後編に全部まとめたら2万字行きそう…………。
「“レブナント”!!!」
叫ぶ振るわれる、真横に薙ぐ一閃の太刀。
「馬鹿の一つ覚えやなあ」
少しだけ呆れたような視線で月詠が小太刀でその一撃を逸らそうとし…………その一撃が小太刀を
「っな!?」
何が起こったのか、理解できず、咄嗟に月詠が後退し…………その手に持った小太刀の刃が真ん中あたりからぽとり、と分かれ落ちる。
「…………はえ?」
続けざまに起こる異常、理解の追いつかない事態に、さしもの月詠も呆然とする。
剣士にとってその剣は己の手足と同等だ。その刀身が断たれたとなれば、平静でいられないのも当然の帰結と言えた。
さらに異常なのが、その刀身だ。
太刀と言うものはその切れ味と反比例して脆い。特に横からの圧力に弱く、力任せにぶつけてしまえば、一度の剣戟で刀身が曲がり、それを幾度も繰り返せば簡単に折れてしまう。
だから曲がり、折れていたのなら月詠もここまで驚くことは無かっただろう…………そう、剣は
それが意味することは即ち………………斬鉄。
それは魔法を使わない純粋な剣の腕を磨く者たちが目指す一つの極地だ。
鋼の刃で持ってして鉄を切り裂く…………一体どれほどの技量が必要になるのか。
才能豊かな人間が数十年とかけて辿りつくその境地…………だが、今の刹那にそれがあるか、と言われれば月詠は首を傾げざるを得なかった。
強者との戦いを心待ちにする月詠だからこそ、決して過小評価はしない。だがその月詠から見て、今の刹那の腕で斬鉄は不可能だと判断する。これで三度目なのだ、見極める機会ならいくらでもあった。
そして、不可能と判断していたからこそ、この結果が不可思議で堪らない。
有り得ないことが起こった…………だからこそ呆然とした。
だが、今なら一つ思いつくものがある。
「あ…………ははは…………あははははははは!!!」
考えてみればもうそれ以外には有り得ない。そして、だからこそ笑ってしまう。
「あははははははは…………嫌やわあ、刹那先輩…………まさかこんな状況で、目覚めたんですかぇ?
これが最後だ…………桜咲刹那はそう思った。
空間を切り裂く刃…………それが“レブナント”の力だ。
故に…………空間を捻じ曲げる月詠の“オーエン・ソウエン”との相性は最高に近い。
けれど、スタンドバトルとはそう言うものではない。
スタンド使いの戦いとはそう言うものではない。
たった一撃で、刹那はそれを思い知った。
「“オーエン・ソウエン”!!」
「“レブナント”!!!」
捻じ曲がった刀身の上を野太刀がすり抜ける。
だがその瞬間、月詠がピタリ、とその刀を止める。
戦いの途中に動きを止める…………それがどれほど危険なことなのか、勿論のこと理解はしている。
だが、これはそういうものであると、月詠はたった一度の攻撃で当たりを付けた。
「あはは…………やっぱりやわあ」
小太刀は、断ち切られていなかった…………それどころか傷一つ無い。
月詠は自身の仮説が正しかったことに笑みを浮かべ、反対にたった一撃で自身の最大の弱点が露見したことに苦々しく口を閉じた。
“レブナント”の力は空間切断…………切断された空間はその位相をずらすが、一秒もしないうちに接合する。
この時、切断された空間に物質が存在した時、その部位は空間の接合と共に元の状態に戻る。
つまり、一見切断されてしまったかのように見えても、切り開かれた部分は繋がっているのだ。
だが、もし切断されてから接合されるまでの間の僅かな時間で、元の位相からずらしてしまえば、切断された部位は永劫元に戻ることは無くなり、結果的に消滅する。
つまりそれが先ほどの月詠の小太刀に起こったことだ。
斬られた後、咄嗟に
つまり、真っ二つになった小太刀は斬られたのではない…………薄皮一枚にも満たない厚さ分の刀身が消滅したのだ。
恐ろしいのは、この技が空間を切り裂いた結果の副作用だと言うこと。切断される物質の物理的な強度は何ら意味をなさない。それどころか、空間操作された空間すらも切り裂くので、実質的にこの技を
だが、空間を切り裂いた結果の副作用だと言うことは、逆に言えば、空間を切り裂いた後の結果には干渉できないと言うことだ。
究極的に言って、動かなければ何も起きない…………それはこの能力の最大の欠点であると言える。
だが…………だ。動かずにいられるだろうか?
