のろいぎつねポケモン   作:通りすがりのヌメラ

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ヒスイゾロアの媚びっ媚びなデザイン、可愛すぎるのて初投稿です。




しろい

〇日目

 この身体になってしまってから、どうやら日付の感覚が薄くなってしまったらしい。洞窟の中は代わり映えもしないのも加えて、気づけばあっという間に何日も経っていた。そこで今日はここ数日の振り返りをしようと思う。

 

 再び生を受け、まず始めにしたのは食事だ。()()()()()()すぐ側に死んだポケモンがいたのでそれを食べた。この生まれて間もない身体では他に食糧を調達出来る訳もなく、何日もその肉ばかりを食べて凌いだ。寒くて腐りづらいのが不幸中の幸いと言ったところか。栄養が偏るので、腹からすこしこぼれていた内臓も食べ、そして現在はそれらをも食いつくし、皮の裏の脂をこそいで食べている。

 それにしてもだ。ぼんやり明るい洞窟の氷壁に写る自らの姿は、それはもう白い。まれに青っぽい毛並みのゾロアが生まれることはあったが、こんな白色は初めてである。それに、そもそもなぜ生きているのだろう。あの瞬間、俺は確実に息絶えたはずだが。

 そんなことを考えていると、すこし離れた空間で暗い炎が揺れた。ゴーストタイプのポケモンだと気づいた。あいつらは外敵への攻撃意識が高い。すぐさま襲いかかってこられるだろうと思い、俺は即座に戦闘態勢へ移ろうとした。しかし、

 いや、今日はここまでにしよう。

 

 

 

 

✕日目

 昨日起こったことも含めて振り返ろうと思う。

 あの時、目の前に現れたポケモンはユキメノコだった。彼女は俺を見て少し驚いたあと、 攻撃する素振りも見せずゆっくりとこちらに近づいてきた。控えめに言ってほんの子供、牙に衣着せずいうならば幼体である俺が、たった1匹でいることが不思議だったのだろう。無言で見つめてくる彼女に対し、俺は警戒を解くことなく目を見つめ返した。

 やがてユキメノコは姿を消したが、その場にはいくつか木の実やキノコが置かれていた。施しである。俺はそれを数回に分けて食べた。一体何のつもりだろうか。

 

 

 

 

△日目

 あの後も2日に1度程の頻度でユキメノコが俺の元を訪れていた。現状、食い扶持は彼女のみである。悔しくて仕方がないが、食べねば死ぬのみ。それにこのユキメノコ、あの時戦ったユキノオーに負けず劣らずの力を持っているようだ。何をしたいのかはよく分からないが、今は雌伏に徹するしかあるまい。

 これは生前から抱いていた感想だが、この地のポケモンたちは総じて練度が高く、また力も強い。それに打たれ強いように感じる。生前の己も個としての格はかなり高いものと自負していたが、この土地には単純な出力という点において、かつての自分をも凌ぎそうなポケモンが数いる。

 かつての俺は弱くなかった。1対1の戦闘ならば森の覇者であるあのむしポケモンたち、その頭領にも打ち勝っていた。数度まみえたことがあるが、群れ全体としては負け越していたものの、毎度確実に深手を負わせ引かせていた。それもあり、次々と森を追われるポケモンたちが多い中、俺たちは少数ながらも最後まであの森に居座れていたのである。

 それに比べ今のざまはなんだ。鍛え上げた肉も、たっぷりとしたたてがみもない。すっかりと全身から色が抜け落ち、小柄で、非力で、いつ食えなくなるかも分からない状況に甘んじている。それにこの身体は…………いや、今はそれに気を取られている場合ではあるまい。自己研鑽とはどこに行ったのやら。情けないことだ。

 

 

 

 

◇日目

 洞窟を徘徊していたらムウマが喧嘩を売ってきたので受けてたったのだが、わりと軽く捻れた。この身体、本当に小柄で弱そうなのだが、個体としては強いのかもしれない。

 そしてこれは可能性なのだが、かつての主技だったバークアウトやあくのはどうはもちろんだが、ゴーストタイプの技も相性がいいように思える。もしかしたらだが、かつてと変わった姿であるし、肉体のタイプも変わっているのかもしれない。それに、この仮説が合っていればユキメノコがやたら気にかけてくる理由も自ずとわかるに違いない。

 

 

 

 

