これも全部ノロウイルスってやつのせいなんだ。
最近はうちの職場で大流行してて人手が足りなく、てんてこ舞いな状態でした。
お陰で水代はくったくたですよ。20人しかいないのに、いきなり5人いなくなりましたからね。昼からはさらに2人くらいいなくなるから、毎日18人で回してる午後仕事を13人で切り盛りは本気でやばいです。
ちらちと後ろに目を見やる。
すると、後ろで木乃香さんと会話している刹那さんと目が合い、申し訳なさそうな表情をされる。
だがこればかりはそんな表情をされても簡単に許容出来無い。
何故なら…………。
「聞いてるですか? のどか」
私の隣に夕映とハルナがいるのだから。
なんで夕映たちがいるんですか? まさか、巻き込むつもりですか?
ち、違います、知らない間に朝倉さんが私の荷物にGPS付き携帯を…………。
合流した時にした会話を思い出し、頭が痛くなってくる。
これから関西呪術協会へ向かうと言うのに、魔法を知らない夕映たちが同伴…………そう考えると思わず頭を抱えたくなってくる。
それにしても、朝倉さんか……………………ネギ先生からバレたと言う話は聞いていたが、襲撃のこともあって放置していたのが仇になった。
朝倉和美に秘密がバレれば翌日には麻帆良全域に知れ渡っている、などと言う言葉があるくらい彼女の情報伝達能力は侮れない。
そうそうに何か手を打っておいたほうが良いかもしれない。どうせネギ先生は何も考えてくれて無いのだろうし。
またちらりと後ろを見やり、何も考えて無いような顔で神楽坂さんと話している。
正直ネギ先生の従者になって一番苦労するのはネギ先生が次から次に魔法バレすることに対する処理だというのはどうなのだろうか…………。
何故ネギ先生と一緒だったのか、そんなことを問い詰める夕映たちを躱しながら。
私はまた、深く溜め息を吐いた。
木乃香さんの実家、近衛家が関西呪術協会の総本山である。
そんな情報、学園長か高畑先生に聞けば一発で出てくるような話だ。その他の魔法先生たちでも普通に知っているかもしれない。何せ、関西呪術協会の長は学園長の義理の息子なのだから。
「ようこそ皆さん」
つまり、今目の前にいるこの人物が。
「お父様! お久しぶりやー」
近衛詠春、関西呪術協会の長、そして。
木乃香さんの父親なる人物だと言うことだ。
「このかさんのお父さんが西の長だったなんて…………」
隣でそう呟くネギ先生はそんなことも調べてなくて。
「麻帆良で調べればすぐ分かることですよ? 自分の向かう先のことも調べて無かったんですか?」
そんな皮肉を口にすると、うっ、と言葉に詰まるネギ先生。
まだ十歳の子供…………そんな言い訳は通用しない。相手がそれで遠慮してくれるわけが無いのだから。
「もうちょっと計画性を持ってくださいよ、いつまでも私がカバーしきれるとは限らないんですから」
戦闘能力自体はそこまで低いわけではないのだから、後は慎重さと計画性があればもっとマシになるはず。
身内の恥、とまでは言わないが、あまり他人に聞かせるような話ではないのだが、幸いにも後ろで神楽坂さんが「渋くてステキかも」などと相変わらずの異次元発言で皆を驚かせているので、私たちの会話は他の人間に聞こえなかったようだった。
それから、父親に抱きつく木乃香さんが離れると、ネギ先生が前に出て、親書を差し出し。
「東の長より西の長への親書です、お受け取りください」
そう告げると、西の長はそれを受け取り。
「確かに受け取りました」
そう言って新書を開く。数秒その手紙に目を通すと。
「分かりました…………東の長の意を汲み、私たちも東西の仲違いの解消に尽力するとお伝えください」
そう言葉を返した。
そして、その言葉を聞いて私はほっと一息吐く。
これでようやく一つ終わった。後は残り二日、木乃香さんを守ることだけだ。
それから……………………そう、それから。
「あのことを…………聞かないと」
客人用に、と割り当てられた部屋の中の喧騒を背に、そっと障子戸を開く。
「どこか行くのですか? のどか」
そんな私の様子に気づいた夕映が尋ねるので、トイレだと言って部屋を出る。
廊下を適当に歩いていると使用人らしき人を見かけたので用件を伝え、案内してもらう。
幸いにも話は通っていたようで、すんなりととある一室に通される。
そしてそこには。
「あ、宮崎さん」
先に来ていたネギ先生と。
「ようこそ…………それとも、初めましてと言うべきかな?」
西の長がいた。
「そう…………ですね、初めまして。宮崎のどかです」
「…………そうですか、近衛詠春です」
互いに名乗り、頭を下げる。そんな私たちの様子にネギ先生が首を傾げる。
