アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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三話 盛り上がってる時はノッた者勝ち。

 

 

 

「「「「「ようこそ、ネギ先生!!」」」」」

 

 パン、パンとクラッカーが打ち鳴らされる。

 放課後。ネギ先生がこのクラスの担任となってまだ初日にも関わらず、その放課後にその歓迎会をしようとするこのクラスの行動力は素直に凄いと思う。

 まあ、その情報が回されたのが授業中で無ければパーフェクトだったが。

 

「あ……そーだ、今日あなたの歓迎会するんだっけ……忘れてた!」

 そして僅か数時間で忘れないでください、神楽坂さん。

 クラスメートに押され、ネギ先生が用意された席に座る。

 そしてそれを見届けると、クラス中が好き勝手やり出す。と言うことで、私も今のうちに再度お礼をしておく。

 

「あの、ネギ先生…………さっきはその、危ないところを助けていただいきありがとうございました。これ、お礼の図書券です」

 そう言って渡した図書券をネギ先生が受け取ると、ノリの良いクラスメートたちが私たちを囃す。

 苦笑しつつ、ネギ先生を中心とした輪から抜けだし、自身の友人たちのところに戻る。

 

「ただいま、ゆえ」

「おかえりなさい、のどか」

 私の親友の綾瀬夕映がそう言って、飲み物の入ったコップを渡してくるので、受け取る。

「ハルナは…………えっと、今声かけないほうがいいのかな?」

 ネギ先生を見ながらスケッチブックに高速で筆を走らせる図書館探検部の友人を見てそう呟く。

 

 と、その声に反応してか、ハルナが手を止めこちらを向く。

「お帰りーのどか。しっかりネギ先生にアタックしてきたかい?」

「あ、アタックって…………別にそういうつもりじゃ」

「むっふー、ラブ臭がほのかに漂うねえ」

 少しだけ親父くさいと良く思っているのは本人には言えない秘密だ。

「んじゃ、夕映。私らも先生に挨拶してこようか」

「そうですね。のどか、ちょっと行って来ます」

 そう言って二人がネギ先生のほうへと歩いていくのを見送る。

 

「のどか、おかえりなー」

 そしていつの間にか後ろにいたのが近衛木乃香。

「えっと、ただいま」

 図書館探検部の仲間で、学園長の孫娘。そして…………。

「あー、むかつく! いいんちょうのやつ!!」

 神楽坂さんの友人でもある。

 

 ふと、その神楽坂さんの視線がこちらを向く。

「あ、本屋ちゃん、あの後大丈夫だった?」

 あの後、と言うのが先ほどの階段から足を滑らした件だとすぐに気づく。

「あ、はい…………何とか大丈夫でした」

 そして、一つ同時に確かめておく。

「それにしてもネギ先生が助けてくれる直前、一瞬体が浮いたような気がしたんですけど」

「気のせいよ」

「え?」

「気のせいよ!! いい? 気のせいだから」

 神楽坂さんはよく言えば素直、悪く言えば直情的で単純だ。駆け引きやさりげない嘘などは吐かない、それがこの反応だけで良く分かる。

 それだけ必死では何かあると言っているようなものなのだが、あえて黙っておく。

 

「そうですよね、人間の体が浮くわけないですよね」

「そうよ」

 そして納得したような私の言葉に、安堵した様子の神楽坂さん。

 ただ、私としては安堵できないのだが。

 今の反応からして間違い無い。

 

 神楽坂明日菜が魔法を知った。

 

 この場合、やはり私のせいになるのだろか。後で高畑先生に謝罪しておこうと思いつつ、ふと気づく。

 ちらちら、と神楽坂さんがどこかに視線を向けている。そしてその視線の方向には。

「………………………………ぇ?!」

 高畑先生の額に手を当て、何かを呟いているネギ先生。 

 ていうかあれ…………どう考えても読心術じゃ…………。

 高畑先生どう反応していいのか困った顔しているし、ネギ先生もこんな人の多いところで堂々と魔法使うし。

「また降りたくなってきた」

 

 本当にこの先、この先生は大丈夫なのだろうか、本日何度目になるか分からない溜め息を吐いた。

 

 

 

 翌日、高畑先生はいつかこうなるとは思ってた、などと言って許してくれたが、自身であれはいくらなんでも酷かった、と猛省する。

 この麻帆良では平穏と危険が隣り合わせだ。たしかに仕切りはあるようだが、いつ無力な一般人が仕切りを越えるか分からないような保障の無い当てにならないものだ。

 そんな危険に遭遇した時、昨日のような失態は命に直結する。

「気が緩んでるのかも…………」

 日常的に気を張っていては疲れるけれど、けれどあまり油断しててもまずい。その辺りの見極めはこの数年で身に着けてきたつもりだ。

 

「うーん」

 まあ、それはそれとして。

 今日も多少いざこざがあったが、一応授業は進んだ。ネギ先生もさすがにイギリス人だけあって、英語の授業はお手の物のようだった。自身が日本語を学んだ影響なのか、訳す時の留意点なども細かく教え、少しだけ評価を改める。

 のはいいのだが…………。

「分からないですか? のどか」

「うん、今日の授業なんだけど、ちょっと分かんないことが」

「ああ、ここですか…………いっそ先生に聞いてみたほうがいいかもしれませんね」

 私の手元のノートを覗き込み、夕映がそう呟く。私も同感だっただけに、頷く。

「なになに? 先生のとこ行くの? だったら私も行くよ(ラブの予感がするしね)」

 そう言ってハルナも付いて来ることになった…………一人でこっそり何か呟いていたけど、何を言っていたのだろうか?

 

 まあネギ先生もすぐに見つかったし、質問はちゃんとできたのだが。

 その後、質問を終え三人で校舎内に帰ろうときびすを返している時、ふと振り返る。

 そして思わず凍った。

「……………………」

 距離が遠く、何を言っているのか分からないが、アルコールランプでビーカーを温めながら、杖を振り上げている、と言うことは呪文を唱えている可能性が高い。

 まだ何の隠蔽も無しに魔法を…………。

 あまりの秘匿意識の低さに頬が引きつる。

 きっと、高畑先生に報告したら、先生の頬も引きつるだろうな、と思いながら近くに夕映とハルナがいるので、口には出さず、心の中でそっと呟く。

 

 “Bad apple”

 

 自身の呼びかけに答え現われたスタンド。魔法を使ってあれは何か作っている、と言うことは魔法薬の可能性が高い。さすがに禁止された危険な薬は無いだろうが(惚れ薬とか)、一応スタンドに様子を見させておく。

 

 その後に起こった、惚れ薬を巡る一連の騒動については(げん)を伏せさせていただく。

 

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