古畑任三郎のビデオ見ながら書いてたら全然進まなかったwww
聳え立つ巨大なソレに眼を見開く。
大きい…………圧倒的なまでの存在感を放つソレを見て、浮かび上がってくるのはそんな陳腐な言葉。
だが、そうとしか言えない。
水面から見えるのはソレの上半身だけだと言うのに、それだけでも数十メートル規模の巨体。
人間と比較したそれはまさしく蟻と象と言う言葉がピタリ、と当てはまる。
二対四つの腕を持ち、表と裏、頭部の両方に顔を持つソレ。
「『リョウメンスクナノカミ』…………千六百年前に討ち倒された大鬼神や」
どこか誇らしげにそう言う天ヶ崎千草。
「ここここ、こんなやつどうしろっつんだよ?!」
鬼神のあまりの巨大さに慌てるカモくん。
「……………………」
じっと見つめ、鬼神を見つめる宮崎さん。
「でででで、デカーーーーーーーーー!!?」
眼を丸くして、叫ぶ明日菜さん。
さて、僕はどうする?
そう考えた時、咄嗟に口が開く。
「ラス・テル マ・スキル マギステル
ズン、と体に重さを感じる、と同時に僕の肩の上でカモくんが叫ぶ。
「あ、兄貴!! さっきもあんだけ魔力使って、さらに使う気かよ!? 今日一日で魔法使いすぎだぜ?! いくら兄貴の魔力が底無しでも、そんな大技三発も撃ったらもう限界だろ?! それ以上使っちまったら倒れちまうぜ?!」
「…………大丈夫だよ」
たしかにいつも以上に魔法は使っているが、要所要所で宮崎さんが代わりに戦ってくれたお陰で、まだ大技一発分くらいの魔力は残っている。
それに、もし無いとしても、使わなければならない。
アレが完全に出て来てしまっては手遅れだ。今ここに居る人たちではどうにもならない。
「だから…………ここで倒さないと!!!」
左手をソレへと向け、魔力を最大まで練りこんだ魔法を解き放つ。
荒れ狂う魔力の渦が鬼神へと伸びていき、その顔面を捉える。
だが…………。
「ふ、フフフフ、アハハハハハ…………それが限界か? サウザンドマスターの息子が? まるで効かへんな
僕の放った魔法は鬼神を一瞬仰け反らせただけで、鬼神はすぐに体勢を整える。
まるで効いた様子も無く、何事もなかったかのように、そこに聳え立っていた。
「このかお嬢様の力でこいつを完全制御可能な今、もう何も怖いものはありまへんえ」
鬼神の肩の上で、天ヶ崎千草が笑う。だがもう僕には膝を付くことしかできない。
魔力ももう空っぽ…………魔法で火を灯すこともできるかどうか怪しいと言うのに。
もう尽くせる手が…………無い。
「諦めるんですか?」
ふと、声がする。
振り返れば、僕をじっと見つめる宮崎さん。
その視線は僕を責めているような、呆れているような、心配しているような…………複雑な色が混じっている。
「諦めたらどうだい?」
割って入った声のほうに視線を向ける、そこにアーウェルンクスがいた。何事も無かったかのように話しているせいで、どの程度ダメージがあるのかは分からないが、全身ボロボロなところを見ると、完全に無傷、と言うわけでもなさそうだった。
「キミたちは十分善戦した…………けれど、残念だったね、ネギ君」
そう言ってこちらに向かってくるアーウェルンクスと僕の間を遮るように、宮崎さんがアーウェルンクスの前に立つ。
そして、再度僕に問う。
「もう一度聞きます………………」
諦めるんですか?
