4,5月は東方書いてて、6月はメガテン書いてました。
のどま書こう書こうと思ってて忘れてました。ちょっと二時間ほどで超特急で書いてきました。
鬼神を倒し全員で総本山に戻ってから明けて翌日。
目を覚ますと布団の中にいた。
鬼神が倒れた後、天ヶ崎千草は捕縛し、フェイト・アーウェルンクスはエヴァさんの存在を認めた瞬間退却。
石化した他の人たちもフェイトが退却したせいか、それとも単なる時間経過でかは分からないが石化が解けていた。
そうして、取りあえず、とは言え一息吐いた私たちは総本山に帰るや否やそのまま泥のように眠った。
と、まあそれは言いのだが。
「…………………………朝?」
寝るのが早かったせいか目覚めるとまだ日が昇っていなかった。
枕元に置かれた自身の荷物を見つけ、布団の中から手を伸ばしそれを手繰り寄せる。
ごそごそと中に手を入れて携帯を探りあて、開いてみればまだ六時にもなっていなかった。
「………………ああ、そう言えば」
昨日のあったことを思い出し、ため息を吐く。
「よく生きてたなあ、私たち」
なんともまああれだけ格上相手に生き延びたものだ、と笑う。
と、同時に思う…………まだ足りない、と。
今回は上手く言ったが、次もまた上手くいくとは限らない。
生き足搔く、それは宮崎のどかの根源だ。
もっと強く、何があっても戦い抜くために、心も、体も、強くならなければならない。
そう固く心に刻む。
そうしたところで、ふと欠伸。まだ寝れるか、と再び布団に潜り目を瞑ろうとし…………気づく。
「あれ?」
それは違和感。そして記憶を掘り起こす。
「え…………?」
そうだ、何故気づかなかったのか、何故忘れていたのか。
「なんで…………?」
気づいてしまえば思考が加速度的に回る。けれど答えは出ない。
布団をめくり、自身を見る。
浴衣のような和装に包まれた自身の体。
「………………私、着替えた覚えない」
気づいてしまえば恐ろしい。と言うかそもそも昨日の晩は総本山に帰るや否や全員でへたりこんでしまい、そのまま寝てしまっていた。
「エヴァさん…………じゃないよねえ」
だがまあよく考えれば石化の解けた給仕さんたちの誰かだろう。
寝ぼけてどうにも思考が変になってしまっていたようだ。
「お風呂、借りようかな?」
昨日入った露天風呂を思い出し、のそりのそりと布団から抜け出す。
昨夜は森の中を走りまわったせいで、汗だくのまま寝ていた。そのせいか、ちょっと臭いが気になる、これでも中学生の女子だ、そう言ったことには敏感なのである。
そうして廊下をのそり、のそり、と歩いている…………と見知った後姿が一人。
「刹那さん?」
ビクリ、と肩を震わせ振り向く刹那さん。
良く見ればいつもの竹刀袋に手提げの荷物。まるでこれからどこかに行く風だった。
「どこに行くんですか?」
「…………………………」
答えはない。だが答えないと言うことは、知られてはまずいと言うことだろう。
「もう一度聞きますけど…………どこに行くつもりですか?」
「…………黙って見過ごしてもらえませんか?」
返ってきた言葉に案の定か、と呟きため息を吐く。
「別にね、私は構わないんです。刹那さんがどんな思いで何をしようとしているのか、私に一々説明する義務もなければ私が止める理由もありません、あなたが決めたことですから」
けれど…………そう言って、続ける。
「木乃香さんに何も言わずに出て行くのは不義理だと思いませんか?」
「……………………………………」
ギリィ、と刹那さんが歯を軋らせる。彼女自身が一番それを分かっているはずだ。だと言うのにこうして黙って出て行くと言うのはそれ以上のことがあるはずで…………。
「だいたい人に黙って何かしようとする人間の目的なんて二つです。一つは相手に知られたく無いか、自分が知りたく無いか」
あなたはどっちですか? と尋ねてみるが、状況を考えれば答えなんて一つ。
「それとも、両方ですか?」
「……………………」
沈黙。けれど否定の言葉が無い時点でそれはもう肯定しているようなものだった。
「あなたが黙っていても木乃香さんは魔法に関わります。もうここまで来てしまった以上知らぬ存ぜぬは通せません」
被害に合った上にしっかりと記憶してしまっている。魔力が高すぎて忘却の魔法をかけるのも一大事な上にあっさりレジストして思い出すかもしれない。
近衛木乃香はもうどうやったって魔法に関係せずには生きられない。
「それと………………何を知られたのか知りませんが、逃げ出す前に、木乃香さんを信じてあげてもいいんじゃないですか?」
「な…………なんでそれを」