「何だか最初から知り合いだった、みたいな反応ですね」
知らないはずなのに的確に私たちの関係を捉えた一言に互いに苦笑する。
「以前一度だけ電話越しにですが会話したことがありまして、その時は魔法使いのことは良く知らなかったので、西の長だということも知らなかったんです」
西の長、近衛詠春と直接の面識は無い…………が、電話越しになら一度だけ会話したことがある。
数は少ないが高畑先生経由で知り合った人たち、と言うのがいるもので、詠春さんはその中の一人だ。
まあその時の話はいずれ先生にも言うかもしれないが、今は置いておく。
「タカミチの?」
繋がりが今一分からないのか、ネギ先生が再度首を傾げる。
その様子に私はあれ? と思う。ネギ先生もしかして…………。
「その様子だと知らないようですね」
詠春さんも気づいたのか、含んだような笑いを漏らす。
「え? え?」
そんな私たちの様子に気づいた先生が疑問の声を発し、それから詠春さんが答えを返す。
「私はキミのお父さん、ナギとは腐れ縁の友人だったんですよ」
詠春さんの言葉の意味を頭が理解するまで数秒。
「え…………えええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!?」
ネギ先生の驚愕の叫びが部屋に響いた。
「まあそれは後にしましょう。話すと長くなりますしね」
思い出話も良いが、今はそれより優先すべきことがある。
折角得た父の大きな手がかりを前にネギ先生がやや躊躇った様子だったが。
「木乃香さんのこと、放っておくわけにもいかないですし」
そう言うと、すぐにそんな様子も無くなる。
「最初に聞きたいのは、天ヶ崎千草、犬上小太郎、月詠、フェイト・アーウェルンクス…………これらの名前に聞き覚えは?」
私の質問に、詠春さんがすぐに驚いたような表情になる。
「天ヶ崎千草、犬上小太郎、月詠の三名は関西呪術協会の人間です。それとそのフェイトと言う名前は知らないが、アーウェルンクスと言う名前なら良く知っています」
特にアーウェルンクス、と言う名前を出した時の表情は一種鬼気迫るものすらあった。
「アーウェルンクスについて教えてもらえますか?」
そんな私の言葉に、けれど詠春さんは言葉を濁す。
「…………彼らの相手は私がします…………いえ、そうしなければならない。だからキミたちは気にしないでください」
しばしの沈黙の後、そんな言葉を告げる詠春さんに、私は眉を顰める。
だがこれ以上は何も言わないだろうし、この様子からして譲歩もしないだろう。
それに、今の言葉だけでもある程度推測することはできた。
そういうことなら任せるしかないだろう。隣で不満げなネギ先生にも後で言っておかないといけない。
「大丈夫、今までにもこういうことはありましたが、全て防いで来ました。明日には各地に行っている腕利きの部下たちが戻ってきますので後はこちらに任せて置いてください」
そう言って胸を叩く詠春さんだったが、それでも私は…………どこか安心できなかった。
それから石化した小太郎の話をして回収に向かってもらい、これで一段落ついた、と言っていると、いつの間にか夕暮れ近くなっており、詠春さん曰く今日はもう止まっていくと良い、とのこと。
確かに結界に守られているらしいこの総本山ならホテルよりは安全だろう。
「では食事の用意をさせているのでネギ先生たちを案内させましょう」
そう言ってやってきたお手伝いさんにネギ先生がついていき。
そして私と詠春さんだけが残った。
「……………………行かないのですか?」
さきほどまでの和気藹々とした空気から一変した、張り詰めた空気。
空気が重く感じるのはきっと気のせいではない。
「聞きたいことがあるんです」
それはきっと。
「聞きたいこと…………ですか」
詠春さんが、西の長として今この場にいるから。
「糸を使う陰陽師を知りませんか?」
そして私が…………『私』としてこの場にいるからだろう。
ここまで大筋原作から激しい乖離はしてなかったけど、今回はけっこう乖離したなあ、と思う。
そして詠春さん……それはフラグや。
ちょっと出てきたのどかの伏線。
四日前に考えた新設定でプロット組んだので、ある程度原作から離れたオリジナル話が増えると思います。
後、オリキャラも少しだけ出すことにしました。
ジョジョ原作キャラは今も考え中。もし出すならプッチ神父が一番有り得るかなあ。
ただまあ時系列かなり歪めることになるけど。
ちょっとだけネタ晴らし。
詠春さんとのどかが昔会話したのは、“Bad apple”に関係があります。