アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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二話 人の幸不幸は主観次第。

 

 スタンド。

 stand by me(傍に立つ)

 stand up to(立ち向かう)

 そんな意味と願いを持つ自身が生命が生み出す具象の(ヴィジョン)

 限られた極々一部の人間だけが使用する気とも魔法とも違う生命(いのち)の力。

 スタンドを持つのみならず、それを意のままに操り、使役するものをスタンド使い、スタンド能力者などと呼ぶ。

 スタンドにはいくつかのルールがある。

 一つ、スタンドは一人につき一種類。

 一つ、スタンドを見ることができるのはスタンド使いだけ。

 一つ、スタンドに触れることができるのはスタンドだけ。

 一つ、スタンドが傷つけば本体も傷つく。

 一つ、スタンドが本体から離れて行動できる距離には制限がある。

 一つ、スタンドは特殊な能力を持つ。

 一つ、スタンドは成長する。

 

 後々に気づいたことだが、過去の自身を苛んだあの激痛はスタンドの影響だった。

 スタンドは闘争本能の薄い、精神力の弱い人間にとっては害しかもたらさない。

 宮崎のどかの場合、その生来の優しい性格と、戦うことへの忌避感がスタンドを暴走させ、自身の体を苛む原因となっていた。

 

 そう………………。

 

 宮崎のどかはスタンド使いだ。

 

 

 

 

「あ……………………」

 ほんの一瞬の不覚。

 遠隔でのスタンド操作に気を取られて、足元が不注意になった一瞬の隙。

 足を滑らせ、階段脇少なく見積もっても5メートル以上の高さから転落する。

 不覚だ。本当に不覚だ。まさかこんな初歩的なミスを、スタンドの操作に気を取られて自身の周囲に不注意になるだなんて失態を犯すとは。

 

 時すでに遅し。

 体が空に投げ出される。

 ほんの数秒でこの体は地に落ちる。

 どうにかできそうなスタンドは現在マクダウェル一味を監視しに出払っている。

 これなればせめて片腕一本で済ませよう。

 そう考え、左腕を体の下に滑り込ませる。

 

 最悪、左腕一本を犠牲にしよう。

 一瞬で答えを導き出し、衝撃に備えて覚悟して…………。

 

 ふわり…………と体に圧し掛かっていた重力の力が消え、逆に体が僅かながら浮き上がる。

 

 一瞬の浮遊感。直後真横からの衝撃。

 驚き視線を映すと、そこにはネギ先生の姿。

 

 どくん……と心臓が鼓動を打つ。 

 

「ふえ…………あ…………」

「アタタタ、だ、大丈夫? 宮崎さん…………」

 そう言って、私を見るネギ先生。

 助かった、と言う気持ちと、助けられた、と言う気持ちが同時に沸いて来る。

「あ、ありがとうございます、先生」

 さっきの浮遊感…………助けるのに魔法を使ったことについては目を瞑ろう。 

 

「あ……あんた……」

 

 言ったばかりだけど、訂正しようかな…………と思ってしまう。

 見られた、それも。

 よりもよって神楽坂明日菜に。

 

 高畑先生に……なんて言おう。

 

 少しだけ高鳴る鼓動を抑えつつ、ネギ先生を連れて行く神楽坂さんを見送った。

 

 

 

 

 スタンドは基本的に敵を打ち倒すための力だ。

 人間がそうであるように、スタンドも得意とする距離と言うものがある。

 

 近距離が得意なスタンドは総じて破壊力が高く、射程距離が低い。基本的に使用者の傍らで戦う最もスタンドらしいスタンドだ。その特殊能力は相手に向けての直接的な攻撃か戦闘の補助となりやすい。

 

 遠距離が得意なスタンドは総じて破壊力は弱いが射程距離が長い。使用者本人と五感を共有するものが多く、使用者が遠隔から操作する。遠距離型と銘打っても実際には遠距離から攻撃できるのではなく、戦う際は近距離での戦いとなる。この手のスタンドは、空間ごと支配下に置くような特殊能力を持ちやすく、曲者が多い。

 

 最後に例外と言えば例外な存在が遠隔で自動で動くスタンドだ。遠隔操作型のように操作しなくても自動で動き、使用者が近くにいなくても大きな力を発揮できる。さらに倒されてもほぼ無限に再生できると言う驚異的な性能を誇り、この手のスタンドを倒すには使用者本人を叩くしかない……が規定された行動しか取れず、融通が効かない。コンピューターのプログラムのようなもので、精密操作どころか操作が効かず、ただひたすら機械的に条件に合う行動を繰り返すため、その条件がばれると簡単に対処される可能性が高い。また敵味方の識別が無いので、防御や回避と言った行動も取らず、使用者本体に敵が近づいても戻すこともできないので、使いどころを間違えると本体が無防備に陥る可能性もある。

 

 私のスタンドは遠隔操作型に当たる。本体から離れるほどその力を発揮しにくくなるが、五感を共有できるので偵察程度になら便利な存在だ。そもそもスタンドはスタンド使いにしか見えないので、スタンド使いを監視する、などと言うことをしない限り、まずばれることは無いし、力を発揮できずともスタンドに触れることができるのはスタンドだけなので、倒される心配も無い。

 

 先の出来事でリンクを切ってしまったが、気を取り直して、再度視覚の共有化をしてみる。

 

「あっちゃあ…………」

 マクダウェルさんの姿が見えない。視界に映るのは最後にいた寮への道。

 少し目を離した隙にどこかに行ってしまったらしい。

「失敗しちゃった…………」

 高畑先生から聞いた話によれば、マクダウェルさんは自宅通いらしい。寮で見たことない、と思ったけれどそういうことか、と納得する。

 

 仕方ない、割り切って明日にしよう。まだ今日明日の急を要することでもないらしいし。

「そう言えば…………助けてもらって、まだちゃんとお礼言ってなかったなあ」

 ネギ先生には一応一言言ったが、片腕一本で済むかどうか、と言うところを助けてもらったのだ。

 考えようによっては、ネギ先生と接点ができた、と考えるべきだろう。高畑先生の頼みからして、ネギ先生とはある程度親しくなる必要があるだろうし…………と言ってもまあ。

「貸し一……です」

 あれは不覚だった。それを助けられた、だったらこの借りはいつか返さなければならないだろう。

 とりあえずは後でネギ先生の歓迎会をやるらしいので、その時に図書券でも渡しておこう、と思いつつ、そのネギ先生は神楽坂さんと一緒に行ってしまったがどうなったのだろうか…………と思い、二人が向かったと思われる方角にスタンドを向かわせる。

 

 そこには…………。

 ノーパンに上着と言う神楽坂さんと予想外の展開に固まるネギ先生、そして。

「あっちゃあ…………」

 不審な気配を感知してか、それともネギ先生を見守っていてか。

 実にタイミング悪く現われた高畑先生が…………。

 

「神楽坂さん…………南無」

 

 夕暮れ…………木々の合間に悲鳴が響き渡った。

 




現実にチョロインなどと言うものがあるわけが無い。一度助けられたくらいで惚れるわけねーだろ。本屋ちゃんはリアリストでシビアなお方です。
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