アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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千雨の世界ってのを紹介してもらったんですけど、けっこう面白いです。


二十八話 修学旅行三日目決戦 前編

 

 

 

 ネギ先生がアーウェルンクスを睨み、アーウェルンクスが無表情にネギ先生を見返す。

「先……生……っ、明日菜さんの傍へ!!」

 声を出す度に肺が悲鳴を上げる。だが明日菜さんがいないとアーウェルンクスの転移で一撃でやられる可能性が高い。

 けれどネギ先生が私の言葉に従って明日菜さんへと向かうよりも早く、アーウェルンクスが姿を消す。

 不味い、水の転移魔法だ。そう思った瞬間、ネギ先生に向かって危険をを伝えようとし…………。

「それは一度見ました!」

 アーウェルンクスが現われる直前に振り向き杖に突き出す。

 まさか構えられているとは予想だにしなかったアーウェルンクスが一瞬虚を突かれたように目を僅かに広げ。

魔法の射手(サギタ・マギカ)!! 光の3矢(セリエス・ルーキス)!!」

 いつの間に詠唱していたのか、杖から魔法が飛び出しアーウェルンクスが僅かながら体勢を崩す。

 

 今だ。

 

 体はボロボロだが、スタンドはまだ動く。

 “Bad apple”の能力を発動。アーウェルンクスが体勢を立て直す前にスタンドに自身を掴ませて明日菜さんのところに向かう。

 それと同時、私の意図を察したのか、それともさきほどの言葉に従っただけか、ネギ先生が明日菜さんのところにやってきたことで、三人が一同に介す。と同時にアーウェルンクスもすでにこちらに向けて魔法を詠唱している。

 ふと目をやるが、すでに浴場に木乃香さんの姿は無い。どこかに転移されたと考えるべきか。

 だとするならすぐにもここから脱出するべきだ。

 現状では勝ち目が無い。この状況でどこに消えたのか分からない木乃香さんを救出するのは無理がある。

「カモさん」

「合点だ!」

 アルベール・カモミールのスタンド能力は中々に使い勝手が良い。修学旅行中に必要になるかと思って、一つ合図を決めておいた。名前を呼んだらスタンド能力を使え、とそれだけのことだが、緊急事態に一々指示していられない上に相手に無駄に警戒させることになるので、これが中々必要となる場合が多く、意外とバカにできない。

 

「キッキング・ブービー!」

 

 カモのスタンド能力は透過。本体と本体が掴んでいるものを一緒に透過させるのだが、この掴んでいるもの、と言う基準が単純で、本体と接触しているものを透過させる、と言うものらしい。

 そういうわけで、全員に体を握られたカモが苦しそうにしながらもスタンド能力を発動させる。

 明日菜さんは分かってなかったので私が強制的に握らせておく。

 それから床板をするりと抜ける。直後、私たちのいた場所を魔法で爆破される。だがその時すでに私たちは床の下の地面の中だ、当然当たるはずも無くそのまま床下を抜け浴場を離れる。

 それから適当に外に出てくると、そのままカモにスタンドを解除させる。

 このスタンド、透過が終わった時に透過した物体が存在できるだけの空間が無い…………ゲームで言う岩の中にいるバグのような状態でいると、自動的に一番近くの物体が動けるスペースに排出される、と言うルールがある。

 これによって地面の中にいても死んだりすることが無くなる。

 

 土の上に転がる私たちだったが、一番最初に起き上がったのは明日菜さんだった。

「あいつは?!」

 ハリセンを構え周囲を油断無く警戒するが、明日菜さんの予想とは反し、そして私の予想通り、アーウェルンクスが来ることは無かった。

「来ません、大丈夫です」

「ちょっと、本屋ちゃん、大丈夫?」

 構えを解くとすぐさま私に駆け寄って来て心配そうに覗き込んでくる。

「大丈夫です、大分痛みも引きましたから」

 そう、とほっとしたように頷く明日菜さんに心配無い、と笑みを浮かべる。

「宮崎さん、あの少年は?」

 何故追ってこないのか、それが疑問なのかネギ先生が質問する。

「簡単に言うと、アーウェルンクスはあくまで雇われ、木乃香さんさえ確保すれば無理して私たちを追う必要もありません、勿論天ヶ崎千草に何か言われたなら別でしょうけど」

 だが彼女はここまで一般人を巻き込まないように行動していることから、殺人などは許していないのだろう。

 勿論それを守るかどうかは彼ら次第で、月詠と言った本気で殺しに来ている例もあるのだろうが。

 アーウェルンクスは月詠のようにはっきりとした目的があって行動しているのではなく、雇われたから動いているだけ、と言った感じなので雇い主に言われたこと以上のことは恐らくしてこないだろう。

「と言う感じです」

 私の説明にネギ先生が納得したように頷く、そして隣で明日菜さんが頭から煙を吹いていた。

 どうやら今の説明で頭がショートしたらしい。

「…………やれやれ、ですね」

 思わず肩竦める私だった。

 