■日目

 4体のムウマを相手にした。おもしろいことにこの身体、ゴーストタイプの技は得意なのに逆にくらっても効果がないのだ。相手の放った渾身のゴースト技を透かすのはなんとも言えない楽しさがある。

 あと、カチコールがひたすら岩を砕いていて面白かった。どうやら砕き終わった砂や砂利、石が目的らしい。土嚢でも作るのだろうか。

 

 

 

 

✕日目

 ムウマに泣きつかれたムウマージがやってきた。幼いポケモン同士のじゃれあいというのはこちらも向こうも重々承知ではあるのだが、まああの沢山のムウマに言われては来ざるを得なかったのだろう。ムウマージは俺の事を一瞥すると、何事も無かったかのように去ってしまった。

 ……恐ろしいほど鍛えられたサイコパワーの持ち主だった。俺は近頃の行いを反省した。遊んでいる場合ではないのだ。一刻もはやくかつての力を取り戻し、することがあるだろうに。

 今日はムウマージの訪れのせいか洞窟が異様に寒かったので、食べ尽くされ骨と皮と毛だけになった死骸にくるまって眠った。

 

 

 

 

〇日目

 岩を砕いた。この地の岩石は度々特殊な力を帯びていることがあり、その力を蓄えることで一部のポケモンは基礎能力を鍛えているらしい。クレベースがしていたのはそれだったようだ。

 それにしてもこの地は異様だ。厳しい環境もそうだが、強大な何かの力を感じる。眠っていたり、()()た場所にいたりするようだが、それにしても数が多いと思うのは気のせいだろうか。かつての森があった地でも眠っているであろうそれらしき気配はあったが、この地ほど大きな存在ではない。この身体のせいで敏感になっている可能性も否めないが、これらのことは念頭に置いておく必要があるだろう。

 

 

 

 

※日目

 ある程度強くなったので、食料調達のため地上に出ていたのだが、すこし遠出をした途端に一匹のイーブイに盛られ乗られかけた。一瞬、何が起きているのか分からなくて固まってしまったが、もちろん たいあたりを食らわせてから即座に振り切って逃げた。ゾッとした。

 ……今まで考えないようにしていて意図的に目を逸らしていたが、()()()()()()()()()()()()()()。オレたちは雌雄で差のある種族ではないから、戦いにおいて困ることはないので放置していた。しかしながら、この調子では早急に対策を練る必要があるようだ。

 好んでやろうとは思っていなかったが、人間相手に女に化け、たぶらかしたことは何度もある。(無論、あの食料調達の際のことである。力仕事に従事する人間はオスばかりで、子供を演じるよりも女の方が注意を集めやすかったからだ。) だが、同じポケモンからメスとして、遺伝子を残す対象として扱われたのは初めてだった。あのイーブイも趣味が悪いな。

 

 

 

△日目

 果たしてひとつ分かったことは、この身体はメスとして優れているということだ。母胎機能はまだよく分からないが、オスからしてみるとどうも魅力的に見えるらしい。この前のイーブイしかり、イノムーやエイパムなんかもそういう素振りをしていた。自分ではあまりよくわからない。

 今日は無事キノコを集めてこられた。"前" のことを考えると怯みを覚えるのだが、か弱いポケモン1匹ぐらいなら大した量でもないので、追い払うのを面倒くさがるやつが多い。前はこうは行かなかった。だが、最近はユキメノコの来る頻度も下がっていたので自分で食べるものを集める必要があるのだ。

 そういえば、キノコを集めている時に件のイーブイが付きまとってきていた。あまりにも煩わしくてこちらから出向いてやったのだが、驚いてオボンのみを落として草むらに隠れる始末だった。隠れつつもチラチラと様子を伺っているのを見るに、なるほどと俺は草むらを一瞥した後オボンを食べてその場を去った。

 

 

 

〇日目

 今日もイーブイが着いてきていた。乗ってくる気配はないので無視しているが、どういうつもりなのだろう。またオボンのみが置いてあったので食べた。

 ユキメノコが姿を見せなくなってしばらくが経つ。あれだけの力を持ちながらここまで姿を見せないのは、俺の餌付けに飽きたからかそれとも、いや、言うまい。

 明日はユキメノコの様子を見に行ってみようと思う。純粋な興味であり、脅威を知るためだ。心配だとかそういうわけではない。絶対に。

 

 

 

 

□日目

 人間だ。

 

 この地にもいたのか。

 

 

 

 

 

 






ウォロとセキとシマボシ隊長が好きです。


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