ふと、杖を握る手に力が篭る。
そっと視線を落とす。父さんからもらった大事な杖がそこにある。
「ラス・テル マ・スキル マギステル」
「兄貴?!」
カモくんが驚くような声で僕を呼ぶが、それを無視し、さらに深く集中する。
深く深く意識の底へと沈みこむ意識の中、思い出すのは自身の原点。
父さんのようになりたかった。
父さんのような英雄に………………………………
僕の原風景はずっとあの日のままだ。
焼ける村、飛び交う悪魔、殺されそうな僕。
そして現われたのは…………英雄ナギ・スプリングフィールドではない。
ネギの父親、ナギ。
「
それでこそ、です。
心の中で『私』が嬉しそうに呟く。
全く困った人
「どうするつもりだい? 魔力も無い、さきほどよりも威力の低くなって魔法でアレを止められるのかい?」
馬鹿にしている、と言うより心底不思議そうな声でアーウェルンクスが問う。
無理に決まっている、そう決め付けているような声に、私は笑う。
「やってみないとわからないものですよ、こう言うのは」
実際、どうなるかなんて私も知らないし『私』も知らない。
「どうにかなる、とは思わないけれど………………まあ止めさせてもらうよ」
「では私は絶対にさせません」
こうなってしまっては、以前がどうのこうの…………なんて話は無効ですよね、母さん?
主が今にも倒れそうな体で全ての力を振り絞ろうとしているのだ。
従者がそれを助けなくてどうするというのか。
「だから今日の私は、全力です」
そう言って笑い、その名を呼ぶ。
「“imitation hearts”」
「
自動操作スタンド?
フェイト・アーウェルンクスは目の前で起こることに首を傾げる。
視線の先の彼女、宮崎のどかのスタンドは先の戦闘までたしかに遠隔操作型のスタンドだったはずだ。
その能力も分かっている、高速移動…………無いし、時間遅延。その辺りだったはずだ。
そう、だった。
だと言うのに何だと言うのだろうか?
自身の目の前には、白いマネキンのようなスタンドが数百と並んでいる。
その数百の全てが個別に動き、こちらを襲う。
一体一体は対した力ではない、正直多少訓練された人間なら勝てる程度…………だがそれが百、二百、三百と折り、しかも今も尚増え続けている、となると話は別だった。
「……………………ね」
数百のスタンドの攻撃を避けていると、その向こうで彼女が何か口を開く。
途端、超高速でやってくる影に、冷静に呟く。
「“エンブリオ”」
瞬間、飛来する黒い影を自身から生じた白い影が迎え撃つ。
よく見れば迎え撃った黒い影、それは浴場で彼女が出していたスタンド。
なるほど、と思う。
二種類のスタンドを扱っていたのではなく、一つのスタンド能力で複数のスタンドを再現できるタイプか。
となると、あれ一つとは限らないのが厄介だ、と思う。
と言っても、思って何か変わるわけでもない。その辺りが自身と人間の違いなのだろうか…………そんなことを思考した。
「
それが見えた瞬間、全身の血液が沸騰しそうになった。
お嬢様を物のように扱うそいつに殺意すら沸いた。
だがそんなことより、お嬢様に眼が釘付けになった。
あそこにいる。
自身の命より大切な人があそこにいる。
そう思ったら、他のことなど全て吹き飛ぶ。
だからこそ、周囲に禁忌とされ、自身で戒めてきたその
大地を踏みしめ、そして翼を使って空を羽ばたく。
お嬢様が近づく。鬼神と言う強大な敵に自ら無防備に近づくが、そんなことはどうでもいい。
あと少し。もう少しでお嬢様の元に。
「な、なんやお前?!」
敵が気づく。気づいて鬼神の腕を振るおうとしてくる。
「“レブナント”!!!」
切断する。その腕を、空間ごと斬り落とす。
「んなアホな!!!?」
どけ、邪魔するな。
邪魔だ、そこをどけ。
邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ。
「“ボーダーエンド”!!」
「“レブナント”!!」
邪魔をするなああああああああ!!!