刀を構えた敵が目の前にいるというのに…………一秒もの間、
そもそも、それに気づいたとして、本当にそれが正しいのかも分からないと言うのに。
異常だ、異常だ…………とは思っていたが、これは極めつけだ。
へらへらと笑う月詠を見ながら、刹那は戦慄する。
たった一撃見ただけで自身のスタンドの能力を察したこともそうであるし…………ともすれば、無防備な状態で一撃もらっていたかもしれないその危険な選択を迷うことなくしたこともそうだ。
だが、何よりも…………。
「何故…………剣を収める…………?」
この状況で、剣を収めたこと…………それが何よりも分からない。
「ほんまは、最後まで
手元の刀を見て…………それから困ったように呟く。
「生憎、一本無くのうてしもうたんで、今夜はこれで引かせてもらいますぇ」
そう言って退却する月詠を、刹那はじっと見つめる。
待て…………そう言って追いかけることもできた。
だが、例え一本刀を失ったとは言え、それでも今戦って勝てるとは思えない。
それに、今はお嬢様の元へ向かわなければならない、だとするならここでやつを見逃すことは上策のはずだ。
その…………はずだ。
だと言うのに…………何故こんなにも悔しいのか。
歯を食いしばり、爪に掌を突き破るかと思うほどに硬く拳を握る。
そうして、ふと気づく。
見逃したのではない…………見逃されたのだと。
「……………………」
桜咲刹那は剣士だ。
剣で負け、戦いで見逃され…………それで平静でいられるわけは無い。
だが…………桜咲刹那は剣だ。
近衛木乃香の身を守る剣。近衛木乃香の敵を斬る剣。
そして…………近衛木乃香の道を切り開くための、近衛木乃香の剣。
ならば今は主人の下に帰ろう。
道具は自分の意思で動かない。
道具は主人の言葉に疑問を持たない。
道具は何かに執着しない。
もし剣士であることに拘り、主人を危険に晒すのであれば…………。
桜咲刹那は剣士であることを捨てよう。
自身の短い人生の大半を捧げたその有り方を捨てよう。
それは結局…………近衛木乃香のための物でしかないのだから。
「…………繋がらんな」
電波が入ってないのか? と疑問を持ちつつ、エヴァンジェリンは夜の参道を歩く。
「茶々丸、目的地まではあとどのくらいだ?」
一歩後ろからついてくる自身の従者にそう尋ねると、もう少しです、とだけ返ってくる。
「そうか…………」
正直魔法で飛べば良いのだろうが、これでも賞金首の自分が、関西呪術協会の目の前で魔法を使うような真似をすれば…………正直、面倒ごとにしかならない。
かと言って、徒歩と言うのは失敗だったか? と思ってみたが、それも後の祭り。
「全く…………面倒な」
思わずそう愚痴ってしまう。それもこれも、全部宮崎のどかのせいだ、と心の中で少女に会った時に言う文句を考える。
そうして歩いて行き、巨大な門が見えてくる。
「ふう…………ようやくか、長すぎるぞ、しかし」
やや辟易しつつ、その門をくぐり…………そして、絶句する。
「なっ……………………………………どういうことだ、これは」
「…………生体反応ありません。どうやら、周囲に生存者はいないようです」
後ろで茶々丸がそう告げる。だが、そんなものは見れば分かる。
死んでいるわけではない、だがこれを生きている、とは言わない……………………。
眼に入ってくるのは人の形をした石の像。
だが、分かる………………これは、人だ。
人の形をした石ではない…………石と化した人だ。
「…………そういうことか」
あの少女が何故自分を呼び出したのか…………ようやく理解した。
そして、そうとなれば、動かねばならない。
そういう
「行くぞ、茶々丸」
自身の従者の声をかけ、身を翻す。
最早、魔法がどうとかは言わない、飛行魔法を使う。
だいたい、見つかればまずいだろう関西呪術協会の人間は全滅しているのだ。文句を言うやつもいまい。
だが問題は、どこに向かえば良いのか…………音一つ無いあの総本山はすでに誰もいないだろう。
桜咲刹那や宮崎のどかがいて、何もできずに全滅、と言うのは考えにくい。
となると、彼女たちはどこにいったのか?
そう考えれば、自然と下手人を追った、と考えるべきだろう。
それは一体どこか…………そう考えたその時。
夜闇に黒く染まる森の向こう側…………そこに、光の柱が立った。
と言うわけで…………刹那さんはスタンドに目覚めました。エヴァが参戦しました。
刹那さん、月詠にボロ負けですけど、剣士としてならともかく、スタンド使いとしては成り立てですからね…………ひよっこもいいところです。
逆に月詠はスタンド使いとしての経験を積んで、スタンドバトルもこなしたことのある戦闘狂です。当然と言えば当然の結果と言えます。
因みにエヴァ参戦のフラグはたしかどっかに書いてます。
本屋ちゃんが保険をかけたとか云々って会話書いた覚えがある気がする。
オリジナルスタンド講座
“レブナント” 使用者:桜咲刹那
【破壊力 - B / スピード - B / 持続力 - E / 射程距離 - D / 精密動作性 - B / 成長性 - B】
空間を切断する能力を持つ。切断された空間は、数秒で元に戻るが、この時巻き込まれた部位が斬られた時の位置から動いていた場合、空間接合時に巻き込まれた部位は切断されるが、動いていなかった場合、支障無く戻る。つまり、斬られても動かなければ無傷でいられる。
能力は連続して使用できず、一度使えば数十秒の間を置かなければならない。
実はもうちょっと設定があるけど、それは秘密。