アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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四話 勉強は普段からしておかないとテスト前に慌てる。

 

 

 

 勉強……会……?

 教壇で張り切りながら言ったネギ先生の言葉を反芻する。

 多分、もうすぐ期末が近いからなんだろうけれど、それにしてもこのクラスで今さら?

「あの、そのうちのクラスが最下位脱出できないと大変なことになるので、みなさんがんばって猛勉強していきましょー」

 ひどく必死な様子…………多分、学園長あたりから何か言われたのだろう。

 

 まあ確かに2-Aが一年の頃からずっとクラスでの順位は最下位だっただけに、教師としてのネギ先生にこれを改善させようとするのは特におかしなことではない。

 このクラスの行動力は保証されているので、用はどれだけこのクラスの人間をやる気にさせるか、と言うその一点でネギ先生の教師としての適正を分かりやすく見せることができる。

 と、なるとこれはネギ先生自身の試験なのだろう。

 

 そして、そんなことを考えていたからだろうか。

 クラスの盛り上がり担当たちが横でとんでもないことを始めているのに、気づくのが遅れた。

「…………はぁ」

 顔を上げてみれば、クラスメートたちのいく人かが脱いでいた。比喩ではなく、文字通り服を。

 神楽坂さんにいたっては、下着まで脱いでいる、上のほうの。

 多分、普通にやってたら止められるだろうけれど、ネギ先生はイギリス人。

 野球拳など知っているはずも無く、クラスの人間に乗せられたのだろう。

「こんなんで期末大丈夫なのかなあ…………」

 知らず知らずの内にそう呟いた…………あ、ネギ先生がまた杖取り出して魔法を唱えて神楽坂さんに叩かれた。

 

 

 

 お風呂は良い。体を禊いてくれるような気がする。広い大浴場でゆったりと湯に使っている時、木乃香が言った。

「ウワサなんやけど、次の期末試験で最下位を取ったクラスは解散するらしいで、しかも特に成績が悪かった生徒は小学生からやり直しなんやって」

「「「ええええええええーーーーーーーーーーー!!!?」」」

 あるわけないじゃん、義務教育なんだから。と言うツッコミを誰も入れない辺り、本気で小学生からやり直したほうがいいんじゃないだろうか、と思ってしまうのは私だけなのだろうか?

 まあこれに懲りて、少しは勉強するかもしれないので、黙っておくことにする。

「実は、図書館島の奥には、読めば頭が良くなる魔法の本があるらしいのです…………まあ大方出来の良い参考書だとは思うのですが、手に入れば強力な武器になります」

 そして初っ端から安易なほうに手を伸ばそうとするのが親友だと言うのに泣けてくる。

 そして。

「(魔法使いがいるなら魔法の本があってもおかしくないわね)行きましょう!!」

「「ええっ?!」」

 成績が悪い(バカ)代表の神楽坂さんの一言により、探索が決定してしまった。

 

 

 

 prrrrrrrr

 ガチャッ

『もしもし? ああ、キミか…………え? あそこに? なるほど、そういうことかい』

『いや、大丈夫だと思うよ。キミたちが普段から歩いているところとそれほど違わない比較的危険の薄い場所だからね』

『ああ、もしそれ以上踏み込みそうならキミのほうで止めてもらえればありがたい』

『いや、学園長も把握していると思うよ。元々あそこはそのための設備だからね』

『はは、それを言われると、元担任としても痛いなあ。まああの五人を放置する形になったのは僕にも責任があることは事実だからね』

『え? いや、決してわざとじゃないよ。どうしても出張がね』

『それにしても何で今さらそんな噂が…………案外学園長が気を利かしてくれたのかもしれないね。あそこは集中して勉強するには良い場所だから』

『え? 彼に何か言ったか? 期末テストのこと? ああ、やっぱり気づいたか。やっぱりいくら修行のためとは言え教師だからね、結果が出せないなら変えるしかないさ、生徒の人生に関わる重要な期間だしね』

『まあ学園長なりの気遣いと厳しさだと思うよ。自分の今の立場を少しでも自覚してくれれば、と言うことだろうね』

『え……本当かい? 彼にも困ったものだな。そう憤らないでくれると嬉しい、彼は今までずっと魔法と言う存在があることが当たり前だったのだから』

『それにしてもひどい? ははは、これは厳しい。たしかに少々秘匿意識が足りないとは思う部分もあるね』

『甘い? 仕方ないよ、恩人で尊敬する人の息子だからね、彼は』

『…………あはは、まだ中学生のキミが言うことじゃないね。まあ確かに甘やかしてばかりなのはどうかと思うけど』

『その辺りはキミが…………え? まだキミが関係者だと言うことを知らないのかい?』

『魔法使いではないにしても、魔法関係者であることは確かじゃないかい?』

『話がずれたね。とりあえず、今夜だね? 分かった、学園長は伝えておくよ。もしかすると期末テストギリギリまで戻れない可能性もあるけれど、理解しておいて欲しい』 

『そうだね、僕としても彼女はやれば出来るのは分かっているからやって欲しいんだけどね、興味のあることにしかやる気が出ないのには困ったものだよ』

『え? アスナ君かい? あはは…………確かにちょっと困ってるけど、昔と比べて随分変わったと思わないかい?』

『関係ない? まあそうなんだけどね、昔を知ってるだけに、ついつい……ね?』

『キミは本当に手厳しいなあ…………分かってるさ。この間のことについての何か言うつもりも無いさ』

『いつかこうなるとは思っていた。昔誰かが言っていたけれど』

『運命からは逃げ出せる…………が、宿命からは逃げられない』

『きっと彼女が魔法を知るのも宿命だったんだろう、あの人の息子の彼がここに来てしまったように』

『ところで、スタンドを操作していて足を踏み外すなんて、少しばかり気が緩んでいたんじゃないかい?』

『まあキミのことだから、そんなこととっくに反省しているとは思うけれど』

『本当は、キミにだって普通の人生を歩んで欲しいんだけれどね』

『…………そうだね、キミはいつもそう言って危険へと歩いていくからね』

『ああ、キミがそのために戦ってるのも知っているさ』

『…………そうだね、これ以上の僕の言うことではないね』

『ああ、頼んだよ。それじゃあ、切るよ?』

 

「………………………………お節介ですね、本当に」

 


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