都合の良い自己解釈、オリ設定などがあるので、そういったものに嫌悪を覚えるならあまり推奨はしません。
「姉ちゃん、スタンド使いなんやってな」
私を見てそう笑う少年、小太郎。それを苦虫を噛み潰したような表情で桜咲さんと二人、見つめる。
「桜咲さん…………スタンド使いです」
桜咲さんはスタンドの存在を知っている。つまり、その一言で全て理解したようで、私のほうを一瞬見て頷く。
桜咲さんはスタンド使いではない。つまり、スタンドが見えない。
逆に私はスタンド使いだ。けれど肝心のスタンドから隔離されてしまってこの場ではスタンドが使えない。
まさか木乃香さんの傍にスタンドを置いておいたことが裏目に出るとは…………。
内心の後悔を押し殺しながら、桜咲さんに目配せする。
スタンドはスタンドでしか触れることはできない。
その大原則がある以上、スタンドを倒すのは難しい。
だとするならば、視線の先の本体…………小太郎を倒すしかない。
けれどスタンドが無ければ私はただの中学生に過ぎない。
だとするなら、この場で小太郎を倒せる可能性があるのは桜咲さんだけだ。
幸いと言うかなんと言うか…………タオルも持ってないのに、刀だけはきっちり傍に置いていたらしく、すでに抜刀の体勢に入っている。
「この空間隔離…………魔法ですか?」
正直私は魔法に疎いので桜咲さんに尋ねる。関西呪術協会からの刺客と言うことは、桜咲さんと同じ、陰陽師とかそういう系統の使い手なのだろう。
だったら桜咲さんが名前くらい知っているかもしれない。
「似たような魔法はありますが、こんな風にはなりませんね」
けれど、そんな答えが返ってくるので、私は認識を改める。
だとするなら。
「これはスタンド能力ですか」
私の出番もありそうだった。
スタンド使い同士の戦い…………いわゆる、スタンドバトルは単純な強さの競い合いでは計りきれないものがある。
スタンドと言うのは基本的に一芸特化な存在が多い。万能なスタンドなんてものは、そうそう存在しない上に、必ず何かしらの攻略ポイントはある。
スタンドバトルで重要なのは、二つ。
敵のスタンド能力を解き明かすこと。
そして、敵に自分のスタンド能力を露見されないこと。
どんなスタンド使いであっても、戦う時はこの二つに集約される。
だからスタンドバトルにおいて必要なのは、知力と観察眼。
相手の挙動を一挙手一投足まで見逃さず、得た情報を元に相手のスタンド能力を予測する。
能力を知られたスタンドは、相手に対策を取られやすい。先も言ったが、スタンドは基本的に一芸特化だ。
自分の得意とするフィールドに押し留められなければ一気に不利となる。
逆に、相手の得意とするところから押し出せば、一気に流れが傾くことだってある。
「いくで!」
そう叫び、小太郎がこちらに向かって飛び出す。
「させません!」
桜咲さんが同様に飛び出し、手に持った刀でその拳を払う。
両者の力が拮抗し、簡単には決着が付かないのを見て取り、しばし思考する。
小太郎のスタンド能力はこの隔離。範囲内の対象を隔離するのだろうが、元の場所に戻るための方法があるはずだ。
スタンドは本来そこまで万能な存在ではないことは分かっている。恐らく、この空間を維持するための制限があるはず。それが時間だった場合、素直に桜咲さんに頼るしかないが…………。
「恐らくそれは無いでしょうね」
小太郎は、私がスタンド使いだと知っていた。関西呪術協会の人間が何故? と考えてみて可能性は二つ。
一つ、麻帆良にスパイがいる。二つ、さきほど旅館内で私がスタンドを出したところ見た。
可能性としては後者が高い。そして桜咲さんは同じ関西呪術協会の人間だけあって、知っていた、とするなら。
この隔離の目的は、木乃香さんの傍から戦力を排除すること。
そのための方法が、時間経過で終わるようなことがあって良いだろうか?