驚きに目を見開く刹那さんを見て、私は呆れのため息を漏らす。
この生真面目な少女が逃げ出そうとしている理由なんて、いつだって一つだけだ。
「まあ、私からは以上です。後は…………そう、
「?!」
刹那さんが目を見開き振り返ったそこに………………。
「せっちゃん…………」
「お嬢様…………」
近衛木乃香がいた。
会いたく無かった。
だからこんな朝早くから出て行こうと思ったのに。
「……………………聞かせてえな、せっちゃん」
ああ、本当に。
「…………一切合切、全部やで?」
会いたく無かった。
「…………分かりました、お嬢様」
私の心が、決意が…………こんなにあっさりと折れてしまうから。
桜咲刹那は純粋な人間ではない。
烏族と人間との間に生まれたハーフで、烏族の中でも禁忌とされる白い翼を持ち、生まれてまもなく親も死んでしまった正真正銘、里の忌児だった。
人型であって人でない烏族の中で人の外見をし、禁忌とされる白い翼を持つ、そんな子供が里に愛されるはずも無く、少女は物心ついてすぐに里を抜け出した。
そこで出会ったのが、近衛詠春だった。
「白い翼は禁忌です。それを見られた以上、私はここにはいられません」
それが掟ですから…………そう言う少女に木乃香はけれど首を振る。
「あかん、行ったらあかん! せっかく仲直りできると思たのに、こんなんでお別れなんて嫌や!」
少女にとってその言葉は泣きたいくらい嬉しいもので…………だからこそ、言ってしまう。
「無理ですよ…………だって、私は化け物なんですよ?! お嬢様たちのような人間じゃない! 宮崎さんを襲った化け物たちと同じなんです、私は!!! こんな化け物、お嬢様の傍にいるべきじゃない…………こんな化け物は…………このちゃんと一緒にいちゃあかんのや!!!」
普段の少女からは考えられないくらいの声量。だからこそれが少女の偽らざる本音であると、木乃香には分かった。同時に、それこそが少女を苦しめるコンプレックスなのだと。
だからこそ、木乃香は笑う。
「なんや…………
「………………え?」
自分の想像していた答えとまるで違う言葉に、自分を長年苦しめていたものを指してそんなこと、と言う言葉に。
少女の思考が止まる。それほどまでに衝撃的な言葉だったのだ。
「あんな、あん時のこと、正直よー覚えてないやけど」
けれど、記憶に残っているのは。
「キレーやったよ、せっちゃん…………天使みたいやった」
「!!!!!?」
その瞬間受けた衝撃を、どう言葉にすれば良いのか。
この流れる涙を、なんと言葉にすれば良いのか。
この胸に溢れる感情を、どうやって言葉にすれば良いのか。
ああ、陳腐だが、こう言わせてもらおう。
言葉じゃ語れないほどの衝撃。
そして。
言葉じゃ語れないほどの歓喜。
「うちが嫌いになると思っとったん?」
その通りだった。
「うちがせっちゃんのこと怖がるって思っとったん?」
肯定だった。
「馬鹿やなあ、せっちゃん」
全く持って。
「うちは世界で一番せっちゃんを大事に思っとるよ」
泣き崩れる。
立っていられなかった。
ずっと欲しかった言葉だった。
ずっと諦めていた言葉だった。
あの日、あの時、あの瞬間に自身の無力を感じた。
ずっと避けていた。
負い目だった。自分の無力を詰られると思っていた。
また助けられないかと思った。
今度は助けられた。
けれど自分の本当の姿を知られ、嫌われたかと思った。
だから逃げ出したかった。
ああ…………逃げようとしていた。
「せやからな、せっちゃん」
ここにいて?
そう言われた瞬間、ずっと張り詰めていたものが…………折れた。
ああ、黙って逃げようと思っていたのはこのためだったのに。
分かっていた、もしたった一言、お嬢様に行くなと止められたら。
今までの自分の全てを投げ出してお嬢様に従ったに決まっているから。
「恨みますよ…………宮崎さん」
けれど、彼女がいなければ自分はきっとお嬢様の言葉を聴くことも無く逃げ出していたはずで。
だから、もう一つだけ付け加えるなら。
「ありがとうございました…………皆さん」
今回の事件で助けられた人たちに万感の感謝を込めて…………そう呟いた。
もうこれで完結でよくね?
と、まあ冗談は置いといて。
え? この引きで? と思うかもしれないけど、まだ修学旅行4日目『前編』なのよね。
修学旅行終わったら…………次がヘルマン伯爵の話でしたっけ? どうしようかな。
ターニングポイントは学園祭。原作を参考にしつつオリジナル展開入っていきます。
ついでにそこでのどかの秘密設定とか色々回収できるかな?