 状況は不味い。絶望的な戦力差の上、今度はこちらが追う側。向こうが守る側だ。

 しかも木乃香さんが向こうの手の上にある以上、戦いを避けることはできそうにない。特にアーウェルンクスとは絶対にもう一度戦うことになる。犬上小太郎はすでに排除しているとは言え、刹那さんは月詠に抑えられるだろうし、私たちはアーウェルンクスに抑えられる。結果的に木乃香さんと首謀者である天ヶ崎千草が完全にフリーになってしまう。

 一つだけこちらに吉報があるとすれば、夕方に保険をかけておいたことだろうか。

 だがそれもこうなってしまっては間に合うかも分からない以上、完全に充てににするのは危険だ。

 それと、一つ気になっていることがある。

 これほどの騒ぎになって、しかも木乃香さんが攫われたというのに、刹那さんも詠春さんも現われないことだ。

 

「何事も無いと良いんだけど…………」

 

 今ここにいない、と言うことは何かあったんだろうな、と冷静に自身に返した。

 

 

 

「長!!!」

 私が叫ぶ、と同時に長が顔を顰める。

 

 信じられなかった。

 

 お嬢様に魔法使いに関しての話をしようと神楽坂さんに呼んでもらっていた矢先の出来事。

 屋敷の異変に気づいた私が廊下を駆けていると、そこで白髪の少年と長がいて…………。

 

 信じたくなかった。

 

「大戦の英雄と言えど、年には勝てないということかな?」

「っく…………」

 

 長が…………負けるなんて。

 

 そして、長の下半身が徐々に石化していっていた。

「それじゃあ僕は行かせてもらおうかな」

 白髪の少年がそう呟き…………そして水となって消える。

 そのことに驚きつつも、それよりも長の下へと駆けつける。

「長…………」

 ご無事で、とはとても言えない。

 なんと言えば良いのか分からず戸惑う私の心を読み取ったように長が私の手を取り、しっかりとした力で握る。

「刹那くん………………木乃香を、頼みます」

 胸の辺りまで石化が進行しながらもそのことを気にもせず、ただ私の目を見つめてくる。

 

 けれど…………これは現実だから。

 

 だから。

 

「…………はい。必ず、お嬢様を守ります」

 

 そう言って走り出した。

 

 目を逸らさず、見つめよう…………事実を。

 

 

 

 

 お嬢様はどこにいるのか、そう内心で呟く。

 クラスメートたちに割り当てられた部屋はすでに見たが、神楽坂さんもお嬢様ものどかさんもいなかった。

 もし神楽坂さんとのどかさんがお嬢様の傍にいてくれているのなら頼もしいのだが。

 けれど長ですら負けたあの白髪の少年が向かったならあの二人でも無理だろう。

 どうして油断していたのだろう。

 長が負けるだなんて思いも寄らず…………きっとそれは私だけではない。本山の誰もが長以上の実力者が来るだなんて思いも寄らなかった。

 だからこそ、ここまで危機的状況に陥っているのだから。

 彼女…………のどかさんはどうだったのだろう、と考えてみる。

 彼女も、安心しきって油断していたのだろうか?

 そう考えてみて、彼女のそんな様子が思いつかない。

 自身の過剰評価かもしれないが、きっと宮崎のどかはこの事態すら想定していたのかもしれない。

 私にスタンドは見えないが、どこか上の空で過ごしていたのを見た気がする。きっとあれはスタンドを操作していたのだろう。

「彼女はずっと警戒していたというのに…………」

 それに比べ自身は…………そんな言葉が心のうちに沸くがすぐさま振り払う。

 

 今は為すべきことを為そう。

 長によって役目は与えられた。

 だから私は、一振りの剣として、ひたすらにその責任を果たそう。

 

 そう、心に決め。

 

「んふふふ~。こんばんわ~」

 

 目の前に立ちふさがる少女に一瞥くれ。

 

「どうもー。神鳴流です~」

 

 黙して刀を抜く。

 

 ドクン、と…………心臓が鼓動を刻んだ。

 

 

 




要約的な解説:読まなくてもいいです。

本屋ちゃんは戦力的にはそこまで重要でもないです。ガチ戦闘すれば刹那と同じかちょっと弱いくらい。けど厄介なのは、絶えず思考して色々な状況を想定して先手を打って来ることですね。浴場の話で例えるなら、本屋ちゃんが声かけなかったら明日菜は一撃で気絶させられていた可能性もあります。ネギ先生もあっさりやられてたかもしれませんし。
簡単に言うと、前回の話で分かるように、のどかのほうが世界の広さを知っているからこそ固定観念が少ないんです。だからこそ他人が「ありえない」と言う可能性も、高畑先生の知り合いにこんな人がいるんだから、こういうケースも「ありえる」って思えて、先手を打っておけるわけです。
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