全然思いつかなくて大変だったけど、何とか捻り出しました。
脳内ではすでに学園祭が始まっているのになあ…………。
ずっと追い続けた背中があった。
それはとても大きく…………そして遠い。
何もかも見てみぬ振りをして、必至になって追い続けても、けれど届かない。
そうして周りに犠牲を強いて来た結果が…………六年前のアレなのだと理解する。
そこまで分かっていても、それでも止まぬ憧憬がある。
きっとそれは、最早自分の原点なのだろう。
ネギ・スプリングフィールドがネギ・スプリングフィールドである限り、決して変わらない部分。
あの日の父の背中だけは………………どうやっても忘れられそうには無い。
「兄貴!! この魔力…………やつら何かおっ始めやがったぜ!!」
自身の杖にしがみついたまま、カモくんがそう叫ぶ。
カモくんの言う通り、確かに遠くのほうでとてつもない魔力の高まりを感じる。
「分かってる…………
唱えた呪文に応じるように、杖がさらに速度を上げる。
ふと眼下の森を見やると、足場の悪い木々の間を気にする様子も無く明日菜さんが追いすがってくる。
凄い、と思う…………少し前までただの一般人だったはずの人がどうしてここまで、とも思う。
けれど今だけは好都合だ…………もしあの白髪の少年、アーウェルンクスが現われればその速度に反応できるのは彼女だけなのだから。
と言っても、現状のままでは、と言うだけだが。
「カモくん」
「なんだ兄貴?!」
風に飛ばされないように杖にしがみつくカモくんが叫ぶように返す。
「正直このまま行ってもまた浴場の繰り返しにしかならないと思うんだ」
自身の言葉に、カモくんが少し黙し、やがて口を開く。
「正直言ってあのアーウェルンクスってやつは規格外だぜ、俺たちを殺すつもりが無いだけで、その気になればいつでも殺せる…………はっきり言って、今の兄貴じゃ」
口に濁しはしても、その先は自身が一番良く分かっている。
ネギ・スプリングフィールドではあの少年、アーウェルンクスには勝てない。
けれど、だからと言って絶望的な状況…………と言うわけでも無い、と考える。
「だって僕らがやるべきことは、アーウェルンクスって人を倒すことじゃない、木乃香さんを取り戻すことでしょ?」
「…………確かに、勝てないと分かっているならわざわざ相手にする必要もねえか…………いや、俺っちとしたことが、まさかこんな簡単なことに気づかないとは」
そう言って自身を尊敬の眼差しで見てくるカモくんだったが、実際のところ自分が思ったのは一つ。
「…………宮崎さんならどうするかな、って思っただけなんだけどね」
ここ最近で自身が最も強く影響を受けているであろう彼女。
彼女のその考え方は今までの自分には無かったもので…………けれどそれはあまりにも有用だった。
即ち、戦略眼。
その瞬間、フェイト・アーウェルンクスが顔を上げる。
「…………来た」
近づいてくる魔力の反応に、追っ手が来たことを察する。
「まだですか?」
「もう少しや!」
目の前の祭壇で儀式をする自身の雇い主、天ヶ崎千草に向かってそう尋ねると、やや苛ついたような声でそう返事が返ってくる。
「…………来ましたよ」
そんな自分の言葉に、千草がばっとこちらを振り返る。
「何?! …………来たってまさか、あのガキ!?」
千草がそう呟いたとほぼ同時、湖の向こう側から飛沫を上げて飛来する存在、ネギ・スプリングフィールドの姿。
「あなたはそのまま儀式を続けて」
そう告げて、ネギ・スプリングフィールドの対処のために詠唱しようとした、その瞬間。
「
魔法により、周囲に大量の霧が発生する。
「風で湖の水を霧状にした? こんな目くらましに意味があるとでも…………」
だが、次の瞬間、自身の言葉を遮って霧を突き抜けてくる影。
「そこかい?」
対処しようと振り返り…………そこにいたオレンジ色の髪の
「まずは、いっぱあああああああああああああああっつ!!!」
少女が振り下ろしたハリセンに自身の障壁が掻き消される。
「っな!?」
