので。それと私の力ですか、それも高畑先生に聞いてください」

「そんな答えで納得できるか!!」

 またヒートアップし始めたマクダウェルさんを抑えるように言って、周囲を見渡す。

 幸い、こちらを気にしている人はいないようだ。

 

 ぶっちゃけた話。

 ネギ先生には一発勝負だと言ったが、それで決着がつくとは思っていなかった。

 けれど多大なダメージにはなるだろう、と勝手に予測して止めの一撃をこちらで考えておいた。

 それが神楽坂さんだ。

 以前、高畑先生にマクダウェルさんをスタンドで攻撃した時の反動の件で相談した時に、無意識的にだろうが高畑先生がこう呟いた。

「明日菜君なら問題ないだろうにね」

 その意味が問い正し、そして意外な事実が判明する。

 

 神楽坂さんは自身が触れた魔法を無効化することができる。

 

 障壁などと言ったものは彼女の前では全て無意味なものに成り果てる。

 と言っても、神楽坂さんはそれを自覚していないらしい。だったら何故高畑先生が知っているのか、など聞きたいこともあったがその辺りはプライベートな部分のようなので黙っておくことにして、それを知った私は神楽坂さんに協力を要請した。

 最初は渋っていた神楽坂さんだが、要するに不意を打って一度だけマクダウェルさんを攻撃して欲しい、と言うその内容に、最終的にいつか使うだろうと思って撮っておいた高畑先生の写真を報酬にようやく頷いてもらった。

 何かに使うかもとは思っていたが、まさか本当に使うことになるとは思わなかったけれど。

 

 正直、自身のスタンドがマクダウェルさんに与えることのできるダメージは少ない。体勢を崩したりはできるかもしれないが、ダメージ自体はいつも纏っている障壁に軽減されてしまう。

 けれど、神楽坂さんが一撃入れたその瞬間だけは、その障壁も無効化される。つまり、スタンドの持つ威力を最大限のまま叩き込める。

 私が神楽坂さんに期待したのはそれだ。

 

 ついでに言うと、マクダウェルさんの集中を乱した一因のオコジョ妖精が橋の下から出てきたのはオコジョ妖精のスタンド能力による物だ。

 透過…………それがあのオコジョ妖精のスタンド能力。ネギ先生が魔法を撃ったタイミングを計って足元を透過、橋の中で足元だけ透過解除、で一時的に橋の中に潜伏して、マクダウェルさんの足元に移動、そしてまたタイミングを計って飛び出す、と言う感じだ。

 

 本人曰く、鍵付きの衣装入れを前にすり抜けれれば良いのに、と言う願望を抱いたらスタンドが発現したらしい。

 ちなみに箪笥の前で何やっていたのかと思えば、あのオコジョ妖精、下着泥棒の常習犯らしい。

 性欲でスタンドを発現させた存在はさすがの私も初めて見た。

 

 と言う諸々の事情説明をマクダウェルさんにスタンドのことを踏まえて説明する。

「…………全部お前の手の上か。性格が悪いな」

 そう言ってジト目で私を見るマクダウェルさんに笑って誤魔化す私だった。

 

 

 ああ、そうそう、余談だが。

 マクダウェルさんの下着を盗んだ変態オコジョは、決戦後、マクダウェルさんに始末された。死んではないが…………オシイ。

 

 




オリジナルスタンド講座

“Bad apple” 使用者:宮崎のどか

【破壊力 - C / スピード - B / 持続力 - C / 射程距離 - A / 精密動作性 - A / 成長性 - A】

黒い影のようなもので全身を覆い顔を隠した人型のスタンド。体中にいくつもの暗器を隠している。
時間の流れを遅延し、時間を引き伸ばす能力を持ち、効果時間は最長で2秒だが、1秒辺り3倍に引き伸ばす。つまり、本体とこのスタンドのみ現実時間2秒で6秒分動ける。ただし連続的な使用は不可能。
本来間に合うはずの無かった茶々丸のロケットパンチを掴み取ったのもこの能力。
この能力は使い手の「周囲の人間に置いて行かれたくない」と言う願いを反映している。
また、射程距離は非常に長く、最長で500m以上遠くからでも操れる。
基本的に人間相手には強いが、エヴァンジェリンを始めとする普通の攻撃が効かない相手には完全に火力不足になる。ジョジョ世界なら強かっただろうが、ここはネギま世界なのが残念。


“キッキング・ブービー” 使用者:アルベール・カモミール

【破壊力 - E / スピード - A / 持続力 - D / 射程距離 - E / 精密動作性 - C / 成長性 - C】

本体と本体が掴んでいるものを透過させる。効果持続時間は十秒と短い。効果が切れた時に自身が出現するだけの空間が無い、いわゆる岩の中にいる状態になった時は一番近くに排出される。本体であるカモが鍵の付けられたタンスの前で発した「壁をすり抜けれれば良いのに」と言う下着への飽くなき執念によって発現したスタンド。
有り余った性欲を、スタンドを生み出すまでに昇華してしまうあたり、只者ではない。
その像は本体と同じオコジョの姿をしているので、すばしっこいが力は無い。

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