どれくらい隔離しておけるのかは分からないが、もしできるなら長時間…………だが、そんな強力な能力なら隙を見て木乃香さんを隔離したほうが早い。
大体、時間制限による解除なら考えても仕方ないので、他のことを考えてみることにする。
「“Bad apple”」
部屋に置いて来た自身のスタンドの名を呼ぶ…………と視界の共有はできた。
取りあえず、部屋の中は平和なもので、異常は無かった。
だとするならば、今すぐスタンドを浴場に向かわせて、状況を調べるべきなのだろう…………が。
良いのだろうか?
今この状況…………他に敵がいるかもしれない状況で。
木乃香さんの傍からスタンドを動かしてしまっても。
と、その時。
ドォォォンと言う爆音が遠くから聞こえる。
部屋の中の人間たちには聞こえてないようだったが、スタンドの聴力を持ってすればたしかに聞こえた。
窓から外に飛び出してみれば、遠くに見えるのは…………眼鏡をかけた女性とエヴァンジェリンさん。
どうやら異常を察知して動いてくれていたらしい。
そうと分かれば、今のうちに浴場へ向かう。
時間遅延の能力まで使って、十秒足らずで浴場に入ると、そこに一匹の子犬がいた。
「なるほど…………そういうことですか」
何となく能力の絡繰が見えてきた。
目の前では桜咲さんと小太郎の勝負は未だ決着がついていない。
小太郎自身が決着の付かない勝負に熱くなっており、こちらのことが頭から抜け落ちたようにも見て取れる。
チャンスだ…………内心呟き。
そして、私は自身のスタンドを動かし…………その子犬を蹴り上げた。
瞬間。
「っな?!」
小太郎の驚きの声と共に、真っ暗だった周囲が捩れ………………。
気づけば、浴場に戻っていた。
「なるほど…………あなたの頭の上にいた犬は偽物。本物のスタンドは空間を隔離した場所にいたわけですか」
頭上にスタンドがいるのに、動かしもしなかったのがやや気になっていたのだが、あれは偽物……もしくわ囮だったのだろう。
「ようもやってくれたな! 姉ちゃん!!」
それを見破った私とその隣に佇むスタンドを睨み、小太郎が吼える。
「せやけど、まだこっからが本番やで!」
そう言って、ニット帽に手をかけ…………そこで動きを止める。
一瞬場が静寂に包まれた時、ふと携帯が鳴っているのに気づく。
私と桜咲さんはお風呂に入っていたわけだし、勿論裸…………となると。
「なんや千草姉ちゃん…………今ええとこなんやけど………………………………は? 引けってどういうことやねん」
なるほど、小太郎の電話だったようだ…………だが、何故か雲行きが怪しい。
と言うかそもそも、敵の目の前で電話に出るって…………桜咲さんも仕掛けて良いのかちょっと困惑した顔してるし。
「…………っち、しゃあない。分かったわ」
小太郎が一つ舌打ちし、電話を切る。それから私たちを見て、つまらなそうな表情で告げる。
「悪いが今夜はここまでや…………ほなな」
そう言って浴場から逃げ出す小太郎を桜咲さんが追おうとするが私がそれを止める。
「どうして!?」
「木乃香さんの安全が優先です」
そう言うと、はっとなって、すぐさま浴場を飛び出していった。
「…………忙しい人だなあ」
呟きながらも敵にもスタンド使いがいる、と言う状況に。
思わず溜め息を吐きたくなった。
エヴァいないとここで詰んでた可能性も…………。
二人ほど足りませんけど、その辺は次の話で理由が語られたり、語られなかったり。
オリジナルスタンド講座
“デッド・プール” 使用者:犬上小太郎
【破壊力 - B / スピード - B / 持続力 - D / 射程距離 - C / 精密動作性 - B / 成長性 - B】
自身で設定した一定範囲の領域を、異空間に隔離する。
自身と相手だけを隔離し、邪魔が入らないようにしたり、相手だけを隔離してしばらく干渉できないようにしたりと、応用性は広い。ただし、対象を取り込めれる範囲と人数の制限がある。
異空間と呼称するだけあり、完全に隔離された状態なのに、異空間の外にスタンドを置き去りにされたりすると、空間を操れるスタンドでもなければ入ってくることはできない。ただ、空間を隔離した範囲の中に必ずスタンドの本体がいるので、一撃でも入れれば異空間は解除されることとなる。