たった一撃で自身の障壁を突破する…………有り得ないと思っていたその事態にまた一瞬硬直する。
「もう一発!!」
「それはもうもらわないよ」
さらに追撃しようとハリセンを振りかぶった少女の足を払い、体勢を崩させる。
「きゃっ」
体勢を立て直そうと、自身の前で無防備を晒した少女に一撃入れようと力を込め…………。
「
自身に向かっていたはずのその存在を思い出す。
けれどその少しばかり気づくのが遅く…………。
「
放たれた
作戦の肝はアーウェルンクスをどう封じるかだ。
カモくんにはああ言ったが、木乃香さんを取り戻してもアーウェルンクスが無傷ではすぐに全員打ちのめされて取り戻した木乃香さんさえ再び奪われることになりかねない。
まず確認したのは地形。敵のいる場所は湖の真ん中にある何かの舞台のような場所。
道は橋が一本。その周囲は全て湖。となると、自分以外の飛べない彼女
次に敵の数。またさきほどのように何かを召喚しているのかと思っていたが、どうやら敵はアーウェルンクスを入れても二人だけ、しかも女性のほうは儀式に夢中で戦闘には参加できそうないので実質アーウェルンクス一人。
他にも必要な情報を集めていき、敵に見つからないギリギリの場所で整理する。
「兄貴、やばいぜ、やつら何か召喚しようとしてやがる、早くなんとかしねえと取り返しがつかなくなっちまうぜ」
「分かってる…………けど、無策に行ってもアーウェルンクスって人に止められるだけだよ」
そう言うとカモくんも黙ってしまう。
それから十秒で思考をまとめ、戦略を弾き出す。
「よし…………決めた。明日菜さんもカモくんも聞いて…………今から作戦を話すよ」
まず第一に、アーウェルンクスにまともに動かれれば明日菜さん以外が反応できない。
これが注意しなければならないことその一だ。
だからそのためにまずはアーウェルンクスにまともに行動させない必要がある。
つまり、裏をかき続けるのだ。
自分が魔法で湖の水を霧に変えて視界を隠す。
そうしたら明日菜さんが橋を全力で渡り、アーウェルンクスに一撃入れる。
自分に注目しているはずのアーウェルンクスだから突然明日菜さんが出て来て驚くだろう。
そして明日菜さんの身体能力なら驚いた一瞬の硬直で一撃入れれるはずだ。
そうすればアーウェルンクスの魔法的防御手段…………恐らく障壁だろうが、それらが一発で消されることになる。これには驚くはずだ、アーウェルンクスほどの絶対的な力量の持ち主だからこそ、一瞬でも『有り得ない』と考えるだろう。
そうすることにより出来た隙にもう一撃明日菜さんが入れようとする、だが同じ手を二度も食らってくれるような相手ではないだろう。だからこれは入らなくても良い。
たださきほどの衝撃と併せて、アーウェルンクスの意識は明日菜さんに釘付けになるだろう。
そうしたところで自分の出番だ。
詠唱が聞こえては折角意識外にいた自分が認識されるので、遅延呪文を使う。
遅延呪文はその名の通り、詠唱してから実際に魔法を発動させるまでを遅延させる呪文だ。
だが難易度が高く、自身も遅らせれても二十秒程度だが、今回の作戦でなら十分だ。
そうして意識外から最大の一撃を叩き込み、アーウェルンクスを倒す…………否、倒せないまでもその後木乃香さんを取り戻した自分たちを追って来れないようにできればベストだ。
そして肝心の木乃香さんの救出だが。
「頼みました…………
パクティオーカードの機能によって、呼び出した宮崎さんがそのスタンドを繰り出す。
「了解です」
軽快な返事を返し…………
これで僕たちの勝ちだ…………そう思っていた。
「…………ふ、ふふふ、あはははは…………一足遅かったようですなあ」
儀式はたった今終了しましたえ。
聳え立つ巨人が…………その咆哮を上げた。
ネギ先生も本屋ちゃんのお陰でちょっとずつですが魔改造が進んでいます。
と言っても、「だろう」とか「はずだ」とかその程度ですが。
ちなみに本屋ちゃんだとこれが「だろう」とか観測的希望でなく、そういう風に「させる」に変わります。