斬る、位相をずらされた空間を斬り落とし、強制的に戻す。
辿りつく、そこに、辿りつく。
抱きとめる、その温もりに涙が流れる。
「………………ん」
眼が開く。
それから私を見られて…………。
「せっちゃん…………へへ、やっぱり、また助けに来てくれたー」
「……………………」
私はダメな従者だ…………主の言葉に、泣いてばかりで返事も返せないなど。
「泣いてるん? せっちゃん、どこか痛いん?」
「…………うれ、し…………泣き…………です」
ぎゅっと抱き締める、二度とこの温もりを失くさないように、抱き締める。
「守るから…………うちが」
もう二度とこんな目にはあわせないから。
「絶対に、守るから…………このちゃん」
もう呼ぶまいと決めていたその名前が、ふと口から零れる。
「……………………うん」
けれどそんなのは結局私の一人よがりで…………。
言いたいことも言えなかったこともたくさんある…………けれど。
今だけは、もう少しだけ、このままで。
「
「ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト」
聞こえた瞬間、走り出した。
そして空を飛べない人型たちが追いつけなくなったその数秒で詠唱を追え、その指をとある一点に差す。
「
その指から射出されるレーザーのような魔法。
その行く先は…………ネギの元。
「兄貴っ!!」
肩の上のオコジョが叫び、けれどネギはよほど集中しているのか、杖を握り締めたまま動かない。
だから…………。
「てやっ!!」
私が手に持ったハリセンでレーザーを
「明日菜の姐さん!!?」
「飛んでくる魔法は全部私がなんとかするわ」
組体操でもしているかのように互いが足場になって空中の敵に向かって飛び掛る人型に後退するアーウェルンクス。
そうそう何度も撃って来れないだろうが、もし撃ってきたとしてもこちらでなんとかできる範囲だ。
だから、早く撃っちゃいなさいよ、ネギ。
「
あの日まで夢想していたその背中は英雄のものだった。
あの日憧れたその背中は英雄などではない。
あの日自身が憧れたあの背中はもっとシンプルなものだ。
あの日自身が届かなかったものに届いた、それだけのことなのだ。
誰かを助けることのできるヒーロー。
助けを求める声に駆けつけることのできる正義の魔法使い。
『すまない…………来るのが遅すぎた』
そう言った父さんの顔は後悔していた。
けれど、僕だけは知っている。
『お父さん』
そう呼びかけた僕の元にやってきてくれたヒーロー。
僕は知っている。
そんな人たちを何て呼ぶのか。
僕は憧れている。
“ザ・ヒーロー”に。
「『
「ナギ………………」
見間違いに決まっている。
そんなことは分かっている。
なのに、無意識にその名を呟く。
息子のはずの坊やの姿が、一瞬どうしてかやつそのものに見えた。
嫌になるほど似ているとは思っていたが、まさか一瞬とは言えあの坊やとやつが重なるとはな。
未練…………か?
ようするに未だに自分がやつのことを引きずっているのだろう。
「闇の福音…………なるほど、相手が悪いね」
私の姿に気づいたソイツが呟き、足元に現われた水の中に消える。
水の門…………本山をやってのはあいつか。
西の術者に本山をやれるやつがいるとは思えない以上、恐らく間違っていないだろう。
「こんばんわ、エヴァンジェリンさん」
暢気にそう言ってやってくるのは宮崎のどか。
「ふん、よくまあこんなところまで呼び出してくれたものだな」
すみません、と困ったように笑い。
「多分これが最後の仕事です。あれ、なんとかできますか?」
指差す先は、この地に封印されていたと言う鬼神の姿。
だがその上半身、特に右肩辺りが抉れている。
「あれを坊やがやったのか?」
私の問いに、宮崎自身やや驚いたような様子で頷く。
「なるほど、坊やも中々…………」
だが、まだまだだな。
坊やの下まで歩く。
それから、魔力切れでへたり込んでいる坊やに声をかける。
「やるじゃないか、坊や」
こちらへと振り返り、驚いた様子でこちらを見てくる。
「だがまだ甘い。このような大規模の戦いでの魔法使いの役目は究極的に言って大砲…………つまり、火力が全てだ」
茶々丸に合図を出す。結界弾と言う、一時的に結界を発生させる弾丸を使い、鬼神を結界に閉じ込める。
「見せてやろう、最強の魔法使いと言うものを」
ふっ、と笑い空へと駆ける上がる。
「マスター、この質量では拘束できてもせいぜい十秒程度です」
そんな茶々丸の忠告に、充分だ、と返し。
「リク・ラク ラ・ラック ライラック」
「
百五十フィート四方を覆う絶対零度の広範囲呪文で鬼神を完全に停止させ。
「これで終わりだよ…………」
「“
パチン、と指を鳴らす。
同時に。
鬼神が、砕け散った。
ちなみに“ザ・ヒーロー”はスタンドの名前です。
今回新しいスタンドが三つ出てきました。
ただ詳細は本編で語れるかと。多分。恐らく。めいびー。