アグレッシブな本屋ちゃんは嫌いですか?   作:水代

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五話 図書館島探検……って先生は本当に秘匿する気があるのだろうか?

 

 prrrrrrr

 ガチャ

「もしもし、ワシじゃが…………ああ、キミか」

「何? ネギ君が今夜…………あい、分かった、道中の危険性のある罠はいくつか解除しておいたから大丈夫じゃろ」

「全部じゃないのか、じゃと? いやいや、あまり危機感の無いのも困るのでな」

「なに、勉強と言うことは2-Aのあの五人じゃろ、なら大丈夫じゃろ」

「え…………? ワシはちょっと噂を流しただけじゃよ。まあキミも分かっておるとは思うが、ここは学校じゃ、そしてテスト毎に点数が最下位のクラスがおる、まあこのタイミングでやったのはネギ先生に教師としての自覚を持ってもらうためでもある、他にもあるんじゃがな、まあ新しい先生が学校に馴染むためのワシからのちょっとしたイベントじゃよ、いやそんな呆れた声を出さんでも」

「ああ、道を間違えんように、図書館島はいくつか道を封鎖しておる、まあ間違えることは無いじゃろ」

「なに大丈夫じゃ、ワシもここから見ておるでな…………遠見はこちらの専門分野じゃよ」

「いやいや…………ワシも教育者じゃ、生徒たちの成長が嬉しくないわけが無い」

「ああ、抜かりない…………安心してくれ。それに」

「彼女もおるんじゃろ?」

「なら大丈夫じゃ、では切るぞ?」

 

「ふぉっふぉ…………簡単なようで意外と厳しいこの課題、ネギ君は合格できるかの?」

 

 

 

 

 

 夜の図書館島。本来夜間は立ち入り禁止のはずのその場所に、9人の人間がいた。

 一人は教師、ネギ先生。それから神楽坂明日菜、綾瀬夕映、長瀬楓、古菲、佐々木まき絵のバカレンジャーと称される成績不良五人組。残りの三人が私、宮崎のどか、早乙女ハルナ、近衛木乃香の図書館探検部。

 夕映も図書館探検部の一員なので、図書館に行くのはネギ先生とバカレンジャー、と後何故か木乃香の計七人に絞られた。

 私たちは夕映の持つ無線を使って地上から指示を出していく係だ。

 

 図書館島は非常に深い。地下何階まで広がっているのか誰も知らない(多分学園長たちは知ってるけれど)。

 その果てしない階層の中で私たち中等部が探索を許可されているのは地下三階までだ。

 けれど今回のこれはさらにその先まで行かなければならない。

 つまり私たちにとっても未知のエリア。

 学園長たちが備えてくれているとは思うけれど。

 

 “Bad apple”

 

 こういう時、私の遠隔操作型のスタンドは役に立つ。

 何かあってもいけないから、スタンドを彼女たちに同行させることにする。

 どうせ彼女たちには見えないし、と高をくくっていたのだが…………。

 

「む」

「あいや…………」

 夕映たちと同行していた長身のクラスメート、長瀬さんと古菲さんがふと周囲を警戒し出すのが共有した視界で分かる。

「どうかしましたか?」

 その様子を不思議に思ったネギ先生が尋ね。

「何かいるでござるよ」

「隠れてないで出てくるヨロし」

 見えてはいないが、存在だけなら即座にばれたことに、さすがに頬が引きつる。

 昔から分かっていたことだが、本当に麻帆良と言うのは人材の温床だ。

 などと言ってみも状況は変わらない。仕方ないのでスタンドを後退させる。

 まあいざと言う時でも私のスタンドなら間に合うだろうし。

「消えた?」

「いなくなったアルよ」

 やや警戒心は残したままだったが、とりあえず歩みを止めることは無くなった。

 このままあの二人の警戒に引っかからないように距離を保ったまま進まなければならないのか、と嘆息すると、ハルナが不思議そうにこっちを見てくるので、なんでもないと言って誤魔化した。

 

 

 野を越え山を越え、ではないが大学部の先輩たちですら容易に来れないような図書館の奥。

 そこに彼女たちの姿はあった。

 図書館探検部の一員として、夕映だけでなく私も燃えている。

 まさか中等部のうちにこんなところまで来れるとは。

 今回ばかりは学園長に感謝したい気分だ。

 そして辿り着いたのは、RPGに出てきそうな安置室。

 そこに置かれた一冊の本を見てネギ先生が叫ぶ…………。

 

「あ、あれは、伝説のメルキセデクの書。最高の魔法書ですよ!?」

 

 って、魔法とか普通に言ってるけど、この先生の秘匿意識と言うものは本当に薄い。

「たしかにあれならちょっと頭を良くするくらい簡単かも」

 しかも使う気ですか……? ああ、ほら、そんなこと言うから、バカレンジャーが本に群が……ろうとして、本のある場所に続く橋が落ち、全員がボードのような床の上に落ちた…………ってボードに文字、キーボードと言うより、この形…………ツイスターゲームのマット?

 

「フォフォフォフォ、この本が欲しくば、ワシの質問に答えるのじゃ」

 

 そして本の置かれた台座を守るように立っていた二体の石像が動き出して、そう言った。

 って、この声……………………学園長のもの、と言うことは場所は間違ってなかったらしい、と安堵する。

 そして始まったのがクイズ形式のツイスターゲーム。

 正直、学園長の仕掛けだと知っていると心底バカバカしいのだが、それを知らない人間からすると必死にならざるを得ないのかもしれない。

 

「最後の問題じゃ、DISHの日本語訳は?」

 

 皿、と内心呟くが、果たして彼女たちに分かるのか…………。

「お皿ね」

 と誰かが言う、分かっているのか、と内心驚くがハルナがいるので顔には出さない。

「お」

「さ」

 そして。

「「ら」」

 神楽坂さんと佐々木さんが踏んだのは「る」の文字。

 

 見間違えたのか、体勢が悪かったのか、それとも本気で間違えたのか。

 出来れば前者二つのどちらかであって欲しい、それだけを願う。

 そして、間違えたことにより、石像の持っていた槌で床が砕かれ、全員落ちて行き…………って。

「ゆえ!? みんな!!?」

「どうしたの!? 返事は!!!?」

 

 お、落ちた!? あの高さから!? 

 

 いけない、“Bad apple”でも落下は止められない。

 慌てて床から降りようとして。

「大丈夫じゃ、全員浮遊の魔法をかけといたから、怪我一つ無いぞ」

 石像が喋った。学園長はスタンドが見えないはずだが、多分予測していたのだろう。

 そして冷静になると、たしかに学園長が落としたのだから、対処はしているのは当然だと、今さらながらに思う。

「友達思いなのは良いことじゃ」

 最後にそういうと、石像は動かなくなった。

 

 後で絶対に学園長に仕返ししよう。そう決意する。

 

 心臓が止まるかと思ったほどに驚かされたのだ、少しくらい返しても罰は当たらないだろう。

 

 そんなことを考えながら、通信が途絶え、慌てるハルナをなだめにかかった。

 

 


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